「推しは目の前の先輩です」◆完結◆

星井 悠里

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第三章

第41話 一生分ドキドキ

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「ふふ。あのさ、さっき、それ見て、もしかしてって思ったからさ……」
「なんですか?」

 先輩は、オレの方に向けて、先輩くんを座らせると。ぬいを後ろ手に持ったまま、オレの隣に移動してきた。

「じゃーん」

 オレの前に、二体を並べた瞬間――。
 全く反応できずにフリーズ。

「………………あれ?」

 反応が全くないことを不思議に思ったのか、先輩は、真隣のオレを振り返った。

「こっちが陽彩くんだから、こっちが貴臣くんなんだけど……しかも、宮瀬が着てた登山の時の服に似せてみたんだけど……似てなくて分かんない?」

 むー、そっかー……と先輩は首を傾げて、「貴臣くん」とやらを持っているが。

「……それ、オレ、なんですか?」
「えっ。うん」
「オレを、作ってくれてたんですか?」
「うん。そう、なんだけど。似てない? 結構いい出来だと思うんだけどなあ。可愛くない?」

 ほらほら、とテーブルに二体並べて座らせて、オレの方に見せてくる。

 あの日の登山服を着た先輩くんと、同じく登山姿のオレのぬい。
 ぬい同士が、ちょこんと並んで、光の中でこっちを見てる。

 なんだこの……可愛さの暴力は……。


「せっかくペアにしたのになー」

 ……なにこれ。可愛い。
 やばい。可愛すぎる。

 心臓が暴れて、息が詰まる。

 だってこれ、先輩が、オレのぬいを作って、先輩くんに並べてくれたんでしょ。
 あ、先輩の中では、「陽彩くん」か。何それ。死ぬほど可愛い。奇しくも「くん」呼びは共通だった。

 どんな意味かはよく分かんないけど。

 でもきっと、こうやって、二体並べるために。
 しかも登山服がバレてたから、先輩も登山服にしてくれたんだよね。

 ていうか、陽彩くんと貴臣くんて何。 オレ、心臓持たない。無理。
 はーなにそれ、マジで可愛すぎるでしょ。

 先輩は、可愛すぎ罪で逮捕されてしまうかも。

「宮瀬?」
「っ……はい!」

 慌てて顔を上げた。変な声だったかも。でも先輩は不思議そうに首を傾げただけで、ぬいを並べ直して笑う。

「可愛いよね?」

 その笑顔がもう、オレにとっては、完全に致死量で。
 ……可愛いのは先輩。そう思いながら、頷く。

 オレ、今この瞬間、一生分ドキドキしてるんですけど。
 もう、だめだ。

「今度さーこの子たちと一緒に、登山しようよ、登山! また星見よう?」

 ……オレが、言おうと思ってたのに。
 登山服の先輩をあげて、今度、登山付き合えるように頑張りますって。言おうと思ってたのに。



 あーもう――好きだ。
 言葉にならないくらい。
 どうしようもないくらい。


 もう、心の中、悶絶中のオレの横で、カメラを持ってきて、パシャ、とぬいたちの写真を撮った先輩が、「あ」と言う。
 ふふ、と笑いながら、テーブルを離してカメラを置くと。

「四人……? えーと。二人と、二ぬい、で撮ろ」
「……っ」

 タイマーして、オレの隣に。

「はい、宮瀬が貴臣くん持って!」
「……っ」

 それぞれ一体持って、真ん中でぬいを近づける。

「はい笑ってー!」

 言った直後、シャッター音。
 すぐ確認に行って、また笑顔。

「お、撮れたよー」
「良かったです……」


 ダメだもう。可愛くて疲れた。
 もうぐったり。



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