妖精の支配者

shishamo346

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学校へ行こう

様子見ももうそろそろ終わりにしよう

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 それなりの月日を男爵令嬢サリーの元で過ごした。社交とか、色々と覚悟したんだが、裏から手を回されたのか、伯爵オクトの茶会に参加したっきり、お誘いはない。
 いや、伯爵オクトからはちょくちょくあるんだ。最初は大きなものだったが、それからは、俺とオクトだけ、のちっちゃいやつだ。お茶会というよりも、友達の家に遊びに行く、といった感じだな。茶会の招待、という名目で、俺を王都に呼び寄せてるんだよ。
 そして、伯爵の邸宅を出ると、そこには、帝国の騎士団の副団長メッサが馬車でお出迎えである。
「え、騎士団の副団長様が御者やるの? 代わろうか?」
「うううう」
 可哀想に、メッサ、また、いいように使われてるんだな。半泣きしながら、馬車のドアを開けた。そうか、俺は御者やっちゃいけないんだな。
 仕方なく、俺は馬車に飛び乗る。メッサはドアを閉めて、外からがちゃんと鍵をかけてくれる。そんなー、逃げたりしないってのに。
「また、来月」
 見送りの伯爵オクトは、笑顔で手を振ってくれる。
「そうだな、来月も、楽しみにしてるよ」
 不貞腐れる俺は、笑顔なんか見せない。ちくしょー、結局、俺とオクトって、ただの知り合いなんだよな。
 伯爵オクトは、普段はただの一貴族である。普通なんだ。だけど、裏の世界では妖精殺しの伯爵、と恐れられている。その見た目は穏やかなんだが、裏の所業は壮絶だ。一子相伝の方法で、オクトは妖精の魔法が届かない体質を手に入れた。その体質を使って、妖精憑きを殺すのだ。
 妖精憑きは、生まれた時から神の使いである妖精を持って誕生する人だ。妖精憑きは、妖精を操り、魔法を使える。何もないから火や水を出して、風を起こして、大地を耕すという、とんでもないことが出来るのだ。そんな妖精憑きは妖精に守られているから、ただの人は絶対に勝てない。そんな妖精憑きの魔法、伯爵オクトには一切、届かない。結果、オクトは肉弾戦で妖精憑きを叩き伏せるのだ。
 伯爵オクトの手にかかれば、帝国所有の魔法使いのほとんどは倒される。そんなオクトでも、千年に一人必ず誕生する化け物には勝てない。あの化け物の魔法は、オクトにも届くのだ。
 俺は、そんな化け物の元に運ばれている。オクトは絶対に逆らってはいけない化け物の手先だ。表向きは、穏便に俺を王都の邸宅に呼び寄せて、俺の身柄を化け物に差し出しているのだ。
 馬車は皇族様を守る城門の前で一度、止まる。
「メッサ様、どうぞ」
 中に乗っている俺の身分も確認されず、御者であるメッサの顔で中に入れられる。いいのか? 俺の身分を確認とかしなくて。
 俺はまともな恰好をして、貴族である伯爵オクトとキャッキャうふふふと茶会なんかしているが、身分のない貧民だ。絶対に城にいれちゃいけない存在である。
 城の警備は隙がない。城門以外にも、いくつかの穴はある。隠し通路だって存在する。だが、それらはただの人では通り抜けないのだ。城自体、巨大な魔法具である。特定の血筋でなければ、通り抜けることすら出来ないのだ。道順をちょっと間違えただけで、外に放り出されるという。
 そんな完璧な城でも、城門だけは、確認作業一つで潜り抜けられるのだ。きちんと身分とか、入城許可証とか確認しなきゃいけないってのに、それをされないのは、そういう命令が城の中からされているのだ。
 実は一度、この城門で揉めたことがある。その時は、俺一人で行ったんだ。貧民だから身分証もない、入場許可証もない、ということで、門前払いをされたのだ。
 数年、俺は音信不通になっていた。だけど、俺は一か月に一回は、城にいる化け物の元に行かないといけないのだ。
「一応、ハガル様に来たと伝えてくれ」
 行った行ってない、と俺の面談相手である筆頭魔法使いハガルを怒らせると大変だから、そう言ったんだ。
「貴様みたいな貧民の事、伝えるわけがないだろう!!」
 もちろん、普通に門番は俺を蔑んで言い放ったのだ。
 また、これを理由に王都から逃げよう。俺はいい理由が出来た、と喜んで、そのまま帰ろうとしたのだ。
 運悪く、街の見回りから戻ってきた騎士たちや兵士たちとぶち当たった。
 俺は笑顔で手を振って、そのまま通り過ぎようとしたんだ。
「捕まえろ!!」
「逃がすな!!!」
 とんでもな形相で叫ぶなり、俺につかみかかってきた。俺はもう、大人しく連行されたのである。
 その後、門番はこっぴどく叱られたという。
 それからは、城から馬車のお迎えが来ることとなったのだ。ほら、筆頭魔法使いハガルも悪い、と。
 だけど、乗っている馬車があれだ、皇族様が使うやつなんだよな。乗り心地は最高級なんだけど、皇族様の馬車、というだけで、居心地が悪い。汚したりしないように、気を付けよう。
 そうして、俺は城内にある筆頭魔法使いの屋敷の前にぽいっと放り出された。
 逃げたいなー、なんて考えていると、屋敷のドアが勝手に開くんだ。あ、入らないとハガルに叱られる。
 俺は慌てて屋敷に入ると、無情にもドアは閉まって、鍵までかけられた。逃げないよ!!
 この筆頭魔法使いの屋敷は邸宅型魔法具である。帝国の城と同じような特殊な作りをしているという。城の主は皇帝であるが、筆頭魔法使いの屋敷の主は筆頭魔法使い自身だ。ここでは、皇帝といえども好き勝手出来ないという。
 筆頭魔法使いの屋敷に入るだけでも、主の許可が必要だ。許可のない者は、ドアだって開かないという。
 そんな屋敷だが、俺は入るのは簡単だ。ほら、一か月に一回は筆頭魔法使いハガルと面談する約束だから。だけど、出るのは、許可がないから出られない。一度入ると、許可が降りるまで、出られないのだ。だから、入りたくないんだよ!!
 今代の筆頭魔法使いは、千年に一人必ず誕生する化け物妖精憑きだ。契約紋により、皇族の血筋に縛られているが、化け物みたいに頭がいいから、気に入らない皇族だって殺せてしまうのだ。実際、策略を弄して、ハガルは気に入らない皇族を皇族に殺させたのだ。こわっ。
 ご機嫌とりを失敗すると、皇帝だって殺してしまえるのがハガルである。俺だって、いつ、ご機嫌をそこなって、死なないまでも、痛い目にあわされるかわかったもんじゃない。
 屋敷に入れば、無表情の使用人のお出迎えである。会話一つせず、俺を客間に案内してくれる。
 客間の前で俺が止まると、また、勝手にドアが開く。入りたくないなー、なんて黙ってそれを見ている。案内の使用人は、俺が入るまで、ぴったりと俺の後ろで立っている。あれだ、俺が逃げ出したら、人を呼んで、無理矢理、この部屋に放り込むんだろうな。
 逃げられないので、俺は観念して、部屋に入った。俺が入るなり、ぱたんと小さな音をたててドアが閉まった。
 客間、誰もいない。筆頭魔法使いは帝国で二番目の権力者である。忙しいんだよ。時間があいたら、来るんだろうな。
 それまで、茶も菓子もない。以前、使用人が気を利かせてやったら、ハガルが激怒した。ほら、ハガルはお気に入りには、色々とやってあげたいんだ。
 力の強い妖精憑きは感性が妖精寄りである。妖精は、お気に入りは囲って、尽くすんだ。ハガルは、お気に入りには、色々とやってあげたい衝動が強い。俺もまた、ある意味、お気に入りだから、ここにいる間は、色々と尽くしたいんだな。
 気を付けないと、ここに閉じ込められるかもしれないんだよなー。尽くして、そうして、ハガルは最後、囲おうとするんだ。実際、俺の次兄を閉じ込めたんだ。理由をつけて、筆頭魔法使いの屋敷の地下牢を人が快適に暮らせるように改造して、次兄を閉じ込めたんだ。色々とあって、結局、ハガルは次兄を手放したが、今も、ハガルの妖精が次兄の側について守っているという。
 俺も気を付けよう。ハガルの衝動って、読めない。妖精に近いんだけど、俺がよく知っている妖精とは違うんだよな。妖精っというよりも、神寄りなんだろうな。
 待たされるだろうな、と覚悟して、窓の外を眺めていると、バタン、ととんでもない音をたててドアがあけ放たれた。
 誰もが魅了される美貌の人がそこにいた。筆頭魔法使いしか許されない、という派手な色使いの服を着ているのだが、不思議と、似合うんだな。
 綺麗な顔を怒りに歪ませるハガル。あれだ、美人は怒っても綺麗だ。
 俺は座っていないけど、ハガルはいつもの通り、茶を作って、美味しそうな菓子をテーブルに置いて、定位置のようなソファにどっかりと座る。
「生意気な皇族め。絶対に殺してやる」
 こわっ!! ハガルの気に入らないことをやっちゃったんだな。
 筆頭魔法使いハガル、決して短気なわけではない。二回はにこやかに許すのだ。それは、相手が貴族でも平民でも貧民相手でも、である。しかし、三回目は、許さない。とんでもない罰を与えるのだ。
 世間では、ハガルは短気と思われるが、実際はそうではないのだ。ただ、怒らせた時の所業があまりにも恐ろしいので、そう思われてしまうだけだ。
 ほら、俺なんか、ハガルに叱られてばっかりだけど、それだけだよ。王都にいなさい、と命じられていたのに、兄貴と殺し合いの喧嘩して、王都を追い出されて、そのまま出奔しちゃったけど、ハガル、叱るだけだったよ。一か月に一回は面談、という約束だって、旅が楽しくて、数年、すっぽかしたけど、叱るだけだったよ。
 他にも、ハガルに叱られることやったなー。だけど、ハガル、叱るだけだよ。優しいんだよ。ただ、やらかす奴らが悪いだけだ。
 俺がハガルの向かいに座れば、ハガルも笑顔になる。
「今回は、きちんと来ましたね」
「先月は悪かったって。お嬢さんがまた、誘拐されたんだよ」
「聞きました。すっぽかされたと思った時は、あなたを地下牢に閉じ込める準備をして、怒りを鎮めていました」
 危ない危ない!! 話せばわかるけど、その経過が恐ろしい。
 俺は今、男爵家のお嬢さんサリーの、うんと、その、護衛? をやっている。だけど、サリーは大人しく屋敷に閉じこもっていないんだな。いきなりいなくなるの。サリーの身なりは金持ちだ。だから、外に出ると、手癖の悪い奴らに誘拐されたりすんだよ。
 俺がハガルに呼び出された日も、お嬢さんサリーがいなくなって、大変なことになっていた。誘拐犯から身代金の要求の手紙まで送り付けられて、男爵は怒り心頭となっていたのである。
 結局、サリーは無傷で助け出されたが、誘拐した奴らのその後は、よくある話である。
 ハガルの呼び出しをすっぽかしたのは、仕方がない。どっちが大事か、と聞かれれば、誘拐されたサリーだ。ハガルは、きちんと理由を説明して、頭を下げれば許してくれる。

 説明した時、俺は地下牢に閉じ込められたんだけどな。

 ハガルの怒りがおさまってくれたので、俺は今、外を出歩けるわけである。だから、ハガルの呼び出しにはなるべく従うようにしている。
 美味しい茶と菓子を堪能していると、再び、ドアが開いた。
「ロイドー!!」
「うわ、抱きつくなよ!!」
 ハガルほどではないが、綺麗な女が俺に抱きついてきた。もう、恥ずかしいよ!!
「もう、いいではありませんか。親子なんですから」
「もう、見た目じゃ、俺のほうが年上なんだよ!!」
「この義体の悪い所ですね。全盛期の頃に姿を固定してしまいますから」
 俺の苦情なんか無視して、ぎゅっとくっついてくる女。残念ながら、この女、力づくで離すのは、ただの人では無理だ。
 若い女は、実は随分と昔死んだ母サツキだ。母サツキは、死んだ後、幽体として地上に留まったのだ。長いこと留まって、たまたま偶然、俺は幽体の母サツキと再会した。それから、サツキは俺に憑りついて、どこまでも一緒に行動している。
 そして、今、帝国所有の義体に憑いて、俺に抱きついているのだ。義体、何もしなければ、のっぺりした人形なんだが、憑りついたものによって、姿を変える。妖精が憑けば、妖精が実体化した姿になる。
 そして、母サツキが憑けば、義体は生前のサツキの姿だ。全盛期の姿だから、今の俺よりも若いよ。だけど、義体だから、その力は人外である。
「ロイドは、父親似ですね。こう、体の感触も、そっくりですよ!!」
「嬉しくないよ!!」
 俺は親父のことが大っ嫌いだ。同じだといわれると、怒りしかない。
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「その才能のせいで、あんたと悪縁で結ばれたんだよ!!」
 腹が立つ。
 俺は見た目だけでなく、才能まで、父親から受け継いでいる。親父をよく知る人は、今の俺を見ると、親父と勘違いするんだよな。嬉しくない!!
「サツキも来ましたし、ロイド、身体検査です」
 俺と母サツキのやり取りを微笑ましいと見ていたハガルだが、やっぱり時間がないのか、早速、本題に入った。
 途端、俺の体の自由はなくなる。俺の体をハガルが持つ妖精が操っているのだ。
 それまで、明るく俺に抱きついていた母サツキも、恐怖に顔を引きつらせて、俺から距離をとる。いくら義体に憑りついたサツキといえども、ハガルには絶対に勝てない。
「あなたの妖精の目の調子を診ましょう。サツキ、手伝ってください」
「は、はい」
 母サツキは、この時から、ハガルの助手となった。




 俺の親父は、元は王都の貧民街の支配者だった。先代の皇帝ラインハルトに恨みを持っていた。その恨みをはらすために、皇帝を襲撃したのだ。
 結局、筆頭魔法使いハガルによって、皇帝襲撃は失敗した。そのまま捕縛され、処刑されるはずだった。
 ところが、一か月経っても、二か月経っても、俺は処刑されなかった。取り調べもされたが、普通の囚人と同じ扱いだ。
 そして、ある日、俺は筆頭魔法使いハガルと裏取引をした。
 ハガルは、捕縛された貧民たちの身柄を解放する代わりに、俺に実験体になることを要求したのだ。
 誰も知らなかったが、親父の片目は妖精の目という魔道具だったという。その魔道具の力を使って、昔、賢者テラスをも負かすという、とんでもない実力を親父は持っていたのだ。そんな親父は、特別な体質だった。
 妖精の目という魔道具は、本来、力の弱い妖精憑きの増幅装置だという。だから、ただの人が妖精の目を装着すると、才能がないため、廃人となってしまう。だけど、まれに才能があって、ただの人が妖精憑きの力を手に入れてしまうことがあるのだ。
 そこまでは、探せばいっぱいいるんだ。だけど、親父はさらに特殊な才能の持ち主だった。妖精の目というのは、一度装着すると、四六時中、動いているのだ。だから、寝ている時も、妖精から情報を受けることとなる。この情報を受け続けるから、ただの人は耐えられないのだ。
 親父は、この妖精の目を自由自在に休止させる体質持ちだった。だから、親父は廃人になることなく、妖精憑きの力を使えたのだ。
 親父は皇帝襲撃の主犯であるため、秘密裡に処刑された。そんな親父の才能を俺だけが受け継いでいたのだ。
 筆頭魔法使いハガルは、妖精の目を休止させるための仕組みを知りたくて、俺を実験体にしたのだ。
 そんなの、勝手にやればいいんだ。ハガルの化け物じみた力でやれば、強制的に出来る。俺の意思なんて、壊してしまえばいいんだ。
 それをしなかったのは、表向きは、休止の仕組みがわからなかったから、と言ってる。
 実際は、ハガル、次兄に情があったからだ。
 皇帝襲撃されるより、うんと昔、次兄とハガルは仲良しだった。お互い、正体を隠して遊んでいたのだ。
 ハガルは表向きでは見習い魔法使いであったが、実際は、隠された筆頭魔法使いであったという。
 次兄は、平民を装って、帝国の情報を得るために、ハガルに近づいたのだ。
 そんな関係だったのに、筆頭魔法使いハガルは次兄に友情のような思いを持っていた。次兄は処刑を望んでいたが、ハガルはどうしても処刑したくなくて、俺を利用したんだ。
 妖精憑きって、本当にわけがわからないんだ。次兄の弟である俺も、ハガルは大事なんだ。俺とハガル、皇帝襲撃の失敗で捕縛されるまで、これっぽっちも繋がりがなかったんだ。なのに、次兄の弟というだけで、ハガルは俺を大事に扱った。
 ハガルは俺との裏取引という形で、次兄を含む貧民たちの処刑を回避したのだ。そうでないと、皇帝は納得させられなかったのだ。




 母サツキは、素晴らしい手さばきで、俺につけられた妖精の目を外して、ハガルと一緒になって、観察している。この女も、特殊だ。
 俺も知らなかったが、母サツキの血筋は、道具作りの一族だという。
 帝国中にある魔道具魔法具は壊れる一方の代物である。大昔、皇族、貴族、神殿がやらかして、貴重な本を焚書した。そのため、壊れた魔道具魔法具を直す方法が失われてしまったのだ。
 こうして、大昔に作られた魔道具魔法具は壊れる一方だという。
 本当は違うのだ。そういう道具を作ったり直したりする一族が存在したのだ。そういう一族の存在を長い歴史の影にうずもれてしまい、貴重な本も失われてしまったため、忘れ去れたのだ。
 本来、道具作りの一族の生き残りである母サツキは、壊れた道具を直したり、新しく道具を作り出したり、としなければいけなかった。だが、そういうものを忘れさってしまった、才能のない血筋にも裏切られたサツキは、帝国を見捨てたのだ。
 それも、俺が妖精の目を装着してしまったので、母サツキは、俺のために、ハガルを手伝っている。普段は幽体であるため、俺に触れることすら出来ない。それも、帝国所有の義体に憑りつくことで、サツキは道具作りの才能を発揮して、俺につけられた妖精の目の状態を確認したり、時には、不具合を解消したりとしていた。
「何か、新発見はありましたか?」
 サツキは俺に妖精の目を装着させつつ、ハガルに質問する。一応、ハガル、妖精の目を実用化するために、俺の体を調べているのだ。そこは、ハガル、真面目にやっている。
「クソ生意気な妖精憑きも調べていましたが、やはり、才能なのでしょうね」
 調べた結果をまとめた書類をめくって、溜息をつくハガル。サツキは、ハガルが見ている書類をひょいっと覗き見る。そして、顔色を悪くする。
「よくもまあ、ここまでのことをしましたね。一人でやったんですよね」
「楽しかったですよ」
 ものすごくいい笑顔でいうハガル。だけど、まとめた書類を見るサツキはそうではない。ちょっと、ハガルから距離をとる。
「ただの人はもう、やれることをやりつくしましたね」
「そ、そう、ですか」
「残るは、妖精の目の改造です」
 ハガルはじっと母サツキを見る。
 そう、ハガル、だいたいのことは出来るんだ。それなりの道具を作ったり、直したりも出来る。だけど、出来る、程度である。
 新しいものを作り出したり、道具を改造したり、なんて、いくらハガルでも出来ない。そこは、神から与えられた血筋と才能である。
「も、もう少し、ロイドの様子見をしましょう!!」
 やりたくないんだな。どうにか、時間稼ぎをしようとする母サツキ。
 ハガルの力によって動くに動けない俺の顔をそっと撫でるハガル。ぞぞーとする。
「ロイドの外も中も、調べつくしました。元の才能の持ち主も、生きている時から、死んだ後まで、調べつくしましたよ」
「わ、わかりました!! ちょっと、離れて話しましょう!!!」
 母サツキは俺からハガルを剥がした。
 俺に背中を向けて、母サツキとハガルは密談していた。背中を向けているのは、口の動きで俺に読ませないためである。そんな器用なこと、出来ないよ!!
 密談が終わると、ハガルは笑顔で頷く。
「面白いから、いいですよ」
「では、約束してください。これからは、様子見です」
「ロイドからは目を離せませんけどね。ちょっと油断すると、やらかす」
「昔から、悪戯っ子なんです」
 俺は妖精によって声すら出せなくなっていたから、謝ることも出来なかった。
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