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凶星の申し子
逃亡
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王都の貧民街の支配者なんだ。いつまでも、俺の側にいるわけにはいかない。親父は支配者として、とうとう、俺から離れた。
だけど、離れるまでが長い。
「あ、ああ、そんな、やぁ」
女のように身もだえして、親父の愛撫を受ける俺。長い軟禁生活で与えられる愛撫に、体は随分と喜ぶようになった。気持ち悪い、と感じていたものが、気持ち良いと感じるようになっていた。それどころか、俺のほうから親父に答えるようになってきた。深い口づけをされれば、舌で答えるようになっていた。それすらも、気持ち良い。
痛いことはされていない。ちょっと下半身に触れられると、痛がれば、親父はすぐにやめてくれる。ちょろいな。
そうして、愛撫だけを受け、どうにか、親父にそれ以上させないようにして、逃れていた。
その日も、長い愛撫を受けて、何か感じて、がくがくと体全体を震わせると、親父は嬉しそうに笑う。
「上手にいけるようになったな」
「ん、うん」
口づけして、舌を絡めて、としてくる親父。それすら、気持ちよくて、親父の頭に腕を回してしまう。
「親父、時間が」
兄ライホーンが急かした。不機嫌になる親父だが、仕方なく、俺をベッドに残し、家を出ていった。
親父がいなくなったのかことを確認するために、妖精憑きの力を使う。俺が妖精憑きだと知っているのは、死んだお袋だけだ。妖精憑きの力を誰にもいうな、とお袋にきつく約束させられた。だけど、妖精憑きの力、使い方がよくわからないで、なんとなくだ。それでも、出来ることはある。
俺は妖精を使って、外の様子を見てみる。貴族と親父が何か話している。そして、家から離れて行った。親父でないといけない、何かがあるんだろう。
家の中も探る。姉貴はいない。兄貴は親父についていった。レーリエットとナナキ、ロイドは家にいる。
親父がいないと広いベッドだ。そこで大人しく横になっている。親父がいないから、やっとゆっくりと眠れる感じだ。
なのに、そこに、ナナキが入ってきた。
「ルキエル様、逃げましょう!!」
「………逃げ、る?」
言われて、俺は首を傾げる。言われてみれば、確かに、今、逃げる好機だ。だけど、何故か逃げる気にはなれない。それどころか、ここから離れたくない。
「ライホーンがあの男を外に連れ出してくれた。今を逃してはいけません!!」
「やだ、ここにいる」
出たくない。ナナキに引っ張られても、俺は振り払った。ここから出たくない。
ナナキはそんな俺の後ろに手を伸ばす。何かをしているようだが、俺は振り返っても、何も見えない。
だけど、そうされた途端、頭がはっきりする。親父の行為を当然として受け入れていたちょっと前の自分が信じられないほど、気持ち悪い。
「目が覚めましたか?」
「悪い、夢を見てた感じだ」
俺はベッドから離れる。もう、ここには居たくない。さっさときちんとした服に着替えて、部屋を出ると、レーリエットとロイドがいた。
「一人で逃げてください」
俺の考えを読んだナナキがいう。
「けど、このまま置いていったら」
俺がいなくなった後の親父が何をやらかすのかわからない。想像が出来ない。あの狂った親父は、もしかしたら、次はレーリエットかロイドに手を出すかもしれない。
ロイドは幸い、親父似だ。そういうことはない。だけど、レーリエットは可憐で可愛い。まだ幼いが、お袋似だ。
「僕にお任せください。レーリエットを隠し通してみせます。ルキエル様は、逃げてください」
わけがわからない自信を持っていうナナキ。
レーリエットとロイドを見る。レーリエットは、ナナキに言い聞かされているのだろう。両手を握りしめて、俺から距離をとろうとしている。ロイドはというと、レーリエットの手前、俺に駆け寄るのを我慢している感じだ。
「一緒に逃げれば」
「僕たちは足手まといです。置いていってください」
「足手まといになるくらいなら、ここに残ったら危険だろう!! 一緒に逃げよう」
「………あの男はルキエル様しか見えていません。僕は知りませんが、ルキエル様が一番、似ているのでしょう」
「だったら、俺は逃げないほうが」
「ここに居れば、あの男の言いなりで、いいようにされるだけです。そんなこと、僕は望みません」
「ナナキの我儘で、俺は逃げなきゃいけないのか」
笑うしかない。ナナキの言っている事はおかしい。俺が逃げることは、ナナキのためだという。
「僕はまだ、あの男をどうにかする力がありません。ルキエル様が逃げている間に、力をつけてみせます。少しでも長く、逃げてください」
「親父をどうするつもりだ?」
「殺します。ルキエル様にあんなことをしたんです。殺してやる。そのために、時間が必要です」
レーリエットとそう変わらない年頃のナナキは、とんでもないことをいう。子どものくせに、生意気なことをいうな。
「じゃあ、五年くらいは逃げなきゃいけないな」
「そうです。逃げてください。それよりも短くても、どうにか出来るように鍛えます。あの男を殺してみせます」
「………無理だ」
「出来ます!!」
「………」
ナナキはわかっていない。俺は妖精憑きだ。家族に守りの妖精を付けている。家族は皆、知らないが、俺が守っているんだ。
あんなことする親父にも、俺は妖精をつけている。よほどのことがない限り、親父が死ぬことはない。
「逃げて!!」
いつまでも押し問答をしている俺に我慢できなくなったレーリエットが押してくる。
もう、泣きそうな顔をして、俺を家から押し出そうとするレーリエット。まだまだ子どもで、俺の添い寝がないと寝られない、と言っていたくせに、ロイドよりも大人だ。
ロイドはというと、動けない。レーリエットのように、俺を説得するような事はしない。そこは、男と女の違いだ。女のほうが、ませてるんだ。
「わかったわかった。どうにか逃げる」
逃げる先なんてない。だけど、妖精憑きの力を上手に使えば、どうにか逃げ出せるだろう。王都から離れる手段はわからないが、隠れて、機会を見ていればいい。
裏口から出て、どうにか、人がいない所を妖精の導きによって歩いていく。
長い監禁生活の上、食事はそれほど貰っていない。意図的に最低限にされていた。だけど、体のほうは問題なく動くし、お腹もすかない。そこが不思議だ。
気づけば、貧民街を出ていた。どんどんと平民が多い場所となってくる。そこを妖精が導くように連れて行ってくれる。
だけど、逃げる先はない。そう困っていると、妖精は、教会へと連れて行ってくれる。まさか、教会に行くのか? とついていけば、それより先の不思議な場所にたどり着く。
きらきらと光り輝くそこに、俺は足を踏み込む。綺麗な水に触れると、俺に憑いている妖精が大喜びだ。
寒くも暑くもないそこにいても、誰も来ない。水に肩までつかると、悪い何かが俺から離れていくような感じがする。頭まで潜ってみれば、耳に、悲鳴のようなものが聞こえて、慌てて、顔を出した。
水辺より離れた所に、可愛らしい顔立ちの小さい子どもがいた。子どもなのに、大人の顔をしたそれは、俺を忌々しいみたいに睨んできた。体全体から、よくわからない黒い煙を放って、苦痛に顔を歪めているから、心配になって、近寄る。
『来るな!!』
声を聞いてわかる。こいつ、妖精だ。
「お前が、俺になにかやってたんだな」
監禁生活を思い出す。どんどんと俺自身がおかしくなってきていた。最初は、拒絶して、嫌がって、と大変だった。それも、どんどんと親父の行為を受け入れ、喜ぶようになっていた。親父がどこかの妖精憑きを使って、俺自身の意識を操らせたのだろう。そうとしか思えない。
妖精は何も言わない。そのまま、すっと消えていった。戻るべき所があるのだろう。
水から出れば、体は濡れていない。服が前よりも綺麗になったような気がする。
どこなのかはわからないが、妖精が導いてくれた所だ。悪い場所ではない。誰もいないそこは、居心地がいい。俺はしばらく、勝手に居座った。
妖精を使って、情報収集をしながら、この不思議な場所に居座った。空腹はない。体は常に清潔を保たれている。監禁生活が長すぎて、体が鈍ったような気がするので、体を動かしたりしていた。
場所は貧民街の外だから、大っぴらに親父からの捜索はされない。だけど、夜になると、暗闇にまぎれて、俺を探す貧民があちこちと姿を見せていた。だけど、俺がいる場所には、誰も近づかない。教会が近いのもあるが、城にも近いのだ。そこは、貧民たちが忌避していた。
そんな中を情報を集め、どうにか王都の外に出ようと計画するも、大きな問題が出てきた。
「金かー」
どこに行くにしても、金が必要だ。王都の外に出るにしても、身分証だっている。それだって、金を使って偽造するしかない。
いつまでも、このよくわからない場所に居座っているわけにはいかない。気持ちが良い場所ではあるが、俺自身の問題が解決するわけではないのだ。
先が見えない俺は、無為の時間を過ごすしかなかった。
「あれ、こんなトコで、何してんだよ」
鈍くなっていたのだろう。人が近づいてくるのに、気づかなかった。
うずくまっていた俺が見上げてみれば、どこにでもいるような平民の男が見下ろしていた。歳頃は俺とそう変わらない男だ。
「えっと、家出?」
嘘はついていない。なるべく、当たり障りのないことをいう。
平民の男は、俺を上から下までじろじろと見て来た。
「家出じゃ、仕方ないか。ほら、ここに居座ってると、魔法使いに叱られるぞ」
「え、そうなの!?」
「知らないのか。ここは王都の聖域だ。平民も近づいちゃいけないんだぞ。たまたま、俺が見に来たからいいけど、魔法使いだと、大変な目にあうぞ」
「どうしよう」
いい場所なんだ。ここを離れても、行き場所がない。何より、外は、親父の手下たちが、昼間も平民に扮して、俺を探すようになってきた。
「親と喧嘩したのか?」
平民の男は俺の隣りに座って、事情を聞いてきた。何か力になろうとしてくれるのだろう。だけど、話せる内容ではないし、この平民の男には信じられないことだろう。
黙り込んでいると、平民の男は俺の腕を引っ張った。
「行くトコがないなら、しばらく、俺のトコに泊めてやるよ」
「いや、でも」
ここを離れた途端、親父の手下に見つかるだろう。俺はどうしても、離れたくなかった。
「いいからいいから。俺に任せろって」
「んー、わかった」
何故か、この平民の男のことを信じたくなった。俺は引っ張られるままに、この王都の聖域を離れることとなった。
不思議なことに、親父の手下は俺の側を通っても、俺だとは気づかない。街中を普通に歩いていける。
目の前を歩く平民の男に引っ張られるままに連れて行かれたのは、どこにでもある普通の一軒家だ。
「お兄ちゃん!!」
妹らしき子が、平民の男がやってくると、家から出てきた。
「おかえり、今日は早いんだね」
「ただいま。ちょっと、予定が変わったんだ。こいつ、家出して、行くとこがないんだって」
「そうなんだ」
見ず知らずの俺に、妹は警戒心のかけらも見せない。これが平民なんだ、なんて頭の片隅で思ってしまう。貧民だと、こんな危ないことはしない。見ず知らずの人など、例え子どもでも、家にはいれない。
なのに、俺は普通に家に押し込まれた。この平民の男の弟たちと妹たちが、家の中を動き回っている。そんなに部屋数のある家ではない。人の数に対して、小さくて狭い。
だけど、みんな、笑顔だ。俺は座らされると、平民の男は離れていく。物珍しそうに、子どもたちは俺を遠くから見ながら、勉強したり、遊んだり、家の手伝いをしている。
平民の男は、台所に立って、料理をしていた。妹が今日の出来事を平民の男に話しながら手伝っている。
そんな光景を呆然と眺めていると、俺は知らず知らずのうちに、泣き出していた。
「大丈夫? 痛いの?」
子どもたちが気づいて、俺の涙を拭ったり、頭を撫でたりしてくれる。
頭がすっきりしてくる。
「レーリエット!!」
俺は立ち上がって、妹の名前を叫んだ。これまで、親父のことばかりで、兄弟姉妹のことを思い出すことすらなかった。
その事実に、俺はさらに泣いた。なんて、薄情なんだ、と。
うずくまって泣き続ける俺に戸惑う子どもたち。見ていられなくなって、平民の男が俺の側にやってきて、俺の背中をさすった。
「よくわからないけど、辛いことがあるんだな。もう、泣いて、吐き出せばいい」
俺を起こして抱きしめてくれる。男にしては、柔らかい感触がする平民の男だ。あまり、鍛えてないんだな。筋肉すらない感じだ。そんな男に俺は縋りつくように泣いた。
気づいたら、夜だった。泣いて、そのまま寝てしまったんだ。起きれば、平民の男の弟たち妹たちが固まるように眠っている。その側に俺が寝かされていた。起きて、平民の男を探す。
平民の男は、真夜中だというのに、起きていた。適当な椅子に座って、じっと俺を見ていた。連れて来たはいいが、俺は不審者だから、見張ってたんだろうな。
妙な言い訳はしない。その疑いを俺は普通に受け止める。
「大丈夫か?」
だけど、平民の男は、俺のことを心配していた。側に来て、俺の前にしゃがむ。
「親父が、ひどい奴なんだ」
「そうか、それは大変だな。子どもは親を選べない。どうすることも出来ないな」
「そうだな」
仕方がない、と言われて、落ち込む。確かにそうなんだ。
「お袋が死ぬ前までは、そうではなかったんだ」
だけど、親父はその前までは、酷い奴ではなかった。いや、貧民の支配者だから、それなりに酷い奴ではあるが、家族には、まあまあ、優しかった。
「そういうこと、あるよな。お前の母親、物凄い美人だっただろう。見ればわかる。お前、綺麗な感じだもんな」
「男にそれはやめろ」
平民の男にとっては、褒めているのだが、俺にとってはそうではない。
「ダメなんだ。そうなんだ」
「ご、ごめん。その、俺の見た目、お前から見て、そういうふうに感じるんじゃ、仕方がない」
「気を付ける」
反省する平民の男。仕方がない、と俺が言っても、平民の男はそうではない。
「明日には、出てくよ」
俺一人のために、この平民の男は徹夜するつもりなのだろう。
「しばらく、いてくれて構わないよ。ここさ、盗まれて困るものなんてないし」
「そうか?」
昼間の光景を思い出す。いやいや、色々とあるだろう、部屋のあちこちに。
「俺の家族には手を出すなよ」
一瞬だが、この無害そうな平民の男が殺気立った。
俺は改めて、平民の男を見た。どこにでもいそうな平凡な男だ。何か特徴があるわけではない。人畜無害っぽいのに、その身に纏う空気が違う。
俺が怯えて震えているからか、平民の男はすぐに殺気をひっこめる。こいつ、見た目は普通なのに、そうじゃないんだ。気を付けよう。
俺が警戒心を持って、ちょっと離れたからか、平民の男は苦笑する。
「俺にとって、大事なのは家族だ。そこら辺の物を盗んだって、大した事がないんだ。そこだけ、わかってくれればいい」
「盗みなんてしない」
それどころか、言われるまで、そんなことも思いつかなかった。本当におかしい。
親父に監禁されてから、俺はおかしい。貧民としての考え方すら、どこかにいってしまっている。
「あの聖域に長くいると、色々と悪さ出来なるなんだ。そこに、そういうものが吸われるんだ」
「そうか、だからか」
おかしな話だが、納得出来てしまう。随分と長いこと、あの聖域に居座っていた。それだけ、俺自身の悪い考えとか、吸われていったんだろう。
きっと、以前の俺なら、ここで寝ている人たちを脅し、奪うことは普通だ。それが貧民だ。その悪い考えすら、今はない。
悪い考えもなくなって、平和な光景を見ていると、どうしても、思い出してしまう。
「帰らないと」
末の妹レーリエットのことが心配でならない。ナナキには逃げろ、と言われたが、こうやって、他人の家族を見ていると、レーリエットのことを思ってしまう。
やっぱり、レーリエットだけでも連れ出せばよかった。弟のロイドは、男だし、まだガキだから、大丈夫だろう。だけど、レーリエットは外にも出せないほど可憐で可愛い女の子だ。俺を逃がしたことで、レーリエットの身に何かあるんじゃないか、と心配でならない。
「もし、行く所がないなら、俺がどうにかしてやる。その、妹? 姉? も連れてきてもいい」
「どうして?」
つい昨日、たまたま会っただけだ。聖域に勝手に住み着いていた俺をたまたま見つけただけなのに、この男は手を差し伸べてくる。
「あんなに泣いてたんだぞ。そりゃ、助けたいと思うだろう。それが普通だ」
「普通? 普通なんだ」
笑ってしまう。助け合うなんて、貧民ではないな。だって、他人を食い物にするんだ、貧民は。
平民だからだろう。価値観とか考え方が違うんだ。
「そんなこと言ったら、大変なことになるぞ。騙されて、食い物にされる」
「相手にもよる。お前だからだ。その、レーリエット? のこと、大事なんだろう?」
「他にもいる。ナナキ、ロイドも助けないと。姉貴と兄貴は、もういい年頃だから、どうにか出来るだろう」
「連れて来いよ。こう見えても、俺、すごいんだぜ」
「ありがとう」
だけど、それは出来ない。ここに逃げたら、親父が黙っていない。ここも、大変なことになるだろう。
俺は大人しく横になる。その隣りに、平民の男も横になった。
「寝るんだ」
「明日も仕事だ。俺の親父は酷いんだぜ。俺に仕事させて、親父は遊びほうけてるんだよ」
「すごいんだな。家族支えてるんだ」
「お前だって、すごいじゃないか。妹と弟のことを助けよう、なんて考えてる。普通は、自分本位なんだよ。家族だからって、救おうなんて思えない」
「頑張ってみる」
久しぶりに、深く眠った。
そして、朝、起きたら、家には誰もいなかった。俺の側に、手紙と金が置かれていた。金はかなりの額だ。こんなのをぽんと置いていく平民の男は、一体、何者なんだ?
だけど、俺は有難く、それを受け取った。手紙には、”また来いよ”みたいなことが書いてあった。その手紙を俺は大事に懐にいれて、その家を出た。
だけど、家を出てすぐに、俺は人の目には見えない妖精に囲まれた。親父は、誰かから妖精憑きを借りてまで、俺を捜索していた。
俺も妖精憑きだが、妖精の使い方がわからない。あっけなく、俺は妖精に捕まり、連れ戻された。
だけど、離れるまでが長い。
「あ、ああ、そんな、やぁ」
女のように身もだえして、親父の愛撫を受ける俺。長い軟禁生活で与えられる愛撫に、体は随分と喜ぶようになった。気持ち悪い、と感じていたものが、気持ち良いと感じるようになっていた。それどころか、俺のほうから親父に答えるようになってきた。深い口づけをされれば、舌で答えるようになっていた。それすらも、気持ち良い。
痛いことはされていない。ちょっと下半身に触れられると、痛がれば、親父はすぐにやめてくれる。ちょろいな。
そうして、愛撫だけを受け、どうにか、親父にそれ以上させないようにして、逃れていた。
その日も、長い愛撫を受けて、何か感じて、がくがくと体全体を震わせると、親父は嬉しそうに笑う。
「上手にいけるようになったな」
「ん、うん」
口づけして、舌を絡めて、としてくる親父。それすら、気持ちよくて、親父の頭に腕を回してしまう。
「親父、時間が」
兄ライホーンが急かした。不機嫌になる親父だが、仕方なく、俺をベッドに残し、家を出ていった。
親父がいなくなったのかことを確認するために、妖精憑きの力を使う。俺が妖精憑きだと知っているのは、死んだお袋だけだ。妖精憑きの力を誰にもいうな、とお袋にきつく約束させられた。だけど、妖精憑きの力、使い方がよくわからないで、なんとなくだ。それでも、出来ることはある。
俺は妖精を使って、外の様子を見てみる。貴族と親父が何か話している。そして、家から離れて行った。親父でないといけない、何かがあるんだろう。
家の中も探る。姉貴はいない。兄貴は親父についていった。レーリエットとナナキ、ロイドは家にいる。
親父がいないと広いベッドだ。そこで大人しく横になっている。親父がいないから、やっとゆっくりと眠れる感じだ。
なのに、そこに、ナナキが入ってきた。
「ルキエル様、逃げましょう!!」
「………逃げ、る?」
言われて、俺は首を傾げる。言われてみれば、確かに、今、逃げる好機だ。だけど、何故か逃げる気にはなれない。それどころか、ここから離れたくない。
「ライホーンがあの男を外に連れ出してくれた。今を逃してはいけません!!」
「やだ、ここにいる」
出たくない。ナナキに引っ張られても、俺は振り払った。ここから出たくない。
ナナキはそんな俺の後ろに手を伸ばす。何かをしているようだが、俺は振り返っても、何も見えない。
だけど、そうされた途端、頭がはっきりする。親父の行為を当然として受け入れていたちょっと前の自分が信じられないほど、気持ち悪い。
「目が覚めましたか?」
「悪い、夢を見てた感じだ」
俺はベッドから離れる。もう、ここには居たくない。さっさときちんとした服に着替えて、部屋を出ると、レーリエットとロイドがいた。
「一人で逃げてください」
俺の考えを読んだナナキがいう。
「けど、このまま置いていったら」
俺がいなくなった後の親父が何をやらかすのかわからない。想像が出来ない。あの狂った親父は、もしかしたら、次はレーリエットかロイドに手を出すかもしれない。
ロイドは幸い、親父似だ。そういうことはない。だけど、レーリエットは可憐で可愛い。まだ幼いが、お袋似だ。
「僕にお任せください。レーリエットを隠し通してみせます。ルキエル様は、逃げてください」
わけがわからない自信を持っていうナナキ。
レーリエットとロイドを見る。レーリエットは、ナナキに言い聞かされているのだろう。両手を握りしめて、俺から距離をとろうとしている。ロイドはというと、レーリエットの手前、俺に駆け寄るのを我慢している感じだ。
「一緒に逃げれば」
「僕たちは足手まといです。置いていってください」
「足手まといになるくらいなら、ここに残ったら危険だろう!! 一緒に逃げよう」
「………あの男はルキエル様しか見えていません。僕は知りませんが、ルキエル様が一番、似ているのでしょう」
「だったら、俺は逃げないほうが」
「ここに居れば、あの男の言いなりで、いいようにされるだけです。そんなこと、僕は望みません」
「ナナキの我儘で、俺は逃げなきゃいけないのか」
笑うしかない。ナナキの言っている事はおかしい。俺が逃げることは、ナナキのためだという。
「僕はまだ、あの男をどうにかする力がありません。ルキエル様が逃げている間に、力をつけてみせます。少しでも長く、逃げてください」
「親父をどうするつもりだ?」
「殺します。ルキエル様にあんなことをしたんです。殺してやる。そのために、時間が必要です」
レーリエットとそう変わらない年頃のナナキは、とんでもないことをいう。子どものくせに、生意気なことをいうな。
「じゃあ、五年くらいは逃げなきゃいけないな」
「そうです。逃げてください。それよりも短くても、どうにか出来るように鍛えます。あの男を殺してみせます」
「………無理だ」
「出来ます!!」
「………」
ナナキはわかっていない。俺は妖精憑きだ。家族に守りの妖精を付けている。家族は皆、知らないが、俺が守っているんだ。
あんなことする親父にも、俺は妖精をつけている。よほどのことがない限り、親父が死ぬことはない。
「逃げて!!」
いつまでも押し問答をしている俺に我慢できなくなったレーリエットが押してくる。
もう、泣きそうな顔をして、俺を家から押し出そうとするレーリエット。まだまだ子どもで、俺の添い寝がないと寝られない、と言っていたくせに、ロイドよりも大人だ。
ロイドはというと、動けない。レーリエットのように、俺を説得するような事はしない。そこは、男と女の違いだ。女のほうが、ませてるんだ。
「わかったわかった。どうにか逃げる」
逃げる先なんてない。だけど、妖精憑きの力を上手に使えば、どうにか逃げ出せるだろう。王都から離れる手段はわからないが、隠れて、機会を見ていればいい。
裏口から出て、どうにか、人がいない所を妖精の導きによって歩いていく。
長い監禁生活の上、食事はそれほど貰っていない。意図的に最低限にされていた。だけど、体のほうは問題なく動くし、お腹もすかない。そこが不思議だ。
気づけば、貧民街を出ていた。どんどんと平民が多い場所となってくる。そこを妖精が導くように連れて行ってくれる。
だけど、逃げる先はない。そう困っていると、妖精は、教会へと連れて行ってくれる。まさか、教会に行くのか? とついていけば、それより先の不思議な場所にたどり着く。
きらきらと光り輝くそこに、俺は足を踏み込む。綺麗な水に触れると、俺に憑いている妖精が大喜びだ。
寒くも暑くもないそこにいても、誰も来ない。水に肩までつかると、悪い何かが俺から離れていくような感じがする。頭まで潜ってみれば、耳に、悲鳴のようなものが聞こえて、慌てて、顔を出した。
水辺より離れた所に、可愛らしい顔立ちの小さい子どもがいた。子どもなのに、大人の顔をしたそれは、俺を忌々しいみたいに睨んできた。体全体から、よくわからない黒い煙を放って、苦痛に顔を歪めているから、心配になって、近寄る。
『来るな!!』
声を聞いてわかる。こいつ、妖精だ。
「お前が、俺になにかやってたんだな」
監禁生活を思い出す。どんどんと俺自身がおかしくなってきていた。最初は、拒絶して、嫌がって、と大変だった。それも、どんどんと親父の行為を受け入れ、喜ぶようになっていた。親父がどこかの妖精憑きを使って、俺自身の意識を操らせたのだろう。そうとしか思えない。
妖精は何も言わない。そのまま、すっと消えていった。戻るべき所があるのだろう。
水から出れば、体は濡れていない。服が前よりも綺麗になったような気がする。
どこなのかはわからないが、妖精が導いてくれた所だ。悪い場所ではない。誰もいないそこは、居心地がいい。俺はしばらく、勝手に居座った。
妖精を使って、情報収集をしながら、この不思議な場所に居座った。空腹はない。体は常に清潔を保たれている。監禁生活が長すぎて、体が鈍ったような気がするので、体を動かしたりしていた。
場所は貧民街の外だから、大っぴらに親父からの捜索はされない。だけど、夜になると、暗闇にまぎれて、俺を探す貧民があちこちと姿を見せていた。だけど、俺がいる場所には、誰も近づかない。教会が近いのもあるが、城にも近いのだ。そこは、貧民たちが忌避していた。
そんな中を情報を集め、どうにか王都の外に出ようと計画するも、大きな問題が出てきた。
「金かー」
どこに行くにしても、金が必要だ。王都の外に出るにしても、身分証だっている。それだって、金を使って偽造するしかない。
いつまでも、このよくわからない場所に居座っているわけにはいかない。気持ちが良い場所ではあるが、俺自身の問題が解決するわけではないのだ。
先が見えない俺は、無為の時間を過ごすしかなかった。
「あれ、こんなトコで、何してんだよ」
鈍くなっていたのだろう。人が近づいてくるのに、気づかなかった。
うずくまっていた俺が見上げてみれば、どこにでもいるような平民の男が見下ろしていた。歳頃は俺とそう変わらない男だ。
「えっと、家出?」
嘘はついていない。なるべく、当たり障りのないことをいう。
平民の男は、俺を上から下までじろじろと見て来た。
「家出じゃ、仕方ないか。ほら、ここに居座ってると、魔法使いに叱られるぞ」
「え、そうなの!?」
「知らないのか。ここは王都の聖域だ。平民も近づいちゃいけないんだぞ。たまたま、俺が見に来たからいいけど、魔法使いだと、大変な目にあうぞ」
「どうしよう」
いい場所なんだ。ここを離れても、行き場所がない。何より、外は、親父の手下たちが、昼間も平民に扮して、俺を探すようになってきた。
「親と喧嘩したのか?」
平民の男は俺の隣りに座って、事情を聞いてきた。何か力になろうとしてくれるのだろう。だけど、話せる内容ではないし、この平民の男には信じられないことだろう。
黙り込んでいると、平民の男は俺の腕を引っ張った。
「行くトコがないなら、しばらく、俺のトコに泊めてやるよ」
「いや、でも」
ここを離れた途端、親父の手下に見つかるだろう。俺はどうしても、離れたくなかった。
「いいからいいから。俺に任せろって」
「んー、わかった」
何故か、この平民の男のことを信じたくなった。俺は引っ張られるままに、この王都の聖域を離れることとなった。
不思議なことに、親父の手下は俺の側を通っても、俺だとは気づかない。街中を普通に歩いていける。
目の前を歩く平民の男に引っ張られるままに連れて行かれたのは、どこにでもある普通の一軒家だ。
「お兄ちゃん!!」
妹らしき子が、平民の男がやってくると、家から出てきた。
「おかえり、今日は早いんだね」
「ただいま。ちょっと、予定が変わったんだ。こいつ、家出して、行くとこがないんだって」
「そうなんだ」
見ず知らずの俺に、妹は警戒心のかけらも見せない。これが平民なんだ、なんて頭の片隅で思ってしまう。貧民だと、こんな危ないことはしない。見ず知らずの人など、例え子どもでも、家にはいれない。
なのに、俺は普通に家に押し込まれた。この平民の男の弟たちと妹たちが、家の中を動き回っている。そんなに部屋数のある家ではない。人の数に対して、小さくて狭い。
だけど、みんな、笑顔だ。俺は座らされると、平民の男は離れていく。物珍しそうに、子どもたちは俺を遠くから見ながら、勉強したり、遊んだり、家の手伝いをしている。
平民の男は、台所に立って、料理をしていた。妹が今日の出来事を平民の男に話しながら手伝っている。
そんな光景を呆然と眺めていると、俺は知らず知らずのうちに、泣き出していた。
「大丈夫? 痛いの?」
子どもたちが気づいて、俺の涙を拭ったり、頭を撫でたりしてくれる。
頭がすっきりしてくる。
「レーリエット!!」
俺は立ち上がって、妹の名前を叫んだ。これまで、親父のことばかりで、兄弟姉妹のことを思い出すことすらなかった。
その事実に、俺はさらに泣いた。なんて、薄情なんだ、と。
うずくまって泣き続ける俺に戸惑う子どもたち。見ていられなくなって、平民の男が俺の側にやってきて、俺の背中をさすった。
「よくわからないけど、辛いことがあるんだな。もう、泣いて、吐き出せばいい」
俺を起こして抱きしめてくれる。男にしては、柔らかい感触がする平民の男だ。あまり、鍛えてないんだな。筋肉すらない感じだ。そんな男に俺は縋りつくように泣いた。
気づいたら、夜だった。泣いて、そのまま寝てしまったんだ。起きれば、平民の男の弟たち妹たちが固まるように眠っている。その側に俺が寝かされていた。起きて、平民の男を探す。
平民の男は、真夜中だというのに、起きていた。適当な椅子に座って、じっと俺を見ていた。連れて来たはいいが、俺は不審者だから、見張ってたんだろうな。
妙な言い訳はしない。その疑いを俺は普通に受け止める。
「大丈夫か?」
だけど、平民の男は、俺のことを心配していた。側に来て、俺の前にしゃがむ。
「親父が、ひどい奴なんだ」
「そうか、それは大変だな。子どもは親を選べない。どうすることも出来ないな」
「そうだな」
仕方がない、と言われて、落ち込む。確かにそうなんだ。
「お袋が死ぬ前までは、そうではなかったんだ」
だけど、親父はその前までは、酷い奴ではなかった。いや、貧民の支配者だから、それなりに酷い奴ではあるが、家族には、まあまあ、優しかった。
「そういうこと、あるよな。お前の母親、物凄い美人だっただろう。見ればわかる。お前、綺麗な感じだもんな」
「男にそれはやめろ」
平民の男にとっては、褒めているのだが、俺にとってはそうではない。
「ダメなんだ。そうなんだ」
「ご、ごめん。その、俺の見た目、お前から見て、そういうふうに感じるんじゃ、仕方がない」
「気を付ける」
反省する平民の男。仕方がない、と俺が言っても、平民の男はそうではない。
「明日には、出てくよ」
俺一人のために、この平民の男は徹夜するつもりなのだろう。
「しばらく、いてくれて構わないよ。ここさ、盗まれて困るものなんてないし」
「そうか?」
昼間の光景を思い出す。いやいや、色々とあるだろう、部屋のあちこちに。
「俺の家族には手を出すなよ」
一瞬だが、この無害そうな平民の男が殺気立った。
俺は改めて、平民の男を見た。どこにでもいそうな平凡な男だ。何か特徴があるわけではない。人畜無害っぽいのに、その身に纏う空気が違う。
俺が怯えて震えているからか、平民の男はすぐに殺気をひっこめる。こいつ、見た目は普通なのに、そうじゃないんだ。気を付けよう。
俺が警戒心を持って、ちょっと離れたからか、平民の男は苦笑する。
「俺にとって、大事なのは家族だ。そこら辺の物を盗んだって、大した事がないんだ。そこだけ、わかってくれればいい」
「盗みなんてしない」
それどころか、言われるまで、そんなことも思いつかなかった。本当におかしい。
親父に監禁されてから、俺はおかしい。貧民としての考え方すら、どこかにいってしまっている。
「あの聖域に長くいると、色々と悪さ出来なるなんだ。そこに、そういうものが吸われるんだ」
「そうか、だからか」
おかしな話だが、納得出来てしまう。随分と長いこと、あの聖域に居座っていた。それだけ、俺自身の悪い考えとか、吸われていったんだろう。
きっと、以前の俺なら、ここで寝ている人たちを脅し、奪うことは普通だ。それが貧民だ。その悪い考えすら、今はない。
悪い考えもなくなって、平和な光景を見ていると、どうしても、思い出してしまう。
「帰らないと」
末の妹レーリエットのことが心配でならない。ナナキには逃げろ、と言われたが、こうやって、他人の家族を見ていると、レーリエットのことを思ってしまう。
やっぱり、レーリエットだけでも連れ出せばよかった。弟のロイドは、男だし、まだガキだから、大丈夫だろう。だけど、レーリエットは外にも出せないほど可憐で可愛い女の子だ。俺を逃がしたことで、レーリエットの身に何かあるんじゃないか、と心配でならない。
「もし、行く所がないなら、俺がどうにかしてやる。その、妹? 姉? も連れてきてもいい」
「どうして?」
つい昨日、たまたま会っただけだ。聖域に勝手に住み着いていた俺をたまたま見つけただけなのに、この男は手を差し伸べてくる。
「あんなに泣いてたんだぞ。そりゃ、助けたいと思うだろう。それが普通だ」
「普通? 普通なんだ」
笑ってしまう。助け合うなんて、貧民ではないな。だって、他人を食い物にするんだ、貧民は。
平民だからだろう。価値観とか考え方が違うんだ。
「そんなこと言ったら、大変なことになるぞ。騙されて、食い物にされる」
「相手にもよる。お前だからだ。その、レーリエット? のこと、大事なんだろう?」
「他にもいる。ナナキ、ロイドも助けないと。姉貴と兄貴は、もういい年頃だから、どうにか出来るだろう」
「連れて来いよ。こう見えても、俺、すごいんだぜ」
「ありがとう」
だけど、それは出来ない。ここに逃げたら、親父が黙っていない。ここも、大変なことになるだろう。
俺は大人しく横になる。その隣りに、平民の男も横になった。
「寝るんだ」
「明日も仕事だ。俺の親父は酷いんだぜ。俺に仕事させて、親父は遊びほうけてるんだよ」
「すごいんだな。家族支えてるんだ」
「お前だって、すごいじゃないか。妹と弟のことを助けよう、なんて考えてる。普通は、自分本位なんだよ。家族だからって、救おうなんて思えない」
「頑張ってみる」
久しぶりに、深く眠った。
そして、朝、起きたら、家には誰もいなかった。俺の側に、手紙と金が置かれていた。金はかなりの額だ。こんなのをぽんと置いていく平民の男は、一体、何者なんだ?
だけど、俺は有難く、それを受け取った。手紙には、”また来いよ”みたいなことが書いてあった。その手紙を俺は大事に懐にいれて、その家を出た。
だけど、家を出てすぐに、俺は人の目には見えない妖精に囲まれた。親父は、誰かから妖精憑きを借りてまで、俺を捜索していた。
俺も妖精憑きだが、妖精の使い方がわからない。あっけなく、俺は妖精に捕まり、連れ戻された。
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