会談道中

shishamo346

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長者の娘

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 昔、長者の娘が、夜遅くに帰路につくこととなった。出先では、泊まっていけ、と勧められたのだが、まだ、嫁入り前の身なので、断ったという。

 一人、帰路につかせるわけにもいかず、年寄りが一緒についていった。年寄り相手であれば、妙な噂が流されることもない。

 提灯の灯りのみで歩いていくと、まるで別世界である。家なんてすぐそこのはずなのに、まるで到着しない。しばらく歩いていくと、綺麗な男が地蔵の横に立っていた。


『どこにいくんだい、こんな遅くに』


 わざわざ声をかけてくる。長者の娘は、この綺麗な男の見た目に、ついつい、返事をしてしまう。


『これから、家に帰るところです』

『どこの家だい?』

『長者の家です』

『? 長者の家は、この先にはないぞ。年寄りは目が悪いから、間違えちまったんだね。その先を突き当たって左だ』

『ありがとうございます』


 綺麗な男は、長者の娘のことを知らない様子だ。同じ村に住んでいるわけでもないというのに、道の間違いを指摘されたのには、首を傾げる。

 年寄りは、じっと長者の娘を見ている。


『道を間違えているようです。戻りましょう』

『いえ、この先に行きましょう』

『ですが、こちらではない、とあの男………!?』


 地蔵の横に先ほどまで立っていた男はいなくなっていた。


『綺麗な男がいましたよね』

『お嬢さんは、地蔵に向かって話していましたよ』


 あの綺麗な男、年寄りには見えていなかった。この事実に、長者の娘は鳥肌がたった。

 年寄りは、あの綺麗な男が示した方とは逆に進もうとしている。綺麗な男は長者の娘にしか見えない、得体の知れない存在だ。


『狐に化かされたのでしょうね』


 年寄りは、稲荷神社のほうを見て呟く。そういうこと、確かにある。

 そうして、年寄りについていく長者の娘。どんどんとついていくけど、見覚えのない道となっていく。村の田畑のほうへと向かっていっているのだ。

 突然、虫の鳴く音が消える。年寄りが持つ提灯の灯りが消えて、辺りが真っ暗となった。

 不吉なものを感じて、長者の娘は年寄りを置いて、来た道を走って戻っていく。途端、なにかが追いかける足音が続いた。それから逃げるように、必死に走っていけば、あの曰くある地蔵に戻ってきた。

 地蔵の横に、あの綺麗な男が立っていた。


『また会ったな』

『道に、迷ってしまって』

『………こっちに来なさい』


 綺麗な男は、地蔵に後ろに長者の娘を隠した。それと入れ替わりに、複数の男がやってきた。


『おい、こっちに女は来たか!?』

『道に迷っているようだったから、道を教えた』

『教えろ!!』

『その先を突き当たって右だ。そんな、女一人を追いかけて、何をするつもりだ?』

『うるせぇ!! 殺すぞ!!!』


 武器を突き付けて脅す男たち。綺麗な男はただ、笑っただけだ。

 綺麗な男に気味の悪いものでも感じたのだろう。男たちはさっさとその場を去っていった。

 長者の女は、恐ろしい男たちがいなくなったので、地蔵の後ろから出た。そこに、遅れてやってきた年寄りと遭遇する。


『いなくなってしまったので、驚きました』

『真っ暗になったので、驚いてしまって』

『無事で良かったです。さあ、行きましょう』


 年寄りは、相変わらず、綺麗な男が見えていない様子だ。長者の娘の腕をつかんで引っ張っていく。その力の強さに、長者の娘は恐怖を感じ、振り払い、地蔵の後ろに逃げ込む。

 目の前で隠れたというのに、年寄りは長者の娘が見えない様子だ。しばらく、あちこちと探して、恐ろしい形相となった。


『せっかく、金になる女だというのに』


 年寄りは、長者の娘に何かするつもりで、わざと道に迷ったのだ。その事実に、長者の娘は恐怖に震える。

 そうして、地蔵の後ろに隠れて、長者の娘は一夜を過ごした。その間、あの綺麗な男が何かと話しかけては、気をまぎらわれてくれたが、気づいたら、眠っていた。

 一夜明けると、そこは、知っている場所だった。あの綺麗な男はいなくなっていた。長者の娘は綺麗な男がいう通りに突き当たって左に行ってみれば、きちんと家についた。

 そういえば、綺麗な男は、あの荒れくれた男たちは逆の道を教えていたな、と思い出し、長者の娘は使用人数人と一緒に行ってみた。

 突き当たって右に行けば、とんでもない深さ穴があり、そこに、長者の娘を追いかけていた男たちと、あの年寄りが落ちて死んでいた。
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