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1月 3
しおりを挟むルピナスは思いだしながら言葉を紡ぐ。
「えっと・・・不思議そうにしてた、かな・・・?」
「なるほど。今のルピナスさんみたいに思いだそうとしていたのかもしれませんね」
「え・・・?」
ボタンは微笑みながら、見守るように、背中を押すように続ける。
「アスターさんは誰にでも、手の臭いを嗅ぐ事が出来るような方じゃないです。少なくともわたくしはルピナスさん以外にしているのを見たことありませんわ」
「・・・・・・っ!」
ルピナスはだんだん顔が赤く染まっていく。
「ルピナスさんなら、もうわかっていると思います」
「・・・うん、そうだね。ありがとうボタンちゃん!」
何で、こんなに不安になっちゃったんだろう・・・少し考えてから、一つの結論に思いつき、ルピナスは更に赤くなった。
「ルピナスさん?」
ボタンが心配そうに聞いてきたので、ルピナスは仕返しとばかりにボタンに聞く。
「で、それは何の香りの香水?」
「えっと・・・スウィート・・・リス・・・です」
「ボタンちゃん?」
「マッセモリーの・・・す、スウィートイベリスですぅ・・・」
ボタンは真っ赤になりながら教えてくれた。ルピナスは少しイタズラのように笑って告げる。
「イベリスさんからのプレゼントなんだ?」
「・・・・・・はい」
「ふふっ!良かったね」
真っ赤になりながら嬉しそうにボタンは笑った。ラブラブだ。
ボタンは更に興奮気味に続けた。
「わ、私、家の事を知ってほしくて、お茶のセットをあげたんです!・・・そしたら、既に勉強していらして、とても詳しかったんです!」
「おぉ!!」
「私、本当に嬉しかったです!」
あぁ、入学式あんなに引っ込み思案だったボタンがこんなに強くなった。
励ましていたあの頃と違い、ルピナスが励まされた。
イベリスがいい人で良かったとルピナスはホッとした。と、同時に不思議な違和感を感じた。
誰かに忠告された事を思いだしたからだ。
しかし、誰にどんな事を言われたのか、ルピナスは思い出せなかった。
「ごめんね聞こえちゃった」
ボタンが戻った後、登校してきたのはヒイラギだった。
西側の階段を上がってきたようだ。通常、寮は学校の東側にある為、登下校時は、東側の階段を使う生徒が大半なのだ。
「ううん、平気」
ルピナスは首を横に振る。
少し驚いただけだ。話は終わり、ボタンは既に戻っている。
「ルピナス・・・普段から帽子被ってた方がいいよ」
「え?」
「あ、まだ知らなかった?キミの髪がはねると能力が発動するんだよ。魅了の能力持ちだね。6月の体育祭とか、9月の収穫祭とか、心あたりない?」
「あ・・・」
アスター君が言ってたな帽子被れって・・・
ルピナスは首を振るった時にハネた髪を手櫛で直す。
「後で聞いたけど、カエデが収穫祭で帽子使ったのはそのせいだね。イヤ、本当にすごい能力だよ。僕が盾の能力じゃなかったら自分の本当の気持ちも忘れて君に惹かれていたんだろうね」
「・・・・・・じゃあ、あの人
「その人、同属性でしょ?」
「・・・何で、そう思うの?」
ルピナスは理解出来ず、わからなくて聞いたが、ヒイラギは答えずに続ける。
「なら、能力は互いに打ち消し合う。お盆休み、君が無傷だったのがその証拠だ」
「・・・・・・そっか」
不安なような、安心なような、何処か納得した自分を感じてルピナスは頷いた。ヒイラギにはどこか見透かされてしまう。
「夢とか占いに興味があるのはいいけど、自分の本当の気持ちや感情をまず大事にしないといけない」
何時ものニコニコ笑顔を消し、忠告されるように告げられて、ルピナスは驚く。
「ヒイラギ君・・・」
「ごめん、ちょっと言い方キツかった?」
「ううん、平気!ありがとう」
ヒイラギは何時もと違い、何処か切な気に笑っている。
「本当にごめん。・・・僕は中立でいなきゃね」
「中立?」
ヒイラギは呆けているルピナスを残して教室に向かった。ルピナスは疑問に思ったが、ゆっくり教室に足を進めた。
廊下に戻ると、教室迄の道にアスターがいた。
「ルピナス!!」
「あ、アスター君!?・・・盗み聞きして
「違う、ヤマブキに止められた!」
「そっか・・・」
アスター君は嘘の着けない人だ。私だって4月から入学して、学校も寮も一緒じゃない!段々わかってくる。アスター君は単純でわかりやすいタイプだ。
「・・・相談終わったか?」
アスターは気まずそうだ。聞かない方が良いのはわかっている。でも聞かずにはいられなかったと眼が言ってる。
「あ、うん」
内容を聞かれたくなかっただけで、相談が終わった終わらないは別に聞かれてもかまわなかった。
私も目の前でボタンちゃんだけを誘った事を反省する。
「オレの事も、頼ってほしい・・・」
ルピナスの眼にはアスターから耳と尻尾が見えた。怒られた犬のように下に下がっているように感じた。
「・・・・・・!」
「・・・ルピナス?」
心配そうに覗きこまれてルピナスはガマン出来なくなった。
「・・・ごめん。もう言わせて・・・!アスター君可愛い!!ごめんね、心配させて!」
背伸びしてわしゃわしゃとアスターを撫でる。
「な、撫でるな!可愛いって言うな!」
そう言いながら足を曲げて屈んでくれた。
「・・・じゃあ、約束して?」
「約束?」
俯きながらルピナスは止まり、口を開く。アスターはそのままの体勢で答える。まるで円陣みたいだと思った。
「無茶しないで」
「・・・おぅ」
アスターは返事をする。
「私の事も信じて」
「・・・おぅ!!」
アスターは力強く返事をする。
「勉強頑張って」
「・・・・・・・・・・・・おぅ」
アスターは自信無さそうに小さく返事をする。
「・・・目移りしないで・・・」
「え?」
最後に耳元で小さく囁かれてアスターは固まった。
「はい!もう平気。約束だからね!」
ルピナスは手を離し、何事も無かったかのように、にっこり笑う。
「・・・・・・おぅ?」
アスターはなんとか返事をし、ルピナスはいつもと変わらない様子で教室へ急ぐ。
「ほら、行くよ!先生来ちゃう!」
「ちょっと待てって!!」
ルピナスはアスターに振り替えって言った。
「私、アスター君の事信じてるからね」
私、アスター君を信じる。好きな人を信じるよ。
アスター君は嘘をつかない。それに、私の片想いだとしても、今はまだ好きでいさせてほしい
廊下で真っ赤になりながら硬直しているアスターにフクジュ先生が叱るのはこの数分後になる。
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