バグスラ!バグった世界でハック&スラッシュ

東雲はち

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ハクスラ好き、草原に立つ

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神たちとの短い邂逅を終えた後、意識が戻るとそよ風を感じる草原のような場所に転移していた。
どこまでも澄み渡る青空は新たな冒険の始まりを感じさせる。
気温もちょうどよく時刻もおそらく昼下がりだろう。

「ここは...」

悠は目を覚まし、周囲を確認する。
遠くの方に何やら水色で丸いボールのような生物が跳ねたり、見たことのない四足の草食動物のような生き物が見える以外は気持ちのいい草原のような場所だ。

「...どうやら本当に異世界転生?してしまったみたいだな、にしてもデバッカーとか言ってたけど俺はこれから何をしていけばいいんだ...?」

そう思っていると近くに宝箱のような物が置いてあるのを発見する。

「宝箱...か?ゲームではよく見かけるものだけどこうやってリアルで見ると意外とデカいな、てかこんなところに置いてあって良いのかこれ」

そう思いながら悠は宝箱を開けるために近づいていくと宝箱の上にポップアップのような物が表示された。

「えぇと何々...『デバッカー特典の初心者装備一式と説明書入り』か、開けてみるか」

よくある上の蓋を上げる形のテレレレーンとでも聞こえてきそうな宝箱を開くとそこには見慣れない四角いルービックキューブのような形の物体がいくつか入っていた。

「装備って書いてあったけどこれはなんだ...?えーっと、確かアナライズっていうスキルを貰ってたなどう使えば...とりあえず叫んでみるか【アナライズ】!」

そう悠が叫ぶと置いてあったルービックキューブのような物の上に情報のポップアップが表示されていく。
一つは『初心者装備&アイテムセット、内容物【初心者の帽子】【初心者の鎧】【初心者の手袋】【初心者のブーツ】【初心者の剣】【初心者の盾】【ライフポーション&マナポーション5本セット】【2000G(ゴルディン)】』
もう一つは『説明書』
と表示されている。

「この中に詰まってるって事か?どれどれ...スキルジェムと同じように持って握ればいいのかな」

そして初心者装備セットのキューブを持ち上げてスキルジェムと同じように強く握ると同じように身体に吸収されていく。

「...なんか吸収した感じはあるけど、俺の身体に入ったってことか?それともゲームの定番としてはインベントリがあってそこに入ったとか?えーっと、アナライズと同じように...【インベントリ】表示!」

同じように叫ぶと悠の目の前にマス目で区切られた所持アイテム画面と自分の身体が3Dで表示されている装備画面のような物が出てきた。

「おおっ、よくある画面だ!...ってインベントリ小さっ!」

インベントリを確認すると初心者装備とポーションだけで7割ぐらいのマス目がすでに埋まってしまっている。

「とりあえず装備してインベントリを空けるか...ん?なんか右下の方にインベントリ拡張ってあるけどこれは...」

そう思って悠はそのインベントリ拡張と書かれている部分を触ってみる。
すると新たなポップアップがインベントリ画面の上に表示される。

「何々...『インベントリ拡張lv1...10マス追加で100スタージェム【100スタージェム購入はこちら!100スタージェム=約1000ゴルディンで販売中】』って金とんのかよ!」

悠はそう叫んでその画面の左上にある×マークを押して画面を閉じる。

「てか初期がこれ40マスぐらいで初期アイテムで一杯になりかけだから、インベントリ拡張で利益を上げようとしてるタイプのクソMMOかこれ...?良くない文化を真似てるよあの神たち...」

はぁとため息を吐きながら悠はインベントリの確認に戻る。

「じゃあ装備してみるか...感覚的にはこのインベントリのアイテムをドラッグ&ドロップして該当箇所に持っていけば装備出来そうな気がするが...」

そう言ってインベントリの【初心者の帽子】を3dの自分の身体の頭へと装着させる。
すると自分の実際の身体の頭に初心者の帽子が現れて装着された。

「おおっ、なんかゲームって感じがして面白いな!とりあえず全部装着してみるか」

悠はインベントリの残りの初心者装備一式を該当箇所へと装備していく。
全ての装備を装着した悠はマジマジと自分の姿を眺めている。

「...いやダサすぎるってこれ!完全にパジャマとか寝間着じゃないの!?」

一式を装備した悠の姿は完全に鎧とは思えないパジャマスタイルになっていた。
帽子は先に丸い毛玉が付いている三角の帽子、上下は水色の縦縞模様のゆるいパジャマで足はスリッパで手は鍋つかみの様なもの。
武器は剣だが木製の木刀の様な見た目で、盾も同じく木製の丸いバックラーのような見た目だ。

「これで戦えって言われてもいけるのか...?どう見てもただのコスプレ装備なんだが...とりあえずステータスって書いてあったから確認してみるか」

装備画面に表示されているステータスというタブを触ってみる。
すると新たに画面が出てきてそこには悠の様々なステータスが記載されていた。

「色々書かれてるな、まずは能力値を見てみるか...」

『名前:ツダ・ユウ 種族:ヒューマン 職業:剣士 レベル:1 HP:100 MP:50』
『基礎ステータス 力10 知力7 器用:8 敏捷:10 運:5』
『合計ステータス 力:20 知力:12 器用:15 敏捷:17 運:10』
『有効な効果:【自動蘇生】【初心者装備セット効果『全てのステータス+5』】』

等々様々な情報が表示されている。

「うーん、この能力が高いのか低いのか分からんな、でも職業は剣士になってるのは良い!元々剣を使う職業が好きだったからこれはありがたいが...」

表示されているステータス画面をじっくりと確認しながら悠はあれこれ考えてみる。
ふと目についたほかのタブも確認してみることにした。

「他にもあるな、これは職業タブか...」

職業と書かれているタブを触ると剣士についての様々な情報が表示された。
『剣士:近接職業、剣と盾を装備しバランスの取れたスキルを覚えることが出来る。職業レベルを上げてスキルを習得することで二刀流や両手剣なども装備可能になる』
『所持スキルポイント:1 スキルツリーにスキルポイントを割り当ててください』

「おぉ...ここはちゃんと作られてるのかな?よくあるポイントを振ることで強いスキルが使えるようになる感じか、さて初期で取れるスキルは3つでそれぞれスキルレベルがあると、どれにしようか...」

悠が悩んでいるスキルは3つ。
一つは剣の攻撃スキル【スラッシュ】
もう一つはパッシブスキル【力強化】
そして最後は盾の防御スキル【スーパーガード】

「【スラッシュ】は基本攻撃の1.25倍を対象に与える、スキルレベルを上げると倍率が1.5倍みたいに上がっていく感じか。【力強化】は単純に1ポイント振る度に力が+5される。【スーパーガード】は次の攻撃を軽減してくれてスキルポイントを振る度に軽減率が上がっていく感じか...」

悠はスキルツリーの先なども確認してどれにひとまず振るか悩んでいる。
あれこれ考えて悠が選んだのは。

「無難に【スラッシュ】にしてみるか、スキルポイントの振り直しとかも簡単に出来ると良いけどな...デバッカーって言うぐらいだからそこらへんどうにかしてくれよ神様...」

そしてスキル画面でスラッシュに1ポイント割り当てて画面を閉じる。

「んー、何か変わった感じはしないけどどうやって使うんだ?とりあえず放置してた説明書も確認するか」

宝箱内に残されていた説明書キューブを拾い上げて同じように吸収してみる、するとインベントリにアイテムが表示された。

「お、これか...ってアイテム名がバグって『隱ャ譏取嶌』とかになってるけど!?これは後で報告?してと、バグってるけど中身読めるのかな」

インベントリから悠はバグっている『隱ャ譏取嶌』を選択して見る、すると手元に薄い本のような物が現れる。

「...いやこれ完全に駄目だな、よくある奴だこれ」

その本の表紙と言うか外見は紫と黒の四角系がぐちゃぐちゃに表示されており、背表紙なども似たような感じになっている。
本を開こうとするが異常に1ページめくるのが重い、重すぎて何で出来てるのか分からない。
ようやく開いたページはまたもや文字化けして何が書いてあるか全く分からない。

「これどうすれば...とりあえず報告するとして、【アナライズ】を使えば分かるとか言ってたっけ?よし」

悠はバグった説明書にアナライズを使用する。
すると赤い画面に黄色の文字でいかにもエラーですよと言う感じで警告文が表示されている。

『エラー:説明書表紙テクスチャが見つかりません。エラー:説明書ページ2のリンク画像が見つかりません』
等々沢山の警告表示が出されている。

「うわぁ、これ分かっても直せるのかな...とりあえず【バグ報告】!」

バグ報告を使用すると悠の目の前にバグ報告プラットフォーム画面が出現した。

「えーっと『この度はアルカディアシステムのバグ報告にご協力していただきありがとうございます。報告したい現象について下記の通り記載してください。【件名】【日時】【場所】【現象】【条件(任意)】【スクリーンショット(任意)】なおこのバグレポートを送信することでエンドユーザー契約及びアルカディアシステムでの個人情報の取り扱いに同意した事に...』ってこれもめんどくさすぎる奴だ!よくゲームがクラッシュすると表示されるけど送るの遅いし書くのもだるいからみんな書かない奴だ...でも仕方ない書くか...」

悠は冒険を始める前にいそいそとバグレポートを書き進めて送信するのであった。


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