【愛じゃねえの?】~社会人*嫌いだったはずの先輩に恋する理由。攻めの後輩視点

星井 悠里

文字の大きさ
237 / 274

side*陽斗 9

しおりを挟む

 
「なあ、三上」
『はい?』

「――――……あのさ」
『はい』

「――――……」

 オレ。もしかしたら、結構前から、お前のこと、気になってたのかも。
 ……じゃなきゃ、キスなんか、絶対しなかった。

 もともと、そういう意味の好意があったから、かも。

 そう言おうとしたんだけど――――……電話で、顔も見えないのに言うのが、急に恥ずかしくなって、言葉が出なくなった。


『陽斗さん? ……聞こえてます?』
「あ、ごめん、聞こえてるよ」

『今何か言おうとしてませんでした?』
「……何だっけ?」

 言うと、三上は、何ですか、と言って、クスクス笑う。


 オレ、お前の笑い声、好きだなー……。
 優しくて。……楽しそうな、笑顔が浮かぶから。

 と、それも、口に出せずに止まる。


『明日、何時頃こっちにつきそうですか?』
「んー……どうだろ。部長の会いたい人が、出張から帰ってきてからだし。でもどんなに遅くても、昼過ぎには出ると思うから、夕方には着くかな」
『分かりました。あ、なんか気になる仕事あります? あるならやっておきますけど』
「ん、ありがと。でも大丈夫。明日帰ってからどうにか出来る程度だから」

『でも――――……陽斗さん、明日は』
「ん?」

『残業にならないようにしてほしいんで……やれることがあるなら、オレ、やります』

 三上がそう言う。
 残業にならないようにしてほしい……?

『今、何でって思ってるでしょ』

 ため息交じりの笑い声が聞こえる。

『オレ、明日の夜、死ぬほど楽しみにしてるんですけど』
「――――……」

 それを聞いて、やっと分かった。

『あ。死ぬほどとか、言っちゃった。思わず……』

 電話の向こうで苦笑いしてる三上に。
 ――――……なんか、くすぐったいけど。

 ちょっと可愛いなとか。……思ってしまう。


『だって陽斗さん、忘れてるっぽいんですもんねー。ひどいなー、オレ、ほんとに、早く明日が来いってどんだけ思ってるか」
「――――……ごめん、忘れてた訳じゃないんだけど……」

 残業しないとかの話と、結びつかなかっただけというか。

『いいですよ。……なんか陽斗さんぽいし』

 クスクス笑う三上に、少し、考えてから。

「……大丈夫。そんな遅くならないようにするし。土曜は何もないし」
『――――……』

 ……あれ?
 ――――……返事、無い。


「三上? 聞こえる?」
『聞こえますけど。――――……何もないから、遠慮しなくていいってことかなーと思ったらちょっと固まってました』

「――――……?」

『――――……気が済むまで、抱いてもいいってこと?』

「――――……っ」


 ……違う、オレは、残業になっても、別に翌日何もないから、金曜居る時間が少なくても、土曜も一緒に居れるし、だから大丈夫っていう意味で言っただけで……。


『って、違うか』


 すぐに、三上がそう言って、クスクス笑う。


『冗談。陽斗さん、そろそろ戻らないとでしょう?』
「――――……」

『電話、ありがと。この後、電話できるか分からないから、とりあえず言っておきますね。明日、運転、気を付けて帰ってきてくださいね』

 電話を終わらせようとしている三上に、オレは。


「……三上」
『はい?』

「――――……さっきの……三上の言うとおりで、いいよ」
『さっきのって……』

 少し黙った後。
 クスッと笑いながら、三上が。


『気が済むまで、ってやつ?』
「――――……うん」

『――――……絶対そんなつもりで言ってなかったでしょ、陽斗さん』


 クスクス笑う三上。


『……でも、ありがと。――――……楽しみに、してるね』


 優しい声が。少しだけ。熱をはらんでるみたいな囁き声に変わる。


「うん――――……おやすみ、三上」
『おやすみなさい』


 そう言って、ゆっくり、画面を見ながら。
 名残惜しく思いながら、通話を終えた。



 ――――……めちゃくちゃ、ドキドキ、してる。


 なんだかなぁ、オレ。

 ――――……すっごい、三上のことが。 
 好きじゃんか……。



 ……今まで付き合った中で――――…… 一番好きだったりして。 


 そんな風に思って、すごく恥ずかしくなりながら。
 スマホを握り締めたまま、部屋に向かって歩き始めた。






(2022/7/24)
次からまた蒼生sideに戻ります。
しおりを挟む
感想 120

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

仕方なく配信してただけなのに恋人にお仕置される話

カイン
BL
ドSなお仕置をされる配信者のお話

処理中です...