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学校へ行こう
結局、帝国は血筋優先なんだよ
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結局、皇族ではないが、皇族が用意した衣装に向かって果実水をぶっかけたことは、それなりの罪となる。
その事に、泣き出したリーザは、エンペルの胸に顔を埋める。
「わ、私、お姉様に脅されて、やらされたんです!!」
また、嘘を重ねる。もう、誰も信じないだろうに。それよりも、皇族に口答えしたんだから、リーゼはもう、ただでは済まない。
だけど、リーゼは悪あがきした。泣いた顔を見せて、リコットを睨んだ。
「お姉様は、お父様に愛されている私をいつもいじめてばかり!! いくら、お母様は元は愛人だといったって、真実の愛を邪魔したのは、お姉様のお母様ではないですか!? お父様の愛を得られないのは、そんな酷いことをお姉様のお母様がしたからです!!」
実際、政略結婚だから、リーザの母親は、父親と結婚出来なかったのだろう。
泣いて、生まれる前から不幸だ、と嘆くリーザ。それには、頭の軽い奴らは、ちょっと同情する。ほら、こういう真実の愛、というの、頭の軽い奴らは大好物だ。
サリーもそうだろうな、と俺は見る。ほら、サリーは俺一筋だ。きっと、真実の愛、というものに、共感を持てるだろう。
ところが、サリーはリーゼを冷ややかに見ていた。
「愛人の座に収まったくせに、何を偉そうに」
さらに、蔑むようなことを口にする。それを聞いたリーザはサリーに手をあげた。
もちろん、俺はそんなこと許さない。サリーとリーザの間に入って、リーザの平手を俺の体が受け止める。
「邪魔しないで!! これは、女の戦いです!!!」
「戦いなら、男を口説く、穏便なのにしてくれ。手を出したら、護衛としては、お前を斬り捨てなければならない」
忘れているようだが、俺はサリーの護衛である。ここで、サリーを傷つけることを許してはいけないのだ。
怒りに形相を歪めるリーザ。あれでは、百年の恋も冷めるな。だが、エンペルは、リーザに心底惚れているようで、あの残念な表情でも、気にしない。それどろか、男気を見せようと、俺と対峙する。
「貴様とは決闘だ!!」
「断る!!」
俺は大声で、その決闘を拒否した。アホか!!!
「この軟弱が」
「うるせぇ!! 俺は貧民だから、そんな、腹も満たせない自尊心なんか大事にしないんだよ。卑怯、最低最悪が、俺の心得だ」
「最低だな!!」
「誉め言葉だよ!!」
笑い飛ばしてやる。そんな見せかけの虚勢、意味がない。本物の暴力の前には、虚勢なんて紙屑だ。
俺はそれを知っている。化け物みたいに強い親父は、子にも容赦がなかった。俺は反抗して、何度か、ぼろ雑巾にようになるまで、殴られたことがある。次兄が泣いて止めてくれたから、俺は生きていたにすぎない。
何も知らないリコットの婚約者エンペル。決闘したって、お前は俺の鞘から抜かれていない剣でズタボロにされるだけだ。見るからに、実力がない。
決闘すら受けない俺に、エンペルは勝利したような顔を見せる。それを見て、リーゼは喜んだ。
「しょせん、貧民だわ。エンペル様に勝てないとわかって、尻尾をまいて逃げるなんて、情けない男ね」
俺は無言を貫く。何言われたって、俺は気にしない。これを理由に、この場から逃げられるかなー? なんて考えていた。俺はそれよりも、自由になりたい。
俺を悪く言われたからか、お嬢さんサリーは、リーゼを蔑むように見ている。今日一日で、随分と、色々な顔をサリーは見せてくれた。普段、俺の前で見せるのは、子どもみたいな笑顔だ。妖精みたいだな、とそう思っていた。
だけど、今のサリーは違う。どこか、女王様のようだ。それもまた、妖精のようなものだ。皆、妖精を勘違いしている。無邪気で悪戯好きで純粋、というのが一般的な妖精に想像である。だが、実際は、我儘で、残酷で、強欲で、神の使いとしての自尊心が高い。力の強い妖精は、皇帝のように不遜だ。
今のサリーもまた、妖精のようなものだ。俺が知る妖精のような本性をサリーが表に出した。
「弱い女に手をあげる下種のくせに、何を偉そうに」
そして、とうとう、サリーは怒った。
「なんだと!?」
怒りでまた、エンペルが手を出そうとする。俺はまた、サリーの前に出る。エンペルは止まらないから、俺はエンペルの腕をひねって、床に抑え込むしかない。
「き、貴様」
「本物の強者は、むやみやたらと実力を表に出しません。お前が決闘した結果がこれです。悔しかったら、そこから抜け出してみなさい」
「この女!! 離せ!!」
離すわけがない。離したら、エンペルはサリーを害する。
だけど、サリーに手を出すのはエンペルだけではない。リーザがサリーに向かった。
これにはもう、俺は容赦するわけにはいかない。エンペルの足を瞬間、折って、また、サリーの前に立った。
「ぎゃああああああーーーーーーー!!!」
舞踏会の会場に、エンペルの醜い叫びが響いた。
俺がサリーの前に立ったので、さすがにリーザは止まる。そして、エンペルの片足がおかしな方向に曲がっていることに気づいたリーザは、真っ青になって、エンペルに駆け寄る。
「なんて酷い!!」
「俺はお嬢さんの護衛だ。その時その時で、最適な方法をとるにすぎない。いくら女とはいえ、容赦しない。女のほうが、えげつないからな」
女は無力な顔して近づいて、毒とか使うからなー。俺は、女、側に置かないけどな。
サリーは俺の腕にしがみついて、嬉しそうに笑う。
「やっぱり、ロイド様はわたくしの王子様です!!」
「こんなガラの悪い王子、いないよ!!」
「わたくしの王子様はそれでいいのですよ!!!」
聞いちゃいないな!! そこは変わらない。王子、なんて呼ばれて、鳥肌がたった。周囲だって、サリーのこと、夢見がちな愚かな小娘、なんて見ている。
こんな騒ぎとなったんだ。すぐに警備や騎士が会場にやってくる。
床に這いつくばっているエンペルは、服まで汚れている。骨も折られているし、被害者っぽい。側で泣いているリーゼも汚れているから、何か被害にあったように見えるだろう。
それに対する位置に立つ俺を見て、警備たちや騎士たちは呆れる。
「また、あなた様ですか」
「本当に、あなた様の側では、何か起きますね」
そして、警備たち、騎士たちは、エンペルとリーゼを捕縛する。
「いや、離して!!」
「ぐぁあああああ」
リーゼは抵抗、エンペルは苦痛で叫ぶ。
「今回は、どんな罪状だ? 皇族がいる前で、とんだ醜態をさらしたな」
俺は呆れるしかない。この場には、皇族が二人もいる。
気の弱い皇族セキラだけならば、学校側も説得しただろう。今回は穏便に、と。しかし、すでに卒業して、立派に裏を暗躍する皇族サイが、随分と高い場所で笑顔で見下ろしている。あの人は、俺でも説得は出来ないなー。
皇族セキラにとって、生徒会役員としては初仕事である舞踏会だ。これを滅茶苦茶にしたのだ。リーゼとエンペルだけの問題ではすまい話だ。
それは、二年の生徒会役員リコットもだ。身内であるリーゼを止められなかったのだから、今後、どうなるのか? リコットは真っ青になって、震えるしかなった。
結局、リコットは無罪放免である。それどころか、リコットの生家は一気に勢力図を変えることとなった。
これまで、子爵代理としていたリコットの父は、リーゼのやらかしにより、代理の資格を剥奪された。そりゃそうだ、元は愛人の娘であるリーゼがやらかしたこと。明らかに、父親が甘やかしたのが原因である。
その後、帝国の調査が入り、なんと、リコットが成人後に暗殺する計画まで見つかったのだ。リーゼ派の派閥の家臣たちの盟約の書類まで見つかった。この事により、家臣たちはお家乗っ取りの犯罪に未遂とはいえ、加担したということで、捕縛された。帝国では、成人前の跡継ぎの殺害は重罪なのだ。成人後の暗殺計画だ、と言ったって、今はリコット、成人前の、帝国が保護する対象である。卑怯なことを跡継ぎが成人前から計画していた、ということで、犯罪扱いとなった。
さらに、争いの種であるリーゼは、子爵家から籍を抜かれ、父方の生家に行くこととなった。一応、片親は貴族であるため、リーゼは貴族扱いである。しかし、リーゼは子爵家の血を一滴も流れていない。子爵家がリーゼを養育する理由はない。それに、リーゼのせいで、リコットは暗殺まで計画を立てられたのである。
リーゼの父親の生家もまた子爵家である。しかし、その生家、今、問題のあるリーゼを受け入れられる状態ではないのだ。
なんと、リーゼの父親の生家、帝国中で有名な伯爵令嬢サツキの血族の一つなのだ。
ただでさえ、帝国中で蔑まれ、借金まみれとなって、大変なこととなっていた。リコットの母親と父親が結婚したのも、リコットの母親から支援を受けるためであった。リコットの母親としては、こんな問題のある結婚、取りやめたかったのだが、人の良い祖父母が、リコットの父親の生家の泣き落としに負けたのだ。
だから、リーゼ、貴族でありながらも、父親の生家には引き取られはしたが、その後、貴族の学校に姿を見せることはなかった。貴族の学校を卒業できなければ、よほどの後ろ盾がない限り、貴族にはなれない。
リコットの婚約者であるエンペルは、皇族に対して、二回もやらかした。貴族の学校では、二回までは許してもらえるのだ。
しかし、舞踏会には、もう一人、皇族がいたのだ。皇族サイである。この男、男女問わず魅了する容貌をしているが、中身はドロドロである。
「私の息子の初の晴れ舞台を台無しにしてくれたな」
皇族サイ、なんとエンペルの生家まで行って、責任問題を大きくしてくれたのだ。ちなみに、その時の護衛として、俺も道連れにされた。なんで!?
エンペル含む、エンペルの良心は土下座である。椅子に座っていられるはずがない。この場で椅子に座っているのは、皇族サイと、なんと、俺だ。
「あの、俺、立っていい?」
エンペル、こんな場でも、俺を睨んでくるんだよな。父親に無理矢理、頭をおさえつけられていても、抵抗してるの。
皇族サイは、誰もが魅了する笑顔を見せて、俺の手をとる。
「そんなつれないこと言わないで。友人を立たせるなんて、私には出来ない。友人なんだ、一緒に座ろう」
「いつ、あんたの友人になった!?」
「ハガルが言ってたよ。友人の友人は友人だと」
「オクトと俺は、友人じゃない!?」
そういう関係じゃない。むしろ、俺は、オクトにとっては、弟だな。時々、オクトは俺を弟扱いした。
そんな内心を読んだ皇族サイは、笑みを深くする。
「そうだった、君は、オクトには、弟扱いされているね。じゃあ、私も弟扱いだ。何か欲しいものがあったらいいなさい。何でも買ってあげるよ。あと、邪魔な者がいたら、私が消してあげよう」
「十分に満たされているから、大丈夫です!! そのお心遣いだけで、十分ですぅーーーー!!!!」
迂闊なことを言ってはいけない。この場が血の海になる。皇族サイが向けるエンペルたちへの目は冷たい。
こうして、エンペル、二度の失敗は三度の失敗と数えられた。
一度目は、皇族の側で暴力騒ぎ。
二度目は、皇族の初仕事である舞踏会を滅茶苦茶にしたこと。
三度目は、息子の初仕事を滅茶苦茶にされた皇族の怒り。
貴族の学校では、三度目の失敗は許されない。そういう暗黙の了解があるのだ。そして、三度目の失敗には、大きな罰が待っている。
皇族サイは、エンペルの両親の頭上に一枚の紙を掲げる。
「これより、お前たちは貴族でなくなる。皇族に対して、三度の失敗をした。そのようなことをする子を作った家門を貴族として残すことは、皇族の危険となる。今より、邸宅も領地も全て、帝国預かりとする。何一つ、持ち出すことは許さぬ。使用人たちも全て、捕縛。一族については、調査次第で、次の侯爵にする。その決定もまた、帝国が行う。すぐに、処理しろ」
すでに、邸宅は帝国の軍部によって囲まれていた。
学校に行けば、もう、舞踏会の出来事は遠い彼方の事として、記憶の片隅に追いやられていた。ただ、皇族と、その周辺に迂闊に手を出してはいけない、と貴族の子息令嬢は心に決めていた。もう、皇族セキラの周囲は、静かになるだろう。
二年の生徒会役員リコットは、生家と婚約者が大変なこととなったのだが、今も、普通に学校に通って、昼食は、俺たちと同じ席で食べていたりする。
「生徒会役員用の食事部屋はあるのよ。そこで食べれば、もう少し、穏便だったでしょうに」
落ち着いて、後から考えれば、リコットがいう通り、昼食ぐらい、皇族は引きこもっていれば、妙な騒ぎに巻き込まれることはなかったのだ。
「そういうリコット先輩は、どうして、俺たちと同じトコでメシ食ってんだよ?」
「先輩だからよ!! 二年の生徒会役員の主な仕事は、後輩の教育なの。私も、今の三年の先輩には、色々と教えてもらったわ。それは、日常からよ」
「だから、わざわざ付き合ってくれたわけか」
生徒会役員って、生徒の代表だ。何かおかしなことをしないように、リコットは監視していたわけだ。
結局、俺たちは悪目立ちしすぎて、リコットのお家騒動に巻き込まれたんだけどな。リコットもまた、この騒ぎの一旦を担っているようなものである。
しかし、皇族セキラは、生徒会役員の部屋での食事は全力で拒否する。
「あんな、逃げる所が一か所しかない場所、危険だ!!」
よほど、過去、色々とあったんだな。それも、女関係である。想像しただけで、セキラは全身を恐怖で震わせた。あの部屋での昼食は、一生、無理だな。
「あの部屋使うのなんて、密談するためだからな。生徒会室があるんだし、そこまで忙しくするほど、俺たち、仕事割り振られてないし」
「背景と言動は酷いのに、ロイドくんは、出来るのよね」
「ついてくのに必死だよ!?」
過去に、本当、大変だったのだ。その積み重ねが今である。まず、経験値が違う。こいつらよりも長く生きて、様々な経験を積んでいるのだ。生徒会役員の仕事なんて、俺にとっては、ガキのお遊戯だな。
なんて、口には出さない。怒らせちゃうから。
そんな会話をしながら、俺は護衛対象であるお嬢さんサリーと皇族セキラの面倒をみる。周囲の警戒だって怠らない。もっと楽な仕事につきたい。
こうして、平穏な日常に戻ったリコットだが、帝国の監視がついている。リコットもまた、あの父親に育てられたのだ。だが、事情聴取により、しばらく、様子見となった。リコットもまた被害者だ、という証言があったからだ。
それに、皇族セキラが口添えした。
「もしかしたら、将来、リコット先輩がボクの伴侶になるかもしれません」
数少ない、怖くない女性である。皇族は子作りがお仕事だ。子孫、大事なんだよ。セキラは、女嫌いだから、子作りが困難なのだ。
こんなことをセキラから言われてしまったので、帝国も様子見するしかない。何せ、セキラの血筋は、特殊だから、絶対に子孫を作らなければならないという。
と表向きは、そんな話で収めたのだが、セキラ、これっぽっちもリコットに好意なんて持っていない。ただ単に、生徒会役員の人の入れ替わりを避けただけである。こいつ、可愛い顔して、びくびくしてるくせに、実際は、とんでもない腹黒だよ!!
リコットは、まさかセキラの嫁候補になっているなんて、教えられていない。ほら、逃げられたら大変だから、皆で見守っているんだ。だけど、リコットの側には、もう一人、リコットを狙っている男がいる。
リコットが入学する前からずっと、リコットの側には、同じく二年の生徒会役員ナバンが居座っていた。リコットに婚約者がいるとわかっても、ナバンは友人の顔でリコットの側に居座ったのだ。
そのせいで、リコットとナバンは浮気しているのでは、なんて噂が社交で流れたこともあったとか。それよりも、リコットの妹リーゼと、リコットの婚約者エンペルの真実の愛、というくっさい噂のほうが広がって、リコットとナバンの地味な噂は消されたのだ。実際、後ろ暗い行為なんて一切していないリコットとナバンを悪く言える者はいない。だって、本当に、何もないんだ。
だけど、リコットは晴れて、婚約者がなくなった。親が勝手に決めた婚約であるが、その親が犯罪者として捕縛され、婚約者も家門ごと爵位を失ったのだ。
人のいい笑顔で、ナバンはリコットと他愛無い会話をしている。だけど、ナバンは他の男を絶対、リコットに近づけない。それは、皇族セキラもだ。
きっと、セキラとナバンの間で、何か密約が交わされたんだろうな。そういう場の見張りをさせられたことがある。ドアの前で立って、侵入者がいないか、気配を探っていただけだけど。
俺は、内部事情をそれなりに知っていながらも、沈黙する。しょせん、ガキのお遊戯だ。いい大人はそれをただ、笑って”可愛らしいことしているな”と見守るだけである。
その事に、泣き出したリーザは、エンペルの胸に顔を埋める。
「わ、私、お姉様に脅されて、やらされたんです!!」
また、嘘を重ねる。もう、誰も信じないだろうに。それよりも、皇族に口答えしたんだから、リーゼはもう、ただでは済まない。
だけど、リーゼは悪あがきした。泣いた顔を見せて、リコットを睨んだ。
「お姉様は、お父様に愛されている私をいつもいじめてばかり!! いくら、お母様は元は愛人だといったって、真実の愛を邪魔したのは、お姉様のお母様ではないですか!? お父様の愛を得られないのは、そんな酷いことをお姉様のお母様がしたからです!!」
実際、政略結婚だから、リーザの母親は、父親と結婚出来なかったのだろう。
泣いて、生まれる前から不幸だ、と嘆くリーザ。それには、頭の軽い奴らは、ちょっと同情する。ほら、こういう真実の愛、というの、頭の軽い奴らは大好物だ。
サリーもそうだろうな、と俺は見る。ほら、サリーは俺一筋だ。きっと、真実の愛、というものに、共感を持てるだろう。
ところが、サリーはリーゼを冷ややかに見ていた。
「愛人の座に収まったくせに、何を偉そうに」
さらに、蔑むようなことを口にする。それを聞いたリーザはサリーに手をあげた。
もちろん、俺はそんなこと許さない。サリーとリーザの間に入って、リーザの平手を俺の体が受け止める。
「邪魔しないで!! これは、女の戦いです!!!」
「戦いなら、男を口説く、穏便なのにしてくれ。手を出したら、護衛としては、お前を斬り捨てなければならない」
忘れているようだが、俺はサリーの護衛である。ここで、サリーを傷つけることを許してはいけないのだ。
怒りに形相を歪めるリーザ。あれでは、百年の恋も冷めるな。だが、エンペルは、リーザに心底惚れているようで、あの残念な表情でも、気にしない。それどろか、男気を見せようと、俺と対峙する。
「貴様とは決闘だ!!」
「断る!!」
俺は大声で、その決闘を拒否した。アホか!!!
「この軟弱が」
「うるせぇ!! 俺は貧民だから、そんな、腹も満たせない自尊心なんか大事にしないんだよ。卑怯、最低最悪が、俺の心得だ」
「最低だな!!」
「誉め言葉だよ!!」
笑い飛ばしてやる。そんな見せかけの虚勢、意味がない。本物の暴力の前には、虚勢なんて紙屑だ。
俺はそれを知っている。化け物みたいに強い親父は、子にも容赦がなかった。俺は反抗して、何度か、ぼろ雑巾にようになるまで、殴られたことがある。次兄が泣いて止めてくれたから、俺は生きていたにすぎない。
何も知らないリコットの婚約者エンペル。決闘したって、お前は俺の鞘から抜かれていない剣でズタボロにされるだけだ。見るからに、実力がない。
決闘すら受けない俺に、エンペルは勝利したような顔を見せる。それを見て、リーゼは喜んだ。
「しょせん、貧民だわ。エンペル様に勝てないとわかって、尻尾をまいて逃げるなんて、情けない男ね」
俺は無言を貫く。何言われたって、俺は気にしない。これを理由に、この場から逃げられるかなー? なんて考えていた。俺はそれよりも、自由になりたい。
俺を悪く言われたからか、お嬢さんサリーは、リーゼを蔑むように見ている。今日一日で、随分と、色々な顔をサリーは見せてくれた。普段、俺の前で見せるのは、子どもみたいな笑顔だ。妖精みたいだな、とそう思っていた。
だけど、今のサリーは違う。どこか、女王様のようだ。それもまた、妖精のようなものだ。皆、妖精を勘違いしている。無邪気で悪戯好きで純粋、というのが一般的な妖精に想像である。だが、実際は、我儘で、残酷で、強欲で、神の使いとしての自尊心が高い。力の強い妖精は、皇帝のように不遜だ。
今のサリーもまた、妖精のようなものだ。俺が知る妖精のような本性をサリーが表に出した。
「弱い女に手をあげる下種のくせに、何を偉そうに」
そして、とうとう、サリーは怒った。
「なんだと!?」
怒りでまた、エンペルが手を出そうとする。俺はまた、サリーの前に出る。エンペルは止まらないから、俺はエンペルの腕をひねって、床に抑え込むしかない。
「き、貴様」
「本物の強者は、むやみやたらと実力を表に出しません。お前が決闘した結果がこれです。悔しかったら、そこから抜け出してみなさい」
「この女!! 離せ!!」
離すわけがない。離したら、エンペルはサリーを害する。
だけど、サリーに手を出すのはエンペルだけではない。リーザがサリーに向かった。
これにはもう、俺は容赦するわけにはいかない。エンペルの足を瞬間、折って、また、サリーの前に立った。
「ぎゃああああああーーーーーーー!!!」
舞踏会の会場に、エンペルの醜い叫びが響いた。
俺がサリーの前に立ったので、さすがにリーザは止まる。そして、エンペルの片足がおかしな方向に曲がっていることに気づいたリーザは、真っ青になって、エンペルに駆け寄る。
「なんて酷い!!」
「俺はお嬢さんの護衛だ。その時その時で、最適な方法をとるにすぎない。いくら女とはいえ、容赦しない。女のほうが、えげつないからな」
女は無力な顔して近づいて、毒とか使うからなー。俺は、女、側に置かないけどな。
サリーは俺の腕にしがみついて、嬉しそうに笑う。
「やっぱり、ロイド様はわたくしの王子様です!!」
「こんなガラの悪い王子、いないよ!!」
「わたくしの王子様はそれでいいのですよ!!!」
聞いちゃいないな!! そこは変わらない。王子、なんて呼ばれて、鳥肌がたった。周囲だって、サリーのこと、夢見がちな愚かな小娘、なんて見ている。
こんな騒ぎとなったんだ。すぐに警備や騎士が会場にやってくる。
床に這いつくばっているエンペルは、服まで汚れている。骨も折られているし、被害者っぽい。側で泣いているリーゼも汚れているから、何か被害にあったように見えるだろう。
それに対する位置に立つ俺を見て、警備たちや騎士たちは呆れる。
「また、あなた様ですか」
「本当に、あなた様の側では、何か起きますね」
そして、警備たち、騎士たちは、エンペルとリーゼを捕縛する。
「いや、離して!!」
「ぐぁあああああ」
リーゼは抵抗、エンペルは苦痛で叫ぶ。
「今回は、どんな罪状だ? 皇族がいる前で、とんだ醜態をさらしたな」
俺は呆れるしかない。この場には、皇族が二人もいる。
気の弱い皇族セキラだけならば、学校側も説得しただろう。今回は穏便に、と。しかし、すでに卒業して、立派に裏を暗躍する皇族サイが、随分と高い場所で笑顔で見下ろしている。あの人は、俺でも説得は出来ないなー。
皇族セキラにとって、生徒会役員としては初仕事である舞踏会だ。これを滅茶苦茶にしたのだ。リーゼとエンペルだけの問題ではすまい話だ。
それは、二年の生徒会役員リコットもだ。身内であるリーゼを止められなかったのだから、今後、どうなるのか? リコットは真っ青になって、震えるしかなった。
結局、リコットは無罪放免である。それどころか、リコットの生家は一気に勢力図を変えることとなった。
これまで、子爵代理としていたリコットの父は、リーゼのやらかしにより、代理の資格を剥奪された。そりゃそうだ、元は愛人の娘であるリーゼがやらかしたこと。明らかに、父親が甘やかしたのが原因である。
その後、帝国の調査が入り、なんと、リコットが成人後に暗殺する計画まで見つかったのだ。リーゼ派の派閥の家臣たちの盟約の書類まで見つかった。この事により、家臣たちはお家乗っ取りの犯罪に未遂とはいえ、加担したということで、捕縛された。帝国では、成人前の跡継ぎの殺害は重罪なのだ。成人後の暗殺計画だ、と言ったって、今はリコット、成人前の、帝国が保護する対象である。卑怯なことを跡継ぎが成人前から計画していた、ということで、犯罪扱いとなった。
さらに、争いの種であるリーゼは、子爵家から籍を抜かれ、父方の生家に行くこととなった。一応、片親は貴族であるため、リーゼは貴族扱いである。しかし、リーゼは子爵家の血を一滴も流れていない。子爵家がリーゼを養育する理由はない。それに、リーゼのせいで、リコットは暗殺まで計画を立てられたのである。
リーゼの父親の生家もまた子爵家である。しかし、その生家、今、問題のあるリーゼを受け入れられる状態ではないのだ。
なんと、リーゼの父親の生家、帝国中で有名な伯爵令嬢サツキの血族の一つなのだ。
ただでさえ、帝国中で蔑まれ、借金まみれとなって、大変なこととなっていた。リコットの母親と父親が結婚したのも、リコットの母親から支援を受けるためであった。リコットの母親としては、こんな問題のある結婚、取りやめたかったのだが、人の良い祖父母が、リコットの父親の生家の泣き落としに負けたのだ。
だから、リーゼ、貴族でありながらも、父親の生家には引き取られはしたが、その後、貴族の学校に姿を見せることはなかった。貴族の学校を卒業できなければ、よほどの後ろ盾がない限り、貴族にはなれない。
リコットの婚約者であるエンペルは、皇族に対して、二回もやらかした。貴族の学校では、二回までは許してもらえるのだ。
しかし、舞踏会には、もう一人、皇族がいたのだ。皇族サイである。この男、男女問わず魅了する容貌をしているが、中身はドロドロである。
「私の息子の初の晴れ舞台を台無しにしてくれたな」
皇族サイ、なんとエンペルの生家まで行って、責任問題を大きくしてくれたのだ。ちなみに、その時の護衛として、俺も道連れにされた。なんで!?
エンペル含む、エンペルの良心は土下座である。椅子に座っていられるはずがない。この場で椅子に座っているのは、皇族サイと、なんと、俺だ。
「あの、俺、立っていい?」
エンペル、こんな場でも、俺を睨んでくるんだよな。父親に無理矢理、頭をおさえつけられていても、抵抗してるの。
皇族サイは、誰もが魅了する笑顔を見せて、俺の手をとる。
「そんなつれないこと言わないで。友人を立たせるなんて、私には出来ない。友人なんだ、一緒に座ろう」
「いつ、あんたの友人になった!?」
「ハガルが言ってたよ。友人の友人は友人だと」
「オクトと俺は、友人じゃない!?」
そういう関係じゃない。むしろ、俺は、オクトにとっては、弟だな。時々、オクトは俺を弟扱いした。
そんな内心を読んだ皇族サイは、笑みを深くする。
「そうだった、君は、オクトには、弟扱いされているね。じゃあ、私も弟扱いだ。何か欲しいものがあったらいいなさい。何でも買ってあげるよ。あと、邪魔な者がいたら、私が消してあげよう」
「十分に満たされているから、大丈夫です!! そのお心遣いだけで、十分ですぅーーーー!!!!」
迂闊なことを言ってはいけない。この場が血の海になる。皇族サイが向けるエンペルたちへの目は冷たい。
こうして、エンペル、二度の失敗は三度の失敗と数えられた。
一度目は、皇族の側で暴力騒ぎ。
二度目は、皇族の初仕事である舞踏会を滅茶苦茶にしたこと。
三度目は、息子の初仕事を滅茶苦茶にされた皇族の怒り。
貴族の学校では、三度目の失敗は許されない。そういう暗黙の了解があるのだ。そして、三度目の失敗には、大きな罰が待っている。
皇族サイは、エンペルの両親の頭上に一枚の紙を掲げる。
「これより、お前たちは貴族でなくなる。皇族に対して、三度の失敗をした。そのようなことをする子を作った家門を貴族として残すことは、皇族の危険となる。今より、邸宅も領地も全て、帝国預かりとする。何一つ、持ち出すことは許さぬ。使用人たちも全て、捕縛。一族については、調査次第で、次の侯爵にする。その決定もまた、帝国が行う。すぐに、処理しろ」
すでに、邸宅は帝国の軍部によって囲まれていた。
学校に行けば、もう、舞踏会の出来事は遠い彼方の事として、記憶の片隅に追いやられていた。ただ、皇族と、その周辺に迂闊に手を出してはいけない、と貴族の子息令嬢は心に決めていた。もう、皇族セキラの周囲は、静かになるだろう。
二年の生徒会役員リコットは、生家と婚約者が大変なこととなったのだが、今も、普通に学校に通って、昼食は、俺たちと同じ席で食べていたりする。
「生徒会役員用の食事部屋はあるのよ。そこで食べれば、もう少し、穏便だったでしょうに」
落ち着いて、後から考えれば、リコットがいう通り、昼食ぐらい、皇族は引きこもっていれば、妙な騒ぎに巻き込まれることはなかったのだ。
「そういうリコット先輩は、どうして、俺たちと同じトコでメシ食ってんだよ?」
「先輩だからよ!! 二年の生徒会役員の主な仕事は、後輩の教育なの。私も、今の三年の先輩には、色々と教えてもらったわ。それは、日常からよ」
「だから、わざわざ付き合ってくれたわけか」
生徒会役員って、生徒の代表だ。何かおかしなことをしないように、リコットは監視していたわけだ。
結局、俺たちは悪目立ちしすぎて、リコットのお家騒動に巻き込まれたんだけどな。リコットもまた、この騒ぎの一旦を担っているようなものである。
しかし、皇族セキラは、生徒会役員の部屋での食事は全力で拒否する。
「あんな、逃げる所が一か所しかない場所、危険だ!!」
よほど、過去、色々とあったんだな。それも、女関係である。想像しただけで、セキラは全身を恐怖で震わせた。あの部屋での昼食は、一生、無理だな。
「あの部屋使うのなんて、密談するためだからな。生徒会室があるんだし、そこまで忙しくするほど、俺たち、仕事割り振られてないし」
「背景と言動は酷いのに、ロイドくんは、出来るのよね」
「ついてくのに必死だよ!?」
過去に、本当、大変だったのだ。その積み重ねが今である。まず、経験値が違う。こいつらよりも長く生きて、様々な経験を積んでいるのだ。生徒会役員の仕事なんて、俺にとっては、ガキのお遊戯だな。
なんて、口には出さない。怒らせちゃうから。
そんな会話をしながら、俺は護衛対象であるお嬢さんサリーと皇族セキラの面倒をみる。周囲の警戒だって怠らない。もっと楽な仕事につきたい。
こうして、平穏な日常に戻ったリコットだが、帝国の監視がついている。リコットもまた、あの父親に育てられたのだ。だが、事情聴取により、しばらく、様子見となった。リコットもまた被害者だ、という証言があったからだ。
それに、皇族セキラが口添えした。
「もしかしたら、将来、リコット先輩がボクの伴侶になるかもしれません」
数少ない、怖くない女性である。皇族は子作りがお仕事だ。子孫、大事なんだよ。セキラは、女嫌いだから、子作りが困難なのだ。
こんなことをセキラから言われてしまったので、帝国も様子見するしかない。何せ、セキラの血筋は、特殊だから、絶対に子孫を作らなければならないという。
と表向きは、そんな話で収めたのだが、セキラ、これっぽっちもリコットに好意なんて持っていない。ただ単に、生徒会役員の人の入れ替わりを避けただけである。こいつ、可愛い顔して、びくびくしてるくせに、実際は、とんでもない腹黒だよ!!
リコットは、まさかセキラの嫁候補になっているなんて、教えられていない。ほら、逃げられたら大変だから、皆で見守っているんだ。だけど、リコットの側には、もう一人、リコットを狙っている男がいる。
リコットが入学する前からずっと、リコットの側には、同じく二年の生徒会役員ナバンが居座っていた。リコットに婚約者がいるとわかっても、ナバンは友人の顔でリコットの側に居座ったのだ。
そのせいで、リコットとナバンは浮気しているのでは、なんて噂が社交で流れたこともあったとか。それよりも、リコットの妹リーゼと、リコットの婚約者エンペルの真実の愛、というくっさい噂のほうが広がって、リコットとナバンの地味な噂は消されたのだ。実際、後ろ暗い行為なんて一切していないリコットとナバンを悪く言える者はいない。だって、本当に、何もないんだ。
だけど、リコットは晴れて、婚約者がなくなった。親が勝手に決めた婚約であるが、その親が犯罪者として捕縛され、婚約者も家門ごと爵位を失ったのだ。
人のいい笑顔で、ナバンはリコットと他愛無い会話をしている。だけど、ナバンは他の男を絶対、リコットに近づけない。それは、皇族セキラもだ。
きっと、セキラとナバンの間で、何か密約が交わされたんだろうな。そういう場の見張りをさせられたことがある。ドアの前で立って、侵入者がいないか、気配を探っていただけだけど。
俺は、内部事情をそれなりに知っていながらも、沈黙する。しょせん、ガキのお遊戯だ。いい大人はそれをただ、笑って”可愛らしいことしているな”と見守るだけである。
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