魔法使いの悪友

shishamo346

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妖精の記憶

過去

 最強の妖精憑きの考えることはわからない。私はすでに、死を覚悟していた。
 もし、万が一、賢者テラスが生きていたら、私は見逃されていただろう。何せ、皇帝襲撃は、伯爵令嬢サツキの復讐だ。失敗して、捕縛されても、テラスは見逃してくれた。
 しかし、賢者テラスは亡くなり、今の最強の妖精憑きは筆頭魔法使いハガルである。ハガルは、ともかく、行動が読めない魔法使いだ。そこのところは、妖精憑きであるルキエルに似ている部分がある。
 だから、処刑が延期となっても、私は驚かない。さらに、私の待遇がさらに良くなっていても、驚かない。
 ハガルは、なんと、ルキエルが眠っている所に、毎日のように私を連れて行く。好意ではない。なにか、観察しているようだ。私が行けば、ルキエルは眠りつつも、無意識に私を求めるように手を伸ばす。そして、私はルキエルがいる牢に入れられ、ルキエルの手をとった。ルキエルは、無意識下で、私の手を握り返して、私の体内にある苦痛を取り除いた。
 そんな、無為な数日を筆頭魔法使いの屋敷で過ごした。あの屋敷は、逃げようとしても逃げられない。屋敷の主人であるハガルが許可しない限り、部屋から出ることすら出来ないのだ。
 そんな屋敷で、快適に過ごして、ハガルは待っているのだ。私の意思が変わるのを。
 ハガルは私を生かそうとしている。しかし、私は処刑を望んでいる。どうせ、内臓は滅茶苦茶だ。生きたとしても、苦痛の生だ。ハガルの手を取って、内臓を回復させられるかもしれない。しかし、それをルキエルが許さない。私が他の妖精憑きの力で回復したと知った途端、私はルキエルから捨てられる。だったら、ルキエルに思われたまま、処刑されたほうがいい。
 処刑を待っていながら、私はルキエルの特別を感じて、幸福を享受していた。いつ死んだっていいんだ。
 そういう後ろ向きな私をハガルはとうとう、詰まらなそうに見てきた。
「ここまでして、生にしがみ付かないとは、詰まらない」
「命乞いをしてほしかったか?」
「そうです。楽しみにしていました。なのに、あなたは思い残すことすらない、みたいな顔をしている。これでは、処刑が楽しくない」
「悪趣味だな!!」
「人の死は、私にとって、玩具ですから。だから、私が楽しくなるように、色々と集めました」
 とうとう、ハガルは私に対して、何かする準備が完了したのだ。
 千年に一人、必ず誕生する化け物は、私に対して、何かしようと準備していた。人が苦しむのを喜ぶ悪趣味な男だ。私の処刑だって、苦しんでほしいのだ。
 しかし、私は内臓全てをダメにするようなことをしていたので、苦痛に強いのだ。ルキエルに手を出す前まで、四六時中、苦痛と戦っていた。眠れない夜を過ごしたことだってあるのだ。死は、解放なのだ。
 私はいつものソファに座っていると、ハガルは私の後ろに立って、私の頭を両手で掴んだ。
「あなたはもっと、ルキエルの苦悩を知るべきだ」
「そんなこと、今更だろう」
 私は今更なことをハガルに言われて、苦笑する。
 ルキエルの苦悩なんて、ハガルに指摘されるまでもなく、私はわかっている。ルキエルは、亡くなった母サツキの身代わりとして、実の父アルロに毎夜、閨事を強要されていた。その延長として、私の娼夫にまでなったのだ。ルキエルは、誰よりも男としての自尊心は高い。そんな男が、女のように男に抱かれるのだ。表向きでは貧民だから、と諦めたことを言っているが、内心はそうではない。
 父の娼夫となり、貴族の娼夫となり、意識のない所で貧民に悪戯までされていた。その事実に、ルキエルはとんでもない復讐心を燃やしていた。
 復讐心は、普通ならば、時とともに薄れていくものだ。しかし、ルキエルは毎夜、実の父から閨事を強要され、時には貴族である私に抱かれたため、復讐心を燃やし続けたのだ。消えることなんてない。
 だから、今更、ハガルが思い知らせようと私に何かしたところで、私は笑うしかないのだ。
 ハガルは普段から、平凡な姿をしていた。そう、偽装していたのだ。しかし、私の前では、男も女も魅了する容姿を晒した。そんな容姿の前でも、私は揺らぐことがない。私は、同じようなものを見たことがある。
 ルキエルだ。ルキエルもまた、とんでもない力を隠し持つ妖精憑きだ。今は、その力も私が痛めつけたことで、生涯、表に出ることはないだろう。
 私は時間をかけて、ルキエルに傾倒していった。だから、今更、ハガルの美貌に傾倒することはない。私の身も心も、ルキエルに捧げた。
 ハガルは、私の歪まない気持ちを感じて、嫣然と微笑んだ。
「さて、いつまで、その悟りきった顔が続けられるでしょうか。ルキエルが隠した真実をあなたが知った時は、見物でしょうね」
「口でどう語ったとしても、私は揺らぐことがない」
「私は帝国、いえ、世界最強の妖精憑きですよ。ただ、口で語るだけなわけがないでしょう。私は、ここ数日かけて、妖精の記憶を集めました」
「?」
「妖精は、目に見えないだけで、どこにでもいます。ルキエルの周囲にも、たくさんいます。私がちょっとお願いすれば、記憶を見せてくれますし、私の妖精に複製だってしてくれます。私の妖精の中には、そういう記憶に特化した子がいるのですよ」
「っ!?」
 最初、ハガルが言っていることがわからなかった。しかし、どんどんと話を聞いていくと、本能が恐怖した。
 ハガルは、妖精を使って、過去の光景を私に見せようとしているのだ。
「ちょっと、眠るだけですよ。どうせ処刑されるのですし、ちょっと壊れたっていいでしょう」
 ハガルは、私を使って試すのだ。ただの人に、妖精の記憶を見せて、無事ですむはずがない。
 いい待遇を受けていたが、それは、これから行う、非人道的な行為を私にするためだ。
 抵抗なんて出来ない。恐怖もある。さらに、目に見えない何かが、私を抵抗出来ないように動きを封じていた。
「ちょっと眠っている間ですよ」
 耳元で、ハガルがそういう。途端、私の意識は刈り取られた。





 お腹の大きいサツキの横に、幼いルキエルと、ルキエルの弟ロイドがいた。ロイドは、母親であるサツキにいるのだが、ルキエルに遊んでもらっていた。
 妖精憑きだからだろう。ルキエルは、まだ、子どもだというのに、身重の母のために、ロイドの相手をしていた。
「にーちゃ!!」
 だからだろう。ロイドはすっかりルキエルに夢中だ。ロイドは母サツキよりも、ルキエルに懐いていた。ルキエルはというと、悟った顔でロイドを抱っこしたり、玩具を使って遊んだりしていた。
「ごめんなさいね、ルキエル。もう少し大きくなったら、外で遊べるようになります」
「別に、気にしない。ロイド、暴れるんじゃない」
「やー!!!」
 ロイドは物心がついていないから、大人しくしていない。ともかく、色々とやりたいのだ。ルキエルはそんなロイドを母から離した。結局、痛い目にあうのはルキエルだ。
「こら、ロイド!!」
「母ちゃんは離れて。お腹、大事だから」
「でも」
 もうすぐ生まれるかもしれないお腹を抱えてサツキはロイドを止めようとする。それをルキエルは拒絶した。
「危ないから!!」
「もう、ライホーンも、リンネットも、外に逃げてしまって!!」
「父ちゃんだって逃げたんだから、仕方ない」
「アルロも、仕事に逃げて!!」
 ロイドの扱いに、家族全員が大変なこととなっているのだろう。それを全て受け止めているのが、幼いルキエルだ。
 サツキが叫んで困っていても、ルキエルの扱いは変わらない。だけど、ルキエルは何か気づいて、笑顔になり、ロイドを連れて、部屋を出て行く。
「こら、ルキエル、出て行ってはいけないと」
「マクルスが来た!!」
 そう叫んで、ルキエルはロイドを連れて、あの大きな屋敷の中を駆けていく。その後ろをサツキは首を傾げながら着いていく。
 ルキエルは迷うことなく、真っすぐ、過去の私と父アルロが商談をしている部屋に入っていく。
「ルキエル!!」
 アルロは怒った声を出すも、ルキエルは気にせず、座っている私に抱きついた。
「マクルス、遊ぼう!!」
 そう要求するルキエル。しかし、対する私は心底、困っている。普段ならば、振り払っているが、あけ放たれたドアの向こうで身重のサツキが歩いているのが見えるので、そんなことが出来ないのだ。この頃の私は、まだ、サツキに想いを抱いていた。
 ルキエルが私にくっついていると、ロイドが嫉妬をこめて私を睨んできた。もう、この頃から、ロイドは、ルキエルを特別視して、私のことを敵視した。
「もう、ルキエル、この人は貴族ですよ。そんな呼び捨てはやめなさい!!」
「そう呼んでいいって、マクルスが言ってた」
「それでも、距離はとるものですよ。ほら、離れなさい」
「構わない」
 身重のサツキが無理をするので、私は仕方なく、ルキエルを抱き上げて、サツキを止めた。
「そんな体で無理をするんじゃない。もう話も終わった。少しくらい、遊んでやろう」
「やったー!!!」
 全身で喜ぶルキエル。この頃から、サツキに似通ったルキエルに、私は甘かった。
 そして、この頃から、ルキエルを独占したいばかりのロイドは、私の足を蹴った。
「ロイド!!」
 それにはサツキだけでなく、アルロも怒った。
 ロイドはアルロに怖い声で怒鳴られ、途端、大声で泣いた。こうなると、もう大変だ。結局、私はロイドまで抱き上げることとなった。
「ほら、もう怖くない」
 私の腕の中で、ルキエルはロイドを慰めた。たったそれだけで、ロイドはちょっと嗚咽は残るが、泣き止んだ。私が抱き上げていることが気に入らないが、ルキエルが側で笑っているので、ロイドはそれで我慢した。
「今日は、貧民街を散歩するか」
「うん!!」
 こんな幼児相手に遊ぶなんてしない。ただ、抱き上げて、そこら辺を散歩するだけだ。それでも、ルキエルは喜んだ。
 ルキエルは、目をキラキラと輝かせ、高い位置から見る外の景色を眺めて喜んだ。幼児は単純だ。サツキは言ったものだ。子どもなんて、抱っこして、適当に散歩していれば満足する、と。
「お前は、よくもまあ、私が来ることがわかるな。今日は、サツキにも言ってないというのに」
「えへへへへ」
 ただ、笑うだけのルキエル。誰も、ルキエルが妖精憑きだとは知らなかった。



 しかし、母サツキは、知ることとなった。



 数度、ルキエルが私の来訪を部屋に閉じ込められながらも察知することに、サツキは訝しんだ。だから、サツキはルキエルに訊ねた。
「どうして、ルキエルはマクルス様の来訪がわかるのですか?」
「らいほう?」
「マクルス様が我が家に来ることですよ」
「どうしてって、匂うから」
「? 匂う?」
 ルキエルが言っている事をサツキは理解出来ない。ルキエルが子どもすぎて、言葉足らずなのかも、とサツキは思った。
 そうではなかった。
「マクルス、いつも、変な匂いをさせている」
「香水かしら。ルキエルったら、鼻が敏感なんですね。わたくしも気を付けないといけませんね」
 サツキは自らの体臭を気にした。サツキは貧民となったが、アルロからは、清潔を保つように扱われていた。酷い臭いなんてしないだろう。
 アルロが家族を閉じ込める屋敷も綺麗に保たれている。妙な臭いがすることはない。だから、私の来訪をルキエルは匂いで察知した、とサツキは思った。
 ルキエルは、不思議そうにサツキを見返した。
「マクルスが来ると、皆、大騒ぎするのに、母ちゃんもロイドも、ちっとも気にしないよな」
「皆って?」
「妖精」
「っ!?」
 ルキエルは聞かれたから、普通に答えただけだ。だが、それを聞いたサツキは真っ青になった。周囲を見回せば、眠っているロイドがいるだけだ。
 サツキは真剣な顔でルキエルの両腕を掴んだ。
「ルキエル、妖精が見えることを誰にも言ってはいけません」
「どうして?」
「妖精が見えると、アルロに売られてしまいますよ!!」
「そんな!?」
 父親に売り飛ばされる、なんて脅すサツキは、酷いな。
 しかし、ルキエルは、幼いながらも、貧民の立場を話の上で理解していた。サツキはとても頭がいいし、物事を知識の上でよく知っている。だから、親が子を売る行為は、貧民では普通にあると受け止めていた。
 だから、ルキエルは真っ青になって震え、頷いた。
「わかった、誰にも言わない」
「でも、どうして、マクルス様の匂いなんて話をするのですか。私は、マクルス様から何も匂いませんよ」
「俺は匂うけど。こう、頭がクラクラする感じ? 妖精は、マクルスが来ると逃げたり、おかしくなったりするんだ」
「ああ、そういうことですか」
 ルキエルの足りない説明で、サツキは全てを悟った。
「マクルス様、妖精殺しの一族ですものね。妖精を狂わせる香を扱っていますものね」
「え、マクルスって、妖精を殺すの!?」
「そうですよ。実は、物凄く怖い貴族なんですよー」
 ルキエルが怖がるので、サツキはここぞとばかり、さらに怖がらせた。
「俺も、殺されちゃうのかな?」
「もう、マクルス様に近づくことはやめなさい」
 いい機会だから、とサツキは察した。ルキエルに私を嫌わせようとしたのだ。
 だけど、ルキエルは泣きそうな顔で俯く。怖いけど、ルキエルはどうしても、私に近づきたいのだ。
「俺、妖精が見えるって黙ってる。そうすれば、大丈夫だ」
「もう、どうしてマクルス様に近づくのですか。マクルス様とルキエルでは、身分が違いますよ。いつも言っているでしょう。貴族は友達になれません」
「けど、抱っこしてくれたし、高い高いもしてくれた!!」
「それは、そう、です、けど」
 サツキは過去を思い出して、言葉を途切れさせた。
 元々、私がルキエルを抱き上げるけっかけを作ったのは、サツキだ。サツキの手が空かない所に、たまたま、私が来ていた。サツキは私にルキエルを頼んだのだ。その頃から、ルキエルは私に懐いた。
 妖精憑きだから、ルキエルは手のかからない子どもだ。さらに、幼児のくせに、弟ロイドの面倒までみた。だから、家族はルキエルに甘えたのだ。
 そして、ルキエルは、我慢した。妖精憑きであるゆえに、色々と悟り、理解し、我慢した。その中で、私という存在を執着したのだ。
 この頃の私は、ルキエルに対して、本当に酷い考えしか持っていなかった。ルキエルを相手にすることで、サツキとの接点を増やしているだけだ。ルキエルの気持ちなんて、これっぽっちも考えていなかった。むしろ、聞き分けのいいルキエルの相手は楽だった。ただ、抱き上げて、散歩するなんて、簡単なことだ。たったそれだけで、ルキエルは大喜びなのだ。




「お前は、なんてことをしたんだ!!」
「煩い!!」
 私とアルロが口論していた。私がつかみかかれば、アルロも私につかみかかる。一触即発である。それを止めるのは、互いの側近たちだ。
「よりによって、サツキを皇帝のハーレムに送るんて!?」
「ここにいたって、サツキは幸せになれない!!」
「そんなことで、手放したのか!?」
「そうだ!!」
 私とアルロが喧嘩している所に、状況を理解していないルキエルは家を出てきて、駆け寄ろうとしていた。それを察知した兄ライホーンが、ルキエルを止めた。
「行くんじゃない!!」
「だって、マクルスが」
「いい加減にしろ!! あの貴族は、お袋に会いに来ただけだ。お袋がいたから、お前の相手をしてただけだ!!」
「そんなぁ」
 妖精憑きはともかく、頭がいい。だから、ライホーンに言われて、ルキエルは泣いて悟った。
 私とアルロが今にも殴り合いをしようとする所を見て、会話を聞いて、ルキエルはボロボロと泣いた。
「母ちゃん、どうして」
「ほら、レーリエットの面倒をみよう。泣いてるぞ」
「………うん」
 結局、ルキエルは我慢した。泣きながら、ルキエルは屋敷に戻っていく。それをライホーンは淡々と見送るだけだ。問題事が一つ解決した、そう、ライホーンは見ていた。
 屋敷に戻ったルキエルは、姉リンネットに腕をつかまれ、引きずられた。
「もう、煩いんだから!! ほら、さっさと泣き止ませてよ!!!」
 リンネットはルキエルを泣き止まない赤ん坊のレーリエットの元に連れて行く。赤ん坊だから、レーリエットは泣き続けるだけだ。
「もう、煩い!!」
「おしめが汚れたからだよ」
「やだ、汚い!!」
 弟であるルキエルがレーリエットのおしめを替えるのを見て、リンネットは逃げていく。
 幼児なのに、ルキエルは大人顔負けなくらい、赤ん坊の面倒をみていた。それだけでなく、レーリエットに嫉妬するロイドの相手だ。
「こら、ロイド。ルキエルの邪魔をすんじゃない!!」
 さすがに、見ていられない兄ライホーンが、ロイドを引っ張って、ルキエルから離そうとした。
「やだー!! にーちゃ!!!」
 しかし、ロイドはルキエルに懐いている。大声で泣いて、暴れた。
「兄貴、ロイドも見るから。兄貴は、親父のトコ行ってこいよ」
「そうだな」
 ライホーンは、これ幸いと出て行く。どうせ、ライホーンも右も左もわからないのだ。
 結局、赤ん坊と幼児の面倒は、ルキエル一人が行っていた。ルキエルは、同じ幼児だというのに、全てを諦めたような顔をしていた。


 だけど、ルキエルは全てを諦めたわけではない。どうしても、妖精を狂わせる香を身にまとう私が屋敷の近くにやってくると、ルキエルは家を出て、私を見ていた。
 サツキが屋敷からいなくなったことで、私はもう、屋敷に入ることはなくなった。アルロは家族には厳しく、それなりの年齢になるまで、屋敷から外に自由に出させなかった。だから、ルキエルは屋敷から隠れて出て、私が来るのを覗き見るだけだ。
 私が来ているのを見て、ルキエルは喜んだ。弟ロイドはそんなルキエルを邪魔するように大騒ぎする。ルキエルはどうにかロイドを宥めるも、結局、ロイドの理不尽な我儘を聞き入れ、屋敷の奥へと戻っていく。そんなことを繰り返していた。
 私は、ルキエルが幼いころからずっと、私を求めて、ただ、姿を見るだけで一喜一憂しているなんて、知らなかった。




 過去、妖精が見ていたという記憶を私は改めて見て、泣きたくなった。それはそうだ。私は、幼いルキエルを抱き上げたことすら、覚えていなかった。こうやって、記憶を見ても、思い出せない。この頃の思い出は、サツキとアルロが中心だ。サツキに横恋慕していた私は、ただただ、サツキのことだけを記憶に残した。サツキと話したこと、それだけだ。ルキエルを抱き上げて、散歩していたことなんて、記憶にすら残していなかった。
 なのに、妖精の記憶の中のルキエルは、私に抱き上げられ、散歩してもらって、喜んでいた。そして、私のことを愛情を持って見つめていた。

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