【愛じゃねえの?】~社会人*嫌いだったはずの先輩に恋する理由。攻めの後輩視点

星井 悠里

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◇先にキス

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 結局途中で人とすれ違う時に手を離して。 
 そのまま、歩いてきた。

 旅館にたどり着いて、部屋の鍵を受け取る。

「思ったより早くつきましたね」
「うん。ついさっきまで大阪にいたもんな」

 楽しそうに笑う先輩。
 部屋まで歩いて、ドアを開ける。


「楽しかったー、なんか今日、すごい充実感」

 いっぱい回ったよな、なんて笑いながら、オレを振り返ってくる。

「そうですね」

 頷きながら、荷物を端に置く。


「ね、先輩」
「うん?」

 
「風呂、一緒入ります?」

 そう言った瞬間。
 それまで、超笑顔だったのに、ぴったりと固まってしまった。

「入るけど――――……そういえば、昨日、全然来なかったじゃん、三上。 そういえば、あの時、何してたの?」

「あー……一緒に入るの嫌だったので、なるべく遅く行きましたけど……」

 昨日の事を思い出しながら、苦笑いでそう言うと。
 先輩は、眉を顰めた。


「え、何で?? 何で嫌なの??」
「――――……」

 何でって。
 ……何でって――――…… 本気で聞いてる……?


 ……本気で聞いてるんだろうな、これ……。
 信じられない。



「……意識、しそうだったからですけど」
「――――……」


 おお。 すっげえ、黙った。
 固まってる。


「――――……先輩?」

 声をかけると、先輩はじっとオレを見つめてきた。


「え、だって。――――……昨日の風呂入る時って、別に……」
「先輩はしてなかったんでしょうけどね」

「――――……えー……と……」


 なんだかものすごく困ったような顔。


「いいですよ、返事悩まなくて」

 もう、苦笑いしか出てこない。


「ごめん――――…… 何も……思ってなかった、オレ」
「だからいいですって」


 クスクス笑いながら、オレは、浴衣とバスタオル、下着を持った。


「はい、先輩」

 先輩にも浴衣とバスタオルを渡して。
 そのまま、至近距離で、先輩を見下ろした。



「――――……昨日とか比べ物にならないくらい、意識してますけど。 それでも一緒に入りますか?」


 間近でオレを振り仰ぎ、じっと見つめ返して。 
 またほんのり、赤いけど。 



「――――…… 今は、オレもしてるから、一緒でいい」



 とか言っちゃう辺り。
 ――――……なんかもう。ほんと。


 ……今すぐ襲いたいんだけど。
 なんか、理性を総動員、させて耐える。

 でも、
 どうしても。

 キス、したい、と思ってしまって。



「……先輩」
「ん?」


「キスしていい?」
「――――……え。でも」


 ちょっと困った顔で、先輩がまた固まってしまった。



「でも……風呂は??」
「……キスしてからでもいいなら」

「――――…………」

 先輩は、すっごく困った顔になってしまった。

 嫌、かな?
 良いとは言わないし、なんかすごく困ってる。

 

「……嫌なら、いいんですけど」

 先輩の、超困り顔に仕方なく言った。


「風呂が先でいいですよ」

 風呂に向かって歩き出した瞬間。
 先輩が、オレの腕を引いた。

 え、と思うか否かの間に、ふ、と近づいてきて。
 キスされた。


「先輩……?」
「ち――――……ち、がうよ? キス、したくない、とかじゃない」


 何だか一生懸命な顔で、そんな風に言って、見上げてくる。

 まっすぐな瞳。



「――――……っ」


 なんか。
 ――――……すっげえキたんだけど。

 落ち着け。オレ。


 
「……でも、先輩、キスして良いか聞いたら、戸惑ってたでしょ?」

「……だから――――……」



 先輩は一度俯いて。それから、プルプル首を振った。
 

「……キス、しちゃうと――――……さっきもだけど……反応しちゃうし」

 最後の言葉を口にした瞬間。
 かあっと赤くなって、どんどん俯いてく。


「風呂、入れなくなると――――……思って……」
「え。……そんな、理由?」


「そうだよ。つーか、今更、嫌なんて、言う訳ない――――……」




 そんな理由なら。
 止める理由には、なんねえし。



 先輩の顎を捕らえて上げさせて。
 深く、唇を重ねた。







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