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第三章
第41話 一生分ドキドキ
しおりを挟む「ふふ。あのさ、さっき、それ見て、もしかしてって思ったからさ……」
「なんですか?」
先輩は、オレの方に向けて、先輩くんを座らせると。ぬいを後ろ手に持ったまま、オレの隣に移動してきた。
「じゃーん」
オレの前に、二体を並べた瞬間――。
全く反応できずにフリーズ。
「………………あれ?」
反応が全くないことを不思議に思ったのか、先輩は、真隣のオレを振り返った。
「こっちが陽彩くんだから、こっちが貴臣くんなんだけど……しかも、宮瀬が着てた登山の時の服に似せてみたんだけど……似てなくて分かんない?」
むー、そっかー……と先輩は首を傾げて、「貴臣くん」とやらを持っているが。
「……それ、オレ、なんですか?」
「えっ。うん」
「オレを、作ってくれてたんですか?」
「うん。そう、なんだけど。似てない? 結構いい出来だと思うんだけどなあ。可愛くない?」
ほらほら、とテーブルに二体並べて座らせて、オレの方に見せてくる。
あの日の登山服を着た先輩くんと、同じく登山姿のオレのぬい。
ぬい同士が、ちょこんと並んで、光の中でこっちを見てる。
なんだこの……可愛さの暴力は……。
「せっかくペアにしたのになー」
……なにこれ。可愛い。
やばい。可愛すぎる。
心臓が暴れて、息が詰まる。
だってこれ、先輩が、オレのぬいを作って、先輩くんに並べてくれたんでしょ。
あ、先輩の中では、「陽彩くん」か。何それ。死ぬほど可愛い。奇しくも「くん」呼びは共通だった。
どんな意味かはよく分かんないけど。
でもきっと、こうやって、二体並べるために。
しかも登山服がバレてたから、先輩も登山服にしてくれたんだよね。
ていうか、陽彩くんと貴臣くんて何。 オレ、心臓持たない。無理。
はーなにそれ、マジで可愛すぎるでしょ。
先輩は、可愛すぎ罪で逮捕されてしまうかも。
「宮瀬?」
「っ……はい!」
慌てて顔を上げた。変な声だったかも。でも先輩は不思議そうに首を傾げただけで、ぬいを並べ直して笑う。
「可愛いよね?」
その笑顔がもう、オレにとっては、完全に致死量で。
……可愛いのは先輩。そう思いながら、頷く。
オレ、今この瞬間、一生分ドキドキしてるんですけど。
もう、だめだ。
「今度さーこの子たちと一緒に、登山しようよ、登山! また星見よう?」
……オレが、言おうと思ってたのに。
登山服の先輩をあげて、今度、登山付き合えるように頑張りますって。言おうと思ってたのに。
あーもう――好きだ。
言葉にならないくらい。
どうしようもないくらい。
もう、心の中、悶絶中のオレの横で、カメラを持ってきて、パシャ、とぬいたちの写真を撮った先輩が、「あ」と言う。
ふふ、と笑いながら、テーブルを離してカメラを置くと。
「四人……? えーと。二人と、二ぬい、で撮ろ」
「……っ」
タイマーして、オレの隣に。
「はい、宮瀬が貴臣くん持って!」
「……っ」
それぞれ一体持って、真ん中でぬいを近づける。
「はい笑ってー!」
言った直後、シャッター音。
すぐ確認に行って、また笑顔。
「お、撮れたよー」
「良かったです……」
ダメだもう。可愛くて疲れた。
もうぐったり。
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