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side*陽斗 6
しおりを挟むやっぱり、三上は、イイ男だな。
もう、分かってたけど、改めて思ってしまう。
「仲良くなって帰ってきただろ?」
「……そうですね。ありがとうございます」
「まあ……元々、すごく仲良いって感じじゃなかっただけで、別に嫌いあってる感じはなかったけどな」
「……そう見てたんですか?」
「お前が三上の報告する時は褒めてるし。三上に仕事を聞くと、どう聞いても、渡瀬のことは良いと思ってるっぽいし」
「……そうですか」
つい口元が緩んでしまう。
三上はそういう奴だよな。
――――……二年もオレ、あんな感じで過ごしてきたのに。ほんと。なんだかなあ、三上って……。
「あいつ、仕事できるよな」
「そうですね」
「まあその内営業からは出てくんだろうけど」
「………………え?」
部長を見ると、ニヤニヤ笑いつつ。
「まあ……そう思ってるだけ。何も言わなくていーぞ」
「――――……」
……三上と志樹が兄弟って知ってるのかな。知ってるっていうか。そう思ってるってとこか。……志樹がオレに三上を頼んだとは言え、そっか、部長も通さないとだもんな。何処まで話してるか知らないけど……多分はっきりは言われてないけど、通じてるってことかなあ。
志樹と部長が、はっきり話さず、うやむやで通じ合ってるのとか。
……なんかちょっと怖い。
苦笑いを浮かべながら、開いてる部長のグラスに気付いて、メニューを差し出した。
「何飲みますか?」
「んー……ワインいくか。白と赤どっちがいい?」
「あ、オレ、今日あんまり飲まないんで、グラスで頼みますか?」
「何で飲まないんだ?」
「昨日も飲んでたんで。ちょっと休みます」
……まさか三上に心配されてるとは言えない。
しかも、酔うと可愛いとか、全く意味の分からない理由で。
「ふーん? 明日はそんなに早くないから、飲んでもいいぞ」
「軽く飲みますよ。部長、ワイン、どれですか?」
「これ」
「はい」
部長の指したものを店員に注文して、メニューを片付ける。
そう言えば、部長と二人で飲むとかは、初めてかも。
昼食位なら、たまにあったけど。
……なんかやっぱりこの人は――――……すごい人を見てるよなあ。
三上とのこと、バレないように気を付けよ。
「なあ、今度の新人指導、うちの部は、三上なんだよな?」
「そうですね」
「新人に手ぇだすなよって言っとけよ」
「……出しそうですか? 三上」
部長にはそう見えるのかなと思ってそう聞いてみると、部長は首を傾げた。
「どうだろうな? ただ、モテるだろうなーと思ってな」
「まあ……そうですね」
「ほら、新卒の女の子とかさ。先輩のイケメンに夢中になるとか、目に見える感じしないか?」
「……部長、三上の事、イケメンって思ってるんですね」
何だかそのポイントに引っかかって言葉にすると、可笑しくなってクスクス笑ってしまった。
「まあそうなんじゃないか? 言うなよ、調子に乗せるの面白くない」
「はい」
笑いながら頷く。
新卒の女子が、三上に夢中、かー……。
そういえば、オレが指導した時も、すごい懐かれた子、居たっけなあ。
そっかー。そうだよなー。
三上は、オレなんかより、もっとモテそう……。
「言っとけよ、手ぇ出すなって」
えーと。でも。
……それをオレが言うと。
……ヤキモチで言ってるって勘違いされないかなあ……。
と、なんだかとても複雑な気持ちになりながら、曖昧に頷いた。
(2022/7/8)
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