「王子と恋する物語」-婚約解消されて一夜限りと甘えた彼と、再会しました-✨奨励賞受賞✨

星井 悠里

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第4章「先生としてって言ったけど」

5.綺麗な指

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 食事を終えてとりあえずお店を出て、これからどうする? なんて言いながら、歩き始めた所にボーリング場が見えた。

「わー。懐かしいなー」

 そう言ったら、「ボーリング、する?」と琉生が笑う。

「ボーリングなんて、何年もしてない。大学生の時以来。しかもその時も全然上手じゃなかったし」

 そう言うと、琉生はクスクス笑って、「好きじゃない?」と聞いてくる。好きか嫌いかで言ったら、割と楽しくて好きなんだけど、なんか……。

「好きなんだけど、あんまりうまくないから、琉生と勝負しても、相手にならなそうで」
「え、オレ、うまそうに見える?」
「見えるよー?」

 それは光栄だけど、と琉生が笑う。

「好きなら、やろ? オレも久しぶりだし」
「……でも私、ほんとに下手だよ?」
「別に、琴葉が両手で投げても笑わないから。行こ」
「さすがに片手で投げるけど」
「ガーター連発でも全然いいよ」
「そこまではひどくないけど……」
「じゃあ大丈夫」

 ……という感じで、すっかり乗せられた感で、連れて来られてしまった。あれよあれよと、靴を借りて、ボールを手に取った。

「一回オレから投げてくるね」

 うん、と頷いて、椅子に座って後ろから見守る。

 ……なんか、ほんと、琉生は上手そうだなあ。と思っていたら、一投目で九本倒して、ちゃんと一本も倒して、スペア。
 私は、二回投げて六本。もうこうなると、どれくらい差がつくか楽しみかも、と思っていたら、琉生が私を見た。

「琴葉が一投目で、オレがその後投げるっていうのはどう?」
「ん? どういうこと?」
「琴葉、オレ、琴葉、オレって投げるのは?」
「二人で投げるってこと?」
「そう。どう?」
「いいけど……勝負にはならないけどいいの?」
「オレ、別に琴葉と勝負したい訳じゃないし。あ、じゃあさ、上の段と下の段、どっちが勝つか賭けようよ。それが勝負」

 琉生は鞄から手帳を出して切り取ったメモに「上」と「下」と書いて、選んで、と笑う。なんだろ、と思いながらひとつ選んで手に取る。ゲームが終わるまで見ないでしまっといてね、と言われた。琉生も私も、中身は見ずに鞄の中に入れた。

「自分がどっちに賭けたかわかんなければ、小細工もできないでしょ?」

 クスクス笑う琉生に、「もともとそんな小細工できる技術はないけど」と、笑ってしまう。

「あ、琉生は、できちゃうの?」
「できちゃうかも」

 なるほど。そっか。頷きながら、「じゃあ、上と下で、真剣勝負だね」と、なんだかわくわく。

「勝ったら、どうする?」
「えー……どうしよっか」

 とっさに浮かばなくてそのまま聞き返すと、琉生はじゃあ、と私を見つめる。

「負けた方が、夕飯奢る、ていうのは?」
「え、私が奢るよ。お好み焼き、出してもらったし」
「それは、付き合ってもらったからだし。夕飯賭けよ?」
「――ん、分かった。いいよ」

 そう言って頷くと、琉生は「どっちにオレ、賭けてるのかな」と考えながら、ふ、と微笑む。

「どっちにしても、琴葉と夕飯だから、オレは嬉しいんだけど」


 そんな風にさらっと言って、答えられないでいる私に、クスクス笑いながら、ボールを手にする。


 ボールにかかる大きい手。……でも、長くて綺麗な指。
 


 ――――……あの手で、触れられたんだな、と。
 急に思いだしてしまって、なんだかかあっと、顔が熱くなる。





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