「桜の樹の下で、笑えたら」✨奨励賞受賞✨

星井 悠里

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第三章

3.

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【side*伊織】


 腹痛と言って、教室を出てきた。
 急いで、公園に向かう。

 くっそ――――……。
 走りながら、色々後悔する。

 心春と、同じ高校、同じクラス。
 ――――……試してみようと思ってしまった。

 地縛霊みたいのを動かせるのか。そう父さんに聞いた時、そんな事も出来た事があるという話を聞いた。

 悠斗は、自分の意志では、桜の樹の下から動けないらしい。
 でもこないだ、桜の樹から大分離れた公園の外まで、オレの側に居れば、悠斗は来れた。

 だから、試してみようと思った。

 朝、登校の時に悠斗の所に寄った。

 オレの隣に居て、どこまで行けるか。
 今から、学校行くから、行ける所までついて来いよと伝えた。

 悠斗は、少しの間、じっとオレを見ていたけど。
 多分、オレの意図はすぐ分かったんだろう。

 ありがと、と言って、オレに並んだ。


 結果。
 ――――……悠斗は、一緒に、高校までついて来れた。

 このことから分かるのは――――……。
 多分、悠斗とオレの相性というか、波長というか、よく分からないが、そういうものが合ってるんだろうなということ。

「ここに来るの、合格発表以来だ」

 悠斗が、しみじみ言いながら辺りを見回している。
 クラスに入り、オレは席に着く。心春の席は斜め前。

 心春が入ってきて、周りの友達と話しているのを。
 悠斗は、少し微笑んで。――――……じっと、見ていた。

 さすがにここではオレは返事は出来ない。
 悠斗も、黙ったまま、ここの空気を、感じてるみたいだった。

 窓際の席、少し暑い。
 休み時間に、少しだけ窓を開けたら、思ったよりも風があって、さあっと教室を吹き抜けた。

 その風で、心春がこっちをふと、振り返った瞬間。
 ――――……今度は多分、悠斗と何かが反応した風が吹いて、オレの机のプリントが、飛んだ。

 あ、と気付いた心春が立ち上がって、拾ったプリントをオレに渡して、悠斗が立ってる、窓際に近付いた。
 瞬間、さっきよりも強い風が、カーテンを舞いあげた。

 「ひゃ」と心春が変な声を出してて。オレは咄嗟に、カーテンを押さえようと手を伸ばした。

 ふっと心春の手に触れてしまった時。
 ばちっと、嫌な電気みたいなものが、触れてる部分に走って。

「痛た……っ」

 心春が、そんな声を出した、その瞬間。

 心春の瞳が――――……。
 悠斗の所で、ぴたっと、止まった気がした。


 ――――……悠斗と、心春の視線が、まっすぐに合ったように見えた。一瞬だけ。


 次の瞬間、何だか、弾かれるみたいな感覚。


 風がすぐ止んで。カーテンが元どおりになって。
 気づいたら、悠斗が、消えていた。


 どういう事なのか分からない。


 風も、電気みたいな痛みも、弾かれた感覚も。

 多分父さんに聞いても、理由は分からないのかも。
 事象として、あるという、認識。それだけかもしれない。

 あれで、悠斗が、消えたとか――――……無いと思うけど。
 あの電気と衝撃と、弾かれたみたいな感覚。


 不安になって。
 早退して、公園に向かっている。


 道を曲がり、公園の桜の樹。


 悠斗は見えなくて。
 ――――……代わりに、六人位の大人の姿。


 ……言ってた、樹の医者って奴か。あとはそれを頼んだ役所の人とかそんな感じかな……。
 脚立で木に登ってみたり、何やら色々調べてる。
 少し離れた、公園の外で、その様子を見守っていたら。


「伊織」

 その声にホッとしながら、視線を向けた。

「悠斗……」
「ごめん。心配してた? 何か――――……飛ばされちゃって。気づいたらここに戻ってた」

 言いながら、悠斗がオレが寄りかかってるガードレールに、同じように寄りかかった。

「ああ。なんか弾いたみたいになったよな?」
「うん。さっきオレ――――……心春に触っちゃったのかもしれない」

「触る? ……触った感覚が、あったのか?」

「ていうかオレ、触れないから、助けられるはずもないんだけど、咄嗟にカーテンどけようとしちゃって……その時、なんか……オレ、伊織にも触った気がするんだけど」
「――――……言われてみると……」

 心春に触れたのと逆の手で、別のものに触れたような。そっちからも、電気みたいなのが来てて。痛みで感触はよく分からなくて、カーテンだと思ってたけど……。

「オレ、物には触れないんだよ。今も、よりかかってるように見えるかもだけど、浮いてるだけだし。でも、なんか。……あの時、2人に触れたような気がして」


 そういえば――――……。
 父さんに、触れないようにって、言われたっけ……。

 絶対に、触れない、とかではないのかもしれない。


「もしかしたら、何かで触る事は出来るけど…… オレとお前が触れると――――……ああいう事になるのかも」

「そうなのか? んー……よく分かんないね。まあいいや。触らないでおこうか。……なんか、心春、あの時痛がってたし」

 悠斗は、苦笑い。

「伊織も痛かった?」
「んー……静電気の強いの、みたいな感じ」

「そっか……」


 ふーん、と、頷いて、悠斗が、オレを見つめた。





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