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第三章
1.
しおりを挟む【side*心春】
入学式の午後。
「うーん、そんな予約は無いみたいですね。電話で受けたとしても、ここに書く事になってますから」
店員さんの言葉に、私は、お礼を言って、店を出た。
ショッピングモールの案内図の、今の店にバツを記入する。
あらためて見ると、ほんと、あと何店舗あるんだろう。
悠斗の名前で、あの日近くの受取日で、何か、注文されていないか。
聞いて回り始めたところ。
誕生日の私と会う前にわざわざ行ったのだから。
多分私に、だと思う。私の物を買うために、悠斗が選びそうなお店を当たっていく。もしこれで見つからなかったら、他の店も聞いてみればいいし。
とにかくあの日、受け取りに行くだけって、悠斗は言った。
買いに行くとか、探すとかじゃなくて。「受け取る」って。
てことは、何かしらお店の人と、話しているはず。そう思って。もう、一軒ずつ、訪ねてみることにしたのだけれど。
ただ、建物が東西南北と、四棟もあるし、四階建てでめちゃくちゃ広い。
紳士服とか、男物の店は外してるけど、それでも、多すぎて。
一瞬、弱音を吐きそうになるけど。
……無駄かなとも思うけど。
――――……でも、と、顔を上げた。
悠斗のことをたずねている間は。
悠斗が生きていた後を、追いかけていられるような気がする。
――――……頑張ろう。
今、他にやりたいことが、何も見つからないし。
自分の考え方が、後ろ向きなのか、前向きなのか、分からないけど。
とりあえず、探してみよう。
そう思って。聞き漏れが無いように、色々話しながら、一店舗ずつ消していく。
そんな事をしていたら、急に、後ろから話しかけられて。
恐る恐る振り返って、驚いた。
上宮 伊織くん。
――――……ほんと。なんか。
よく会うなあ……。
少し話をしていたら。
ちょっと柄の悪い人達に、上宮くんが、絡まれた。
私はもともと関係ないとは言え、明らかに庇ってもらって。
そのまま帰れず、警備の人を呼びに行った。
――――……何だか……。
私にとっては、全部が非日常すぎて。
今まで。ほんとにいつも、悠斗と一緒だった。
女の子の友達と遊びに行く以外は、悠斗と一緒。
近いとは言え、ショッピングモールに一人で来た事自体ないし。
店員さんにお願いして聞きまわったりするとか、今まで考えた事もないし。
もちろん、あんな人達に絡まれる事もないし。
――――……悠斗といた私は、ずっとふわふわ幸せで。
何だか急に。
今更、急に。
この世界は、一人で歩いていかないと、いけない所なんだ、なんて思い始めた。
今まで、どれだけ、ふわふわ守られていたんだろうって。
――――……また悠斗を想ってしまう。
警備の人のおかげで、上宮くんも、変な人達から離れられたみたい。
まだ、内心ドキドキしっぱなしの私に、上宮くんは、何をしてるのか、聞いてきた。
――――……咄嗟に。ただ、買い物をしてる、と答えた。
だって。何だか。
早く吹っ切って、前を向くようにって。
悠斗が成仏できない、とか、言った人に。
悠斗の後を追って、多分、私にくれるはずだった物を、探してる、なんて。
……そんな事、言えないと、思ってしまった。
自分でも少しは、私は何してるんだろうって思ってる。
あのタイミングだから、多分私のものかなと思ってるけど。
もしかしたら、全然違うものかも知れないし。
見つけたからって、何がどうってこともなくて。
ただ、なんとなく。
悠斗が最後に目指した場所を知りたい、なんて。
――――……でも、知ってどうするのって思う自分も居るし。
だからそれを、上宮くんには、言えない。
そう思って、誤魔化して別れて、続きを再開。
一店舗、終わった所で、たくさん荷物を持った上宮くんが帰って行く後ろ姿を見送った。
上宮くんって。
――――……なんか。不思議。
不良、みたいなのに。
神社の息子で。不思議なこと言って。
成仏できない、なんて、そんな心配して。
――――……周りなんかどうでもいいとか、言いそうな見た目の人なのに。
……私が、変な感じでお店回ってるからって、何してんのとか。聞いてきたり。
……多分。良い人なんだろうなぁ……。
大分、不思議だけど。
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初回公開日時 2019.01.25 22:29
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再連載 2024.6.26~2024.7.31 完結
❦イラストは有償画像になります。
2024.7 加筆修正(eb)したものを再掲載
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