【愛じゃねえの?】~社会人*嫌いだったはずの先輩に恋する理由。攻めの後輩視点

星井 悠里

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◇楽しそう

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「三上、あっち行こ」


 めちゃくちゃ楽しそうに、笑顔で言う。
 結局今日も、昨日の旅館に泊まる事になった。荷物を全部置いて、外に出てきて、しばらくして、いつも通りの先輩に戻った。


 良かった。びくつかれると、ちょっと気を遣うし。
 ……なんか、触れたくなってしまって困るし。

 ――――……普通の先輩が、可愛いし。


 最初にどこ行きたいですか?と聞いたら、迷わず「清水寺」と言った。まあ旅館から近いっていうのもあったけど、修学旅行で来て以来だったらしい。

「高校ん時に来た時さ。2泊3日で、京都と大阪と奈良も行ったから、超強行スケジュールで。移動だけで忙し過ぎて、よく覚えてねーの。大阪は、お好み焼きとたこ焼きを食べただけだったし」
「はは。何ですか、それ」

「楽しかった記憶はあるけどね。なんかあんまり覚えてないから」

「オレ、修学旅行は北海道だったんで、京都、初めてです」
「そうなんだ。じゃあ、いっぱい回ろうぜ」

 めちゃくちゃ楽しそう。
 さっき、通りがかりで買った、観光マップみたいなのを手に持ってる。

「先輩、そん時はどこに行ったんですか?」
「京都は、清水寺とお土産屋さん巡って、金閣寺も見たような……あ、なんかどっかで縁結びのお守り買った」
「縁結び??」
「そん時、班の女の子と付き合ってたからさ。一緒に買おうってなってさ」
「へえー。そういうの、買うんですね」

 意外。
 ああ、でも、高校生の時か。

 きっと可愛かっただろう先輩が、女の子と一緒に縁結びのお守りを買ってる姿を想像すると、なんだか、あまりにも可愛い気がする。
 ふ、と思わず、微笑んでると。

「旅行でさ。盛り上がってたから買ったんだけどさあ。……縁結びのお守りって、おそろいのとかだと、ものすごい可愛いんだよ。知ってる?」
「知らないけど、想像はつきます。でも可愛くないのもあるんじゃないですか?」
「彼女がさ、これが可愛いって選んだのがほんとに可愛すぎてさ。まあいっかって、買ってあげてさ。お揃いで持とうって事になったんだけど……」
「けど?」

 んー、と先輩は眉を顰めて。

「オレがさー、そんな可愛いの、普段の学校の鞄につけれる訳ねーじゃん?」
「ああ。そうでしょうね」

「でもつけてって言うんだよね。オレと付き合っててお揃いにしてるって、皆に知ってほしい、みたいな……? よく分かんないんだけど、見えるとこにつけてって言われて」

 ああ。……先輩と付き合ってたの、自慢したかったのかな。
 と、すぐそう思ったんだけど。
 先輩は。よく分かんないと、言ってる。

 …………鈍そうだよな、そういうの。

 何で仕事ン時は、あんなによく気が回るんだろう。

 ――――……自分の事に気が付かないタイプかな。
 思うけど言わないで居ると、先輩は続ける。

「それで、オレは、鞄の中にならつけるよって言ったんだけど、それじゃ嫌って話になって」
「なって?」

「……そこら辺が原因で、なんかオレが面倒くさくなって…… 結局別れたんだよね、修学旅行の後に」
「縁結びのお守りで、別れたんですか……」

 ぷ、と笑ってしまうと。じろ、と見られて。

「……まあ大昔の話だから良いけどさ」

 先輩は、はあ、とため息。

「だからオレ、縁結びのお守りとか、信じてないんだよね」
「はー。まあ……オレはそんな面白エピソードは無いですけど、縁結びのお守りは信じてないですね」
「……面白エピソード言うな」

 先輩のツッコミに笑ってしまう。



「三上、縁結びは信じてなくてさ。他のお守りは信じてるのか?」
「……まあ、そうかも。交通安全とか、普通のお守りは何となく」

「何が違うのそこ」

 そんなとこ突っ込まれると思ってなかったけど、たしかに 何が違うんだろうと考えてみる。

「うーん……縁結びは、仲良く居れますように……て、そんなの祈らず仲良くすりゃいいじゃん、と思う、というか」
「……うん。それで?」

「他のは、オレ、誰かにもらう事が多かったから……親父とか。ばあちゃんとか。 そっちは、なんか、相手の事思って、渡すものでしょ? そういう気持ちで守ってくれるんじゃないかなーとか?……ですかね」
「へー。成程。なんか、分かった」

「分かりました?」
「うん。――――……三上が、なんか、良い奴なの、分かった」

 クスクス笑いながら、先輩が言う。

「今のでそうなります?」
「人の気持ち、ありがたいって思うってことだろ?」
「………ああ。まあ。そうですかね」

 そうなのかな?
 まあ……確かにそうか?

 とりあえず、先輩がなんかニコニコしてるので良しとして。
 近づいてくる大きな門を見上げる。


 仁王像が居る、門。

 こんな観光名所に、先輩とオレが一緒に来てるなんて。
 ほんと。

 考えもしなかった。


 それに。
 ――――……先輩に、あんな風に、触れる、なんて事も。
 


 隣で、清水寺の説明を見ながら歩いてる先輩を見下ろす。
 意外と、身長差、あるみたいで。

 職場だと、なんだか、先輩が大きく見えてたんだけど。


 ――――……綺麗だとは思ってたけど。
 こんなに可愛いとかは、思わなかった。







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