妖精の支配者

shishamo346

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学校へ行こう

食べ歩きと夜遊びはやめられない

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 王都にある侯爵家に到着すれば、そこも大変な騒ぎとなった。
「荷物、これだけなんですか!?」
「ロイドがいうには、金で解決しろ、だと」
「解決出来ることと出来ないことがあります!!」
 俺を恨みをこめて睨む侯爵マキラオ。生真面目だから、こういう変化に弱いんだよな。
「最低限は、男爵家の使用人が揃えてくれたというから、心配ないって」
「貴様のだ!?」
「俺のは、マイツナイトのお古でいいって話だが」
「そういうわけにはいかなくなった。今年から、皇族が学校に通うこととなった。時代遅れの恰好なんか、させるわけにはいかん!! その顔と髪、この機会に、綺麗に整えろ!!!」
「断る!!」
「力づくだ」
「やめてぇー!!!」
 俺は逃げた。逃げるなんて恥ずかしい、なんて言われるが、なりふり構ってられない。
 侯爵家の邸宅には離れがある。ここに滞在する時は、あの離れが俺の場所となっている。俺は迷うことなく、離れに飛び込んだ。
 使用人たち、何故かこの離れに入るのは躊躇う。いつでも使えるように、掃除までされているというのに、俺の滞在中は、絶対に、ここに入らない。
 何か理由があるのだろう。それは、離れを作った本来の目的が関わっている。
 昔々、悪女と呼ばれた伯爵令嬢サツキがいた。ともかく評判が悪かったという。しかし、実際は、逆だ。伯爵令嬢は家族に虐待され、血族に裏切られ、亡くなった母親の友人知人にまで見捨てられた。
 表向きはそうなっている。しかし、サツキの婚約者の兄であるマイツナイトだけは、サツキの味方だった。サツキのために復讐を手伝い、なんと、サツキを匿う離れまで作ったのだ。
 だが、どういうわけか、伯爵令嬢サツキは、この離れから消えていなくなった。書置き一つされておらず、マイツナイトは、サツキが逃げた、と思い込んでいた。
 実際は違う。サツキは、侯爵家の使用人、家臣たちから疎まれていた。離れに匿われるも、マイツナイトがいない隙に、追い出されたのだ。
 その秘密を俺は野良の妖精から、世間話程度に聞いていた。知られてしまっているから、どうにか、口封じをしたかっただろう。だが、俺は妖精の目を使って、野良の妖精を使役出来る。ある意味、妖精憑きのような俺に手を出すことは、妖精の復讐を受けることとなってしまうから、使用人たちも、家臣たちも、俺を恐れた。
 この離れは、ある意味、母サツキから俺が引き継いだようなものだ。俺の滞在中は、最低限のことだけして、使用人たちは、さっさと逃げるように離れていった。変な疑いを俺に持たれて、マイツナイトに告げ口されることを恐れたのだ。
 お陰で、今回、いい逃げ場になった。絶対に、身なりを整えてやらない。
 俺の荷物は、離れの入口にドサドサと放置だ。俺の許可なく入るわけにはいかないから、これ幸い、とやってくれる。あれくらい、俺一人で整理出来るからいいけど。
 だけど、俺がベッドで横になっていると、人の目に見えない何かが、勝手にドアをあけて、荷物を部屋の中に運び入れる。仕方なく、俺は妖精の目を発動させる。
『もう、だらしないわね』
『大人なんだから、きちんと整理しないといけないわ』
『見て見て、懐かしい!!』
 女の妖精たちが、きゃっきゃうふふと、俺の荷物を勝手に広げて、賑やかな声をあげている。口では俺のことを注意するけど、こういう整理整頓が大好きな野良の妖精が、勝手にやってくれるんだよな。
 普段から、人の手でやられてしまうから、出番のない野良の妖精たちは、ここぞとばかりに、俺の荷物を片づける。どこに何入れてるのか、俺は全くわからないけどな。
「あ、それはここにしてくれ」
 貴族の学校の制服だけは、俺がわかるトコに入れてもらう。あと、普段使いの服だけは、俺の手で収納だ。
 ふと、男爵家に世話になる前の服が出てきて、俺の手が止まる。
 すっかり、みすぼらしく、ただの布きれになってしまったほうがいいくらい、傷んでいるそれは、次兄の手作りだ。次兄の手作りのもの、それなりにあったが、残ったのは、この服一枚だ。
 野良の妖精の力を使えば、新品同然まで戻すことは出来る。しかし、この布地は、もとからそういうのじゃなかったんだ。貧民だから、色々と使いまわしだ。これは、次兄が着ていた服の布地を使って作られていた。新品同然にされてしまったら、次兄の名残もなくなってしまう。
 これだけは、大事にとっておいた。いつか、また、貧民に戻ったら、これを着るだろう。まだ、俺は貧民の生活に戻ることを諦めていない。
 俺がちょっと物思いに耽っている間に、俺の荷物はすっかり綺麗に収納された。俺は、一応、どこに何が片付けられたか確認する。
 そして、いつもと違うことに気づいた。
「お袋?」
 筆頭魔法使いの屋敷であっても、母サツキの幽体は俺にぴったりとくっついていた。なのに、侯爵家の敷地内には、妖精の目を発動させても、母サツキの幽体は見当たらない。
 庭にいるかも、と窓から庭園を見てみるも、そこにもいない。
「律儀だな」
 俺が怒りにまかせて言ったこと、母サツキは守っているのだろう。
 母サツキは、幽体となってずっと、侯爵家の庭園に居座っていた。悪い奴らに悪戯し、侯爵家をマイツナイトに返したのだ。それからずっと、サツキは庭園で、小さなお茶会をしている。
 俺は、そんな呑気に過ごしていた母サツキを許せず、怒りにまかせて、この家から出てけ、と言ったのだ。後から事情を聞けば、母サツキが悪いわけではないことは後から知った。
 母サツキは、死んだ後、王都の貧民街の近くにある、家族が暮らしている屋敷には行ったのだ。しかし、暮らしていた屋敷は邸宅型魔法具で、幽体であるサツキの侵入を許さなかった。結局、その周辺にも近づけず、サツキは家族を見守ることが出来なかったという。
 そのまま天に召されればいいのに、母サツキは、初めての自由にはしゃいじゃったんだな。伯爵家にいる時も閉じ込められ、親父に捕まった時も閉じ込められ、生涯のほとんどを閉じ込められていた母サツキ。死んで初めての自由なんだ、そりゃ、色々とやっちゃうよ。
 もう、俺は母サツキには怒っていない。許す許さないではない。仕方がない、と納得している。だけど、母サツキは、自分自身が許せないのだ。だから、侯爵家の敷地には入らないのだろう。
 母サツキのために作られた離れは、どう見たって、女性向けである。だからといって、俺向けに仕様を替えさせない。俺が断った。俺はサツキの息子だが、ここは、サツキのための離れだ。これからも、ずっと、このままでいい。
 荷物の配置も一通り、確認するだけで、外はとっぷりと暗くなっていた。
 行きたくないなー。正直、このまま、屋敷を抜け出して、王都の露店で適当なのを食べたい。
 男爵家は仕方がない。まわり、何もないど田舎なんだ。食べる場所も限られている。王都はね、人も店もいっぱいなんだよ。入れ替わりも激しいから、いつ来ても目新しいものが見つかる。
 このまま抜け出そうかなー、なんて迷っていると、ドアをノックされる。
「はいはい」
「さっさと食堂に来い!!」
 常に俺に対して苛立ちを持っている侯爵マキラオさんが、わざわざ俺を呼びに来た。
「使用人でいいよ、そういうの」
「貴様のことが怖くて、今じゃあ、譲り合いになってるんだよ!!」
「すんません」
 俺、何も悪いことしてないのにー。基本、善人だよ。俺に向かって、妙なことしなけりゃ、野良の妖精さんだって、優しく許してくれるし。
 許してくれないことが起こったという。一度、俺を盗人として金を握らせて始末しようとしたんだ。それを企んだ家臣が一族ごと、なくなった。俺、やってないよ。家臣の身内が、どんどんと原因不明の皮膚病を患って、どんどんと死んでいくんだよ。その皮膚病、最初は体のどこかが黒くなるんだ。それがどんどんと広がって、全身が真っ黒になると死ぬという。たが真っ黒になるだけならば、気の毒にね、という話なんだが、この皮膚病、とんでもない苦痛が伴うのだ。最後は、全身が火で焼かれているような苦痛だという。
 それを聞いて、実際に見せられた俺は、お祈りするしかない。こういうのは、人の手でどうこう出来るものじゃないんだ。泣いて縋ってきたが、俺は蹴って見捨てた。
 こういう事は、表沙汰にはされないが、使用人たち、家臣たちの間で噂で広がったのだ。それからは、俺に妙なことしちゃ、色々と危ない、ということとなった。
 サリーの兄である侯爵マキラオは生真面目でいい人だ。いざとなったら、家門のために、俺を殺そうとする非情さを持っているが、基本、いい人である。
 普段は人のいう事を無視する俺だけど、マキラオには大人しく従うことにしてる。
「なあ、兄貴、元気にしてる?」
「ライホーンさんは、変わらずだ」
「仲良くしてんだな」
「貴様の過去の所業を色々と聞いてる。私からは、現在の所業をライホーンさんに教えてやってる。心配しているよ」
「………」
 いや、心配してないよ。会って話さなきゃ、なんて兄ライホーンは言ったんだろうけど、言葉の通りに受け止めちゃいけない。それは、俺に説教しなきゃ、というやつだよ!!
 俺の兄ライホーンと侯爵マキラオは、性格が真面目で長男だからか、身分関係なく、仲良しだ。時々、ライホーンとマキラオが後ろ暗いお仕事をすることもあるという。持ちつ持たれつだな。
 俺は昔、兄ライホーンと殺し合いの兄弟喧嘩で、ライホーンを殺しかけた。そのせいで、俺は王都の貧民街を追い出されたのだ。二度と、王都の貧民街に足を踏み入れるな、とライホーンに言われ、それを今も俺は守っている。
 もう、王都の貧民街に行っていい、という許可はおりてるんだけど、どうせ、ライホーンに説教されて、殴られるのは目に見えているから、行かないけど。
 大人しく、俺は侯爵マキラオの後ろに従った。そうすると、使用人たち、家臣たちが、マキラオに尊敬の眼差しを向ける。マキラオ、生真面目だけど、こう、ちょっと気が弱い所があるから、お腹をおさえたりして、胃痛を受けている。もっと気楽に生きればいいのに。
 当主自らが俺を食堂に案内するので、俺は大人しく席につく。良かった、俺、末席だ!! やっほー。
 男爵家では、上座に座るマイツナイト、向かいにはマイツナイトの妻アッシャー、隣りにはサリーと、気が休まない席順だ。本当は、これが正しいんだよ。
 普段は、上座に侯爵マキラオなんだけど、今日は男爵マイツナイトが座っている。そこから、マイツナイトの妻が座り、その向かいにはサリーだ。サリーより下座には、侯爵家の家族である。そして、俺は向かいが誰もいない席にぽつんと座る。ちょっと、侯爵家家族とも距離とろう。
 俺が来たことで、食事が始まる。皆さん、忙しく動き出す。マイツナイトがいるから、いつもより緊張してるな。男爵とはいえ、元は侯爵位も持っていた男だ。そこら辺の貴族とは違う。
 俺は適当に、食べていいものだけ食べて、さっさと下げさせた。この後、こっそり抜け出して、王都の夜店を回るんだ。一応、礼儀だから、出された料理は二口くらいつけないと、失礼になる。
 ところが、残したのが気に食わない料理人が俺の元にやってきた。
「俺が作った料理に、ケチつけるのか!?」
 料理人だから、貴族相手のマナーなんてない。俺の馴染みの乱暴な口調で、俺の胸倉つかんできた。
「怒るなよ。俺の口は貧しいから、あわないんだ」
「今日のために、しっかりと試作を重ねたのに!!」
「ほら、他のやつらはしっかりと食べてる。残したのは俺だけだ。気にするな」
「ちくしょーーー!!!」
 俺だけ満足させられなかったことに、料理人が悔しがった。
「お前は、自尊心だけは高いな」
 料理長がわざわざやってきて、料理人の首根っこをつかんだ。
「大変、失礼しました」
「いや、いい。あんたのだったら、食べたんだけどな」
 この料理長は、俺のことをよくわかっている。こんないっぱい、俺の皿には盛らないのだ。俺が王都の出店とかで食べていることを料理長は知っている。ほら、味の探求と称して、料理長もちょくちょく、出店を回っていて、そこに数度、俺は出くわしたことがあるのだ。会話はないが、悟ってくれていた。
 実際、料理長は、俺の皿は少なく、と料理人に指示したはずだ。それを無視したのは料理人である。命令違反、軍隊だったら殴られる罰とかだが、料理だから、料理人の自尊心をへし折るだけだ。
 人が悪いな。料理長は、あえて、俺を使って、この自尊心のバカ高い料理人を叩きのめしただけである。
 こんな騒ぎとなったからか、デザートは料理長のものとなった。これはきちんと食べよう。
 男爵マイツナイトがナイフとフォークを置いたので、食事は終了である。俺はさっさと席を立つ。
「どこに行くんだ、ロイド」
「疲れたから、部屋で休むんだよ」
「そうだな、金もないのに、外で夜遊びなんて出来ないよな」
「そうそう!!」
 そうそう、男爵家に俺が持ってた金全部、置いてきたよ。今は、生家が商売やってる使用人に投資したな。きっと、失敗して、金が綺麗になくなっているだろう。
 金がないから、夜遊びなんて出来ない、と男爵マイツナイトは判断した。俺はさっさと離れに逃げ込んで、お忍び用の服に着替える。夜になると、どうしても妖精の目は発動してしまうので、こういう時は、眼帯で隠している。発動している妖精の目、光って目立つんだよ。
 そうして、離れも真っ暗にして、さっさと抜け出した。
 侯爵家は王都にあるも、ちょっと端っこなんだ。王都の中心地辺りは、ほら、デカい邸宅作れないから、有力貴族は、端っこのほうにデカい邸宅作るんだよ。移動は馬車で解決だ。徒歩なんてしない。
 お陰で、王都の夜店に行くために、それなりに走ることとなる。普段から、訓練とかしているから、俺には大したものではない。
 妖精の目が発動しているから、外では、色々と見える。明るくないのに、野良の妖精が見えるから、明るく見えるんだよな。お陰で、夜道も怖くないときている。
 俺にとってはちょっと走れば、すぐに中心街である。一か月に一度、王都には来ているが、相変わらず、店の出入りが激しい。そんな店を通り抜けて、一つの立派な商店に入った。
「ひっさしぶりー、ダクトいるー?」
 勝手知ったる知り合いの店の奥へとどんどんと入っていく。片目眼帯の見るからに怪しい人だけど、店員たち、使用人たちは馴れたものだ。笑顔だよ、笑顔。
「旦那様、ロイド様が来ましたよ」
「こんな夜に来るなと言っただろう」
 店の奥から、店主ダクトが出てきた。
 ダクトは平民だが、危篤な経歴の持ち主だ。幼い頃に、母親と父親の弟に裏切られ、一度、ダクトとその父親は、貧民に落とされたのだ。貧民となった親子が行ったのは、もちろん、王都の貧民街である。そこで、ダクトの父親の経歴を知った俺の母サツキは、色々と手助けして、貧民になって一か月で、再び、平民に戻り、今では、王都の中心街で立派な商店を構える大物になっている。
 ダクト、本当にいい奴なんだよ。たった一か月だけ、貧民街で俺の次兄と仲良くしただけなのに、それなりに腕っぷしが強くなってから、また、貧民街に遊びに来たんだ。口が固くて、その場の空気を読むことに長けているから、俺たち家族に気に入られ、伯爵オクトに気に入られ、筆頭魔法使いハガルにも気に入られ、とんでもない人誑しなんだ。ダクト、あの我儘で手がつけられない姉リンネットをも懐柔したのだ。てっきり、リンネットと結婚するかなー、なんて皆、暖かく見守っていたんだけど、ダクトは結局、親から紹介された許嫁と結婚して、普通の家庭をこさえた。後で聞いたんだが、ダクト、リンネットは好みではなかったとか。あの見た目がダメなんだって。本当かなー? 俺の知らない姉リンネットをダクトは知っている。リンネットは、ダクトにだけは、随分と心を開いていた。
 夜来た俺に、ダクト、呆れながらも、奥へと入れてくれた。夜も遅いけど、王都は眠らないから、常に客がくるから、交代で店番してる。ダクトも、寝れる時に寝て、夜中起きてるのは普通なんだとか。
「悪いね、ダクト。お詫びに、魔道具、直しておくよ」
「助かる。魔道具のお陰で、店の盗みが防がれているといっていい」
「動かすのは妖精さんだけどな」
 俺は壊れた魔道具を野良の妖精さんの導き通りに直す、薄汚れていた魔道具は新品みたいに綺麗になる。それをダクトは使用人に命じて、店のどこかに設置させる。ああやって、盗みの気持ちを起こさせないように、人心を操るのだ。お陰で、店員の目を盗んでの盗難はないという。
 そうしてお詫びをすると、俺の前に金が入った袋が置かれる。
「どうせ、金がなくて、ここにせびりに来たんだろう」
「話がわかって助かる!! 金あるけど、ほら、貴族から受け取った大金だから、迂闊に持ち歩けないんだよな。いつ、泥棒と言って、後ろからばっさりされちゃうか、わかったもんじゃない」
「そんなに物騒なら、ここに来ればいい。お前一人、遊ばせておくくらいの稼ぎはある」
「えー、俺、そんなに無駄遣いしないよ?」
「知ってる。だからだ。王都から出て行ったと聞いた時は、本当に肝が冷えた。お前は、俺に挨拶してから出奔するから、俺が色々と疑われたんだ」
「その節は、すんませんでした」
 頭下げるしかない。
 俺は兄弟喧嘩の末、王都の貧民街を追い出された時、一応、ダクトにだけは挨拶したのだ。ダクトには、家族全てが世話になっている。ダクト自身は、俺たち家族に恩を感じているが、逆もそうなんだ。だから、生涯、会えないかもしれないから、と俺はダクトにだけは挨拶したのだ。
 その後、俺を探す奴らに、色々と尋問されたんだな。
 ダクト、俺たち家族に関わったお陰というか、せいで、色々と経験した。だから、もう、馴れたんだ。ちょっとした事も、ダクトはのらりくらりと潜り抜けてしまう。
 ダクトはまあまあ美味しいお茶を出してくれた。
「つい最近、王都に来たばかりだというのに、どうした?」
 だいたい、一か月に一度、俺は王都に来ている。その間隔が短いから、ダクトは訝しんだ。
「俺、王都の貴族の学校に行くこととなったんだよ」
 ダクト、飲んでいた茶を吐き出した。
「どうしてそうなった!?」
「ハガルだよ、ハガル。俺のことをいつか貴族にしよう、と企んでるハガルが、色々と裏で手を回したんだ。俺には拒否権なんてないからな。ハガルに行け、と命じられたら、ワンと吠えるしかない」
「それで、婚約者はどうするんだ? 婚約者は別の貴族の学校に通うこととなってるだろう」
「ハガルの策略で、お嬢さん、王都の貴族の学校の試験を見事、首席で合格だよ。あ、お嬢さんは婚約者じゃないぞ!! 周りが勝手に言ってるだけだからな!!!」
 きちんと婚約者、という部分を強く否定しておく。油断すると、外堀埋められちゃうよ。俺は一人の女に縛られたくない。
「お前も大変だなー、その歳で学校なんて、ついていくのが大変だぞ」
「そこは大丈夫。俺、優秀だから。ガキの頃に、いっぱい、兄貴にしこまれたからな」
「無駄に、能力高いよな、お前」
「誉めて誉めて」
「偉い偉い」
 呆れるダクト。返事もいい加減だ。
 ダクトも昔は、軽い感じだったんだ。それも、こうやって立派な店の店主になると、しっかりと落ち着くんだな。大人の対応をするダクト。
「せっかく金も手に入ったし、普通に美味しい料理でも堪能してくるよ。ありがとな」
「いつでも来てくれ。お前は、大事な友達の弟だ」
 どこに行っても、俺は弟扱いだった。
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