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第1章 高校編
春ライブ
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海岡高校2年生軽音楽部のメンバーは学年末試験を終え全員が無事進級できることが決まった。
先輩達は数日前に一足先に卒業した。何故か学年を問わず成績だけは良い軽音楽部。先輩達も例に漏れることはなく皆、希望の進路へと向かっていった。こんな事も、一部教師による軽音楽部廃部計画を阻止する理由の1つになっていたりする。
ブルーローズのメンバー+1名は楽器屋さん主催の春休みライブに向けて最後の仕上げをしていた。ライブ前ということもあり今日は久し振りに如月邸ではなく、楽器屋さんのスタジオで練習していた。
「やっぱり、この狭いスタジオもいいね」
「そうだな、色々と思い入れもある場所だからな」
「3人でインストバンドだった頃を思い出すよ」
男子3人がしみじみと話しているのに男心を全く理解しない遙加が話に入ってきた。
「ねえ、早く練習しよう! 時間なくなっちゃうよ」
3人はいつものことかと顔を見合わせてから、それもそうだと練習を始めた。
ブルーローズは今回のライブ出演で高校生として出演するのは最後となる。言わずもがな如月のプロ化計画により受験勉強優先にするためだ。
しかし、如月が鬼の所業はこれだけではなかった。それはこの言葉に込められている。
「受験勉強はもちろんだけど、演奏の腕が鈍っては駄目よ。来年の春にはまたライブ活動開始する予定だからみんなそのつもりでね。じゃ、よろしく!」
と言って颯爽と立ち去った。言う方は簡単である。
それに彼女は才女だから普通に勉強するだけで志望大学に合格するのは確実である。バンドのメンバー、特に男子3人は男の面子にかけて志望校に合格できないことなどあってはならないのだ。浪人なんてしようものなら如月は必ずメンバーチェンジをちらつかせるだろう。バンドのことには血も涙もないあの如月なら。彼女の最優先は九条遙加なのだから。
強い絆で結ばれた男子3人は来年の春、合格した後如月にどうしても言いたい言葉があった。
『ほら、大したことなかったぜ大学受験なんて。俺たちに無理なことなんてないんだからな、どうだ』と。偶には如月を上から目線で見たい男子達だった。
春休みライブはどのバンドも新曲を演奏したこともあり、いつもよりも更に盛り上がりを見せていた。どのバンドの固定ファンも増えつつあるのを肌で感じられた。好きな時に見られるネット配信もいいが、やはり生音は体ごと音楽を感じられるところが癖になるのだ。
ブルーローズの遙加の歌声がいつになく心に響いたのは、如月が身内贔屓をしているからではない。
「遙加調子良さそうね」
「うん、最近は体調もいいし気持ち悪いものにも遭遇しないからかな」
「あれからもう寒気を感じることはないの?」
「……そういえば……ないかも!」
「よかった、本当に」
その話を聞いていたリーダーの大平修平が面白い情報があると言いだした。
「生き霊飛ばしてた速水玲那、仕事で最近海外へ行ってるらしいぞ」
「まさかモデルの仕事で?」
「そのまさからしい。九条が体調悪かったのいつ頃までだか覚えてるか」
「えーと、2月の初めくらいまでだったと思うんだけど……多分」
「やっぱりな……」
「?????」
遙加は何がやっぱりなのか分からず困惑顔。
「大平くん、何がやっぱりなのよ」
対照的に眉間に皺を寄せた如月は何とも言えない迫力があった。
「あー、それな。前に速水玲那がモデルの仕事してるって話したの覚えてるか」
「そう言えば以前にそんなこと言ってたわね。それがどうしたの」
「どうやら大物カメラマンと一緒に仕事してるらしいんだよ。そのカメラマンが出す写真集にモデルとして声かけられたって話だ、2月の初めに」
「そうなんだ、それどこ情報?」
「まあ、どこかは言えないけど確かな情報だぜ」
「そうなんだー、親の力を使ったのかー」
「何らしくない話し方してんだよ、しかも棒読みとかないだろうが」
「まあ、だいたいどこの情報か分かったから安心したわ。情報源は大丈夫みたいね」
「まあな。夏には写真集も出るらしいから、紙も電子書籍でも出るらしいぞ」
「そう、結構ちゃんとした感じなんだ……」
「まあ、そんなところかな。速水玲那の応援はしないけど、そのカメラマンの写真集は売れてくれるといいな」
「そうね、うちのバンドにとってもその方がいいわね。私も彼女の応援は全くする気はないけど」
「あのー、どうして写真集が売れるとうちのバンドのためになるの?」
それを聞いた大平と如月は揃ってため息をついた。
「あのね遙加、あなたに生き霊が飛んで来なくなるからよ。それ以外にないでしょ」
「そうだぜ九条、少しは自分の体質のこと理解しろよ。良いものも悪いものも引き寄せるんだから」
「はーい……。なんだか2人とも私のお兄さんとお姉さんみたいだね」
「確かに、あながち間違ってないな」
「そうね間違ってはいないわね」
2人ともその件に関しては否定しなかった。
「ところで遙加、最近他に変わったことはなかったの」
「変わったこと? 特には思い当たらないけど、どうして?」
「あなた自分の体質忘れたの? お守りだって万全じゃないんだから姉(仮)としては心配して当然でしょ」
「ありがとう、お姉様(仮)。でもそう言えばそんな大した事じゃないけどお彼岸でお墓参りした時に、ちょっと変なことがあったよ」
「……やっぱりあるんじゃない……で、何があったの」
その場にいた大平も真剣な目になった。
「お彼岸に家族でご先祖様のお墓参りに行った時のことなんだけど、その日は天気も良くて穏やかな日だったの。なのに墓地の中のある場所だけに突然強い風が吹いてそこにあった卒塔婆がバタンって倒れてたってことがあったよ」
「それは遙加の家とは関係ないお墓だったのかしら」
「うん、うちとは全く関係ないお家のお墓だったよ」
「なあ九条、その風はその場所だけに吹いたって言うけど、そこの墓は誰かが来た形跡があったかどうか覚えてるか」
「うん、卒塔婆は綺麗だったしお花も備えてあったと思うけど、どうして?」
「いや、墓参りにこないことにご先祖さまが怒ったのかと思ってさ」
すると如月が重々しく話し出した。
「そのお墓がどうとかじゃなくて、きっとそれ、遙加に気づいて欲しかったのではないかしら。遙加に気付いた霊がここにいるよアピールしたんじゃないかと思うのだけど……」
「えー、そんなことされても私そういうの見えないし……。でもその時少しだけ私の周りにフワッと風が吹いた感じはあったかな……。あれ気のせいじゃなかったんだ」
「そういうことってよくあるの?」
「そういうことってフワッと吹く風のこと?」
如月は大きく頷いた。
「それなら偶にあるかな。でもあんまり気にしないことにしてる」
大平と如月は顔を見合わせた。
「九条、これからは霊関係で何かあったら九条さんと俺たちにちゃんと話せ。俺たちはプロを目指す仲間だろ」
「そうだね、仲間か……ありがとう」
「如月もな」
「当然よ」
しかしお墓での出来事に続きがあるなどとは、3人はまだこの時は知る由もなかった。
先輩達は数日前に一足先に卒業した。何故か学年を問わず成績だけは良い軽音楽部。先輩達も例に漏れることはなく皆、希望の進路へと向かっていった。こんな事も、一部教師による軽音楽部廃部計画を阻止する理由の1つになっていたりする。
ブルーローズのメンバー+1名は楽器屋さん主催の春休みライブに向けて最後の仕上げをしていた。ライブ前ということもあり今日は久し振りに如月邸ではなく、楽器屋さんのスタジオで練習していた。
「やっぱり、この狭いスタジオもいいね」
「そうだな、色々と思い入れもある場所だからな」
「3人でインストバンドだった頃を思い出すよ」
男子3人がしみじみと話しているのに男心を全く理解しない遙加が話に入ってきた。
「ねえ、早く練習しよう! 時間なくなっちゃうよ」
3人はいつものことかと顔を見合わせてから、それもそうだと練習を始めた。
ブルーローズは今回のライブ出演で高校生として出演するのは最後となる。言わずもがな如月のプロ化計画により受験勉強優先にするためだ。
しかし、如月が鬼の所業はこれだけではなかった。それはこの言葉に込められている。
「受験勉強はもちろんだけど、演奏の腕が鈍っては駄目よ。来年の春にはまたライブ活動開始する予定だからみんなそのつもりでね。じゃ、よろしく!」
と言って颯爽と立ち去った。言う方は簡単である。
それに彼女は才女だから普通に勉強するだけで志望大学に合格するのは確実である。バンドのメンバー、特に男子3人は男の面子にかけて志望校に合格できないことなどあってはならないのだ。浪人なんてしようものなら如月は必ずメンバーチェンジをちらつかせるだろう。バンドのことには血も涙もないあの如月なら。彼女の最優先は九条遙加なのだから。
強い絆で結ばれた男子3人は来年の春、合格した後如月にどうしても言いたい言葉があった。
『ほら、大したことなかったぜ大学受験なんて。俺たちに無理なことなんてないんだからな、どうだ』と。偶には如月を上から目線で見たい男子達だった。
春休みライブはどのバンドも新曲を演奏したこともあり、いつもよりも更に盛り上がりを見せていた。どのバンドの固定ファンも増えつつあるのを肌で感じられた。好きな時に見られるネット配信もいいが、やはり生音は体ごと音楽を感じられるところが癖になるのだ。
ブルーローズの遙加の歌声がいつになく心に響いたのは、如月が身内贔屓をしているからではない。
「遙加調子良さそうね」
「うん、最近は体調もいいし気持ち悪いものにも遭遇しないからかな」
「あれからもう寒気を感じることはないの?」
「……そういえば……ないかも!」
「よかった、本当に」
その話を聞いていたリーダーの大平修平が面白い情報があると言いだした。
「生き霊飛ばしてた速水玲那、仕事で最近海外へ行ってるらしいぞ」
「まさかモデルの仕事で?」
「そのまさからしい。九条が体調悪かったのいつ頃までだか覚えてるか」
「えーと、2月の初めくらいまでだったと思うんだけど……多分」
「やっぱりな……」
「?????」
遙加は何がやっぱりなのか分からず困惑顔。
「大平くん、何がやっぱりなのよ」
対照的に眉間に皺を寄せた如月は何とも言えない迫力があった。
「あー、それな。前に速水玲那がモデルの仕事してるって話したの覚えてるか」
「そう言えば以前にそんなこと言ってたわね。それがどうしたの」
「どうやら大物カメラマンと一緒に仕事してるらしいんだよ。そのカメラマンが出す写真集にモデルとして声かけられたって話だ、2月の初めに」
「そうなんだ、それどこ情報?」
「まあ、どこかは言えないけど確かな情報だぜ」
「そうなんだー、親の力を使ったのかー」
「何らしくない話し方してんだよ、しかも棒読みとかないだろうが」
「まあ、だいたいどこの情報か分かったから安心したわ。情報源は大丈夫みたいね」
「まあな。夏には写真集も出るらしいから、紙も電子書籍でも出るらしいぞ」
「そう、結構ちゃんとした感じなんだ……」
「まあ、そんなところかな。速水玲那の応援はしないけど、そのカメラマンの写真集は売れてくれるといいな」
「そうね、うちのバンドにとってもその方がいいわね。私も彼女の応援は全くする気はないけど」
「あのー、どうして写真集が売れるとうちのバンドのためになるの?」
それを聞いた大平と如月は揃ってため息をついた。
「あのね遙加、あなたに生き霊が飛んで来なくなるからよ。それ以外にないでしょ」
「そうだぜ九条、少しは自分の体質のこと理解しろよ。良いものも悪いものも引き寄せるんだから」
「はーい……。なんだか2人とも私のお兄さんとお姉さんみたいだね」
「確かに、あながち間違ってないな」
「そうね間違ってはいないわね」
2人ともその件に関しては否定しなかった。
「ところで遙加、最近他に変わったことはなかったの」
「変わったこと? 特には思い当たらないけど、どうして?」
「あなた自分の体質忘れたの? お守りだって万全じゃないんだから姉(仮)としては心配して当然でしょ」
「ありがとう、お姉様(仮)。でもそう言えばそんな大した事じゃないけどお彼岸でお墓参りした時に、ちょっと変なことがあったよ」
「……やっぱりあるんじゃない……で、何があったの」
その場にいた大平も真剣な目になった。
「お彼岸に家族でご先祖様のお墓参りに行った時のことなんだけど、その日は天気も良くて穏やかな日だったの。なのに墓地の中のある場所だけに突然強い風が吹いてそこにあった卒塔婆がバタンって倒れてたってことがあったよ」
「それは遙加の家とは関係ないお墓だったのかしら」
「うん、うちとは全く関係ないお家のお墓だったよ」
「なあ九条、その風はその場所だけに吹いたって言うけど、そこの墓は誰かが来た形跡があったかどうか覚えてるか」
「うん、卒塔婆は綺麗だったしお花も備えてあったと思うけど、どうして?」
「いや、墓参りにこないことにご先祖さまが怒ったのかと思ってさ」
すると如月が重々しく話し出した。
「そのお墓がどうとかじゃなくて、きっとそれ、遙加に気づいて欲しかったのではないかしら。遙加に気付いた霊がここにいるよアピールしたんじゃないかと思うのだけど……」
「えー、そんなことされても私そういうの見えないし……。でもその時少しだけ私の周りにフワッと風が吹いた感じはあったかな……。あれ気のせいじゃなかったんだ」
「そういうことってよくあるの?」
「そういうことってフワッと吹く風のこと?」
如月は大きく頷いた。
「それなら偶にあるかな。でもあんまり気にしないことにしてる」
大平と如月は顔を見合わせた。
「九条、これからは霊関係で何かあったら九条さんと俺たちにちゃんと話せ。俺たちはプロを目指す仲間だろ」
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