【初恋よりも甘い恋なんて】本編・番外編 完結💖

星井 悠里

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揺れる

「安心?」*奏斗

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「ごめん、遅くなって」
「いえ全然」

 椅子に座って、窓から下を何となく覗く。
 四ノ宮あっちから来るかな。とりあえず、お弁当が出来たら帰ろう。

 その事を言おうと、大地に視線を戻したら。
 大地がすごくまっすぐ、オレを見ていた。

「……どした?」
「先輩って、カズ先輩に会ってますか?」
「――――……」

 もうなんか。心臓が、痛い。けど。
  
 ……落ち着け。
 ……オレとあいつが仲良かったことは、皆が知ってる。
 だから、聞いてるだけだし。

「……転校してからは会ってないよ」
「最近、こっちに帰ってきたの知ってますか?」
「……うん、聞いた」
「あ、聞いたんですね」
「弟も知ってんの、幼馴染だから。地元で会ったんだって」
「そうなんですね……」

 コップを煽って、残っていた氷を口にした。

「カズ先輩が、カナ先輩に会いたがってるのは? 知ってますか?」
「――――……連絡先、弟に聞いたのは知ってる」

「オレ、こないだ、部活の集まりで、久しぶりに会ったんですけど……」

 オレは、もう、それ以上は、聞きたくなくて。
 氷がなくなると同時に。

「大地、あのさ」

 断ち切るみたいに、名前を呼んだ。 

「ごめん……もう、言うけど……オレ、あいつに会いたくなくて」
「――――……」

「オレの事も、あいつには言わないでほしいんだけど……」

 中途半端に隠しても、良くないだろうと思ったから、そう言い切って、大地を見つめていると。少しして、大地は静かに頷いた。

「……分かりました。内緒にしますから」
「……うん」

 真剣に頷いてる大地の態度に、ほっとして、ごめん、と呟いた。

「いえ。……同じ学年の奴にも言わないから。大丈夫ですよ」
「ごめんな? ありがと」

 そう言った時、店員が来て、弁当を置いて行った。
 大地が少し驚いたような顔をする。

「? 持ち帰るんですか?」
「うん」
「先輩、足りなかった?」
「まさか。……最近世話になってる奴に、お礼」
「なるほど。じゃあ、冷めないうちに帰ります?」
「まあどうせ帰るまでには冷めちゃうけど……うん、今日は帰ろうかな」

 スムーズに帰れそうで、意外だな、と思ってしまった。
 まだ話しましょうよー、と言われるかなと思ってた自分に気付いて苦笑い。

 財布を出した大地に「あ、オレが払うよ。今日は奢り」と言うと、少し考えてから、大地は笑った。

「じゃあ次はオレが奢りますね」
「ん」

 頷いて、立ち上がる。
 会計をすませて、階段を下りた。

「先輩ちはこの近くなんですか?」
「うん。歩いて帰れる」
「オレ、電車なので」
「うん」

 改札まで行く、と一緒に歩き出す。

「先輩」
「ん」

「電話とかかけて良いですか?」
「別にいーけど」

 笑いながら答えると、大地は嬉しそうに笑った。

「もうほんと――――……元気そうで良かったです」
「何それ。どんだけ心配してたの? 大丈夫だから、安心して」
「ですね」

 大地はクスクス笑って、オレを見下ろす。

「にしてもどんだけでかくなってんの。いつまで成長期なんだよ?」

 見上げると、大地はんー、と自分の頭に手を置いた。

「どうだろー? 先輩は止まった?」
「……多分止まった」

 ムッとして答えると、大地は可笑しそうに笑う。

「先輩は可愛いからそれでいいと思います」
「……先輩に可愛いとか言うな」

 はー、とため息。
 駅の改札についた所で、大地を見上げる。

 何か最近、こーやってデカい奴を見上げてばっかり、と、四ノ宮を思い出す。

「じゃあね、先輩。今日会えてよかったです」
「うん。そだな」

「またすぐ連絡しますから」
「はいはい」

「ちゃんと出てくださいよ」
「はいはい、大丈夫だって」

 手を振って、大地を見送る。
 姿が見えなくなってから踵を返して歩き出して、四ノ宮が居ると言ったコンビニに向かう。


 大地に会った時は、ちょっと焦って……やばい、と思ったけど。和希に関係ない所で会うなら、別に、こんな感じで済むのか。

 ――――……あーでも……。
 連絡先が、伝わるリスクは、避けたい。

 今までは、間違っても会わないようにとだけ思ってた。
 断り続けるのも悪いから、スマホが壊れたことにして、物理的に誰からも連絡が来ないようにした。

 でも、和希が真斗に連絡先を聞いたと聞いてからは、また話が変わってきてる。
 間違って、居る場所で再会のリスクだけじゃなくて……連絡したがってる、とか……。

 ……なんで。
 連絡したいんだろう、オレに。


 ――――……幼馴染として、会いたい、とか……?

 ……絶対、そんなの無理だし。


 歩きながら、唇を少し、噛む。


 やっぱり今のまま。
 大地は同じ大学だから仕方ない。連絡先、多分あいつはまわしたりしないと思うし。――――……このまま、行こ……。

 コンビニに辿り着いて、入ろうとした瞬間。


「奏斗」


 ぐい、と腕を引かれた。

 え、と見上げると、四ノ宮だった。


「あれ……しの、みや……?」
「大丈夫?」

「え。何が? ……外で待ってたの?」

「そろそろ来るかなと思って外に出たとこだったんだけど――――……目の前に居るオレを素通りするって、どーいうこと?」

 呆れたように言いながら笑って、オレの腕を離す。



「――――……」



 ……なんか、よく分からない。


 すごく、嫌な気分、だったのに。

 ……なんかオレ今――――…… 顔見て、ちょっと、ホッとした?







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