霊媒体質 九条遙加の厄難 ー学生時代編ー

柿村 呼波

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第1章 高校編

青いヒカリ3

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 如月と九条は部室代わりに使っている第2音楽準備室で昼食を取っていた。
本来なら学校側から部室を与えられるはずなのだが、空き部屋がないという大義名分のもと半ば物置部屋と化していた第2音楽準備室を使うことになった。

教室棟と離れた場所にあり尚且つ蜘蛛の巣が張っていた第2音楽準備室は如月の手によって食事も出来る清潔な空間へと整えられた。
実際に掃除したのは如月家から依頼を受けた清掃業者だったことは部長である如月京香しか知らない。

 両手で抱えるように持っていたパンを食べ終わった九条は如月の弁当を覗き込んだ。

「部長~、そのおいしそうな卵焼きお腹を空かせた可哀想な私に譲ってくれない?」

どうやら買ったパンだけでは足りなかったようだ。細身の体のどこにそんなに入っていくのかは謎である。

「いいけど、その代わり私の質問に答えてくれる」

「いいよー、じゃ頂きます!」

お嬢様である如月の弁当はいつも如月家お抱えの料理人によって作られている。

「部長のお弁当美味しいね。それで質問って何?」

脳天気に答えた九条に如月は淡々と質問を始めた。

「遙加が覚えてたらでいいんだけど、自分で言ったことが本当になったことってない? 別に大きなことじゃなくてもいいんだけど」

「うーん…………  子供の頃のことでもいい?」

「もちろん」

「えっと、小学校低学年の頃だと思うんだけど、いつものように家族で親戚の家に車で行った時のことなんだけど……  部長もう一つ卵焼き頂戴!」

「はい、どうぞ」

「ありがとう!」

「それで、車に乗ってどうしたの?」

「あ、そうだった。それでその日はしとしと雨が降ってたんだ。クリーム色のカローラの後部座席の左側に座って外を見てたんだ。車は3車線あるバイパス道路の真ん中を走っていたんだけど左側をバイクが車の隙間を抜けるように走って行ったんだよね。その時に『あのバイク転ばなきゃいいな』って思ったの。そうしたら次の信号の手前でそのバイクが倒れてて、『あっ、本当に転んでる』ってことがあったよ」

「それその後どうなったのか知ってる?」

「ううん、知らない。乗ってた車はそのまま走っていっちゃったから」

「そっか、その後にもそういうことってあった?」

「あったよ! 小さいことだけど」

「教えてくれる」

「いいけど、それを聞いて部長に何かいいことあるの?」

「いやいや、遙加も自分の霊媒体質がどんなものなのか知りたいでしょ」

「そうなの、多分そんなに気にして貰うほどのことでもないと思うんだけど。さっきも言ったけど、16年半生きててお化けとか見たことないよ」

「まあ、いいから話してみてよ」

「うん、じゃあ大した事じゃないけど聞いてくれる? 
 ちょっと前なんだけど、フィギュアスケートを達也と一緒に見てた時の話ね」

「達也って遙加のバンドのギターの烏星達也えぼしたつやのこと? ご近所なんだっけ」

「そう、小学生の時に近所に引っ越してきたんだ。親同士が仲良くなったから自然と私たちも一緒に遊ぶようになったんだ」

「そうだったんだ。遙加相手じゃ烏星も大変だっただろうね。その点は同情するわ」

「達也が大変? どういうこと? まぁいいや。それである選手が優勝間違いなしって言われてたんだけど、フリーを滑ってる時に私が『転ぶよ』って言ったら本当に転んじゃったの」

「ほら、やっぱり直前だけど予知してるじゃない。普通はそんな事ないのだよ、遙加くん」

「それでね続きがあって」

「えっ、続きがあるの?」

「そう。少ししてから『もう1回転ぶよ』って言ったら達也は『そんな事ないだろう』って言ったんだけど……」

「まさかもう1回転んだの?」

「そのまさかで本当に転んじゃったの。もし確かめたかったらこの前の冬のことだから達也も覚えてると思うから、確認してみて」

「分かった。でも確認はいらないわ。他にも何か変なことなかった?」

「そういえば中学の時に変な子がいたんだ」

その時如月はこう思った。
『きっと遙加の方が変わってると思うけど、取り敢えず話を聞いてみるか』と。

すると、昼休みが終わりを告げるチャイムが鳴った。

「遙加、その話はまた今度聞かせてね、よろしく」

「了解! 卵焼き美味しかったよ、ありがとう、また食べたいな」

「それならまた明日、一緒にお昼食べようよ。遙加の明日のお弁当は私に任せて」

「やったー。部長最高!」

簡単に買収される遙加であった。

二人はだいぶ話に夢中になっていたようだった。10分後には午後の授業が始まってしまうため二人は慌てて教室へと戻っていった。


 こうして九条遙加は図らずも自分が霊媒体質であることを知ることになったのだった。
これから起こる様々な厄難と呼ばれる災難に遭うとはこの時は思ってもいなかった。

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