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第1章 繰り返す女
それは私のものだから
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10月22日 午前10時
鮫島李花は目が覚めてすぐ時計を確認した。この部屋にあるデジタル式の電波時計は日時だけでなく温度や湿度までも表示してくれる優れものだ。ちなみに今日の天気は晴れ。部屋の気温は22度・湿度は48%、部屋の中は快適に保たれている。
彼女は見慣れた景色に安心し間違いなく現在に戻ってきたことを再度確認して身支度を整え、食事を取るために食堂へと向かった。
ダイニングルームではなく食堂と呼ぶのは父の拘りからだった。古くから鮫島家に仕える専属料理人は鮫島一家のためだけに料理をしていた。とても腕の良い料理人を父である鮫島壮一郎が惚れ込み何度も足を運び専属料理人に迎えたのだ。すでに鮫島グループの社長だった鮫島壮一郎の三顧の礼に料理人の沢村はその熱意に折れたのだった。
そんな経緯があり初めは食堂ではなくレストランと呼びたかったようだが、沢村にそれだけは止めて欲しいと頑なに断られたこともあり食堂に落ち着いた。
その後社長のプライベートな客人に沢村の料理を出したところ痛く気に入られてまた食べたいと催促されるという事態が続いた。しかし鮫島グループの社長として精力的に動いていた壮一郎はプライベートな時間でさえ自由にすることが難しかった。そこで沢村の同意も得て、とうとう広い敷地内に小さなレストランを作ってしまったのだった。レストランなので最低限の人員増加は認められ厨房にも一人若い料理人が加わった。
最終的に鮫島壮一郎の望んでいたプライベートレストランが自宅敷地内に本当に出来てしまったのだ。社長恐るべし、である。
沢村が作った料理はプライベートレストランから自宅の食堂に運ばれる。料理人が二人になったので鮫島家の人間はいつでも料理人の作った料理を食べられるようになったのだった。
この食堂に運ばれてくる料理は家庭料理だけでなく、フランス料理やイタリア料理などバラエティに富んでいるので飽きることはない。羨ましい限りである。
表向きは巨大グループ企業の社長兼会長の健康管理のために専属料理人がいることになっているが、本当の理由は素性のわからないものを口に入れないためである。鮫島グループの会長はいつどんな手段で命を狙われてもおかしくはないからだ。
昼食には少し早い時間なのにも関わらずテーブルには料理が用意されていた。お嬢様である鮫島李花は何も伝えていないのに使用人たちの仕事はいつも抜け目がない。流石、我儘お嬢様に文句を一度も言わせたことの無いバトラー佐伯である。
「おはようございます。お飲み物は如何なさいますか?」
「そうね、今日はアールグレイがいいわ」
「畏まりました」
鮫島李花が席に着き、ふと壁にかけてある時計を見ると11時になるところだった。
「紅茶も美味しかったわ、ごちそうさま」
我儘お嬢様は食事を終え、自室に戻り念の為用意しておいたA3サイズの用紙を鍵の付いた机の引き出しから出した。記入された内容を確認し半分に折りグレーのクリアファイルに入れてからバッグの中に忍ばせた。思い立ったらすぐに行動しなければ気が済まない気の短い鮫島李花はすぐにある場所へと向かうことにした。
外出することを佐伯に告げる。
「お車でお送り致しましょうか」
「そうね、いつものハイヤーでいいわ」
「畏まりました」
程なくしてハイヤーが到着した。呼んですぐに来ることから、鮫島家がいかに上客なのかがうかがえる。
「いってらっしゃいませ」
佐伯に見送られながら車に乗り込み行き先を告げると黒塗りのハイヤーは走り出した。
10分程で目的地に到着すると、鮫島李花が運転手に告げた。
「ここで、待っていてくれるかしら。その後この住所の場所まで行ってちょうだい」
運転手にカードを一枚渡して次の予定を告げると、車を降りて大きな建物の中へと入っていった。鮫島李花は役所の入り口を潜ると案内板を確認した後、戸籍課へと向かって早足で歩いた。
以前は公共機関である殆どの役所では土日は閉庁していたが、世の多様化が進み平日だけでは対応しきれなくなっていた。それに加えて国のトップが変わったことで国や地方自治体の仕事もデジタル化が進んだ結果、職員の負担が減るだけでなく同一業務において人員はこれまでより必要なくなった。
これまでならその恩恵によって人員削減していたのだろうが、そうではなくサービスの向上・充実を図るうえで土日も開庁し浮いた人員をそこへと充てたのだった。しかしデジタル化に対応できなかった管理職などは早期退職を迫られた者もいたらしい。時代の流れについていけない者にとっては厳しい時代になってしまった。これからの時代を生き残って行くためには常識と思われていた考え方を改める必要があるようだ。
戸籍課の窓口の前で鮫島李花は二枚の用紙を出した。するとその様子を見ていた職員から声をかけられた。
「お客様お手数をおかけ致しますが、まずこのパネルで目的の用途の書いてある隣の番号にタッチしていただきますと下から用紙が出ます。それをお取り下さい」
言われた通り目の前のパネルのボタンを押し、番号が記載されている小さな用紙を取った。
「順番にお呼び致します。番号が表示されたらそちらにご移動ください」
どうやらすぐには呼ばれない様なので近くの椅子に腰掛けて大人しく順番を待っていた。
モニターに自分の番号が出たのを確認しその窓口へと向かう。
「お願いします」
鮫島李花が差し出したのは離婚届と婚姻届だった。
離婚届は本城幹彦と美里のものだ。
「ご本人様ですか?」
職員から聞かれても物おじする事なく対応する。
「代理の者です、身分を証明できるものもあります」
「確認いたしますので少しお待ちください」
窓口の女性職員はパソコンからデータを呼び出した。そこには確認事項の項目に星印がついているだけでなく、備考欄にも記載があった。
『要注意:本人以外が戸籍関係書類を提出の場合受理後即連絡。課長案件』
女性職員は一瞬驚いたが顔には出さずに鮫島李花の本人確認をした。
鮫島李花の個人情報管理カードをスキャンして本人かどうかの確認をし同一人物と認証された。
婚姻届は本城幹彦と鮫島李花のものだった。
男性は離婚届を提出直後に婚姻届を提出することができる。女性のように100日待機期間などはないのだ。不信感満載の鮫島李花から提出された書類を受け付けたフリをして女性職員はすぐに課長へ連絡をした。グループチャットで緊急案件至急! と送信すれば担当課長が休みでも課長代理が来てくれる。
職員しか知らないことだが、監視カメラによって役所の中は隈無く監視されているため、離婚届と婚姻届を提出した女性の特徴をはっきり説明できなくても複数のカメラがその女が誰であるのかを証明してくれる。却って人による主観が入らないことにより個人を断定しやすくなる。
「離婚届と婚姻届、お預かりいたします」
本来なら記載事項に誤りがないのか簡単に質問などもあるのだが女性職員はそんなことは全てすっ飛ばした。
早急に帰って欲しいので軽く頭を下げて提出者が立ち去るのを待った。
すると、地を這うような女にしてはやけに低い声が聞こえてきた。
「彼は私のものなんだから、誰にも渡さないわ……」
驚いた女性職員はつい提出者である女の顔を見てしまった。
すると鮫島李花は周りに人がいることを全く気にすることなく不気味に笑っていた。それはまるで地獄の底からやって来た悪鬼がやっと獲物を見つけた時のような不気味で歪な顔だった。そして待たせているハイヤーのところまで急いで戻って行ったのだった。
その様子を目の当たりにした女性職員はあまりの不気味さに驚いて声を上げることすらできなかった。人は本当に怖い思いをした時、叫び声どころか体の機能まで停止したように動けなくなるのだ。彼女も余程怖かったのだろう。ほんの束の間だったが息をするのも忘れるほど体の自由を失ってしまったのだ。
鮫島李花は生きながらにして魑魅魍魎の領域へ足を踏み入れてしまったようだ。それ程までに強い執念をその身に抱えているのだ。人の不幸の上に立つ幸せなどありはしないのに。
運転手は存外に早く車の前まで戻ってきた鮫島李花を確認すると、後部ドアを開けて乗車を促した。乗車を確認し、ドアを閉め運転席へと戻る。
「お客様、行き先に変更はございませんか」
「ええ、ないわ」
「畏まりました。……出発いたします」
運転手のその言葉とともに車は目的地へ向けて走り出した。
鮫島李花は目が覚めてすぐ時計を確認した。この部屋にあるデジタル式の電波時計は日時だけでなく温度や湿度までも表示してくれる優れものだ。ちなみに今日の天気は晴れ。部屋の気温は22度・湿度は48%、部屋の中は快適に保たれている。
彼女は見慣れた景色に安心し間違いなく現在に戻ってきたことを再度確認して身支度を整え、食事を取るために食堂へと向かった。
ダイニングルームではなく食堂と呼ぶのは父の拘りからだった。古くから鮫島家に仕える専属料理人は鮫島一家のためだけに料理をしていた。とても腕の良い料理人を父である鮫島壮一郎が惚れ込み何度も足を運び専属料理人に迎えたのだ。すでに鮫島グループの社長だった鮫島壮一郎の三顧の礼に料理人の沢村はその熱意に折れたのだった。
そんな経緯があり初めは食堂ではなくレストランと呼びたかったようだが、沢村にそれだけは止めて欲しいと頑なに断られたこともあり食堂に落ち着いた。
その後社長のプライベートな客人に沢村の料理を出したところ痛く気に入られてまた食べたいと催促されるという事態が続いた。しかし鮫島グループの社長として精力的に動いていた壮一郎はプライベートな時間でさえ自由にすることが難しかった。そこで沢村の同意も得て、とうとう広い敷地内に小さなレストランを作ってしまったのだった。レストランなので最低限の人員増加は認められ厨房にも一人若い料理人が加わった。
最終的に鮫島壮一郎の望んでいたプライベートレストランが自宅敷地内に本当に出来てしまったのだ。社長恐るべし、である。
沢村が作った料理はプライベートレストランから自宅の食堂に運ばれる。料理人が二人になったので鮫島家の人間はいつでも料理人の作った料理を食べられるようになったのだった。
この食堂に運ばれてくる料理は家庭料理だけでなく、フランス料理やイタリア料理などバラエティに富んでいるので飽きることはない。羨ましい限りである。
表向きは巨大グループ企業の社長兼会長の健康管理のために専属料理人がいることになっているが、本当の理由は素性のわからないものを口に入れないためである。鮫島グループの会長はいつどんな手段で命を狙われてもおかしくはないからだ。
昼食には少し早い時間なのにも関わらずテーブルには料理が用意されていた。お嬢様である鮫島李花は何も伝えていないのに使用人たちの仕事はいつも抜け目がない。流石、我儘お嬢様に文句を一度も言わせたことの無いバトラー佐伯である。
「おはようございます。お飲み物は如何なさいますか?」
「そうね、今日はアールグレイがいいわ」
「畏まりました」
鮫島李花が席に着き、ふと壁にかけてある時計を見ると11時になるところだった。
「紅茶も美味しかったわ、ごちそうさま」
我儘お嬢様は食事を終え、自室に戻り念の為用意しておいたA3サイズの用紙を鍵の付いた机の引き出しから出した。記入された内容を確認し半分に折りグレーのクリアファイルに入れてからバッグの中に忍ばせた。思い立ったらすぐに行動しなければ気が済まない気の短い鮫島李花はすぐにある場所へと向かうことにした。
外出することを佐伯に告げる。
「お車でお送り致しましょうか」
「そうね、いつものハイヤーでいいわ」
「畏まりました」
程なくしてハイヤーが到着した。呼んですぐに来ることから、鮫島家がいかに上客なのかがうかがえる。
「いってらっしゃいませ」
佐伯に見送られながら車に乗り込み行き先を告げると黒塗りのハイヤーは走り出した。
10分程で目的地に到着すると、鮫島李花が運転手に告げた。
「ここで、待っていてくれるかしら。その後この住所の場所まで行ってちょうだい」
運転手にカードを一枚渡して次の予定を告げると、車を降りて大きな建物の中へと入っていった。鮫島李花は役所の入り口を潜ると案内板を確認した後、戸籍課へと向かって早足で歩いた。
以前は公共機関である殆どの役所では土日は閉庁していたが、世の多様化が進み平日だけでは対応しきれなくなっていた。それに加えて国のトップが変わったことで国や地方自治体の仕事もデジタル化が進んだ結果、職員の負担が減るだけでなく同一業務において人員はこれまでより必要なくなった。
これまでならその恩恵によって人員削減していたのだろうが、そうではなくサービスの向上・充実を図るうえで土日も開庁し浮いた人員をそこへと充てたのだった。しかしデジタル化に対応できなかった管理職などは早期退職を迫られた者もいたらしい。時代の流れについていけない者にとっては厳しい時代になってしまった。これからの時代を生き残って行くためには常識と思われていた考え方を改める必要があるようだ。
戸籍課の窓口の前で鮫島李花は二枚の用紙を出した。するとその様子を見ていた職員から声をかけられた。
「お客様お手数をおかけ致しますが、まずこのパネルで目的の用途の書いてある隣の番号にタッチしていただきますと下から用紙が出ます。それをお取り下さい」
言われた通り目の前のパネルのボタンを押し、番号が記載されている小さな用紙を取った。
「順番にお呼び致します。番号が表示されたらそちらにご移動ください」
どうやらすぐには呼ばれない様なので近くの椅子に腰掛けて大人しく順番を待っていた。
モニターに自分の番号が出たのを確認しその窓口へと向かう。
「お願いします」
鮫島李花が差し出したのは離婚届と婚姻届だった。
離婚届は本城幹彦と美里のものだ。
「ご本人様ですか?」
職員から聞かれても物おじする事なく対応する。
「代理の者です、身分を証明できるものもあります」
「確認いたしますので少しお待ちください」
窓口の女性職員はパソコンからデータを呼び出した。そこには確認事項の項目に星印がついているだけでなく、備考欄にも記載があった。
『要注意:本人以外が戸籍関係書類を提出の場合受理後即連絡。課長案件』
女性職員は一瞬驚いたが顔には出さずに鮫島李花の本人確認をした。
鮫島李花の個人情報管理カードをスキャンして本人かどうかの確認をし同一人物と認証された。
婚姻届は本城幹彦と鮫島李花のものだった。
男性は離婚届を提出直後に婚姻届を提出することができる。女性のように100日待機期間などはないのだ。不信感満載の鮫島李花から提出された書類を受け付けたフリをして女性職員はすぐに課長へ連絡をした。グループチャットで緊急案件至急! と送信すれば担当課長が休みでも課長代理が来てくれる。
職員しか知らないことだが、監視カメラによって役所の中は隈無く監視されているため、離婚届と婚姻届を提出した女性の特徴をはっきり説明できなくても複数のカメラがその女が誰であるのかを証明してくれる。却って人による主観が入らないことにより個人を断定しやすくなる。
「離婚届と婚姻届、お預かりいたします」
本来なら記載事項に誤りがないのか簡単に質問などもあるのだが女性職員はそんなことは全てすっ飛ばした。
早急に帰って欲しいので軽く頭を下げて提出者が立ち去るのを待った。
すると、地を這うような女にしてはやけに低い声が聞こえてきた。
「彼は私のものなんだから、誰にも渡さないわ……」
驚いた女性職員はつい提出者である女の顔を見てしまった。
すると鮫島李花は周りに人がいることを全く気にすることなく不気味に笑っていた。それはまるで地獄の底からやって来た悪鬼がやっと獲物を見つけた時のような不気味で歪な顔だった。そして待たせているハイヤーのところまで急いで戻って行ったのだった。
その様子を目の当たりにした女性職員はあまりの不気味さに驚いて声を上げることすらできなかった。人は本当に怖い思いをした時、叫び声どころか体の機能まで停止したように動けなくなるのだ。彼女も余程怖かったのだろう。ほんの束の間だったが息をするのも忘れるほど体の自由を失ってしまったのだ。
鮫島李花は生きながらにして魑魅魍魎の領域へ足を踏み入れてしまったようだ。それ程までに強い執念をその身に抱えているのだ。人の不幸の上に立つ幸せなどありはしないのに。
運転手は存外に早く車の前まで戻ってきた鮫島李花を確認すると、後部ドアを開けて乗車を促した。乗車を確認し、ドアを閉め運転席へと戻る。
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