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嫉妬と衝動
賢者の蟠り
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次の日は、本当にルキエルは妹レーリエットと貧民ナナキと三人で、街に行ってしまった。本当に、私のことはどうだっていいんだな、あの男は!!
色々と言いたいが、私は大人しく貸し切りの露天風呂で大人しくしていた。家臣たちも、使用人たちも、子飼いの妖精憑きたちも、皆、保養所から街へと出て行ったので、保養所にいるのは、私一人である。
なのに、私は何か感じたため、仕方なく、外に出て行った。
「これは、テラス様」
私は慌てて膝をついた。まさか、賢者テラスが来るとは、予想外だった。
いや、もしかしたら皇族でもいるか、と私は周囲を素早く見回したが、テラスのみだ。
「立ってください。本来ならば、私はここに来てはいけないこととなっています」
「捕縛した妖精憑きに、何かありましたか?」
わざわざテラスが足を運んだから、終わったはずの仕事の苦情かと思った。
「いいえ。あなたのお陰で、大した障害もなく、今は牢で大人しくしていますよ」
「では、一体」
「………サツキの子が来ていると聞きました」
一番、避けていた事が、とうとう、起きてしまった。
私は皇族ルイには、サツキの夫のことも、サツキの子のことも、どこにいるのか、教えていない。王都の貧民街の支配者がアルロであることも、私は秘密にしている。
正直に言えば、賢者テラスが本気になれば、アルロの居場所も、サツキの五人の子のことも見つけ出せるだろう、と私は思っていた。
私が今回、保養所を使用することで、サツキの子を連れて行く話を皇族ルイに一応、報告した。皇族の保養所を使用するので、どこの誰を連れて行くか、そこだけは嘘偽りなく報告しなければならなかったのだ。
たぶん、ルイがテラスに教えたのだろう。
賢者テラスにとって、亡くなった伯爵令嬢サツキは特別な存在だという話だ。表には一切、そのことは出ないので、誰も知らない。私だって、サツキの復讐のために動いて、テラスに関わって、やっと皇族ルイから知らされたのだ。
妖精憑きには、稀にだが、特別だという人がいるという。ほとんどの妖精憑きは、そういう人と出会うことはない。
賢者テラスにとって、伯爵令嬢サツキは、特別な人だ。そこらの皇族よりも、サツキは大事に囲いたいばかりだったという。だが、妖精憑きがそうでも、相手の人はそうとは限らない。サツキは、テラスに想われながらも、逃げたのだ。
結局、サツキが賢者テラスのことをどう思っていたのか、死んでしまったので、不明である。
しかし、テラスの執着は強い。サツキの子が気になったのだ。
「お帰りください」
だが、私はテラスに会わせることを拒否した。テラスの執着のために、ルキエルを取られると思ったからだ。
権力や、その化け物じみた力で、テラスは私に命じればいいのだ。しかし、テラスは私の拒絶に怒ったりしなかった。
「決して、囲ったりしません。一目、見てみたい」
「しかし、あなたの存在は、一歩間違えると、妖精憑きたちに気づかれてしまいます」
「そこは心配ありません。力を隠します」
「私には、漏れて感じるんです。それに、元妖精がいます。本当に、危険です」
「そんなものまでいるのですか!? どこまで隠しているのか、今すぐ、白状しなさい」
「私は好きで関わっているわけではない!!」
テラスは帝国のために尋問を始めるが、私はもう、やけで叫んだ。
「サツキとあの男に関わって、私は散々だ。元妖精だって、いつの間にかいたんだ。本当に、あの男、どこまでも問題事を引き寄せて、大変なんだ!!!」
「それは、また、あなたが大変というのだから、相当な事なのでしょうね」
「だから、帰ってください!! 妖精憑きの相手は、しばらくしたくない!!!」
「落ち着いて。今回は、私個人ですから、帝国は一切、関わりません。だから、一目だけでも」
「………わかりました。ともかく、力を隠してください。勘がいい奴には、あなたの力はわかります」
「わかりました。妖精は聖域に待機させます」
「そんなことも出来るのか!?」
「そこら辺の野良の妖精憑きが持つ妖精とは、知能が違います。私ほどの力ある妖精憑きの妖精は、高い知能を有していますから。これでいいでしょう」
認識阻害の魔法を使われているが、あのとんでもない威圧感はなくなった。そうか、力の強い妖精のせいで、これまで、私は怖い思いをしていたわけか。
しかし、ここまで威圧感がなくなると、違う意味で心配になる。
「妖精なしで、大丈夫ですか? その、万が一のことがあっても、私が完全に守り切れるわけではありませんよ」
「そこは心配ありません。私は、今も騎士団に混ざって鍛えています。私は魔法よりも、拳のほうが先に出ます。魔法使いでも、私の拳の前では無力ですよ」
噂では聞いていたが、本当なんだ。
この見た目は落ち着いた美男子のテラスだが、物凄い短気だという。言葉よりも、魔法よりも、先に出るのは拳だ。魔法使いの魔法が発動する前に、テラスはその拳で叩きのめすのだ。結果、どの魔法使いでも、テラスには勝てないという。
そこまでの実力だ。本当に、逆らってはいけないな。今は、テラス、その腕っぷしで私を脅す、ということは考えていない。そこが、世間知らずの魔法使いだな。ちょっと抜けている所を垣間見せるテラスに、私は安心を感じた。
「服も変えましょう。その認識阻害の魔法は、相手に警戒されてしまいますから、やめましょう。フードでも被っていても、こんな観光地ですから、誰も気にしませんよ」
「そうですか。では、あなたに従いましょう」
結局、今日も私はのんびりさせてもらえないな。
使用人たちもいないので、私の服を適当にテラスに渡した。一応、体格は私とテラス、よく似ているのだ。
認識阻害を外して、私の服を着るテラスは、あれだ、物凄い美男子だな。どんな服着ても似合うよ。私の服でないみたいだ。いや、それなりにいい値段の服だが、テラスが着るだけで、さらに高級品だな。
テラスは、私の服を着て、微妙な表情を見せる。
「小さいですか?」
「いえ。そういえば、あなたのことを気に入っている妖精憑きがいますね。その匂いつけの名残を感じます。これはまた、随分だな」
「………」
どうしよう。それやったの、サツキの子であるルキエルだよ。
よくよく考えれば、ルキエルを一目見せた時のテラスの反応が怖い。他の四人の子は問題ない。ほら、私はきちんと距離をとっている。
しかし、ルキエルはそうではない。ルキエルと私は、閨事するまでの仲だ。これは、一歩間違えると、私はテラスに殺されるな。
だが、今更、「紹介したくない」なんて言えない。テラス、とても楽しみみたいな顔をしている。
仕方なく、私は覚悟を決めた。私の寿命なんて、どうせ、そうないだろう。内臓ボロボロだから、殺される時は、痛くないようにお願いしよう。
「皆、サツキの血族だけあって、目立ちますから、すぐに見つかりますよ」
「サツキに似ていますか?」
「サツキの血族というだけですね。アルロに似ている子もいます」
「ぜひ、見てみたい。アルロと夫婦であった事実をこの目で確かめたい」
「わかりました」
色々と、覚悟を持ってテラスはやってきたのだろう。私はテラスと並んで、街へと歩き出す。
しばらく歩けば、悪目立ちするリンネットと、彼女の監視という名目で買い物に付き合う養子オクトが並んで歩いていた。
「そういうことか」
リンネットを見て、テラスは苦い顔をする。リンネットは、サツキの義妹クラリッサ寄りの容姿なのだ。だが、サツキの子だけあって、とても綺麗だ。
リンネットとオクトの後ろには、荷物持ちにさせられているライホーンとロイドがいた。うわ、これは気の毒だ。
ライホーンとロイドは、アルロ寄りだ。これを見て、テラスは清々しい顔を見せた。これで、サツキとアルロは夫婦関係だったとわかるだろう。
「彼らの買い物は、全て、私が支払いましょう」
「リンネットの分は、私の養子が支払っているので」
物凄く上機嫌のオクトは、リンネットに貢いでいるのだろう。オクト、人のいい笑顔をしているが、獲物を狙うような目だ。本当に、オクト、趣味が悪いな!!
なんとなく、オクトがリンネットに好意を寄せていることを察したテラスは、それ以上、強く言うことはなかった。リンネットが身に着ける物全てをオクトが揃えることで、囲っている気分になってるんだよ。そういう気持ち、妖精憑きであるテラスはよく理解出来るのだろう。
いつもだったら、オクト、テラスの存在を感じ取るのだが、妖精がいないので、オクトは普通に横切っていった。
次はルキエルとレーリエットを探していると、本当に、とんでもないことをしてくれた。
「あんた、引きこもってたんじゃないのかよ!!」
ルキエルの奴、よりによって、テラスの後ろから抱きついてきたのだ。
テラスは驚いて振り返る。顔を隠すようにフードつきの外套を身に着けているというのに、ルキエル、どうして、よりによってテラスのほうに抱きつくわけ!?
ルキエル、力いっぱい、テラスに抱きつくも、さすがに体格が違うから、すぐに離れた。そして、隣りで驚愕している私を見て、間違えたことに気づいた。
「あ、ご、ごめん!! あんたの服をこの人が着てるから、間違えて」
「………いいですよ」
顔を見せないようにして、テラスはルキエルのほうに体を向けた。そして、ルキエルを一目見て、息を飲んだ。
ルキエルは本当にサツキによく似ているのだ。体を鍛えられなかったため、男とも女とも言えない体躯だ。
許してもらえて、ルキエルは安心したように笑顔を見せた。
「この人は、あんたの友達?」
「お忍び中の皇族だ」
「っ!?」
途端、ルキエルは私からも、テラスからも距離をとった。
「し、失礼、しま、した」
あまりに怯えるので、テラスは苦笑する。
「お忍びですから、そんなに畏まらなくていいですよ。楽しんでいた所に、邪魔をしてしまいましたね」
「ありがとうございます」
テラスが許すと、ルキエルは綺麗な礼をする。それを見て、テラスは懐かしそうに目を細めた。そう、ルキエルの所作一つ、サツキの血筋を感じさせるのだ。
ルキエルは一時期、我が家で色々と教育した。だから、それなりの地位の者を相手にする時の礼儀や、手紙の書き方はしっかりとしていた。ルキエルはそういう所でも、アルロを支えていた。
「お兄ちゃん!!」
「ルキエル様!!」
私が街に出たから、ルキエルが一人で行動したのだろう。レーリエットとナナキが走ってやってきた。
テラスはレーリエットを見て、また驚いた。レーリエットは清楚華憐な美少女だ。サツキは、普段、悪女のようにふるまっていたが、それは、そういう化粧をして、演じていたにすぎない。そういうものを取り払うと、レーリエットのようになるのだ。
レーリエットはルキエルの腕にしがみつくと、警戒するようにテラスを見た。私と一緒にいるから、何か感じるのだろう。
「ルキエル、一人で行動してはいけない、とアルロに言われただろう」
「あんたが街に来るから、様子見に来ただけだ。ちょっと離れただけだから、いいだろう」
「私は、客人の案内がある。もう、私に近づくんじゃない」
「わかった」
テラスを皇族と紹介したから、ルキエルは素直に頷いて、レーリエットとナナキを引き連れて、離れて行った。
テラスは、名残惜しそうにルキエルとレーリエットの背中を見送った。やはり、あの二人は、特別に感じるのだろう。
「サツキは、本当に、アルロと夫婦をしていたのですね。あそこまで似た子では、私だって納得します」
「よく我慢しましたね」
ルキエルとレーリエットを前にして、テラスが動き出さなかったことには驚いた。私でさえ、ルキエルには衝動を動かされてしまうというのに。
テラスは私を見て、苦笑した。
「あの男が、あなたの妖精憑きですね」
「いえ、そういうわけでは」
「ここまで匂い付けされているから、わかりますよ。あの男には、自覚はありますか?」
「いや、だから、そういうのではありません。ルキエルは私のことを玩具と見ているだけです」
テラスの勘違いを訂正する。とても、テラスがサツキに向ける物と同等とは思えない。
「無自覚でしょう。そういうこと、実際にありますよ。あの男は若いから、わからないのでしょうね」
「………冗談はやめてください。勘違いしてしまいます」
「でなければ、匂い付けなんてしませんよ。あれは、特別な相手にしかしません。服にまでするのは、いつ来てもわかるようにするためですよ。可愛らしい、妖精憑きの独占欲です」
「………」
私よりも遥かに年上の、経験豊かな妖精憑きであるテラスがいうことは、本当だろう。
これまで、否定的だった私は、テラスに言われて、体の奥底がかっと熱くなるものを感じた。だが、すぐに冷めた。
泣きたくなった。私はテラスと同じだ。
サツキは、最後まで復讐に憑りつかれていた。テラスをも利用したのだ。
ルキエルも同じだ。自らの不幸に復讐心を燃やしている。その復讐のために、私をも利用しているのだ。
「ありがとうございます。サツキの子を見れて良かったです」
「もう、満足なんですか? 囲いたいとか、そういう衝動は起きたりしませんか?」
「いくら似ているといっても、別物ですよ。あの男は、サツキに似た所がありますが、それだけです。ただ、サツキが子まで作って、女としての幸福を得られていた、という結果を知りたかっただけです。私では、サツキを幸せには出来ませんでした。私は、結局、間違えました。本当に、サツキには敵わなかった」
テラスなりに、心の整理がついたようだった。
私は、今のテラスを目に焼き付けるように見た。将来、私はこうなるはずだった。
しかし、私の寿命はそうない。内臓全てが手の施しようがないほど、壊れてしまっているのだ。ルキエルは妖精憑きだから、長く生きることとなるだろう。
テラスは残された側だ。だから、気になった。
「サツキが先に亡くなって、どう感じましたか?」
「喪失感は相当なものです。それに、私はサツキを囲うのを失敗しました。サツキに捨てられたようなものです。普段は帝国のことに集中していますが、油断すると、その事で、酷く後悔します。自らの情けなさに、泣きたくなることもありますよ」
「そういうものですか」
「ずっと引きずりますよ。寿命が長い分、はやく死を迎えたいと考えてしまいます。囲えなかったから、その喪失感が酷いものですね。囲えていたら、違っていたでしょう。あの男は、あなたを上手に囲っていますから、大丈夫ですよ」
「………」
大丈夫でない。ルキエルは、私を無意識に囲っているように見えているだけだ。
まだ、妙な感覚が残っていて、ルキエルは私を街中で探したにすぎない。もう少しすれば、以前の、距離感のあるルキエルに戻る。
たまたま、妖精の万能薬で回復した私に、別の妖精憑きがいると勘違いしたルキエルが、嫉妬しただけだ。それも、お気に入りの玩具を取られるかも、という程度だろう。
テラスから、サツキの出会いについて、ちょっとした世間話ついでに聞いたことがある。テラスは一目見て、サツキに魅入られたという。しかし、ルキエルは、私に数度会っていても、そんな様子はなかった。私との関係も、互いの興味本位だ。
私は、ルキエルの外見があまりにもサツキに似ていたからだ。今は、そうではないが、きっかけは、サツキだ。ルキエルは、本当に気まぐれだ。私を誘惑しただけだ。
私は心を落ち着かせた。まずは、客人であるテラスの接待だ。
「これから、どうしますか? せっかく、こちらまで来たのですから、温泉でも入って行ったらどうですか」
「いえ、もう帰ります。サツキの子を見て、満足しました。もし、サツキの子が身分を望むようなら、力になります」
「その時は、よろしくお願いします」
絶対にありえないことだが、私は当たり障りのない返事をした。
兄弟姉妹と過ごせばいいというのに、ルキエルは養子オクトの元にやってきた。
「ルキエル、きちんと戻るんだぞ。また、妹と、あの貧民がここにやってきてしまう」
「え、オクトのトコで、泊まるつもりなんだけど」
「聞いてないよ!!」
「今、言った」
オクトは驚愕して、私を伺い見る。別に、オクトが何かやったわけではないことは、私だってわかる。
「どうして、そういう話になるんだ!?」
オクトはルキエルに掴みかかって責めた。そう言いたくなるよな。ルキエル、我が家の都合とか、全く無視だから。
まさか、拒否ぎみの反応をされるとは思ってもいなかったルキエルは、ちょっと拗ねた。
「あいつらとは、いつだって会えるけど、オクトはほら、滅多に会えないから」
「一緒の部屋で寝るのはイヤだからな。僕がイヤだ」
「よし、徹夜しよう」
「追い出すからな」
「えー、一か月くらい、寝なくったって、大丈夫だって」
「僕はただの人だよ!! 妖精憑きと一緒にするな!!!」
「冗談冗談。部屋に戻るから」
冗談には聞こえないんだな。
私が黙ってルキエルとオクトのやり取りを見ていた。ルキエル、だいぶ、私と距離をとってきた。私から、怖いこともされているから、これが普通なんだ。
「なあ、今日、来た皇族って、妖精憑きだよな」
「いや、皇族だが」
突然、ルキエルがテラスの正体を見破るようなことを話すので、私は誤魔化した。
ルキエルはただ、感じただけだろう。首を傾げる。
「妖精憑きなら、僕だって気づくよ。義父上と一緒にいた人は、そういう感じじゃなかった」
オクト、リンネットと楽しく買い物していたわけではなかった。きちんと、私がテラスを連れて横切ったことに気づいていながら、あえて、無視したのだ。
オクトがそう言っても、ルキエルは首を傾げる。
「なんか、妙な感じがしたんだけどな」
「ルキエルは、どうして、皇族だって知ってるんだ?」
「オクトの養父と間違えて、抱きついた」
「どうして間違えちゃったの!?」
「その皇族が、オクトの養父の服着てたんだよ。いつ来てもわかるように、服に匂いつけてたから、間違えたんだ」
「そんな、義父上の服に匂い付けって。どうして、そんなことしてるの」
「………なんとなく。理由なんてない。したいから、してるだけだ。いいじゃん、ただの人にはわからない匂いだし」
「我が家は子飼いの妖精憑きがいるんだぞ」
「もう、いいじゃん!! これまで、気づかれなかったんだし」
ただの会話だってのに、聞き捨てならないことをルキエルは言っている。
「いつから、私の服に匂い付けをしてたんだ?」
「え、その、あの」
私が怖いのだろう。ルキエルはオクトの背中に隠れる。だが、聞き捨てならないので、私は容赦しない。
「言いなさい。これまで、子飼いの妖精憑きすら気づいていなかった」
「お、覚えてない!!」
「覚えてないって、私とこうやって会うようになったのなんて、ルキエルが家出から戻ってからだろう」
「………その頃かも。よく覚えてない。あんた、よく、香の匂いさせてるから」
上目遣いで、いい加減な返事をするルキエル。
これは、また、随分と昔から、私に匂い付けしていたな!!
ルキエルの様子がおかしくなったのは、最近のことだ。だから、私は匂い付けされたのは、最近のことだと思っていた。子飼いの妖精憑きですら、最近、気づいたのだ。
ところが、もっと昔からだ、という話だ。これは、妖精憑きの本能の部分の話だ。私はよく香を身にまとっているから、妖精憑きであるルキエルはおかしくなっていたのだろう。
私は仕方なく笑ってやれば、ルキエルはオクトの後ろに隠れるのをやめて、安心したように笑顔を見せた。
色々と言いたいが、私は大人しく貸し切りの露天風呂で大人しくしていた。家臣たちも、使用人たちも、子飼いの妖精憑きたちも、皆、保養所から街へと出て行ったので、保養所にいるのは、私一人である。
なのに、私は何か感じたため、仕方なく、外に出て行った。
「これは、テラス様」
私は慌てて膝をついた。まさか、賢者テラスが来るとは、予想外だった。
いや、もしかしたら皇族でもいるか、と私は周囲を素早く見回したが、テラスのみだ。
「立ってください。本来ならば、私はここに来てはいけないこととなっています」
「捕縛した妖精憑きに、何かありましたか?」
わざわざテラスが足を運んだから、終わったはずの仕事の苦情かと思った。
「いいえ。あなたのお陰で、大した障害もなく、今は牢で大人しくしていますよ」
「では、一体」
「………サツキの子が来ていると聞きました」
一番、避けていた事が、とうとう、起きてしまった。
私は皇族ルイには、サツキの夫のことも、サツキの子のことも、どこにいるのか、教えていない。王都の貧民街の支配者がアルロであることも、私は秘密にしている。
正直に言えば、賢者テラスが本気になれば、アルロの居場所も、サツキの五人の子のことも見つけ出せるだろう、と私は思っていた。
私が今回、保養所を使用することで、サツキの子を連れて行く話を皇族ルイに一応、報告した。皇族の保養所を使用するので、どこの誰を連れて行くか、そこだけは嘘偽りなく報告しなければならなかったのだ。
たぶん、ルイがテラスに教えたのだろう。
賢者テラスにとって、亡くなった伯爵令嬢サツキは特別な存在だという話だ。表には一切、そのことは出ないので、誰も知らない。私だって、サツキの復讐のために動いて、テラスに関わって、やっと皇族ルイから知らされたのだ。
妖精憑きには、稀にだが、特別だという人がいるという。ほとんどの妖精憑きは、そういう人と出会うことはない。
賢者テラスにとって、伯爵令嬢サツキは、特別な人だ。そこらの皇族よりも、サツキは大事に囲いたいばかりだったという。だが、妖精憑きがそうでも、相手の人はそうとは限らない。サツキは、テラスに想われながらも、逃げたのだ。
結局、サツキが賢者テラスのことをどう思っていたのか、死んでしまったので、不明である。
しかし、テラスの執着は強い。サツキの子が気になったのだ。
「お帰りください」
だが、私はテラスに会わせることを拒否した。テラスの執着のために、ルキエルを取られると思ったからだ。
権力や、その化け物じみた力で、テラスは私に命じればいいのだ。しかし、テラスは私の拒絶に怒ったりしなかった。
「決して、囲ったりしません。一目、見てみたい」
「しかし、あなたの存在は、一歩間違えると、妖精憑きたちに気づかれてしまいます」
「そこは心配ありません。力を隠します」
「私には、漏れて感じるんです。それに、元妖精がいます。本当に、危険です」
「そんなものまでいるのですか!? どこまで隠しているのか、今すぐ、白状しなさい」
「私は好きで関わっているわけではない!!」
テラスは帝国のために尋問を始めるが、私はもう、やけで叫んだ。
「サツキとあの男に関わって、私は散々だ。元妖精だって、いつの間にかいたんだ。本当に、あの男、どこまでも問題事を引き寄せて、大変なんだ!!!」
「それは、また、あなたが大変というのだから、相当な事なのでしょうね」
「だから、帰ってください!! 妖精憑きの相手は、しばらくしたくない!!!」
「落ち着いて。今回は、私個人ですから、帝国は一切、関わりません。だから、一目だけでも」
「………わかりました。ともかく、力を隠してください。勘がいい奴には、あなたの力はわかります」
「わかりました。妖精は聖域に待機させます」
「そんなことも出来るのか!?」
「そこら辺の野良の妖精憑きが持つ妖精とは、知能が違います。私ほどの力ある妖精憑きの妖精は、高い知能を有していますから。これでいいでしょう」
認識阻害の魔法を使われているが、あのとんでもない威圧感はなくなった。そうか、力の強い妖精のせいで、これまで、私は怖い思いをしていたわけか。
しかし、ここまで威圧感がなくなると、違う意味で心配になる。
「妖精なしで、大丈夫ですか? その、万が一のことがあっても、私が完全に守り切れるわけではありませんよ」
「そこは心配ありません。私は、今も騎士団に混ざって鍛えています。私は魔法よりも、拳のほうが先に出ます。魔法使いでも、私の拳の前では無力ですよ」
噂では聞いていたが、本当なんだ。
この見た目は落ち着いた美男子のテラスだが、物凄い短気だという。言葉よりも、魔法よりも、先に出るのは拳だ。魔法使いの魔法が発動する前に、テラスはその拳で叩きのめすのだ。結果、どの魔法使いでも、テラスには勝てないという。
そこまでの実力だ。本当に、逆らってはいけないな。今は、テラス、その腕っぷしで私を脅す、ということは考えていない。そこが、世間知らずの魔法使いだな。ちょっと抜けている所を垣間見せるテラスに、私は安心を感じた。
「服も変えましょう。その認識阻害の魔法は、相手に警戒されてしまいますから、やめましょう。フードでも被っていても、こんな観光地ですから、誰も気にしませんよ」
「そうですか。では、あなたに従いましょう」
結局、今日も私はのんびりさせてもらえないな。
使用人たちもいないので、私の服を適当にテラスに渡した。一応、体格は私とテラス、よく似ているのだ。
認識阻害を外して、私の服を着るテラスは、あれだ、物凄い美男子だな。どんな服着ても似合うよ。私の服でないみたいだ。いや、それなりにいい値段の服だが、テラスが着るだけで、さらに高級品だな。
テラスは、私の服を着て、微妙な表情を見せる。
「小さいですか?」
「いえ。そういえば、あなたのことを気に入っている妖精憑きがいますね。その匂いつけの名残を感じます。これはまた、随分だな」
「………」
どうしよう。それやったの、サツキの子であるルキエルだよ。
よくよく考えれば、ルキエルを一目見せた時のテラスの反応が怖い。他の四人の子は問題ない。ほら、私はきちんと距離をとっている。
しかし、ルキエルはそうではない。ルキエルと私は、閨事するまでの仲だ。これは、一歩間違えると、私はテラスに殺されるな。
だが、今更、「紹介したくない」なんて言えない。テラス、とても楽しみみたいな顔をしている。
仕方なく、私は覚悟を決めた。私の寿命なんて、どうせ、そうないだろう。内臓ボロボロだから、殺される時は、痛くないようにお願いしよう。
「皆、サツキの血族だけあって、目立ちますから、すぐに見つかりますよ」
「サツキに似ていますか?」
「サツキの血族というだけですね。アルロに似ている子もいます」
「ぜひ、見てみたい。アルロと夫婦であった事実をこの目で確かめたい」
「わかりました」
色々と、覚悟を持ってテラスはやってきたのだろう。私はテラスと並んで、街へと歩き出す。
しばらく歩けば、悪目立ちするリンネットと、彼女の監視という名目で買い物に付き合う養子オクトが並んで歩いていた。
「そういうことか」
リンネットを見て、テラスは苦い顔をする。リンネットは、サツキの義妹クラリッサ寄りの容姿なのだ。だが、サツキの子だけあって、とても綺麗だ。
リンネットとオクトの後ろには、荷物持ちにさせられているライホーンとロイドがいた。うわ、これは気の毒だ。
ライホーンとロイドは、アルロ寄りだ。これを見て、テラスは清々しい顔を見せた。これで、サツキとアルロは夫婦関係だったとわかるだろう。
「彼らの買い物は、全て、私が支払いましょう」
「リンネットの分は、私の養子が支払っているので」
物凄く上機嫌のオクトは、リンネットに貢いでいるのだろう。オクト、人のいい笑顔をしているが、獲物を狙うような目だ。本当に、オクト、趣味が悪いな!!
なんとなく、オクトがリンネットに好意を寄せていることを察したテラスは、それ以上、強く言うことはなかった。リンネットが身に着ける物全てをオクトが揃えることで、囲っている気分になってるんだよ。そういう気持ち、妖精憑きであるテラスはよく理解出来るのだろう。
いつもだったら、オクト、テラスの存在を感じ取るのだが、妖精がいないので、オクトは普通に横切っていった。
次はルキエルとレーリエットを探していると、本当に、とんでもないことをしてくれた。
「あんた、引きこもってたんじゃないのかよ!!」
ルキエルの奴、よりによって、テラスの後ろから抱きついてきたのだ。
テラスは驚いて振り返る。顔を隠すようにフードつきの外套を身に着けているというのに、ルキエル、どうして、よりによってテラスのほうに抱きつくわけ!?
ルキエル、力いっぱい、テラスに抱きつくも、さすがに体格が違うから、すぐに離れた。そして、隣りで驚愕している私を見て、間違えたことに気づいた。
「あ、ご、ごめん!! あんたの服をこの人が着てるから、間違えて」
「………いいですよ」
顔を見せないようにして、テラスはルキエルのほうに体を向けた。そして、ルキエルを一目見て、息を飲んだ。
ルキエルは本当にサツキによく似ているのだ。体を鍛えられなかったため、男とも女とも言えない体躯だ。
許してもらえて、ルキエルは安心したように笑顔を見せた。
「この人は、あんたの友達?」
「お忍び中の皇族だ」
「っ!?」
途端、ルキエルは私からも、テラスからも距離をとった。
「し、失礼、しま、した」
あまりに怯えるので、テラスは苦笑する。
「お忍びですから、そんなに畏まらなくていいですよ。楽しんでいた所に、邪魔をしてしまいましたね」
「ありがとうございます」
テラスが許すと、ルキエルは綺麗な礼をする。それを見て、テラスは懐かしそうに目を細めた。そう、ルキエルの所作一つ、サツキの血筋を感じさせるのだ。
ルキエルは一時期、我が家で色々と教育した。だから、それなりの地位の者を相手にする時の礼儀や、手紙の書き方はしっかりとしていた。ルキエルはそういう所でも、アルロを支えていた。
「お兄ちゃん!!」
「ルキエル様!!」
私が街に出たから、ルキエルが一人で行動したのだろう。レーリエットとナナキが走ってやってきた。
テラスはレーリエットを見て、また驚いた。レーリエットは清楚華憐な美少女だ。サツキは、普段、悪女のようにふるまっていたが、それは、そういう化粧をして、演じていたにすぎない。そういうものを取り払うと、レーリエットのようになるのだ。
レーリエットはルキエルの腕にしがみつくと、警戒するようにテラスを見た。私と一緒にいるから、何か感じるのだろう。
「ルキエル、一人で行動してはいけない、とアルロに言われただろう」
「あんたが街に来るから、様子見に来ただけだ。ちょっと離れただけだから、いいだろう」
「私は、客人の案内がある。もう、私に近づくんじゃない」
「わかった」
テラスを皇族と紹介したから、ルキエルは素直に頷いて、レーリエットとナナキを引き連れて、離れて行った。
テラスは、名残惜しそうにルキエルとレーリエットの背中を見送った。やはり、あの二人は、特別に感じるのだろう。
「サツキは、本当に、アルロと夫婦をしていたのですね。あそこまで似た子では、私だって納得します」
「よく我慢しましたね」
ルキエルとレーリエットを前にして、テラスが動き出さなかったことには驚いた。私でさえ、ルキエルには衝動を動かされてしまうというのに。
テラスは私を見て、苦笑した。
「あの男が、あなたの妖精憑きですね」
「いえ、そういうわけでは」
「ここまで匂い付けされているから、わかりますよ。あの男には、自覚はありますか?」
「いや、だから、そういうのではありません。ルキエルは私のことを玩具と見ているだけです」
テラスの勘違いを訂正する。とても、テラスがサツキに向ける物と同等とは思えない。
「無自覚でしょう。そういうこと、実際にありますよ。あの男は若いから、わからないのでしょうね」
「………冗談はやめてください。勘違いしてしまいます」
「でなければ、匂い付けなんてしませんよ。あれは、特別な相手にしかしません。服にまでするのは、いつ来てもわかるようにするためですよ。可愛らしい、妖精憑きの独占欲です」
「………」
私よりも遥かに年上の、経験豊かな妖精憑きであるテラスがいうことは、本当だろう。
これまで、否定的だった私は、テラスに言われて、体の奥底がかっと熱くなるものを感じた。だが、すぐに冷めた。
泣きたくなった。私はテラスと同じだ。
サツキは、最後まで復讐に憑りつかれていた。テラスをも利用したのだ。
ルキエルも同じだ。自らの不幸に復讐心を燃やしている。その復讐のために、私をも利用しているのだ。
「ありがとうございます。サツキの子を見れて良かったです」
「もう、満足なんですか? 囲いたいとか、そういう衝動は起きたりしませんか?」
「いくら似ているといっても、別物ですよ。あの男は、サツキに似た所がありますが、それだけです。ただ、サツキが子まで作って、女としての幸福を得られていた、という結果を知りたかっただけです。私では、サツキを幸せには出来ませんでした。私は、結局、間違えました。本当に、サツキには敵わなかった」
テラスなりに、心の整理がついたようだった。
私は、今のテラスを目に焼き付けるように見た。将来、私はこうなるはずだった。
しかし、私の寿命はそうない。内臓全てが手の施しようがないほど、壊れてしまっているのだ。ルキエルは妖精憑きだから、長く生きることとなるだろう。
テラスは残された側だ。だから、気になった。
「サツキが先に亡くなって、どう感じましたか?」
「喪失感は相当なものです。それに、私はサツキを囲うのを失敗しました。サツキに捨てられたようなものです。普段は帝国のことに集中していますが、油断すると、その事で、酷く後悔します。自らの情けなさに、泣きたくなることもありますよ」
「そういうものですか」
「ずっと引きずりますよ。寿命が長い分、はやく死を迎えたいと考えてしまいます。囲えなかったから、その喪失感が酷いものですね。囲えていたら、違っていたでしょう。あの男は、あなたを上手に囲っていますから、大丈夫ですよ」
「………」
大丈夫でない。ルキエルは、私を無意識に囲っているように見えているだけだ。
まだ、妙な感覚が残っていて、ルキエルは私を街中で探したにすぎない。もう少しすれば、以前の、距離感のあるルキエルに戻る。
たまたま、妖精の万能薬で回復した私に、別の妖精憑きがいると勘違いしたルキエルが、嫉妬しただけだ。それも、お気に入りの玩具を取られるかも、という程度だろう。
テラスから、サツキの出会いについて、ちょっとした世間話ついでに聞いたことがある。テラスは一目見て、サツキに魅入られたという。しかし、ルキエルは、私に数度会っていても、そんな様子はなかった。私との関係も、互いの興味本位だ。
私は、ルキエルの外見があまりにもサツキに似ていたからだ。今は、そうではないが、きっかけは、サツキだ。ルキエルは、本当に気まぐれだ。私を誘惑しただけだ。
私は心を落ち着かせた。まずは、客人であるテラスの接待だ。
「これから、どうしますか? せっかく、こちらまで来たのですから、温泉でも入って行ったらどうですか」
「いえ、もう帰ります。サツキの子を見て、満足しました。もし、サツキの子が身分を望むようなら、力になります」
「その時は、よろしくお願いします」
絶対にありえないことだが、私は当たり障りのない返事をした。
兄弟姉妹と過ごせばいいというのに、ルキエルは養子オクトの元にやってきた。
「ルキエル、きちんと戻るんだぞ。また、妹と、あの貧民がここにやってきてしまう」
「え、オクトのトコで、泊まるつもりなんだけど」
「聞いてないよ!!」
「今、言った」
オクトは驚愕して、私を伺い見る。別に、オクトが何かやったわけではないことは、私だってわかる。
「どうして、そういう話になるんだ!?」
オクトはルキエルに掴みかかって責めた。そう言いたくなるよな。ルキエル、我が家の都合とか、全く無視だから。
まさか、拒否ぎみの反応をされるとは思ってもいなかったルキエルは、ちょっと拗ねた。
「あいつらとは、いつだって会えるけど、オクトはほら、滅多に会えないから」
「一緒の部屋で寝るのはイヤだからな。僕がイヤだ」
「よし、徹夜しよう」
「追い出すからな」
「えー、一か月くらい、寝なくったって、大丈夫だって」
「僕はただの人だよ!! 妖精憑きと一緒にするな!!!」
「冗談冗談。部屋に戻るから」
冗談には聞こえないんだな。
私が黙ってルキエルとオクトのやり取りを見ていた。ルキエル、だいぶ、私と距離をとってきた。私から、怖いこともされているから、これが普通なんだ。
「なあ、今日、来た皇族って、妖精憑きだよな」
「いや、皇族だが」
突然、ルキエルがテラスの正体を見破るようなことを話すので、私は誤魔化した。
ルキエルはただ、感じただけだろう。首を傾げる。
「妖精憑きなら、僕だって気づくよ。義父上と一緒にいた人は、そういう感じじゃなかった」
オクト、リンネットと楽しく買い物していたわけではなかった。きちんと、私がテラスを連れて横切ったことに気づいていながら、あえて、無視したのだ。
オクトがそう言っても、ルキエルは首を傾げる。
「なんか、妙な感じがしたんだけどな」
「ルキエルは、どうして、皇族だって知ってるんだ?」
「オクトの養父と間違えて、抱きついた」
「どうして間違えちゃったの!?」
「その皇族が、オクトの養父の服着てたんだよ。いつ来てもわかるように、服に匂いつけてたから、間違えたんだ」
「そんな、義父上の服に匂い付けって。どうして、そんなことしてるの」
「………なんとなく。理由なんてない。したいから、してるだけだ。いいじゃん、ただの人にはわからない匂いだし」
「我が家は子飼いの妖精憑きがいるんだぞ」
「もう、いいじゃん!! これまで、気づかれなかったんだし」
ただの会話だってのに、聞き捨てならないことをルキエルは言っている。
「いつから、私の服に匂い付けをしてたんだ?」
「え、その、あの」
私が怖いのだろう。ルキエルはオクトの背中に隠れる。だが、聞き捨てならないので、私は容赦しない。
「言いなさい。これまで、子飼いの妖精憑きすら気づいていなかった」
「お、覚えてない!!」
「覚えてないって、私とこうやって会うようになったのなんて、ルキエルが家出から戻ってからだろう」
「………その頃かも。よく覚えてない。あんた、よく、香の匂いさせてるから」
上目遣いで、いい加減な返事をするルキエル。
これは、また、随分と昔から、私に匂い付けしていたな!!
ルキエルの様子がおかしくなったのは、最近のことだ。だから、私は匂い付けされたのは、最近のことだと思っていた。子飼いの妖精憑きですら、最近、気づいたのだ。
ところが、もっと昔からだ、という話だ。これは、妖精憑きの本能の部分の話だ。私はよく香を身にまとっているから、妖精憑きであるルキエルはおかしくなっていたのだろう。
私は仕方なく笑ってやれば、ルキエルはオクトの後ろに隠れるのをやめて、安心したように笑顔を見せた。
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