131 / 152
嘘つき
約束とご褒美
俺はマクルスの一物を口で咥え込んで喜んでいた。
「やめなさい!!」
「あっ」
マクルスは容赦なく、俺の頭をつかんで、離させた。せっかくマクルスの一物を味わっていたというのに。
「帰る準備をしなさい!!」
「夜でいいじゃん。ほら、昨日は俺、体調崩してたから、出来てないし。体も疼く」
腹の辺りを撫でていうと、マクルスは生唾を飲み込んで、俺を見る。俺は男でありたいが、マクルスの前では女だな。その事実に、内心、イヤで仕方がない。
体が疼くなんて、言い訳だ。努力すれば、耐えられる。そう言ってやれば、マクルスは簡単に俺を抱く。そうして、俺は貧民であることを自覚する。
だけど、その日は違った。マクルスはベッドから離れ、俺からも距離をとった。
「今日は、そういう気分じゃない。帰ると言ったのはルキエルだ。さっさと帰る支度をしなさい」
「俺はそういう気分だ」
どうにか、俺はマクルスを誘惑してやろうと、服を脱いで、自慰するみたいに、俺の蕾に指を入れる姿を見せてやる。
「ほら、いつでもあんたのが入れられる」
「知ってる。どうせ、今日は父親とやるんだろう。待ってるぞ」
「っ!?」
それには俺は怒りでしかない。手近にあった枕をマクルスに投げてぶつけてやる。
「親父のことは言うな!!」
親父の存在には、憎悪しかない。俺を娼夫に堕としたのは親父だ。だけど、体は親父によってすっかり調教されている。どんなに心は憎悪しても、体は親父に触れられるだけで喜んでいる。
マクルスはわざと、俺を怒らせた。そうすることで、俺が離れることをよくわかっている。実際、そうなんだ。
仕方なく、俺は諦めて、服を着た。俺はそういう気分でも、マクルスが違うのだから、諦めるしかない。
俺が大人しく服を整えれば、マクルスは俺の頭を撫でてくれる。その行為に、内心、嬉しくなる。
ガキの頃は、これが欲しかった。誰も俺を誉めても、こうやって、頭を撫でてもくれなかった。まして、抱き上げてくれることなんて、記憶の中にはない。
「父親には、こちらの事情は伝えてあるから、今日は何もされない。安心しなさい」
まだ、俺の体調が万全ではないと思っているマクルスは、わざわざ俺を抱き上げ、歩き出す。
「ガキじゃないんだから!」
「帰りたいと言ったのはルキエルだ。本当なら、もう一泊するべきなんだ。帰るなら、大人しくしなさい」
「また、オクトに妙なことされると、困るもんな。大事な跡取りだもんな」
「もう、疑ったりしない。怒ることもない。信じてる」
「っ!?」
大人の余裕の笑顔だ。俺を腕に抱きながらも、平然とした顔で話すマクルスに腹が立つ。
「嘘ばっかり」
負け惜しみだ。もう、マクルスのことは疑っていない。信じている。
もう二度と、マクルスは俺とオクトのことを疑わないだろう。嫉妬はするかもしれないが、それは、仕方のないことだ。マクルスは、俺を女のように愛している。
俺のことを俺以上に扱い上手なマクルス。喜ばせるのも、怒らせるのも、全て、マクルスの手のひらの上だ。マクルスが冷静になれば、俺なんて、弄ばれるばっかりだ。
俺は仕方なく、マクルスの腕の中で大人しくなる。マクルスは俺のバカみたいな自尊心を理解している。俺がマクルスの腕に抱き上げられて移動しているというのに、使用人も、家臣も、オクトすら出会わない。オクトは覚悟していたが、どこかに出かけているか、あえて、部屋に閉じこもっているのだろう。
本当に、いい馬車に乗せられた。この馬車に乗る時は、だいたい、マクルスと一緒の時だ。俺一人の時は、乗り心地が普通の馬車だ。
こういう馬車だから、マクルスも一緒に乗る。今日も普通にマクルスが同乗してきた。
「親父に挨拶してくのか?」
「ルキエルの体調を悪くさせたからな。謝らないといけない」
「貧民相手に、謝罪はやめろ。あんたは、貴族様なんだから」
「お互い、利害関係で繋がっている。お前の父親とは、仲良くしていたいんだ。大事な息子の体調を崩すようなことをしたんだ。父親だったら、怒ることだ」
「俺は男だから、いいんだよ!!」
「私がイヤなんだ。ルキエルだけは特別だ」
「………」
女だったら、顔を真っ赤になってしまいそうなことを平然というマクルス。こうやって、女を口説いたんだな。確かに、人妻だって、浮気するよ!!
俺はマクルスの向かいに大人しく座る。この馬車に乗ると、また、妙なことをしたくなるが、我慢した。これから家に帰るのだ。マクルスとの事後で、俺はまともな顔が出来るはずがない。
気まずい沈黙が続く中、やっと御者が座り、馬車は走り出した。
しばらく馬車の外を眺めていた。もう、見慣れてしまった光景だ。俺は今、家とマクルスの屋敷を往復するだけで、貧民街にも、平民地区にも、足を運んでいない。もう、そういう許可が降りない。俺の外出は、マクルスの屋敷だけだ。
家に帰れば、親父の娼夫となるか、帝国中からかき集められた壊れた道具の修理をするか、どちらかだ。外出なんて、家の外をちょっと歩くぐらいだ。誰よりも不自由な生活をしている。だけど、仕方がない。一度、死にかけたんだ。次、外に自由に行く時は、復讐だろう。
途中、俺は皇帝が暮らす城を眺めることとなる。いつ、あの城から外に出るのかわからない皇帝ラインハルト。皇族もそうだが、皇帝なんて、簡単に城の外に出ることはない。公の場で出たといっても、城の中だ。
だけど、いつかは皇帝ラインハルトも外に出る。出ないといけなくなる事があるはずだ。それを俺は待っている。俺をこんな風にした元凶は皇帝ラインハルトだ。絶対に許さない。
俺に固定されたマクルスの視線に、さすがにうんざりして、俺はマクルスを見た。
マクルスは、愛情を持って俺を見ていた。俺が見返しても、視線を反らしたりしない。もう、俺から目を離さないつもりなんだな。
この男は、ともかく何もかも遅いんだ。わかる。気づいた時は手遅れだ。お袋を失った時も、全て後手に回っていることをオクトから話で聞いた。
仕方がない。マクルスが一番大事なのは、家門だ。
マクルスもまた、優秀な為政者だ。優先順位を守っているだけだ。それのせいで、物凄く後悔することとなっても、家門としては正しいことなんだ。
なのに、俺の復讐には最後まで付いて来ようとしている。
あれだ、もうすぐ、寿命だからだろう。力がそれなりにある妖精憑きならば、マクルスの寿命は見える。いつ死んでもおかしくないんだ。それほど、マクルスは寿命を削って、妖精を殺す体を保っている。
あのタバコは、やめるわけにはいかないのだ。やめたって、あの体が戻ることはないし、妖精を退ける効力だって落ちる。実際、一日二日やめていた時、マクルスの体はその効力をぐんと落としたのがわかった。
命か、家門の存続か、と選択を迫れば、マクルスは家門をとるだろう。俺はやっぱり、選ばれないんだよな。
俺は苦笑するしかない。
「どうした?」
「俺たち、どうしようもないな」
「そうだな」
わかってないよな。俺は永遠に、マクルスの執着から逃れられない。そこは、妖精憑きとしての本能だ。どうしようもないと、もう諦めている。
マクルスのそれは、ただ、俺の妖精憑きとしてのわけのわからないものに、魅了されているだけだ。きっかけは、お袋だ。そこから、見た目から、体から、マクルスは篭絡されたに過ぎない。
本当は、こんなもの、望んでいなかったのにな。
本音なんて、一生、さらけ出してやるものか。約束のことは、一生、教えてやらない。どうせ、マクルスは死んだ後も、思い出さない、そんなくだらない話なんだ。
夢を見る。俺はガキになっていた。お袋は家にいて、相変わらず、親父に囲われている。外にも出られないというのに、お袋はそれを喜んでいる。
「あ、マクルスが来た!!」
お袋は赤ん坊のレーリエットで手がいっぱいだから、俺が部屋から飛び出しても止められない。俺が飛び出すと、弟ロイドも一緒になって飛び出してしまう。
屋敷の外に出れば、ちょうど、馬車から降りるマクルスを見つける。俺は止める手も潜り抜けて、マクルスの足にしがみついた。
「こら、離れなさい!!」
マクルスの家臣が俺を叱った。
「子どもがやることだ。許してやれ」
マクルスは苦笑して、俺を抱き上げた。俺を軽々と片腕で持ち上げる。それに俺は喜んだ。
「マクルス、約束したよな。次来た時も遊んでくれるって」
「呼び捨てはやめろ!!」
「子どもなんだ、許してやりなさい」
家臣がまた俺を叱るも、マクルスは笑って許してくれる。
そう、俺は子どもだから、貧民の子どもといえども、全て、許してもらえたのだ。そのことをわかっていて、俺はマクルスにこれでもかと甘える。
「あっちに行きたい!!」
俺は普段、絶対に行けない平民地区を指さす。
赤ん坊であるレーリエットを連れて屋敷を出てきたお袋が、空いた片手で俺の頭を鷲掴みする。
「お前は、マクルス様に向かって、なんてことを言うのですか!? 大変、失礼しました」
「子どもがやることだ、許してやりなさい。大きくなれば、この子どものわかるようになる」
「そうやって、甘やかして!! マクルス様、ルキエルを甘やかしてはいけません。この子は、物凄く賢い子なんです」
お袋は俺が妖精憑きだと知っている。だから、俺のことを危ぶんでいた。
だけど、俺が妖精憑きだなんて知っているのは、お袋だけだ。妖精殺しの伯爵と呼ばれるマクルスですら、俺をただの子どもと見ている。それを俺はあえて利用して、怒るお袋に舌を出してやる。
「ルキエル!!」
「約束したんだから、仕方がない。しかし、お前の遊びは、こうやって、抱っこして歩くだけか。他にもあるだろう。教えてくれ」
「これがいい!!」
俺はマクルスにしがみついた。こうしているだけで満足だ。
「これは、遊びじゃない」
「ガキ同士の遊びは、ロイドといっぱいしてる。俺は、抱っこがいい!!」
「簡単な遊びだな。いいだろう、買い物に行こう」
「マクルス様、いけません!!」
「母親の体にいいものを一緒に選ぼう」
「うん!!」
理由を作っては、俺を抱っこして、マクルスは家臣を引き連れて、平民地区を歩いた。
「にいちゃっ!!」
ロイドは俺がマクルスに連れて行かれるから、泣きながら追いかけてくる。
「お前はこっちだ!!」
それを兄ライホーンが止めてくれた。
「ルキエル、アタシのも買ってくるのよ!!」
どさくさで、姉リンネットが、俺に妙なお願いを叫んできた。気を付けて、お土産を選ばないと、リンネットに殴られるんだよな。俺はマクルスの胸に顔を埋めて、ちょっと震える。
「心配ない。私が選んでやる。こう見えても、女の相手も馴れている」
「姉貴、怒ると怖いんだ。引っかかれるんだよ」
「子どもでも、女か」
俺が姉リンネットのことを伝えると、マクルスは苦笑する。馴れているのだろう。
俺はマクルスの腕の中で、ちらりと家臣を見た。家臣は忌々しいとばかりに俺を睨んでくる。それに俺は舌を出してやる。だから、俺は家臣に嫌われていた。
平民地区への買い物なんてどうだっていい。こうやって、時間を稼いで、マクルスに俺の寿命を移してるんだ。こうやって、時間をかけて密着しないと、俺の寿命をマクルスに与えられない。
妖精がいうには、マクルスは今にも死んでしまいそうなんだって。死んでしまったら、こうやって、マクルスに抱っこしてもらえなくなる。
家族で、俺の頭を撫でたり、抱っこしてくれる奴はいない。お袋はか弱いから無理だ。親父は、そんなことしてくれない。兄ライホーンはまだまだ力がない。姉リンネットは論外だ。
だから、マクルスには一杯、抱っこしてもらうんだ。
ふと見上げると、マクルスは俺なんか見てない。マクルスは店に並び商品を熱心に見ていた。
さすがの俺も、気づく。俺はマクルスのことを名指しで呼ぶが、マクルスは俺を名指しで呼ばない。お前呼びだ。
「マクルス、俺はルキエルっていうんだ」
「知ってる」
「そうか!!」
知らないと思っていた。あえて教えれば、マクルスは苦笑した。知らないから呼んでもらえないわけではない。
俺は一杯、呼んでほしい。
「なあ、俺のこと、名前で呼んでよ」
だから、子どもだからとお願いした。お袋の子どもの一人でいたくなかった。
「生意気を言うな」
だけど、マクルスは俺の額を指で弾いて、軽く叱った。
「呼んでほしい!!」
「お前なんて、まだまだガキだ。名前を呼ばれるようになりたいなら、弟と妹の面倒をみて、立派な兄になれ」
「立派な兄って、ロイドとレーリエットの面倒をみれば、なれるものなのか?」
「そうだ」
「俺は、兄貴にも、姉貴にも、面倒みてもらった覚えがない」
「お前は、口だけは達者だな。お前はお前だ。兄と姉は関係じゃい。お前が立派な兄になるんだ」
「じゃあ、また、こうやって、抱っこしてよ」
「次来た時、してやる。だから、立派な兄になって、母親を楽にさせてやれ」
「わかった!!」
単純だ。立派な兄になれば、マクルスは誉めてくれる。そう考えれば、俺はその通りに動く。実際、マクルスに抱っこしてもらいたくて、ずっと、マクルスの言いなりだ。
随分と寝てたんだな。久しぶりに起きた感じだ。妖精憑きだから、一年、二年、三年と眠っていても、体は健康だ。
ただ、許容量を越えた妖精を盗ったために、俺の体は常に睡眠を求めている。妖精たちは、どうにか、俺を長く眠らせようと、俺自身が幸福だった頃の光景を夢で見せるのだ。そうして、俺を起こさないようにしていた。
俺の幸福は、ガキの頃だ。お袋も生きて、屋敷に囲われていた頃こそ、俺の幸福だ。あの頃、俺は妖精憑きであることを隠して、ただのガキとして、親の保護を受けていた。弟ロイドと妹レーリエットの面倒をみてはいたが、大したことではない。レーリエットは赤ん坊だったから、お袋の手が多く必要だった。ロイドは、同じガキだったから、同じように遊んでやっただけだ。ただ、負けず嫌いなガキだから、俺は手加減をしていた。
妖精たちは、俺が眠ると、ガキの頃の夢ばかり見せるのだ。もう、飽きた。だから、俺は目を覚まして、帝国中から集められた道具の修理をする。
ベッドの脇には、綺麗に重ねられた紙の束が置かれていた。それは、俺のせいで破滅した伯爵マクルスの遺書の束だ。
俺は、マクルスの遺書を養子オクトから受け取ると、すぐに読んだ。いつ、読めなくなるか、わからないからだ。
俺はずっと、マクルスに寿命を捧げ続けていた。最初は五百年もあった寿命も、どんどんとマクルスのために削り、帝国に捕縛された頃にはただの人並となっていた。ただの人は、せいぜい生きても百年だ。俺は、それよりも少なくなるほど、マクルスに寿命を捧げた。
マクルスの遺書を読んでみれば、ところどころ、滲んでいた。俺がマクルスに寿命を捧げていた事実を、筆頭魔法使いハガルはマクルスに暴露したのだ。
それだけではない。俺がガキの頃にした守られていない約束まで、ハガルは暴露しやがった。後悔の文章ばっかりだ。別に、気にしなくていいのに。
今ならわかる。力のある妖精憑きは、どんな願いも叶えられる。だから、執着も激しい。
俺は、ガキの頃に受けた、お袋への下心いっぱいのマクルスの行為に執着した。ガキだから、わからなかった。利用されていても、そんなこと、言われてもわからない。だって、行為を受けているのは俺自身だ。その理由とか、意味とか、どうだっていい。
だけど、それなりの年齢になり、学習して、世の中を知っていけば、マクルスから受けた行為は全て、空しいものだと気づく。
だから、俺はどうしてもマクルスを許せなかった。約束破りやがって、と俺は怒りに震えていたのだ。
バカバカしい。ガキだから、マクルスは許してくれたのだ。何より、あれは、約束じゃない。ガキの頃の話は、ご褒美だ。
マクルスは、約束を破ってなんかいない。俺がそう思い込んでいたにすぎない。
俺のことなんて、貧民として蔑んでいれば良かったんだ。俺があんまりにもお袋に似てたから、マクルスも勘違いしたんだ。
なのに、遺書には言い訳ばっかりだ。マクルスも、男のくせに、妙な所で女々しいよな。俺のことを女々しい、なんてバカに出来ないよ、あいつ。
俺は死んだ後も、マクルスのことは許せない。俺はあんなに名前を呼んでほしい、とお願いしたのに、ガキの頃は呼んでくれなかった。なのに、俺が貴族の娼夫になると、マクルスは俺のこと、普通に名前で呼ぶんだ。
立派な兄になっていない。俺は、娼夫に落ちただけだ。
名前を呼ばれる度に、屈辱を感じていた。貧民だから、とか、そんなの関係ない。こんなご褒美、いらない。だから、マクルスのことは、生きている間、名前で呼んでやらなかった。呼んでいい、なんて許可を出してくれたが、呼ばなかった。あんた、で十分だ。
そうしないと、いざという時、マクルスが大事にしている家門が大変なこととなってしまう。
俺の復讐が失敗した時、俺がマクルスの名前を口走ってしまったら、大変なこととなる。本当に、マクルス、わかってないよな。妙な所で、甘っちょろいよ。
結局、今、外がどうなっているか、俺は知らない。知ろうとも思わない。
俺の幸福は遠い昔に終わった。俺の子どもには、閉じられた部屋にいることを幸福だ、とか言ったが、嘘だ。
俺は魔法で、外に放置された道具を引き寄せる。
「もう、俺もお役御免か」
すっかり、壊れた道具も少なくなった。こんなの、半日もかからない。
壊れた道具の中に、いつもの通り、手紙が紛れ込んでいた。本当に、無駄なことを。
俺からは生涯、返事なんかしない。だけど、俺はその手紙を大事に扱った。
「俺も、マクルスのこと、悪く言えないな。もっと、素直になれば良かった」
綺麗な字だ。さすが、元は貴族だ。そこはきちんと教育されたのだろう。俺は求めていないというのに、眠っている間に起こった出来事を事細かに書かれていた。
「さて、やるか」
俺は手紙を燃やして、道具に向かった。
「やめなさい!!」
「あっ」
マクルスは容赦なく、俺の頭をつかんで、離させた。せっかくマクルスの一物を味わっていたというのに。
「帰る準備をしなさい!!」
「夜でいいじゃん。ほら、昨日は俺、体調崩してたから、出来てないし。体も疼く」
腹の辺りを撫でていうと、マクルスは生唾を飲み込んで、俺を見る。俺は男でありたいが、マクルスの前では女だな。その事実に、内心、イヤで仕方がない。
体が疼くなんて、言い訳だ。努力すれば、耐えられる。そう言ってやれば、マクルスは簡単に俺を抱く。そうして、俺は貧民であることを自覚する。
だけど、その日は違った。マクルスはベッドから離れ、俺からも距離をとった。
「今日は、そういう気分じゃない。帰ると言ったのはルキエルだ。さっさと帰る支度をしなさい」
「俺はそういう気分だ」
どうにか、俺はマクルスを誘惑してやろうと、服を脱いで、自慰するみたいに、俺の蕾に指を入れる姿を見せてやる。
「ほら、いつでもあんたのが入れられる」
「知ってる。どうせ、今日は父親とやるんだろう。待ってるぞ」
「っ!?」
それには俺は怒りでしかない。手近にあった枕をマクルスに投げてぶつけてやる。
「親父のことは言うな!!」
親父の存在には、憎悪しかない。俺を娼夫に堕としたのは親父だ。だけど、体は親父によってすっかり調教されている。どんなに心は憎悪しても、体は親父に触れられるだけで喜んでいる。
マクルスはわざと、俺を怒らせた。そうすることで、俺が離れることをよくわかっている。実際、そうなんだ。
仕方なく、俺は諦めて、服を着た。俺はそういう気分でも、マクルスが違うのだから、諦めるしかない。
俺が大人しく服を整えれば、マクルスは俺の頭を撫でてくれる。その行為に、内心、嬉しくなる。
ガキの頃は、これが欲しかった。誰も俺を誉めても、こうやって、頭を撫でてもくれなかった。まして、抱き上げてくれることなんて、記憶の中にはない。
「父親には、こちらの事情は伝えてあるから、今日は何もされない。安心しなさい」
まだ、俺の体調が万全ではないと思っているマクルスは、わざわざ俺を抱き上げ、歩き出す。
「ガキじゃないんだから!」
「帰りたいと言ったのはルキエルだ。本当なら、もう一泊するべきなんだ。帰るなら、大人しくしなさい」
「また、オクトに妙なことされると、困るもんな。大事な跡取りだもんな」
「もう、疑ったりしない。怒ることもない。信じてる」
「っ!?」
大人の余裕の笑顔だ。俺を腕に抱きながらも、平然とした顔で話すマクルスに腹が立つ。
「嘘ばっかり」
負け惜しみだ。もう、マクルスのことは疑っていない。信じている。
もう二度と、マクルスは俺とオクトのことを疑わないだろう。嫉妬はするかもしれないが、それは、仕方のないことだ。マクルスは、俺を女のように愛している。
俺のことを俺以上に扱い上手なマクルス。喜ばせるのも、怒らせるのも、全て、マクルスの手のひらの上だ。マクルスが冷静になれば、俺なんて、弄ばれるばっかりだ。
俺は仕方なく、マクルスの腕の中で大人しくなる。マクルスは俺のバカみたいな自尊心を理解している。俺がマクルスの腕に抱き上げられて移動しているというのに、使用人も、家臣も、オクトすら出会わない。オクトは覚悟していたが、どこかに出かけているか、あえて、部屋に閉じこもっているのだろう。
本当に、いい馬車に乗せられた。この馬車に乗る時は、だいたい、マクルスと一緒の時だ。俺一人の時は、乗り心地が普通の馬車だ。
こういう馬車だから、マクルスも一緒に乗る。今日も普通にマクルスが同乗してきた。
「親父に挨拶してくのか?」
「ルキエルの体調を悪くさせたからな。謝らないといけない」
「貧民相手に、謝罪はやめろ。あんたは、貴族様なんだから」
「お互い、利害関係で繋がっている。お前の父親とは、仲良くしていたいんだ。大事な息子の体調を崩すようなことをしたんだ。父親だったら、怒ることだ」
「俺は男だから、いいんだよ!!」
「私がイヤなんだ。ルキエルだけは特別だ」
「………」
女だったら、顔を真っ赤になってしまいそうなことを平然というマクルス。こうやって、女を口説いたんだな。確かに、人妻だって、浮気するよ!!
俺はマクルスの向かいに大人しく座る。この馬車に乗ると、また、妙なことをしたくなるが、我慢した。これから家に帰るのだ。マクルスとの事後で、俺はまともな顔が出来るはずがない。
気まずい沈黙が続く中、やっと御者が座り、馬車は走り出した。
しばらく馬車の外を眺めていた。もう、見慣れてしまった光景だ。俺は今、家とマクルスの屋敷を往復するだけで、貧民街にも、平民地区にも、足を運んでいない。もう、そういう許可が降りない。俺の外出は、マクルスの屋敷だけだ。
家に帰れば、親父の娼夫となるか、帝国中からかき集められた壊れた道具の修理をするか、どちらかだ。外出なんて、家の外をちょっと歩くぐらいだ。誰よりも不自由な生活をしている。だけど、仕方がない。一度、死にかけたんだ。次、外に自由に行く時は、復讐だろう。
途中、俺は皇帝が暮らす城を眺めることとなる。いつ、あの城から外に出るのかわからない皇帝ラインハルト。皇族もそうだが、皇帝なんて、簡単に城の外に出ることはない。公の場で出たといっても、城の中だ。
だけど、いつかは皇帝ラインハルトも外に出る。出ないといけなくなる事があるはずだ。それを俺は待っている。俺をこんな風にした元凶は皇帝ラインハルトだ。絶対に許さない。
俺に固定されたマクルスの視線に、さすがにうんざりして、俺はマクルスを見た。
マクルスは、愛情を持って俺を見ていた。俺が見返しても、視線を反らしたりしない。もう、俺から目を離さないつもりなんだな。
この男は、ともかく何もかも遅いんだ。わかる。気づいた時は手遅れだ。お袋を失った時も、全て後手に回っていることをオクトから話で聞いた。
仕方がない。マクルスが一番大事なのは、家門だ。
マクルスもまた、優秀な為政者だ。優先順位を守っているだけだ。それのせいで、物凄く後悔することとなっても、家門としては正しいことなんだ。
なのに、俺の復讐には最後まで付いて来ようとしている。
あれだ、もうすぐ、寿命だからだろう。力がそれなりにある妖精憑きならば、マクルスの寿命は見える。いつ死んでもおかしくないんだ。それほど、マクルスは寿命を削って、妖精を殺す体を保っている。
あのタバコは、やめるわけにはいかないのだ。やめたって、あの体が戻ることはないし、妖精を退ける効力だって落ちる。実際、一日二日やめていた時、マクルスの体はその効力をぐんと落としたのがわかった。
命か、家門の存続か、と選択を迫れば、マクルスは家門をとるだろう。俺はやっぱり、選ばれないんだよな。
俺は苦笑するしかない。
「どうした?」
「俺たち、どうしようもないな」
「そうだな」
わかってないよな。俺は永遠に、マクルスの執着から逃れられない。そこは、妖精憑きとしての本能だ。どうしようもないと、もう諦めている。
マクルスのそれは、ただ、俺の妖精憑きとしてのわけのわからないものに、魅了されているだけだ。きっかけは、お袋だ。そこから、見た目から、体から、マクルスは篭絡されたに過ぎない。
本当は、こんなもの、望んでいなかったのにな。
本音なんて、一生、さらけ出してやるものか。約束のことは、一生、教えてやらない。どうせ、マクルスは死んだ後も、思い出さない、そんなくだらない話なんだ。
夢を見る。俺はガキになっていた。お袋は家にいて、相変わらず、親父に囲われている。外にも出られないというのに、お袋はそれを喜んでいる。
「あ、マクルスが来た!!」
お袋は赤ん坊のレーリエットで手がいっぱいだから、俺が部屋から飛び出しても止められない。俺が飛び出すと、弟ロイドも一緒になって飛び出してしまう。
屋敷の外に出れば、ちょうど、馬車から降りるマクルスを見つける。俺は止める手も潜り抜けて、マクルスの足にしがみついた。
「こら、離れなさい!!」
マクルスの家臣が俺を叱った。
「子どもがやることだ。許してやれ」
マクルスは苦笑して、俺を抱き上げた。俺を軽々と片腕で持ち上げる。それに俺は喜んだ。
「マクルス、約束したよな。次来た時も遊んでくれるって」
「呼び捨てはやめろ!!」
「子どもなんだ、許してやりなさい」
家臣がまた俺を叱るも、マクルスは笑って許してくれる。
そう、俺は子どもだから、貧民の子どもといえども、全て、許してもらえたのだ。そのことをわかっていて、俺はマクルスにこれでもかと甘える。
「あっちに行きたい!!」
俺は普段、絶対に行けない平民地区を指さす。
赤ん坊であるレーリエットを連れて屋敷を出てきたお袋が、空いた片手で俺の頭を鷲掴みする。
「お前は、マクルス様に向かって、なんてことを言うのですか!? 大変、失礼しました」
「子どもがやることだ、許してやりなさい。大きくなれば、この子どものわかるようになる」
「そうやって、甘やかして!! マクルス様、ルキエルを甘やかしてはいけません。この子は、物凄く賢い子なんです」
お袋は俺が妖精憑きだと知っている。だから、俺のことを危ぶんでいた。
だけど、俺が妖精憑きだなんて知っているのは、お袋だけだ。妖精殺しの伯爵と呼ばれるマクルスですら、俺をただの子どもと見ている。それを俺はあえて利用して、怒るお袋に舌を出してやる。
「ルキエル!!」
「約束したんだから、仕方がない。しかし、お前の遊びは、こうやって、抱っこして歩くだけか。他にもあるだろう。教えてくれ」
「これがいい!!」
俺はマクルスにしがみついた。こうしているだけで満足だ。
「これは、遊びじゃない」
「ガキ同士の遊びは、ロイドといっぱいしてる。俺は、抱っこがいい!!」
「簡単な遊びだな。いいだろう、買い物に行こう」
「マクルス様、いけません!!」
「母親の体にいいものを一緒に選ぼう」
「うん!!」
理由を作っては、俺を抱っこして、マクルスは家臣を引き連れて、平民地区を歩いた。
「にいちゃっ!!」
ロイドは俺がマクルスに連れて行かれるから、泣きながら追いかけてくる。
「お前はこっちだ!!」
それを兄ライホーンが止めてくれた。
「ルキエル、アタシのも買ってくるのよ!!」
どさくさで、姉リンネットが、俺に妙なお願いを叫んできた。気を付けて、お土産を選ばないと、リンネットに殴られるんだよな。俺はマクルスの胸に顔を埋めて、ちょっと震える。
「心配ない。私が選んでやる。こう見えても、女の相手も馴れている」
「姉貴、怒ると怖いんだ。引っかかれるんだよ」
「子どもでも、女か」
俺が姉リンネットのことを伝えると、マクルスは苦笑する。馴れているのだろう。
俺はマクルスの腕の中で、ちらりと家臣を見た。家臣は忌々しいとばかりに俺を睨んでくる。それに俺は舌を出してやる。だから、俺は家臣に嫌われていた。
平民地区への買い物なんてどうだっていい。こうやって、時間を稼いで、マクルスに俺の寿命を移してるんだ。こうやって、時間をかけて密着しないと、俺の寿命をマクルスに与えられない。
妖精がいうには、マクルスは今にも死んでしまいそうなんだって。死んでしまったら、こうやって、マクルスに抱っこしてもらえなくなる。
家族で、俺の頭を撫でたり、抱っこしてくれる奴はいない。お袋はか弱いから無理だ。親父は、そんなことしてくれない。兄ライホーンはまだまだ力がない。姉リンネットは論外だ。
だから、マクルスには一杯、抱っこしてもらうんだ。
ふと見上げると、マクルスは俺なんか見てない。マクルスは店に並び商品を熱心に見ていた。
さすがの俺も、気づく。俺はマクルスのことを名指しで呼ぶが、マクルスは俺を名指しで呼ばない。お前呼びだ。
「マクルス、俺はルキエルっていうんだ」
「知ってる」
「そうか!!」
知らないと思っていた。あえて教えれば、マクルスは苦笑した。知らないから呼んでもらえないわけではない。
俺は一杯、呼んでほしい。
「なあ、俺のこと、名前で呼んでよ」
だから、子どもだからとお願いした。お袋の子どもの一人でいたくなかった。
「生意気を言うな」
だけど、マクルスは俺の額を指で弾いて、軽く叱った。
「呼んでほしい!!」
「お前なんて、まだまだガキだ。名前を呼ばれるようになりたいなら、弟と妹の面倒をみて、立派な兄になれ」
「立派な兄って、ロイドとレーリエットの面倒をみれば、なれるものなのか?」
「そうだ」
「俺は、兄貴にも、姉貴にも、面倒みてもらった覚えがない」
「お前は、口だけは達者だな。お前はお前だ。兄と姉は関係じゃい。お前が立派な兄になるんだ」
「じゃあ、また、こうやって、抱っこしてよ」
「次来た時、してやる。だから、立派な兄になって、母親を楽にさせてやれ」
「わかった!!」
単純だ。立派な兄になれば、マクルスは誉めてくれる。そう考えれば、俺はその通りに動く。実際、マクルスに抱っこしてもらいたくて、ずっと、マクルスの言いなりだ。
随分と寝てたんだな。久しぶりに起きた感じだ。妖精憑きだから、一年、二年、三年と眠っていても、体は健康だ。
ただ、許容量を越えた妖精を盗ったために、俺の体は常に睡眠を求めている。妖精たちは、どうにか、俺を長く眠らせようと、俺自身が幸福だった頃の光景を夢で見せるのだ。そうして、俺を起こさないようにしていた。
俺の幸福は、ガキの頃だ。お袋も生きて、屋敷に囲われていた頃こそ、俺の幸福だ。あの頃、俺は妖精憑きであることを隠して、ただのガキとして、親の保護を受けていた。弟ロイドと妹レーリエットの面倒をみてはいたが、大したことではない。レーリエットは赤ん坊だったから、お袋の手が多く必要だった。ロイドは、同じガキだったから、同じように遊んでやっただけだ。ただ、負けず嫌いなガキだから、俺は手加減をしていた。
妖精たちは、俺が眠ると、ガキの頃の夢ばかり見せるのだ。もう、飽きた。だから、俺は目を覚まして、帝国中から集められた道具の修理をする。
ベッドの脇には、綺麗に重ねられた紙の束が置かれていた。それは、俺のせいで破滅した伯爵マクルスの遺書の束だ。
俺は、マクルスの遺書を養子オクトから受け取ると、すぐに読んだ。いつ、読めなくなるか、わからないからだ。
俺はずっと、マクルスに寿命を捧げ続けていた。最初は五百年もあった寿命も、どんどんとマクルスのために削り、帝国に捕縛された頃にはただの人並となっていた。ただの人は、せいぜい生きても百年だ。俺は、それよりも少なくなるほど、マクルスに寿命を捧げた。
マクルスの遺書を読んでみれば、ところどころ、滲んでいた。俺がマクルスに寿命を捧げていた事実を、筆頭魔法使いハガルはマクルスに暴露したのだ。
それだけではない。俺がガキの頃にした守られていない約束まで、ハガルは暴露しやがった。後悔の文章ばっかりだ。別に、気にしなくていいのに。
今ならわかる。力のある妖精憑きは、どんな願いも叶えられる。だから、執着も激しい。
俺は、ガキの頃に受けた、お袋への下心いっぱいのマクルスの行為に執着した。ガキだから、わからなかった。利用されていても、そんなこと、言われてもわからない。だって、行為を受けているのは俺自身だ。その理由とか、意味とか、どうだっていい。
だけど、それなりの年齢になり、学習して、世の中を知っていけば、マクルスから受けた行為は全て、空しいものだと気づく。
だから、俺はどうしてもマクルスを許せなかった。約束破りやがって、と俺は怒りに震えていたのだ。
バカバカしい。ガキだから、マクルスは許してくれたのだ。何より、あれは、約束じゃない。ガキの頃の話は、ご褒美だ。
マクルスは、約束を破ってなんかいない。俺がそう思い込んでいたにすぎない。
俺のことなんて、貧民として蔑んでいれば良かったんだ。俺があんまりにもお袋に似てたから、マクルスも勘違いしたんだ。
なのに、遺書には言い訳ばっかりだ。マクルスも、男のくせに、妙な所で女々しいよな。俺のことを女々しい、なんてバカに出来ないよ、あいつ。
俺は死んだ後も、マクルスのことは許せない。俺はあんなに名前を呼んでほしい、とお願いしたのに、ガキの頃は呼んでくれなかった。なのに、俺が貴族の娼夫になると、マクルスは俺のこと、普通に名前で呼ぶんだ。
立派な兄になっていない。俺は、娼夫に落ちただけだ。
名前を呼ばれる度に、屈辱を感じていた。貧民だから、とか、そんなの関係ない。こんなご褒美、いらない。だから、マクルスのことは、生きている間、名前で呼んでやらなかった。呼んでいい、なんて許可を出してくれたが、呼ばなかった。あんた、で十分だ。
そうしないと、いざという時、マクルスが大事にしている家門が大変なこととなってしまう。
俺の復讐が失敗した時、俺がマクルスの名前を口走ってしまったら、大変なこととなる。本当に、マクルス、わかってないよな。妙な所で、甘っちょろいよ。
結局、今、外がどうなっているか、俺は知らない。知ろうとも思わない。
俺の幸福は遠い昔に終わった。俺の子どもには、閉じられた部屋にいることを幸福だ、とか言ったが、嘘だ。
俺は魔法で、外に放置された道具を引き寄せる。
「もう、俺もお役御免か」
すっかり、壊れた道具も少なくなった。こんなの、半日もかからない。
壊れた道具の中に、いつもの通り、手紙が紛れ込んでいた。本当に、無駄なことを。
俺からは生涯、返事なんかしない。だけど、俺はその手紙を大事に扱った。
「俺も、マクルスのこと、悪く言えないな。もっと、素直になれば良かった」
綺麗な字だ。さすが、元は貴族だ。そこはきちんと教育されたのだろう。俺は求めていないというのに、眠っている間に起こった出来事を事細かに書かれていた。
「さて、やるか」
俺は手紙を燃やして、道具に向かった。
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
その首輪は、弟の牙でしか外せない。
ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。
第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。
初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。
「今すぐ部屋から出ろ!」
独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。
翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。
「俺以外に触らせるな」
そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。
弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。
本当にこのままでもいいのか。
ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。
その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。
どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。
リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24)
※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。
三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。