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近くて遠い
「ムカつく理由?」*大翔
しおりを挟むなんか、マジで気分悪い。
何でって。分かってるけど。
――――……あちこちから、色々声掛けられて。
へらへらしてる。
……ように見えるから。
それを言ったら、否定するとは思うけど。
さっき少し口に出してしまったら、何だかすごくムッとしてて。
なんだかあまりに素直にムッとしたので、珍しいなと、笑ってしまった。
いつもは分からないようにムッとするというか。静かなため息だったりするんだけど。
先輩は何か言おうとしてたのに、女子に絡まれて離れてしまった。
「――――……」
次々絡んでくる子達と話しながら。
モテて良いなとか、よく分からない 絡みを入れてくる男子とも話しながら。
何なんだ、立食の合コンて。話す人数多くて疲れる。
しかも、誰かを選ぼうとか、そんな気も全くない合コン。
オレ一体ここに、何しにきたんだっけ……。
ああ、マジで、来なきゃよかった。
と思うのだけれど――――……。
ただ、その気持ちはまったく表には出ない。
先輩も先輩で、多分全然乗り気ではないんだろうけど、ものすごく、愛想良いし。
「四ノ宮くんて、ほんとに彼女居ないの?」
「――――……」
余計な言葉は言わず、ん、と頷くと。
チャンスだとでも思うのだろう。じゃあさ、という話につながっていく。
1人だとちょっと、という子は、何人かで集まって遊ぼうよ、と言う。
いつも同じ感じ。
前はとりあえずその中から、気になる子に声かけてみたりして、過ごしてみたりもしたんだけど。
一体何で、オレが、女じゃなくてあの人を目で追うのかが、全然分からない。
オレと離れてから、女に囲まれてた先輩は。
ドアが開くと、そこに来た男の店員の元に行って、誰かが頼んだアルコールのトレイを受け取ってる。
――――……また、人の良い。
結構な数のグラスに、どれが誰のか分からないらしくて、一瞬固まってる。それを見たその店員が再びそれを受け取って、笑って、何かを言ってる。
それに対して、先輩も笑いながらあたりを見回して。
一緒に空いてるテーブルの所に行くと、そこにグラスを移していく。
「アルコール来たよー」
先輩が声を上げると、頼んだ奴らが寄っていく。
一体何を、店員と話す事があるのか、まだ喋ってるし。
あーなんか。
――――……むかつく、なあ。
そうは思うのだけれど、理由はいまいちよく分からない。
それでも、オレの周りにいる子達との会話が途切れた時、オレはそこを離れて、先輩に近付いた。
「先輩」
呼びかけると、先輩は振り返って、オレを見上げた。
「じゃ。ありがとうございました」
先輩と話していた店員はそう言って先輩に笑いかける。先輩も、はーい、と笑顔で返してから、オレを振り返った。
「四ノ宮どしたの?」
――――……さっき何か言いたげなまま離れたのに、もう忘れてるみたい。
にこ、と笑って、オレを見上げる。
「――――……先輩、今日、一緒に帰ります?」
「……つか、ほんとに、誰も良い子いないの?」
先輩は首を傾げながら、オレを見上げてくる。
「まだ分かんない。小太郎達と二次会行くかもってさっき言ってたし。帰れたら、帰ろ?」
そんな話をしていたら、相川先輩が近づいてきた。
「あ、ユキ、酒ちょーだい」
「あ、これ小太郎の?」
「うん」
相川先輩はもう20才。
「いーなー、オレも飲みたい」
「20才になったら祝ってやるから一緒になー?」
「うん。祝って」
2人でクスクス笑ってる。
「でもうち、親2人とも弱いらしいから、オレも弱いのかも」
「ユキの両親、そんな弱いの?」
「うん。母さんなんてちょっとで酔っちゃうらしい」
「でもじいちゃんとか強かったら、強いかもしんないし。飲んでみないとわかんねえよ」
「ん、そうだね。弱いよりは強い方がいいなあ~オレ」
「まあ分かる」
2人で話しながら、相川先輩がふと、オレを見る。
「なんか四ノ宮はザルって感じがする……何でだろう」
「あー、分かる。そんな気がする」
2人でうんうん頷き合って笑ってるし。
ほんとここ2人は、のどかに仲良いな……。
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