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長者の娘
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昔、長者の娘が、夜遅くに帰路につくこととなった。出先では、泊まっていけ、と勧められたのだが、まだ、嫁入り前の身なので、断ったという。
一人、帰路につかせるわけにもいかず、年寄りが一緒についていった。年寄り相手であれば、妙な噂が流されることもない。
提灯の灯りのみで歩いていくと、まるで別世界である。家なんてすぐそこのはずなのに、まるで到着しない。しばらく歩いていくと、綺麗な男が地蔵の横に立っていた。
『どこにいくんだい、こんな遅くに』
わざわざ声をかけてくる。長者の娘は、この綺麗な男の見た目に、ついつい、返事をしてしまう。
『これから、家に帰るところです』
『どこの家だい?』
『長者の家です』
『? 長者の家は、この先にはないぞ。年寄りは目が悪いから、間違えちまったんだね。その先を突き当たって左だ』
『ありがとうございます』
綺麗な男は、長者の娘のことを知らない様子だ。同じ村に住んでいるわけでもないというのに、道の間違いを指摘されたのには、首を傾げる。
年寄りは、じっと長者の娘を見ている。
『道を間違えているようです。戻りましょう』
『いえ、この先に行きましょう』
『ですが、こちらではない、とあの男………!?』
地蔵の横に先ほどまで立っていた男はいなくなっていた。
『綺麗な男がいましたよね』
『お嬢さんは、地蔵に向かって話していましたよ』
あの綺麗な男、年寄りには見えていなかった。この事実に、長者の娘は鳥肌がたった。
年寄りは、あの綺麗な男が示した方とは逆に進もうとしている。綺麗な男は長者の娘にしか見えない、得体の知れない存在だ。
『狐に化かされたのでしょうね』
年寄りは、稲荷神社のほうを見て呟く。そういうこと、確かにある。
そうして、年寄りについていく長者の娘。どんどんとついていくけど、見覚えのない道となっていく。村の田畑のほうへと向かっていっているのだ。
突然、虫の鳴く音が消える。年寄りが持つ提灯の灯りが消えて、辺りが真っ暗となった。
不吉なものを感じて、長者の娘は年寄りを置いて、来た道を走って戻っていく。途端、なにかが追いかける足音が続いた。それから逃げるように、必死に走っていけば、あの曰くある地蔵に戻ってきた。
地蔵の横に、あの綺麗な男が立っていた。
『また会ったな』
『道に、迷ってしまって』
『………こっちに来なさい』
綺麗な男は、地蔵に後ろに長者の娘を隠した。それと入れ替わりに、複数の男がやってきた。
『おい、こっちに女は来たか!?』
『道に迷っているようだったから、道を教えた』
『教えろ!!』
『その先を突き当たって右だ。そんな、女一人を追いかけて、何をするつもりだ?』
『うるせぇ!! 殺すぞ!!!』
武器を突き付けて脅す男たち。綺麗な男はただ、笑っただけだ。
綺麗な男に気味の悪いものでも感じたのだろう。男たちはさっさとその場を去っていった。
長者の女は、恐ろしい男たちがいなくなったので、地蔵の後ろから出た。そこに、遅れてやってきた年寄りと遭遇する。
『いなくなってしまったので、驚きました』
『真っ暗になったので、驚いてしまって』
『無事で良かったです。さあ、行きましょう』
年寄りは、相変わらず、綺麗な男が見えていない様子だ。長者の娘の腕をつかんで引っ張っていく。その力の強さに、長者の娘は恐怖を感じ、振り払い、地蔵の後ろに逃げ込む。
目の前で隠れたというのに、年寄りは長者の娘が見えない様子だ。しばらく、あちこちと探して、恐ろしい形相となった。
『せっかく、金になる女だというのに』
年寄りは、長者の娘に何かするつもりで、わざと道に迷ったのだ。その事実に、長者の娘は恐怖に震える。
そうして、地蔵の後ろに隠れて、長者の娘は一夜を過ごした。その間、あの綺麗な男が何かと話しかけては、気をまぎらわれてくれたが、気づいたら、眠っていた。
一夜明けると、そこは、知っている場所だった。あの綺麗な男はいなくなっていた。長者の娘は綺麗な男がいう通りに突き当たって左に行ってみれば、きちんと家についた。
そういえば、綺麗な男は、あの荒れくれた男たちは逆の道を教えていたな、と思い出し、長者の娘は使用人数人と一緒に行ってみた。
突き当たって右に行けば、とんでもない深さ穴があり、そこに、長者の娘を追いかけていた男たちと、あの年寄りが落ちて死んでいた。
一人、帰路につかせるわけにもいかず、年寄りが一緒についていった。年寄り相手であれば、妙な噂が流されることもない。
提灯の灯りのみで歩いていくと、まるで別世界である。家なんてすぐそこのはずなのに、まるで到着しない。しばらく歩いていくと、綺麗な男が地蔵の横に立っていた。
『どこにいくんだい、こんな遅くに』
わざわざ声をかけてくる。長者の娘は、この綺麗な男の見た目に、ついつい、返事をしてしまう。
『これから、家に帰るところです』
『どこの家だい?』
『長者の家です』
『? 長者の家は、この先にはないぞ。年寄りは目が悪いから、間違えちまったんだね。その先を突き当たって左だ』
『ありがとうございます』
綺麗な男は、長者の娘のことを知らない様子だ。同じ村に住んでいるわけでもないというのに、道の間違いを指摘されたのには、首を傾げる。
年寄りは、じっと長者の娘を見ている。
『道を間違えているようです。戻りましょう』
『いえ、この先に行きましょう』
『ですが、こちらではない、とあの男………!?』
地蔵の横に先ほどまで立っていた男はいなくなっていた。
『綺麗な男がいましたよね』
『お嬢さんは、地蔵に向かって話していましたよ』
あの綺麗な男、年寄りには見えていなかった。この事実に、長者の娘は鳥肌がたった。
年寄りは、あの綺麗な男が示した方とは逆に進もうとしている。綺麗な男は長者の娘にしか見えない、得体の知れない存在だ。
『狐に化かされたのでしょうね』
年寄りは、稲荷神社のほうを見て呟く。そういうこと、確かにある。
そうして、年寄りについていく長者の娘。どんどんとついていくけど、見覚えのない道となっていく。村の田畑のほうへと向かっていっているのだ。
突然、虫の鳴く音が消える。年寄りが持つ提灯の灯りが消えて、辺りが真っ暗となった。
不吉なものを感じて、長者の娘は年寄りを置いて、来た道を走って戻っていく。途端、なにかが追いかける足音が続いた。それから逃げるように、必死に走っていけば、あの曰くある地蔵に戻ってきた。
地蔵の横に、あの綺麗な男が立っていた。
『また会ったな』
『道に、迷ってしまって』
『………こっちに来なさい』
綺麗な男は、地蔵に後ろに長者の娘を隠した。それと入れ替わりに、複数の男がやってきた。
『おい、こっちに女は来たか!?』
『道に迷っているようだったから、道を教えた』
『教えろ!!』
『その先を突き当たって右だ。そんな、女一人を追いかけて、何をするつもりだ?』
『うるせぇ!! 殺すぞ!!!』
武器を突き付けて脅す男たち。綺麗な男はただ、笑っただけだ。
綺麗な男に気味の悪いものでも感じたのだろう。男たちはさっさとその場を去っていった。
長者の女は、恐ろしい男たちがいなくなったので、地蔵の後ろから出た。そこに、遅れてやってきた年寄りと遭遇する。
『いなくなってしまったので、驚きました』
『真っ暗になったので、驚いてしまって』
『無事で良かったです。さあ、行きましょう』
年寄りは、相変わらず、綺麗な男が見えていない様子だ。長者の娘の腕をつかんで引っ張っていく。その力の強さに、長者の娘は恐怖を感じ、振り払い、地蔵の後ろに逃げ込む。
目の前で隠れたというのに、年寄りは長者の娘が見えない様子だ。しばらく、あちこちと探して、恐ろしい形相となった。
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年寄りは、長者の娘に何かするつもりで、わざと道に迷ったのだ。その事実に、長者の娘は恐怖に震える。
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一夜明けると、そこは、知っている場所だった。あの綺麗な男はいなくなっていた。長者の娘は綺麗な男がいう通りに突き当たって左に行ってみれば、きちんと家についた。
そういえば、綺麗な男は、あの荒れくれた男たちは逆の道を教えていたな、と思い出し、長者の娘は使用人数人と一緒に行ってみた。
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