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2巻 2科分裂編
第2話 ②
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☆
なんだろうなぁ。今日は授業時間以外ずっと誰かに見られてた気がする。こんなことを太一たちに話したら自意識過剰な人間だと一笑に付されるんだろうなぁ。
「来週は遠足だなー」
「そういやそうだったな。場所はどこだっけ?」
「東京のどこかだったような」
「そんなに遠出しないんだな」
「あくまで遠足だからな。旅行じゃないから」
下校中の2年生と思われる男子生徒二人の会話が耳に入ってきた。
そうだ、来週は遠足だ。
というか中間試験最終日の翌日なんだよな。遠足と一緒に中間試験の存在まで思い起こされてしまった。
中間試験がズタボロだった人は晴れやかな気構えで遠足に臨めるのか甚だ疑問だ。
「おや、もしかして高坂君か?」
人のこと言えない俺が同級生の中間試験の心配をしていると、背後から声をかけられた。
振り返ると、そこには全く予想だにしない人物が立っていた。
「……満さん?」
その人物とは星川満さん。星川さんの兄であり、類稀なる才能がありながらニートをしている実に惜しい人だ。
今日は本当に色んな人とエンカウントするな。嬉しい人からそうでない人たちまで本当、色々と……。
あ、もちろん満さんは前者だ。
「なんでこんなところに? しかもスーツ姿で」
満さんはスーツをパリッと着こなしており、以前星川さんの家にお邪魔した時の部屋着姿とは印象がまるで異なる。爽やかかつデキる男って感じの風貌だ。
「もしかして星川さんを迎えに?」
にしてもわざわざスーツで来る理由が分からない。
満さんは俺の隣に並び、歩きはじめた。ちょうど帰るところだったらしい。
「違うよ」
満さんは首を横に振った。
「俺、今日からこの学園の非常勤職員になったんだ。事務員としてね」
「ええっ!? でもどうして」
「この前君に諭された後に色々考えたんだ。来年もう一度大学を受験して、大学生活の中で将来自分にできることを探していくことを決めたのさ」
そっか。俺の綺麗事を真剣に受け止めて考えてくれたんだ。
「でもなぜまた事務員を? 社会勉強の一環ですか?」
俺が首を傾げると、満さんは苦笑した。
「それもあるけど、学園長からオファーが来たんだ。学園長とはある事情から知り合いだったんだよ」
学園長と知り合い? 満さんは本当に何者なんだろう?
「朝霧さ――学園長から聞いたよ。先々週、1科対2科のそれぞれの意地とプライドを賭けた戦いが展開されたんだってね」
満さんはなぜか名字を言いかけたところで焦ったような口調でわざわざ学園長と言い直した。
わざわざ言い直さなくても、学園長の名字は既に知ってるから平気なんだけどなぁ。
「そんなたいそうなものじゃありませんよ」
ただ2科というだけで不当な扱いを受ける現状を打破したかっただけに過ぎない。
と、その話題もそこそこに、満さんは表情を引き締めて口を開く。
「事務員というのは建前で、学園長の手伝いが主な目的なんだ。前に能力を覚醒させるドリンクを作った組織についての話をしたよね?」
「はい。警察に特定されているところだとか」
確かその組織は近いうちに淘汰されると聞いたな。もう処分されたのだろうか?
「その組織、実は余裕で存在し続けているんだよ」
「えっ?」
目を見開く俺に、満さんは頭を下げる。
「すまなかった。君に言ったことは嘘なんだ」
「なぜそんな嘘を?」
「学園長に止められていたんだよ。実は俺、数年前まではその組織の一員だったんだ」
「――なっ!? 満さんが!?」
満さんは厳かに頷いた。
衝撃の事実を知ってしまった。満さんが、組織の一員だったなんて……。
「学園長は組織のこともドリンクのこともご存知なんだ」
それだけじゃない。つまり、学園長はドリンクの正体に気がついていながら生徒に配ったというのか?
それ以前に組織の存在をも知っていたのかよ。
「学園長はドリンクを飲むと能力者が出ることを知りながらドリンクを配ったんですか?」
「……学園長を恨まないでくれると助かる」
満さんの台詞から、俺の疑念は正しいと確信した。
ただ、学園長は豪快で大雑把ではあるけど、決して生徒を危険な目に遭わせたり、不安を駆りたてるようなことをする人じゃない。
「きっとそうせざるを得ない理由があるんですよね? だったら恨むことなんてできません」
他の面々がこの事実を知ったらどう思うかは定かではないけど、少なくとも俺は、現段階では学園長を恨むレベルではない。
「そう言ってくれるとありがたい」
俺の回答を聞いた満さんは微笑を漏らした。
「さっき例の組織がまだ存在すると言ったけど、その組織を撲滅させられる希望を生み出すことが学園長の策略なんだ」
「じゃあ、あのドリンクは学園長が手配したものだったんですか?」
であれば学園長が強引に生徒に配ったのも合点がいく。
「それは違う。ドリンクを学園に送ったのは別の誰かだ。犯人は特定できてないけど、恐らくは貴津学園の生徒だろうね」
しかし満さんは首を横に振って俺の考えを否定した。
貴津学園の生徒がドリンクを手配した? つまりその生徒は……。
「合点がいってるようだね。そう、その生徒は組織の一員である可能性が非常に高い」
この学園に、組織に関与している生徒がいる。それってかなり危険なんじゃないのか?
「この学園には1科と2科、二つの学科があるんだね」
と、ここで貴津学園の学科の話題に移る。俺は満さんに頷いた。
「それぞれの学科に生徒の性質などの違いがあることも学園長から聞いた」
普通の男女共学の1科と陰キャ男子校状態の2科。
この学園は共学となっており、事実、学園の三分の一は女子だけど、果たして2科は共学と呼べるのだろうか? 学園内という同じ敷地にこそいるけど、共に学んでないよね。
「変わったシステムですよね」
溜息を吐くと、満さんの口から思いがけない情報が飛び出した。
「この学園、創立当初は理系の男子校だったらしいよ」
「そうだったんですか? 知りませんでした」
学園の沿革まで追ってないので完全に寝耳に水だった。
「つまり、2科の方が元々の学園の姿だったんだ。ただ、それでは色々と支障が出たので男女共学にして学科制も取り入れたわけだね」
学園の主体は2科の方だったのか。ずっと1科だと思ってたよ。
1と2だったら1の方が優先度が上だと思うんだけどな。
「蓋を開けてみれば、新参の1科の方が生徒会や部活動などで学園を盛り立てているんでしょう? この結果を踏まえれば学科を二つに分けている現行の制度は成功と言えるよ」
2科の生徒しかいなければ活気が一切なく、暗い校風だったことだろう。そういう意味では学科を二つに分けて共学にしたのは学園をよくしたのだとは思う。学園長の思惑通りなのだろう。
ただ、その代償として失った2科の発言力、学内地位はあまりにも大きすぎる。
なんだろうなぁ。今日は授業時間以外ずっと誰かに見られてた気がする。こんなことを太一たちに話したら自意識過剰な人間だと一笑に付されるんだろうなぁ。
「来週は遠足だなー」
「そういやそうだったな。場所はどこだっけ?」
「東京のどこかだったような」
「そんなに遠出しないんだな」
「あくまで遠足だからな。旅行じゃないから」
下校中の2年生と思われる男子生徒二人の会話が耳に入ってきた。
そうだ、来週は遠足だ。
というか中間試験最終日の翌日なんだよな。遠足と一緒に中間試験の存在まで思い起こされてしまった。
中間試験がズタボロだった人は晴れやかな気構えで遠足に臨めるのか甚だ疑問だ。
「おや、もしかして高坂君か?」
人のこと言えない俺が同級生の中間試験の心配をしていると、背後から声をかけられた。
振り返ると、そこには全く予想だにしない人物が立っていた。
「……満さん?」
その人物とは星川満さん。星川さんの兄であり、類稀なる才能がありながらニートをしている実に惜しい人だ。
今日は本当に色んな人とエンカウントするな。嬉しい人からそうでない人たちまで本当、色々と……。
あ、もちろん満さんは前者だ。
「なんでこんなところに? しかもスーツ姿で」
満さんはスーツをパリッと着こなしており、以前星川さんの家にお邪魔した時の部屋着姿とは印象がまるで異なる。爽やかかつデキる男って感じの風貌だ。
「もしかして星川さんを迎えに?」
にしてもわざわざスーツで来る理由が分からない。
満さんは俺の隣に並び、歩きはじめた。ちょうど帰るところだったらしい。
「違うよ」
満さんは首を横に振った。
「俺、今日からこの学園の非常勤職員になったんだ。事務員としてね」
「ええっ!? でもどうして」
「この前君に諭された後に色々考えたんだ。来年もう一度大学を受験して、大学生活の中で将来自分にできることを探していくことを決めたのさ」
そっか。俺の綺麗事を真剣に受け止めて考えてくれたんだ。
「でもなぜまた事務員を? 社会勉強の一環ですか?」
俺が首を傾げると、満さんは苦笑した。
「それもあるけど、学園長からオファーが来たんだ。学園長とはある事情から知り合いだったんだよ」
学園長と知り合い? 満さんは本当に何者なんだろう?
「朝霧さ――学園長から聞いたよ。先々週、1科対2科のそれぞれの意地とプライドを賭けた戦いが展開されたんだってね」
満さんはなぜか名字を言いかけたところで焦ったような口調でわざわざ学園長と言い直した。
わざわざ言い直さなくても、学園長の名字は既に知ってるから平気なんだけどなぁ。
「そんなたいそうなものじゃありませんよ」
ただ2科というだけで不当な扱いを受ける現状を打破したかっただけに過ぎない。
と、その話題もそこそこに、満さんは表情を引き締めて口を開く。
「事務員というのは建前で、学園長の手伝いが主な目的なんだ。前に能力を覚醒させるドリンクを作った組織についての話をしたよね?」
「はい。警察に特定されているところだとか」
確かその組織は近いうちに淘汰されると聞いたな。もう処分されたのだろうか?
「その組織、実は余裕で存在し続けているんだよ」
「えっ?」
目を見開く俺に、満さんは頭を下げる。
「すまなかった。君に言ったことは嘘なんだ」
「なぜそんな嘘を?」
「学園長に止められていたんだよ。実は俺、数年前まではその組織の一員だったんだ」
「――なっ!? 満さんが!?」
満さんは厳かに頷いた。
衝撃の事実を知ってしまった。満さんが、組織の一員だったなんて……。
「学園長は組織のこともドリンクのこともご存知なんだ」
それだけじゃない。つまり、学園長はドリンクの正体に気がついていながら生徒に配ったというのか?
それ以前に組織の存在をも知っていたのかよ。
「学園長はドリンクを飲むと能力者が出ることを知りながらドリンクを配ったんですか?」
「……学園長を恨まないでくれると助かる」
満さんの台詞から、俺の疑念は正しいと確信した。
ただ、学園長は豪快で大雑把ではあるけど、決して生徒を危険な目に遭わせたり、不安を駆りたてるようなことをする人じゃない。
「きっとそうせざるを得ない理由があるんですよね? だったら恨むことなんてできません」
他の面々がこの事実を知ったらどう思うかは定かではないけど、少なくとも俺は、現段階では学園長を恨むレベルではない。
「そう言ってくれるとありがたい」
俺の回答を聞いた満さんは微笑を漏らした。
「さっき例の組織がまだ存在すると言ったけど、その組織を撲滅させられる希望を生み出すことが学園長の策略なんだ」
「じゃあ、あのドリンクは学園長が手配したものだったんですか?」
であれば学園長が強引に生徒に配ったのも合点がいく。
「それは違う。ドリンクを学園に送ったのは別の誰かだ。犯人は特定できてないけど、恐らくは貴津学園の生徒だろうね」
しかし満さんは首を横に振って俺の考えを否定した。
貴津学園の生徒がドリンクを手配した? つまりその生徒は……。
「合点がいってるようだね。そう、その生徒は組織の一員である可能性が非常に高い」
この学園に、組織に関与している生徒がいる。それってかなり危険なんじゃないのか?
「この学園には1科と2科、二つの学科があるんだね」
と、ここで貴津学園の学科の話題に移る。俺は満さんに頷いた。
「それぞれの学科に生徒の性質などの違いがあることも学園長から聞いた」
普通の男女共学の1科と陰キャ男子校状態の2科。
この学園は共学となっており、事実、学園の三分の一は女子だけど、果たして2科は共学と呼べるのだろうか? 学園内という同じ敷地にこそいるけど、共に学んでないよね。
「変わったシステムですよね」
溜息を吐くと、満さんの口から思いがけない情報が飛び出した。
「この学園、創立当初は理系の男子校だったらしいよ」
「そうだったんですか? 知りませんでした」
学園の沿革まで追ってないので完全に寝耳に水だった。
「つまり、2科の方が元々の学園の姿だったんだ。ただ、それでは色々と支障が出たので男女共学にして学科制も取り入れたわけだね」
学園の主体は2科の方だったのか。ずっと1科だと思ってたよ。
1と2だったら1の方が優先度が上だと思うんだけどな。
「蓋を開けてみれば、新参の1科の方が生徒会や部活動などで学園を盛り立てているんでしょう? この結果を踏まえれば学科を二つに分けている現行の制度は成功と言えるよ」
2科の生徒しかいなければ活気が一切なく、暗い校風だったことだろう。そういう意味では学科を二つに分けて共学にしたのは学園をよくしたのだとは思う。学園長の思惑通りなのだろう。
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