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side*陽斗 9
しおりを挟む「……先輩」
「うん?」
わらび餅を食べ終えて、お茶を飲んでたら、三上がオレを見つめる。
「先輩、合コンではモテるって言ってたけど」
「うん?」
「学生時代とかは? どうでした? 超モテました?」
「……何回か告白されたけど……そんなにいう程モテてないし。合コンってなんかすごいよな。あの場は独特。オレでもすごいモテるし」
学生時代は別に普通だったぞ。
なんで聞くんだ?
卒業してからスーツで行く合コンは、なんかやたらモテるけど。なんなんだかもよく分かんないけど、とにかく、すごすぎて、引いてきてしまう位だったからな……。
「あ、ケーキどうぞ」
「いいの? 食べちゃって」
「全然良いです。オレむしろ、スイーツとかって一口食べれば満足な感じなんで」
「ええ。もったいな……」
「一口目が一番美味しくないですか? その後は段々甘さが気持ち悪くなってくるっていうか」
「それは無い」
完全に否定して、いただきまーすと口に入れると、すごい美味しいし。
「……無さそうですね」
その言葉にふと視線を上げると、三上の視線がやたら優しくて。
「――――……」
何か。
――――……今まで見ないようにしてきたし。
勿論説明する時とか、ちゃんと分かってるかなと、顔を見てたけど。
オレも笑わないから、三上も笑わなかった。
もうちょっと、仲良くならない程度でうまくできてれば良かったんだろうけど、そんな事出来なくて、ほんとに悪かったなと思いながら。
目の前の、優しい笑みに、何秒か言葉が出なくて。
「ていうかさ。――――……三上こそ、すごいモテるだろ?」
「……モテそうに見えますか?」
「うん。見える」
絶対モテるだろ。多分オレのモテるのなんか、吹き飛ばされる位モテるんじゃねーかな。
女子が、これで見つめられたら、アウトだと思うんだけど。
「オレは――――…… まあ総長時代は、冗談みたいにモテましたけど」
「そうなんだ」
くす、と笑う先輩。
「まあ、昨日の写真は、確かにカッコよかったから分かる」
「――――……つか、あの写真の事は、忘れていいですから。いや、もう綺麗に忘れてください」
「あの写真、送って。たまに見たいから」
「絶対嫌です」
「なんで? いーじゃん」
「無理」
「カッコいいのに」
ほんとに見たいのに。残念。
でもなんか、嫌がってる三上がちょっと可愛くて、笑ってしまう。
「パンフレット見せてください」
「ん」
はいどーぞ、と渡してから、ケーキを食べ続ける。
「先輩、他に行きたいとこありますか?」
「んー……静かな寺院とか、行きたいな。庭が綺麗なとことか」
答えながら、パンフレットを見つめてる三上を眺める。
意外と、睫毛、長い。睫毛が長いから、なんか黒目が濃く見えんのかな。目力強いよな……。
三上って。手、デカいなー……。
パンフを開いてる手が目に入ってくる。
「――――…………」
――――……手。
つか。
昨日、この、手に――――……。
やばいこと考えてしまいそうになった瞬間、三上が急に顔を上げてきた。
ドキドキドキドキドキ。
心臓がヤバい。
「……? どうしました?」
「……いや、別に」
不思議そうだったけど、すぐまたパンフレットに目を向けてくれて、ほっとする。
なんか、三上の手、大きくて、綺麗だけど。
――――……あの手で、オレ、昨日。
なんてことさせてしまったんだろう……。
三上の問いに答えながらも、もうなんか後悔やら羞恥やら、なにやらいっぱいの感情が、入り混じる。
落ち着け。そっちは忘れろ。バカ。オレ。
何考えてんだ。
忘れろー…………。
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