妖精の支配者

shishamo346

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学校へ行こう

貴族の学校に通って、破産しよう

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 俺はただ、ハガルに身体検査を受けているわけではない。それが終わると、頭の賢さの試験である。貴族になりたくないのに、貴族のための知識を試される俺。領地経営とか、経済とか、商売とか、多岐に渡って試験されるのだ。
 だけど、結果を知らないんだよなー。
「これ、意味ある?」
 母サツキとハガルの密談が成立したので、俺も、こんなバカっぽい試験をやめさせる方へと交渉することにした。俺も頑張ろう。
 そんな俺の疑問に答えてくれないハガルは、俺の答案を見ている。正解なのかどうか、わからないんだよな、これ。
 俺の知識って、皇帝襲撃前で止まっている。貧民だからいらないだろう、と俺は言い張ったんだが、兄がそれを許してくれなかった。まがりなりにも、貧民の支配者の下で働いているのだ。無知でいると、後で大変なこととなるという。
 お陰というか、そのせいで、俺はハガルの試験、普通の解けるのだ。正解かどうか、知らないけど。
 しばらくして、ハガルはニヤリと笑う。
「これで、もう文句はないでしょう!! ここまで完璧な解答をしたんです。あのクソども、次こそは消し炭です」
 俺はぷるぷると震える。一体、何があったんだ?
 ハガルはこれまで俺が解かされた試験の解答を机の上に並べた。
「なーんだ、全問、正解かー」
 悪い点数ではなくて、良かった。むしろ、全問正解だから、俺を誉めてほしい。
「貴族の学校に入学の許可をこれで、分捕れます」
「………は?」
 聞いてない!! 叫びたいけど、我慢した。だけど、聞き間違いかもしれないから、聞き返してやる。ほら、ハガルの身体検査のやり過ぎで、俺の頭がおかしくなってるかもしれないし!!
 ハガル、怖い顔しても美人だから、目の保養になるんだよね。俺の前で腕と足を組んで座るハガル。お行儀悪いことだけど、ほら、ハガルは平民に育てられた魔法使いだから、たまに、そういうことをしたくなるんだろうね。
「ロイドを貴族の学校に通わせる計画をかなり昔から立てていました」
「何考えてんだよ!! 俺は貧民だぞ!!!」
「ですが、あなたは不幸な伯爵令嬢サツキの子どもです」
「表向きは、お袋は生家を追い出されてすぐ、死んだこととなってるんだぞ!!」
 そう、可哀想な伯爵令嬢サツキは、表向きは、生家を追い出されてすぐ、殺人死体として発見されたこととなっている。帝国が、その死体をサツキと認めたのだ。
 だから、サツキには子がいるはずがないのだ。いてはいけない。だって、帝国が発表したことだ。
 なのに、ハガルは鼻で笑い飛ばしやがった。
「別に、帝国も手伝ったと、発表すればいいことです。それに、伯爵家の領地問題をいつかは解決しなければなりません。そのためには、伯爵令嬢サツキの子や孫を出さなければなりません。まがりなりにも、あなたにも、道具作りの才能があるとサツキは認めました」
「育ちがなー。俺、貴族には向いてないんだよな」
「知識は十分にあります。あとは、古臭い因習である貴族の学校を卒業すれば、立派な貴族になれます」
「貴族の学校側が、反対してんだろ?」
 とんでもない回数の試験が、それを物語っている。
 さすがに、俺が伯爵令嬢サツキの子だとは説明出来ない。だから、貧民を貴族の学校に通わせたい、とハガルはバカ正直に言ったのだろう。まあ、俺の育ちは悪いから、嘘ついても、すぐにバレるしな。
 結果、貴族の学校側から猛反対を食らったんだろう。俺だって反対する。まだ、世間の荒波を知らない貴族子息令嬢が通う学校に、こんな猛獣、混ぜちゃダメだよ。
 だけど、帝国で二番目の権力者であるハガルの意見をただ反対なんかしてたら、学校が消し炭になる。だから、貴族の学校側は、穏便に、試験に受かれば、という条件を出したのだ。どうせ、貧民だから、解けないと思ったのだろう。
 だけど、解けてしまったから、貴族の学校側は困った。だから、数度、試すという方法に出たのだ。いくつかの分野を試して、どうにか、俺を不合格にしよう、としたわけである。
 ハガルは基本、話せばわかる人だ。貴族の学校側の言い分を認め、度重なる、俺への試験を許したのだ。
 そして、とうとう、ハガルの我慢の限界に達した。
 そりゃそうだ。試験、数度やれば、似たり寄ったりとなってくる。同じようなことを二度も三度も繰り返されれば、ハガルも怒る。
 が、俺としては、これを黙って受け入れるわけにはいかない。貴族の学校側に味方した。
「俺じゃなくていいだろう!! 子ではなく、何も知らない孫の代にするほうが、確実だ。俺はもう、手遅れになくらい育ちすぎてるから、逆にダメだ」
「わかっています。だから、あなたは保険です」
「おいおい、孫、どっかにいるのか!?」
「あなたがこれから、誰かと番えば、立派な孫が出来ます」
「お袋の子は、俺だけじゃないだろう!!」
「確率の問題です。道具作りの才能を持つ者が誕生するとは限りません。サツキの跡継ぎは、道具作りの才能持ちでないといけないのです」
「兄貴の子でもいいだろう!!」
 よし、兄ライホーンには犠牲になってもらおう。長兄なんだから、そう言ってやれば、どっかの誰かと番って、子を作ってくれる。
「確率の問題だと言ったでしょう。サツキから聞きましたが、必ず、道具作りの才能持ちが生まれるとは限らないそうです。サツキの母親には一応、兄弟姉妹がいましたが、サツキの母親しか、才能を受け継がなかったのです。必ず、誕生するわけではありません。あなたは、次代が誕生しなかった時のための保険です」
 その裏事情までは知らなかった。そうか、母サツキにも親戚がいたんだな。
「その、才能持ちは俺と、他は誰なんだ?」
「あなたと、ルキエル、二人だけです。より強い才能持ちはルキエルですが、彼は、表に出せません。残るは、ロイド、あなただけです」
 次兄ルキエルを出されると、俺も逆らえない。ガキの頃から、次兄は犠牲を強いられていた。今、次兄は、過去の柵から解放されて、穏やかな日々を送っているという。次兄の穏やかな日々を壊すわけにはいかない。
「大丈夫ですよ。まだ、サリー嬢は幼いですから、子作りは、もっと先です」
「ちょっと待て!! 俺はあのお嬢さんとは結婚するつもりはないぞ!!!」
 やっと社交の場でも、俺とサリーの話は落ち着いたというのに、ハガルがぶり返してきた。
「え、でも、婚約者と紹介してくれたじゃないですか」
「してないよ!! 周りが勝手に言ってるだけだ!!!」
「否定しませんでしたし」
「発言の許可がなかったから、言えなかったんだよ!!」
 十年に一度の帝国主催の舞踏会での事をハガルは信じ切っていた。
 あの時、ハガルは俺に発言の許可をくれなかった。だから、俺は黙っているしかなかったのだ。ハガルは、お嬢さんサリーがいうことをそのまま信じたのだ。
「まあ、いいではないですか。どうせ、彼女の悪運では、縁談はまとまりませんよ。ずっと独り身なんて、可哀想ですから、ロイドが貰ってあげなさい。あんなに全身で好意を寄せてくれるなんて、羨ましいですね」
「だったら、ハガル様が貰ってあげればいいだろう。あんた、女好きなんだし」
「好みじゃありませんから」
 ハガル、笑顔で言い切った。






 男爵のトコに戻れば、上に下に大騒ぎとなっていた。
「何かあったのか?」
 必死になって指示している男爵家の執事に質問する。俺相手だから、ちょっと顔を引きつらせるんだよな。ほら、俺付の執事、気に入らないからと殺処分したからな。
「お嬢様が、王都の貴族の学校に入学することとなりましたから、そのための荷物整理です」
「ふーん、そうなんだ」
「他人事みたいにいうな!!」
 いきなり、男爵マイツナイトに拳骨で殴られた。
「いってぇー。何すんだよ!!」
「貴様が王都の貴族の学校の合格通知が届いた」
「そうなんだ」
 ハガル、本気か!?
 王都にある貴族の学校、頑張ってハガルに抵抗したけど、もう、万策尽きたんだな。俺も、そんな裏事情知っていれば、手を抜いたってのになー。言ってよ。
 それは、まあ、いいんだ。俺が単身で王都に移動すりゃいいんだ。しばらくは、伯爵オクトの所に居候しよう。絶対に筆頭魔法使いの屋敷には行かない!!
 なのに、お嬢さんサリーが王都の貴族の学校に入学するというのに、俺は首を傾げる。
「あれ、お嬢さん、別の貴族の学校に通うんだよな? ほら、ここから通う話になってただろう」
 俺は一応、お嬢さんサリーの護衛である。これから貴族の学校に通うという話、男爵マイツナイトから聞いていた。合格通知も見せてもらったな。
 改めて、男爵マイツナイトがサリーの合格通知を見せてくれた。
「あれ? 王都になってる?」
「しかも、首席合格だ!!」
「どっちにしても、首席合格なんだ、すごいな」
「サリーだけ、試験を二つ、受けさせられていたんだ」
「えー、さすがに気づくだろう、それ」
「サリーは私に似て、天才だ。いくつ試験を受けさせられても、気にしない」
 親ばかみたいに聞こえるが、サリーは本当に天才なんだ。だから、余分に試験を受けさせられても、時間内に終わらせてしまったのだろう。
「別に、王都じゃなくていいだろう。寄宿学校でなければ、生家から通うのが普通だ」
 あえて、子どもを厳しく教育するため、寄宿学校に通わせることがある。そういう家は、実力主義なんだ。伯爵オクトは養子だっため、卒業は王都の貴族の学校だが、ほとんどは寄宿学校に通っていたんだ。
「貴様が王都の貴族の学校に通うことが決まってるとなったら、サリーも王都の貴族の学校に通わせろ、という帝国の脅しに、逆らうわけにはいかないだろう!!」
「気にしなくていいのに。俺から頼んでおこうか? 学校行ってる間、お嬢さんの護衛、俺は出来なくなるけど」
 ついでに、縁も切ってやろう。そう考えた。これはこれで、いい機会である。
 男爵マイツナイト、頭が痛い、とばかりに手で額をおさえた。
「この合格通知、長男の元にも届いている。長男は、荒事なんか無縁の、平凡な貴族なんだ。こんなものを受け取って、卒倒した」
 容赦ないな、ハガル。どうやってでも、俺とお嬢さんサリーを縁づかせたいんだな。
「だからって、こんな大移動みたいな荷物、いらないだろう。こういうのは、金で解決しろ」
「これは、移動中に必要となる物だ。女の移動は、何かと物が必要なんだ」
「転移の魔道具使えば、ひとっ飛びだろう」
 ぴたり、と男爵マイツナイトだけでなく、それまで忙しく動いていた使用人たちも止まった。
 時々、忘れちゃうんだよな。俺が妖精憑きの力を使えるっての。
「い、いや、しかし、王都への移動に使うのは、さすがに」
「叱られたら、謝ればいいって。いくらだって、俺が頭下げるから」
「貴様は、もっと、その頭を重くしろ!!」
「えー、頭下げるのなんて、タダだよ、タダ!! 金かかんないし、相手の気分を良くするし、これで許してもらえるなら、やっすいじゃん。ハガルは優しいから、頭下げると、だいたい、許してくれるよ」
「もっと自尊心を高く持て、と言ってるんだ!!」
 また、男爵マイツナイトに拳骨で殴られた。





 荷物の問題は解決したその夜、俺はあるようでない私物を袋一つにまとめて、一息ついた。
 貴族の学校では、制服で通うという。私服、そんなにいらないんだよな。ここに置いてはいけない物だけを袋にいれた。置いていく物は、俺にとって、なくていい物である。
『ロイドー、お金、忘れてるよー』
 夜になると勝手に妖精の目が発動するから、野良の妖精さんが、色々と気にかけてくれる。
「別に、いらないだろう」
『外にいる時は、大事だって、抱えて寝てたじゃないか』
『盗まれないように、アタシたちが見張ってあげてたよね』
『お金、命の次に大事だって』
 言ったな、そんなこと。
 男爵家に捕まる前までは、ずっと野宿で生活していた。貧民街、危ないんだよね。だから、俺は野良の妖精たちにお願いして、見張りをしてもらっていたんだ。
 妖精憑きであれば、一か月飲まず食わずでも生きていけるというが、俺は妖精憑きではないから、飲んだり食べたりしないと生きていけない。金は大事だから、野良の妖精がいうように、抱えて寝てたんだ。
「この金は、下手に持ってると、後から大変なこととなるからな。まだ、俺を陥れようとする奴らがいっぱいいる」
 迂闊に大金を持っていると、泥棒と訴えられることがあるのだ。
 実際、男爵家に来たばかりの頃、そういう企みをされたのだ。俺に金を手にさせて、泥棒として殺す計画を立てられて、実行までされたのだ。その時は、サリーが人質にされていたので、俺はサリーを助けることを優先して、金を受け取らなかったため、計画は失敗したのだ。
 きちんと、お嬢さんサリーの護衛としての報酬だ。後ろ暗いことは何一つないんだ。だけど、俺は貧民なので、こんな大金、持つことはないのだ。貧民がこんな大金を持つことは、どっかで盗んだんだろう、と疑いをかけられてしまうのが普通だ。
 俺は、男爵家も、これから行く、侯爵家も、信用していない。いや、男爵マイツナイトと、サリーの兄である侯爵は信用しているのだ。だが、彼らに従う者たちは、主人に忠実なわけではないのだ。ほら、きちんと頭があるんだ。主人を喜ばせるため、主人の将来のために、色々と考え、行動するのだ。
 俺は容赦がない。俺につけられた若い執事マッケラは、使えないからと、容赦なく殺した。マッケラは、最後まで、俺のことを貧民め、と反抗的だった。そういうのは、一生、変わらないから、俺は容赦なく切り捨てる。
 これから、王都の貴族の学校に通うということは、第二、第三のマッケラが俺の前に立つということだ。それは、侯爵家の使用人や家臣たちだけではない。貴族の学校内でも、そういうことが起こるのだ。
『ロイド、見ている人は見ていますよ』
 母サツキが穏やかに笑っていう。何のことを話しているのかわからなくて、俺は首を傾げる。
「何が?」
『悪くいう人は大勢いるでしょう。帝国では、声の大きい人が強いです。ですが、あなたの本質を見抜く人は必ずいます。そういう人は、とても賢いです。そういう人たちが、あなたの味方になってくれます』
「俺は別に、味方なんていらないよ。さっさと飛び級して、卒業してやるよ。そうして、俺を笑った奴らを嘲笑ってやるさ」
『せっかく、学校に通うのですから、楽しめばいいのに』
「俺はもう、子までいるくらいのオジサンだぞ!! 成人前のガキどもに混ざって学生なんて、どんな拷問だよ!!!」
『あなたも、こう、身なりをしっかりしたらどうですか。そんなナリをしているから、オジサンに見えてしまうのですよ』
「………」
 否定も肯定も出来ない。
 俺は、無精ひげを生やしたり、髪も整えなかったり、服だって着崩して、としているから、ガラが悪いオジサンなんだ。こんなオジサンが貴族の学校の制服を着るのだ。きっと笑い者になるだろう。
 身なりなんて整えるつもりはない。ほら、俺が身なりを整えたら、育ちの悪い奴らに舐められちゃうんだよ。俺は今も、たった一つのことを隠し通している。それを知っているのは、長い付き合いの伯爵オクト、筆頭魔法使いハガルくらいだ。男爵マイツナイトは、こんないい加減なナリの俺しか見てない。
「絶対に隠し通してやる」
 俺は今も、使用人に身なりを整えさせるのを拒否している。





 魔道具で移動できるので、荷物は最低限となった。現地調達すればいい、といったって、ほら、既製品ではダメなの、貴族にはあるんだ。
「一応、流行遅れにはならないものを選んだ」
「いらないのに」
「貴族の学校では、舞踏会があるんだ。貴様、その服でいくつもりか!?」
 俺の身なりは全て、マイツナイトのお古である。これがまた、ぴったりなんだなー。ちょっと流行遅れではあるが、きちんとした作りなので、問題ない。何より、ガラの悪い俺が着ているから、流行遅れ、なんて蔑む前に、俺の見た目に皆さん、蔑んでくれる。
「貴族の学校では、保護者は入れない。本来ならば、護衛をつけるところだが、男爵家では、さすがに許可が下りない」
「良かったな、俺が学生で」
「王都でなければ、無理矢理、つけれたがな」
「………」
 そうじゃなかった。男爵マイツナイト、男爵家の屋敷近くの貴族の学校ならば、その後ろ暗い権力で、サリーに護衛をつけれたのだ。
 きっと、過去に、そうしたんだろう。マイツナイトの頭の中には、紙に落としていない貴重な情報がいっぱいだ。マイツナイトが持つ情報欲しさに、子どもたちの誘拐だってあっただろう。
「王都では出来ないのか? ほら、サリーは、侯爵の妹なんだし」
「王都では、魔法使いがいる。あそこで好き勝手してみろ。帝国の敵として、組織は壊滅だ。誰も悪さなんてしない」
 逆かー。王都の貴族の学校のほうが安全なんだ。王都、こわっ。
 人も最低限であるが、マイツナイトも行くから、昔から仕えている家臣の半分が、同伴することとなった。俺が魔法具使っての移動に同伴したことがない奴らばっかりだから、顔が真っ青だ。普段、魔法具の移動は、俺一人か、サリー同伴、マイツナイト同伴くらいだ。本来は、王都の往復のために、筆頭魔法使いハガルが俺に渡したのだ。商売とかで移動の魔法具を使うと、怪しまれてしまう。魔法具、表向きは帝国の持ち物だから。
 俺は地面に円を描いて、そこに荷物やら人やらが入るように指示する。
「いいか、ここからちょっとでも出た部分は、なくなると思えよ」
 脅しじゃない。本当に、起こるんだ。人ではないが、荷物で起きたんだ。転移先で、真っ二つの荷物とご対面したことがある。
 マイツナイトの家臣たち、中心にどんどんと集まって、荷物の上に乗ったり、と大変だ。線から距離とったほうが、安全だからな。
 二度、三度の転移を覚悟していたが、優秀な使用人と、金の力で、たった一度の転移で済む程度の人と荷物になっていた。
「忘れ物です!!」
 何故か、俺が部屋に放置した金が入った袋を持って走ってくる使用人。やめて!! それ、いらないから!!!
「盗まれてしまいますよ!!」
 若い使用人で、男爵家に雇われたばかりの子だ。俺が貧民とわかっていても、態度を変えない、貴重な人である。見るからにいっぱいお金が入っています、という袋を両手で抱えて、怒った。
「そんな手癖の悪い奴、いないだろう」
「金を大事にしないと、お金が逃げていきますよ!!」
 生家は商売人だと言ってたな。金に対する信仰心がすごいな。
「だったら、お前が預かってくれ」
「え、ええ、ど、どうしよう」
 そうか、この子、金には弱いんだな。逆に、俺の金を悪用しない自信がないんだ。
 ふと、俺はいい事を思いついた。
「そうだ、これは投資にしよう。この金を使って、何か商売してみてくれ。失敗してもいい。これは、投資なんだからな」
「い、いいのですか!?」
「いいぞー。この金がなくなっても、返さなくていい。好きに使いこめ」
 むしろ、なくなってほしい。
 生家が商売人の使用人、目をきらっきらとさせて、俺の金を抱えた。
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