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side*陽斗 2
しおりを挟む取引先について、木原さんに会う。
この人、仕事出来るし、悪い人じゃないんだけど。
んー。なんか、支えるように触られるんだよね。ドアに入る時とか、椅子に座る時とか。ふとした時に、まあ別に良いんだけど。
結婚してるんだから、男が好きって事もないだろうし、
まあ、男にも優しく触る、そういう人も居るんだなあといつも思ってた。
まあ、なんかものすごく気に入られてるのかなあとは、思っていたけど。だって、京都に戻る事が決まった時、会えなくなるのが残念って死ぬほど言われたし。
……まさか、京都にまで呼び出されるとは思わなかったけど。
……で、話が始まってしばらくして、なんか。ふと気づくと、三上の顔が険しい。
と言っても普通の無表情なんだけど、いつも、営業先で、良い感じの笑顔になってる三上とはえらい違いなので、オレには分かる……多分、木原さんは気づいてないけど。
……ちょっと怒ってる……?
気になりながらも話が終わり、もうとにかく、早く帰ろうと思っていると。
「あ、渡瀬君、ここの工場見ていくかい?」
木原さんに、そう誘われてしまった。
「良いんですか?」
すぐそう答える。
見てもいいし見なくてもいい程度だったけれど、まあ見せたいなら、見ておくか。と。思ってそう答えたんだけど。
木原さんは、無表情の三上には。
「じゃあこっちの資料の訂正については、そこの君、うちの担当と一緒にしてもらえる? 今担当を呼ぶから」
そう言った。三上が瞬間、固まった。
返事をしないので、ちょっとまずいなと思って。
「三上、頼める? オレちょっと、工場見せてもらってくるよ」
そう言ったら。何だかすごい勢いで、自分も工場が見たいと言い出して。なんか可笑しいなと思いながら、とにかく一緒に見学したいみたいなのでと、オレも一緒に木原さんにお願いした。
なんか、よく分からないけど、微妙な雰囲気が、木原さんと三上の間に流れてる。
何なんだ、この感じ。三上が超我儘言ってるみたいな感じになってる。
……って実際そうかな? と可笑しいけど。
なんでそんなに必死なんだろ??
とりあえず、木原さんに、三上が勉強熱心だから無理を言ってる、というニュアンスを伝えておこうと思って、三上に「ちゃんと勉強していけよ?」と伝えた。
その微妙な雰囲気は、工場を見学してる間、ずっと続いてた気がする。
木原さんは、オレとだけゆっくり話したいみたいだし、
よく分かんないけど、三上はそれを邪魔してくるし。
夕食に誘われて、まあでも断れないか、と諦めようとした割とすぐ後。
三上が急に体調が悪くなった。
えーと…………?
…………木原さんと食事、行きたくないのかな??
違う、かな?
まあオレも特別いきたい訳じゃないけどさ。
せっかく、仲直りの楽しい夕食、三上と食べようと思ってたんだし。
もしかしてそうなのかなと思っている間に、三上がどんどん具合悪そうになっていって、結局、帰らせてもらう事にした。
呼んだタクシーに乗り込みながら、ぐったりしてる三上を見つつ、木原さんに別れを告げた。
――――……仮病じゃないのかな。
旅館に帰った方がいいかな??
そう思ってるオレの隣で、三上は深いため息をついて、座り直した。
何か怒ってるのかな?と思ったら。
「……先輩さ、こういっちゃ、何なんですけど――――……」
「うん?」
「……バカ、なんですか?」
「――――……は?」
…………ひどくない?
後輩さん。 オレ一応、先輩ですけど。
バカなんですかって。ひどすぎる。
そう思ってたら。
「……どー見たって、あやしく2人きりになろうとしてんの、気づかないんですか?」
「……あやしく2人きりって……」
その言葉には、「バカ」を忘れて笑ってしまった。
何それ。
笑ってると、すごい疲れた感じで、仮病だと告白され、あ、やっぱりそうなんだ。なんでそんなことしたの?と思ってたら。
「そうでもしねーと、あいつと夕飯行くとこだったでしょうが」
と、ものすごい嫌そう。
「――――……え、なんでそんな、嫌がってんの?」
と聞いたけど、後で話しますとか言って、話してくれないし。
むむ……。
ちょっとこういう所、志樹に似てる。
オレの人付き合いについて、何か言ってくるとこ。
……兄弟か。
兄弟って、そういうとこ、似るの? 兄弟そろって、何なんだろ。
不思議……。
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