【愛じゃねえの?】~社会人*嫌いだったはずの先輩に恋する理由。攻めの後輩視点

星井 悠里

文字の大きさ
220 / 274

◇穏やか

しおりを挟む
【side*蒼生】


 先輩を迎えに行って、一緒に帰ってきた。

「陽斗さん、着替え洗濯したいやつ、洗濯機に入れちゃってください、乾燥までしちゃうんで」
「うん、分かった」

 先に風呂に入ってもらってる間に、部屋着とか新しい下着とか、色々準備。

「陽斗さん、ここに着替えとかバスタオル、置いとくから。下着新しいやつだから、安心して」
「何、安心て」

 クスクス笑ってる声がして。「ありがと」と言ってくる。
 返事を聞いてからバスルームを離れて、キッチンへ。水とかも用意しておいて、自分の着替えとバスタオルも持ってきて、リビングテーブルの椅子に置いた。ふと時計を見て、んー、と睡眠時間を考える。

 もう結構遅いよな。明日も仕事なんだよなぁ。
 ……つか、結構、酔ってるしな……。

 しばらくして、先輩が出てきた。

「お先に……ありがと、三上も入ってきて?」
「ん。陽斗さん」

 そっと、その頬に触れる。

「結構眠いでしょ」
「……うん。ごめん」

「なんで謝んの。全然いいよ。可愛いし」

 笑ってしまいながら、その頬にぷに、とつまむ。


「すぐ出てくるからお水飲んでね。あと、ドライヤーとか歯ブラシとか、全部そこ置いたから、寝る準備、済ませといて?」
「うん。……ていうか、至れり尽くせりすぎ」

 先輩は、クスクス笑って、可笑しそうにオレを見つめてくる。

「じゃあシャワー浴びてくるね」
「ん」

 先輩から離れて、脱衣所。自分の着替えも洗濯機に入れて、先輩のと一緒に、朝に乾き終わるようにタイマーをセット。

 すぐに熱いお湯を出す。

 今日は、一緒には居れないかなと思って、せめて電話だけでも、と思っていたから。眠そうな先輩だったとしても一緒に居れるとか、嬉しすぎる。
 ……というか。眠そうなの、すげえ可愛いし。

 は。と気付くと。
 鼻歌ふんふん歌ってる自分。

 ……オレご機嫌すぎるな。と、苦笑いしつつ。
 手早く洗って、バスルームを出た。

 ドライヤーをかけてた先輩は、すぐ後ろに居たオレに気付くと、「っわ。びっくりした」と、笑いながらオレを見上げてくる。

「ただいま」

 真正面から、むぎゅ、と抱き締めると。ふ、と笑んだ先輩がそっと背中に触れてくる。

「うん。おかえり」

 ちゅ、と頬にキスして、手を離す。
 唇にしたかったけど、なんだかまた、収まりつかなくなりそうで、とりあえず今日は、変なことしないっつったし、オレ。

 キッチンに入って、水を飲む。

「寝る準備出来ました?」
「うん。できた」

「じゃあさ、オレ、髪乾かして歯磨いてから行くから、先にベッドに入っててください」
「え?」
「うん。陽斗さん、そのまま先に眠っちゃってもいいですよ」
「え、良いの?」
「うん。いーですよ。オレ、後からすぐ行くし」

 何だか遠慮なのか、なかなか動かない先輩。

「でもオレ、ほんとに布団入ったら寝ちゃうかも……」
「だからいいですよ?」

 先輩の肩に手を置いて歩かせ始めて、寝室まで連れて行く。


「すぐ来るから。横になってて?」
「……ん、分かった」

 先輩が、やっと頷いてベッドに向かって歩く。
 布団に入ったのを確認して、オレは先輩に「寝てていいから」と手を振って。「ん」と先輩が頷くのを見てから、リビングに戻った。


 髪を適当に乾かして、明日の朝、何食べようかなとか考えながら冷蔵庫のぞいて。それから歯を磨いて――――……10分、15分位。
 寝室に入るけど、先輩は動かない。


「――――……」

 そーっと、近づくと、壁際の方に寄って、ちょっとこっちを向いた形で目を閉じてる。

 寝てる、かな?
 顔、綻んでしまう。可愛く思えて。

 なるべく音を立てないように、静かにベッドに腰かけて、先輩の顔を見つめる。


「――――……」

 ほんと。綺麗、だなぁ。
 睫毛。長い。伏せられてると、余計、思う。

 ……かわいい。

 自然と手が動いて、触れそうになって。
 起こすかも、と手が止まる。

 ――――……触りたいけど。明日にするか……。
 苦笑いしつつ、手を引っ込めて、先輩の隣になるべく静かに潜り込む。

 少しの間、顔を見つめて。
 ここに居てくれるのが不思議すぎて、でも嬉しくて。
 

 顔の横で、上を向いて少し開いてる手に、そっと手を重ねる。


 
 なんか、ものすごく穏やかな幸せを噛みしめながら、瞳を閉じた。




しおりを挟む
感想 120

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

仕方なく配信してただけなのに恋人にお仕置される話

カイン
BL
ドSなお仕置をされる配信者のお話

処理中です...