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第三章
第42話 誘い
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心臓が大分疲れたやりとりを終えて、少し落ち着いてから、先輩が撮った写真をパソコンで見せて貰った。
一枚一枚感想を言ってるときりがないので、オレが見ながら好きにめくっていく。
どれもこれも、可愛くて、綺麗で、朝の光の中でふわふわしていて。
「結愛に渡したら、全部使いたいって言いそうですね」
「そう?」
クスクス笑いながら、先輩も隣で写真を見てる。
「オレ、これが好きです」
一枚。 先輩がオレの手を一生懸命撮ってくれていた写真。
淡い朝の光の中で、オレの手が、ぬいにそっと触れてる写真。指先とぬいの頭の部分。
骨ばってるとこが綺麗に透けてて、すごく綺麗な指に見える。
光に透けてる感じかな。ぼんやりとした明るいきらめきのなかで、指先とぬいがふんわり浮かんで見える。
朝のあの静けさまで、写真に映りこんでるみたいで。もう、なんというか。うまく言えないけど。
「綺麗すぎます」
そう言ったら、先輩はオレをふ、と見て。
「……オレもこれ、結構好き」
「オレはかなり、だいぶ……ぜったい好きです」
「あはは」
先輩は笑うけど。ほんとに、今までみた写真のなかで、これがダントツ、一番好き。
綺麗すぎて、オレの手、だとは思えないけど。
「先輩、データ、貰ってもいいですか? 結愛にも送りたいし、昨日の写真も、手芸部の子たちにも送りたいので」
「もちろん。空いてるUSBに入れちゃうね」
「はい」
パソコンを先輩に返して、オレは、ふ、と息をついた。
先輩は、パソコンを操作しながら、ちらっとオレを見てくる。
「宮瀬が家でゆっくり見てさ、マニュアルに入れたい写真を送って。それ使って、作るから」
「分かりました」
「あと、販売のところとか、ワークショップに目立つように……お客さんの呼び込みに使えるのがあったら大きく印刷したりもできるから」
「それは、オレが発注しても大丈夫ですよね?」
「うん。安いプリント屋さん、あとで送る」
「お願いします」
そのまま、また先輩の作業待ち。
オレの目に映るのは、まだテーブルに仲良く並んで座ってる、「陽彩くんと貴臣くん」。何なのこれ、ほんと。可愛すぎる。
「先輩、この二つの写真、結愛に送ってもいいですか?」
「え。えー。ちょっと恥ずかしいけど……オレの、上手じゃないし」
「上手ですよ。めちゃくちゃ可愛いです」
……って、これ、オレのぬいなんだっけ。めちゃくちゃ可愛いっていうのもどうかって気がするけど。でも、先輩が頑張って作ってた姿を見ていたから、余計愛しさがMaxなんだよな。
「結愛ちゃんだけならいいよ」
「はい……名前は」
「名前……? って、貴臣くんとか陽彩くんっていったやつ? あ、それはダメ。べ、別に、名前つけたっていうか、呼んだだけだし……!」
先輩が何だか焦って、オレを振り返り、なんだかちょっと、顔が赤い。
――胸に、ずきゅん、と何かが刺さった。うう。痛い……。
狼狽えつつも、とりあえずスマホで写真を撮って、結愛におくった、先輩が作ってくれたオレだってことも。騒ぐだろうなぁ、と思いつつ。ちょっと可愛すぎるから見てほしかった。結愛ならだれにも言わないし。
「はい、USB。使ってないから、そんな急いで返さなくてもいいよ」
「ありがとうございます」
大事に受け取って、鞄にしまってから、ふぅ、とため息。
用事が終わってしまった。まだ午前中なのだけど。
「なあ、宮瀬って、今日はずっとぬいづくり?」
「え。あー……何にもなければそうですけど」
なんにもなければってなんだ。なんか、先輩との間に何かを期待してそうな言い方になってる? うわーどうしよう、なんかおかしいか?
「とりあえず、お昼どっか食べに行く?」
「え。あ、いいんですか?」
「いいよ。ていうか、オレが誘ってんのに」
ぷ、と笑って、先輩が立ち上がる。
「着替えてくる。宮瀬もさ、荷物まとめといて。宮瀬んちに荷物置きながら、駅に向かおうよ」
「あ、はい!」
「何食べたいか考えといて~」
言いながら、先輩が奥に消えてく。
荷物を整理しながら、オレは気持ちが上向いて大変。
とりあえず一緒にご飯までは食べられる。嬉しいな。食べたいものか。なんだろ。朝は、パンだったから……どっか、電車乗って、レストラン街があるとこでも……。
そこまで考えて、ふっと、あることが頭をよぎった。
電車で十五分くらい行けば……あるよな。
――先輩、予定は無さそうだし。誘ってみようかな。
お昼食べて、それを見て、帰ってくるくらいなら……。
「準備できた?」
戻ってきた先輩は、やっぱりおでかけモードだとオシャレだ。
白の半袖シャツの下に淡いグレーのTシャツ。黒の細身のパンツ。手首には皮のブレスレット。
いつもだけど、モデルさんみたい。
一瞬見惚れながら、はっと気づいて。
「あの、先輩……」
「んー?」
「時間がもしあったら」
「あるよ?」
にこ、と笑って即答。
「――プラネタリウム。行きません? あの、で、電車、快速のれば十五分くらいで。ほら、あの、合宿の時にいこうって話していたよう」
「行きたい!」
後ろの方、わたわたと説明を始めたオレの言葉にかぶさって先輩がめちゃくちゃ笑顔になった。
一枚一枚感想を言ってるときりがないので、オレが見ながら好きにめくっていく。
どれもこれも、可愛くて、綺麗で、朝の光の中でふわふわしていて。
「結愛に渡したら、全部使いたいって言いそうですね」
「そう?」
クスクス笑いながら、先輩も隣で写真を見てる。
「オレ、これが好きです」
一枚。 先輩がオレの手を一生懸命撮ってくれていた写真。
淡い朝の光の中で、オレの手が、ぬいにそっと触れてる写真。指先とぬいの頭の部分。
骨ばってるとこが綺麗に透けてて、すごく綺麗な指に見える。
光に透けてる感じかな。ぼんやりとした明るいきらめきのなかで、指先とぬいがふんわり浮かんで見える。
朝のあの静けさまで、写真に映りこんでるみたいで。もう、なんというか。うまく言えないけど。
「綺麗すぎます」
そう言ったら、先輩はオレをふ、と見て。
「……オレもこれ、結構好き」
「オレはかなり、だいぶ……ぜったい好きです」
「あはは」
先輩は笑うけど。ほんとに、今までみた写真のなかで、これがダントツ、一番好き。
綺麗すぎて、オレの手、だとは思えないけど。
「先輩、データ、貰ってもいいですか? 結愛にも送りたいし、昨日の写真も、手芸部の子たちにも送りたいので」
「もちろん。空いてるUSBに入れちゃうね」
「はい」
パソコンを先輩に返して、オレは、ふ、と息をついた。
先輩は、パソコンを操作しながら、ちらっとオレを見てくる。
「宮瀬が家でゆっくり見てさ、マニュアルに入れたい写真を送って。それ使って、作るから」
「分かりました」
「あと、販売のところとか、ワークショップに目立つように……お客さんの呼び込みに使えるのがあったら大きく印刷したりもできるから」
「それは、オレが発注しても大丈夫ですよね?」
「うん。安いプリント屋さん、あとで送る」
「お願いします」
そのまま、また先輩の作業待ち。
オレの目に映るのは、まだテーブルに仲良く並んで座ってる、「陽彩くんと貴臣くん」。何なのこれ、ほんと。可愛すぎる。
「先輩、この二つの写真、結愛に送ってもいいですか?」
「え。えー。ちょっと恥ずかしいけど……オレの、上手じゃないし」
「上手ですよ。めちゃくちゃ可愛いです」
……って、これ、オレのぬいなんだっけ。めちゃくちゃ可愛いっていうのもどうかって気がするけど。でも、先輩が頑張って作ってた姿を見ていたから、余計愛しさがMaxなんだよな。
「結愛ちゃんだけならいいよ」
「はい……名前は」
「名前……? って、貴臣くんとか陽彩くんっていったやつ? あ、それはダメ。べ、別に、名前つけたっていうか、呼んだだけだし……!」
先輩が何だか焦って、オレを振り返り、なんだかちょっと、顔が赤い。
――胸に、ずきゅん、と何かが刺さった。うう。痛い……。
狼狽えつつも、とりあえずスマホで写真を撮って、結愛におくった、先輩が作ってくれたオレだってことも。騒ぐだろうなぁ、と思いつつ。ちょっと可愛すぎるから見てほしかった。結愛ならだれにも言わないし。
「はい、USB。使ってないから、そんな急いで返さなくてもいいよ」
「ありがとうございます」
大事に受け取って、鞄にしまってから、ふぅ、とため息。
用事が終わってしまった。まだ午前中なのだけど。
「なあ、宮瀬って、今日はずっとぬいづくり?」
「え。あー……何にもなければそうですけど」
なんにもなければってなんだ。なんか、先輩との間に何かを期待してそうな言い方になってる? うわーどうしよう、なんかおかしいか?
「とりあえず、お昼どっか食べに行く?」
「え。あ、いいんですか?」
「いいよ。ていうか、オレが誘ってんのに」
ぷ、と笑って、先輩が立ち上がる。
「着替えてくる。宮瀬もさ、荷物まとめといて。宮瀬んちに荷物置きながら、駅に向かおうよ」
「あ、はい!」
「何食べたいか考えといて~」
言いながら、先輩が奥に消えてく。
荷物を整理しながら、オレは気持ちが上向いて大変。
とりあえず一緒にご飯までは食べられる。嬉しいな。食べたいものか。なんだろ。朝は、パンだったから……どっか、電車乗って、レストラン街があるとこでも……。
そこまで考えて、ふっと、あることが頭をよぎった。
電車で十五分くらい行けば……あるよな。
――先輩、予定は無さそうだし。誘ってみようかな。
お昼食べて、それを見て、帰ってくるくらいなら……。
「準備できた?」
戻ってきた先輩は、やっぱりおでかけモードだとオシャレだ。
白の半袖シャツの下に淡いグレーのTシャツ。黒の細身のパンツ。手首には皮のブレスレット。
いつもだけど、モデルさんみたい。
一瞬見惚れながら、はっと気づいて。
「あの、先輩……」
「んー?」
「時間がもしあったら」
「あるよ?」
にこ、と笑って即答。
「――プラネタリウム。行きません? あの、で、電車、快速のれば十五分くらいで。ほら、あの、合宿の時にいこうって話していたよう」
「行きたい!」
後ろの方、わたわたと説明を始めたオレの言葉にかぶさって先輩がめちゃくちゃ笑顔になった。
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