75 / 274
◇女にモテたい?
しおりを挟む「先輩、そろそろこっち向いてくれません?」
「――――……」
「変ですよ、2人で居るのに、完全に先輩がそっち向いてるの」
苦笑しながらそう言うと、先輩、ようやく、こっちを向いてくれた。
「……なんかさ」
「ん?」
「……三上って、結構」
「うん?」
そこまで言って、先輩が固まってる。
やっと食べ終わったらしい、クレープを包んでた紙を折りたたみながら、続きが出てこない。
「何ですか?」
「――――……結構意地悪い?」
「――――……」
えーと。
……意地悪い?
「……そうですか?」
「――――……分かんない。でも、なんか、からかって楽しそうに見える」
「んー……」
まあ確かに、ちょっと、反応が面白いなとは思ってた。
意地悪いとは言われた事ないけど――――…… ああ。そういえば。
「Sだよねって言われる事がたまにありますけど……」
「あ、そうそう、そんな感じ!」
食い気味に乗っかっけて来て、うんうん頷いて、なんか楽しそうになってる。 ……面白いなーこの人。
まあ。Mじゃねーから、どっちかっつったら、Sかも知んねーから別にそれは良いけど。
じゃあこの人は何なんだろう。
……無意識で、突撃してくるのを何て言うんだろう。
Sな訳じゃない。別にМでもない。
……無意識。無自覚。天然。
――――……この人って、これで何で仕事、あんなに出来るんだろう。
謎に思える位、鈍い時あるし。
ああ。でも昨日の、あのキモイおっさんのとこでの対応見てても。
そういえば、一番キモイとこは、この人、ほとんど分かってなかった。
仕事関係は、敏いしすぐ分かるし、ちゃんと話も通じてたけど。
でも、キモイとこは、見事にスルーか、違う意味で取って、なんか適当にうまく返事になっていたような。ある意味天才……。
――――……だから、ほんとにその関連だけにものすごく鈍いって事で。なんでこんなにモテそうなのに、そこら辺発達しないで生きてこれたんだろうなあ?
……分かりやすい好き好きアピールしてくる子としか、付き合ってないんだろうなあ。と、勝手に予想しながら。
謎すぎて、アイスティーをストローで飲んでる先輩を見つめてしまう。
「……あ、先輩、クリーム。ちょっとついてる」
右の唇の端。こっち、と、オレ自身の唇を指して教えてあげたけど。
逆側に触れてる。
「こっち」
紙ナプキンで、そっと拭き取ってあげると。
「――――……」
先輩、黙ってから。
「……三上って、すげー恥ずかしい」
「――――……」
本気で恥ずかしそうに言われて、がく、と崩れそうになる。
「はいはい……すみませんでした」
苦笑いしながら、紙ナプキンをくしゃ、と丸めてトレイに置く。
「もう行きます?」
「うん」
「どこか行きたいとこあります?」
「ううん。いいよ、適当に回るんで、十分楽しいし」
――――……素直。
ふ、と笑ってしまいながら、先輩のトレイと重ねて、「ちょっと待ってて」と立ち上がって、トレイを片付けた。
先輩の元に戻ると、「ありがと」と言われるのだけれど、何か、ちょっと複雑そうな顔してる。
「……どーしました?」
「なんかさー。三上ってさー」
「はい」
またきた、「三上って」。
……次はなんだろ?
先輩の次の言葉を待っていると。
「なんかあれだよね」
「……あれ?」
「……あれあれ」
「あれ、とは?」
「理想の彼氏、みたいなこと平気でするよな?」
「――――……」
「絶対モテるよな。三上見てると、ああ、こうやれば、いいのかーって、勉強になる」
「――――……」
またこの人は、ほんとに何言ってんだかよく分かんねえけど。
「……何が勉強になったんですか? たとえば?」
「えーたとえば…………」
2人で歩き出しながら、先輩のあほ発言の先を促すと。
「スイーツ頼む時は、相手の食べたいもの頼んであげる、とか」
「…あれは、オレがどれでも良かったからですけど」
「乗り物乗る時、自然と先に乗せてくれるとか。ドア開けてくれるとか」
「……それはやってるかもですけど」
「飲み物買ってくるから待ってて、とかさ。水持ってきてくれるとか。さっさと片付けてくれちゃうとか?」
――――……なんかそこだけ聞いてると、オレ、めっちゃ尽くしてる気がしてきて、ちょっと笑える。
「そういうのを自然とやれると、絶対女の子にモテるんだろうなーて、感心してるところ」
――――……女の子に、モテる。ね。
何か、そこ、引っかかる。
女の子に、モテたいの?
――――……オレと夜、とんでもないことしようとしてんのに?
口をついて、出てしまいそうになって、一呼吸おいてみる。
89
あなたにおすすめの小説
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる