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◇オレのでいて
しおりを挟む先輩は近くでオレを見上げながら。
「……オレ、男と付き合うとか、今まで考えた事もなかったよ」
そんな風に先輩が言った。
「……オレもですけど」
そう答えながら、洗い終えた手をタオルで拭くと。
何を思ったのか、先輩は、ぽて、とオレの肩辺りに、額をくっつけてきて。
「……陽斗さん?」
むぎゅ、と、手をオレの腰と言うか、背中に回してくる。
あんまりに可愛いので、そっと抱き締めると。
「――――……思わなかったけど。なんか……」
「――――……」
「……オレ、変でさ」
「ん? へん?」
「……すごく、安心するんだよね」
抱き締めたままで。
――――……くす、と、笑ってしまう。
「じゃあ、ずっと、オレので居てくださいよ」
「――――……」
先輩は返事はしなかったけど、まっすぐオレを見つめて笑んで。
――――……そのまましばらく、オレの腕の中に、居てくれた。
その後、並んで歯を磨いて、寝る支度を済ませて、寝室に。
「――――……陽斗さん、布団、敷く?」
「え?」
「……ベッドで一緒に寝るなら、もう敷かないけど」
何て答えてくるのかなと思っていたら。
「ベッド二人、狭くない?」
「さっき色々して、狭かった?」
「…………っっ」
途端に真っ赤。
……ああ、もうほんとに、なんでこんな可愛いのか。
「――――……三上、が狭くて嫌じゃないなら」
「腕枕してあげるから、狭くは感じないと思うけど」
「――――……」
その言葉に、「うん」と頷くのは嫌みたい。
でもきっと、抱き寄せたら、嫌とは言わないんだろうなーと思うと。
ちょっと葛藤してるっぽいその顔も、なんか、ものすごく可愛い。
だめだもう、何してても、何言ってても、可愛くて。
「ベッドで一緒に寝ましょう?」
そう言うと、すぐに、「ん」と返事。
二人でベッドに乗って、リモコンで電気を消して。
「陽斗さん、こっち」
腕の中に、先輩を引き寄せながら横になって、抱き締める。
一瞬、戸惑ってたけど。その内、脇から背中に手が回ってきて。向かい合って抱き合うみたいな感じ。
腕の中で、ふ、と笑む気配。
「――――……オレ、自分が男にこんな事されるとか、やっぱり、想像もしなかった」
「……まあ。オレもそうですけど」
ぎゅ、と抱き締める。
「今は、オレ、陽斗さんだけにこうしたいって、思ってますよ」
「――――……」
言ってしばらく。
先輩は、また少し笑って。頭が少し、オレの顎辺りに触れて。
髪の毛がふわ、とオレにすり寄る。
「……分かってると思うけどさ」
「はい」
「一ヶ月とか……区切らなくても、もう気持ちは……そう、なんだけど………」
「――――……」
「じゃなきゃ……触れてない。触れさせないし」
「うん」
そんな風に言う先輩に、笑ってしまう。
「……でもなんか、オレ――――…… これに関して、すごいヘタレなのかな。決められなくて、ごめんな」
そんな言い方にますますクスクス笑ってしまうけど。
「オレは、大丈夫。関係はそんな変わりはないし。何ならずっと1カ月更新でもいいですよ」
「……え??」
「その度見直し。更新してもらえるように頑張り続けるかも」
「ふうん。――――……1カ月更新じゃないと、頑張んないの?」
先輩が笑いながらそう言って、ふ、とオレを見上げる。
「……頑張るよ、絶対」
そう言うと。――――……先輩が、ふ、と目を細めて。
可愛くて、ちゅ、とキスすると、ますます先輩が、笑った。
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