【愛じゃねえの?】~社会人*嫌いだったはずの先輩に恋する理由。攻めの後輩視点

星井 悠里

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◇都合よく。

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 午前中、人力車に乗ったり寺院を回ったり、かなり色々満喫してから、通りがかりの豆腐料理の店に入った。

「なんか昨日湯葉で、今日豆腐とかって」
「健康的ですよね」

 クスクス笑いながら、メニューを眺める。

 美味そう。
 ――――……あれからずっと、楽しいし。


 注文して、食事を待ってる間、撮ってた写真を見ていたら。


「先輩、見てこれ、良い写真」
「どれ? ……わー、オレすっげえ笑ってるし」

「楽しそうで良いでしょ」

 人力車がめちゃくちゃ楽しかったらしく、先に先輩が乗った所で撮った写真。すげえ良い笑顔。

 
 ――――……ぷ。子供みたい。可愛い。


「オレはこれがいーなー。なんかこのままパンフレットとか載せれそう」
「どーゆー事です?」

 先輩が自分のスマホで見ていた写真を、オレに見せてくる。


「――――……」

 さっき、寺院で、像を見ている時の、オレの写真。
 なんか、神妙な顔して、見入ってる。

「カッコよくない? この写真」
「そうですか?」

 ……オレが立ってるだけなんだけど。


「寺院にパンフにのせてって頼みたい」
「何ですか、それ」

 笑ってしまいながら、ふと気づく。


「先輩って、オレの顔、好きです?」
「え。あ、うん。 カッコイイよな? てか、嫌いな奴、居ないんじゃねえ?」
「――――……」

 そこは照れずに、普通に言う。
 ――――……一般論として、かな、今の?。

 まあ。……嬉しいっちゃ嬉しいけど。



「……『好き?』とか聞くの、やめてくんない?」
「え」

 一般論で返事をした後から、その部分を考えたのか、なんだかやたら照れだした。


「……熱いし」

 ぱたぱた扇いで、そっぽ向いてる。


 ちょこちょこ、やたら可愛いのは、ほんとに。
 わざと可愛くしてる?? ……訳ねえか。


 これ以上突っ込むと、まともに話せなくなる気がするので、それには返事しないで、写真を眺めていると。ちょっと落ち着いたらしい先輩が話しかけてきた。


「あのさ、午後さ」
「はい?」

「三上が行きたいとこ行こうよ」
「オレが行きたいとこですか? パンフ貸してください」
「うん」

 渡されて、前からざっと見ていく。

「京都がいいです?」
「んー。でも寺っぽいのはもう何個も行ったし。もうどこでもいーよ?」

「――――……じゃあほんとにどこでもいいですか? 京都は明日、また帰る前に少し回ればイイですよね?」
「うん、いーよ」

 とりあえず京都のパンフを先輩に返して、スマホで検索。


「ここは?」
「どこ?」

 画面に出したのは、大阪にある、テーマパーク。


「え、行きたいの?」
「一回行ってみたかったんですけど。今からじゃ遅いですかね」

「良いよ、行こ行こ。オレも行ってみたい」

 めちゃくちゃ楽しそうな顔で、先輩が笑う。


「いいよな、こういうとこってさ。オレ、ディズニーランドとかも、好きだったな。――――……社会人になってから行ってないけど」
「何でですか?」

「んー……? なんでだろ。忙しかったってのもあるし――――……昨日言ってた話も関係あるかなあ。 あんまり乗り気じゃないのに、そんなとこ行こうって気にもなんなかったし」

 なるほど。


「三上は? 行くの?」
「彼女とかが行きたいって言えば、行ってましたね。嫌いじゃないんで。ああいう、日常じゃない空間」
「へえ。じゃあ、今度いく? ディズニーランド」
「――――……」

 なんか。
 ――――……すごく普通に、遊ぼうの誘い?

 今から別のテーマパーク行こうって言ってるし。
 
 ――――……今夜、色々しようって時に。
 それが終わった後、オレらって、どうなんのかなあと、ちょっと心配してるのにな、オレ。


 そんな時に、次のテーマパークも、一緒にいこ、とか。

 ……可愛いよなあ。なんか。



 先輩の、この好意っぽい言葉が。
 さっき、「三上だから」「三上じゃなきゃ」て言ってくれた言葉と重なって。

 どうしても、都合よく、聞こえてしまう。





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