ボッチの少女は、精霊の加護をもらいました

星名 七緒

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第1章

牛乳を買いにいく(改題)

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 朝の風景。

「ハンバーガーくれ」

「サンドイッチをお願い」

「ハンバーガーとサンドイッチを頼む」

 メニューが増えました。

 そして、お昼のメニューも増えました。
 忙しい方のために、サンドイッチをご用意しました。

 サンドイッチのお持ち帰りをご希望の方は、 近くの「陽だまりのパン屋」へどうぞ。


 食パンがある。卵もある。砂糖はないが、蜂蜜がある。あとひとつ欲しいものがあるんだ。それはね…。


「おばさん、牛乳っていうか、ミルクみたいなもの、あるの?」

「牛乳?ブッカの乳のことかい?」

「ブッカは知らないけど、牛乳なら欲しい」

「ドリーに案内してもらいなよ」

「今、行ってきてもいい?」

「あぁ、ちょうどお客もとぎれたとこだ。行ってきな」

「いってきます」



「こんにちはー」

「アリサ、今日はなに?」

「ブッカの乳が売っているところへ行きたいんだけど」

「ブッカの乳?またなにか作るのね?」

 ドリーは身をのり出してきた。

「まだわからないけど…」

 だって、牛乳=日本の牛乳と一緒か、わからないから…。

「すぐ行こう。案内するわ」

 そういうと、お店の奥へ声をかける。

「アリサと出かけるから、店番お願いねー」

 そういうと、誰も出てこないのに、私の腕を掴んで、外へ出た。店番、大丈夫ですか?


 ブッカは角がある牛らしい。気が荒いので、危険だという。しかし、その乳はとても美味だという。
 今向かっているお店のご主人は、そのブッカを手なずけたという凄腕の冒険者なんだとか。

「すごく強い人なんだって。ブッカも、尻尾を巻いて逃げだすくらい」なのだそうだ。
 その冒険者さんは、ブッカの乳を一口飲んだら、その美味しさが忘れられず、ブッカを手なずけ、隣村でブッカを育てているという。

 ブッカは、気が荒いというのに、村に預けて大丈夫なのかな?

「アスール・フローっていう青い花があるの。それは心を落ち着かせる不思議な香りのする花なの。それを村の周囲に植えたら、ブッカもおとなしいんだって」

 花で気の荒い動物を落ち着かせる?本当なのかな?
 そんな話をしているうちに、ブッカの乳が置いてあるという「ミルヒーの店」にきた。
 「ミルヒー」…なんか聞き覚えのあるような名前なんだけど…気のせいかな?

「こんにちは、ブレンダさん」

「こんにちは」

「いらっしゃい」

 お店の中央に大きなテーブルがあり、チーズらしきものが置いてあった。これって、本当に?

「これ、チーズですか?」

「よく知ってるわね。そうよ、チーズなの。こっちには、バターがあるわよ」

 左手の方にあったケースを覗くと、おー、バターが塊で置いてあった。でも大丈夫なの?

「溶けないんですか?」

「実はね、ウチの店のケースには、氷の魔晶石が入っているの。ケースの中のものを冷やしてくれるの」

 それは冷蔵庫ですね!すごいです。いいなぁ、欲しい!

「ブレンダさんの旦那さんは、凄腕の冒険者だもんね。こんな高い魔道具、ウチじゃ買えないわ」

 ドリーが羨ましそうに言う。
 やっぱり高いんだ…ガッカリ。

「今日はチーズが欲しいの?」

 ブレンダさんが聞いてくる。

「ブレンダさん、この娘は“川の夕暮れ亭”のアリサです」

「“川の夕暮れ亭”の噂はよく聞いているわ」

 う、また噂ですか?

「ウチの商品を使ってくれるの?」

 ブレンダさん、そんなに身をのり出してこないでください。

「アリサは、ブッカの乳が欲しいらしいの」

「ブッカの乳?牛乳ね?そのまま欲しいの?」

「少し飲ませてもらえませんか?」

「アリサはブッカの乳を知らないみたいなの」

「わかったわ。ちょっと待ってて」

 ブレンダさんは奥のケースから、水差しを出してきた。そこには白い飲み物が入っていた。それが牛乳?カップに牛乳を入れ、手渡してくれる。しかもドリーの分も。

「よかったら、ドリーもどうぞ」

「「ありがとう、ブレンダさん」」

 ゴクゴク。美味しいー。濃厚な牛乳だよ。しかも、氷の魔晶石で冷やされていて、すごく美味しかった。
「美味しいです!」

「うふっ、ありがとう」

「あの、ブッカを落ち着かせるのに、花を使っているって、本当ですか?」

「えっ?違うわよー。そんなふうに言われているの?実際はね、ブッカの牧場の周りには、柵があるの。でも、万が一の時のために、結界が張ってあるの。その結界の目印に、花を植えてあるのよ」

「なんだ、そうだったの?」

 ドリーは、なんだかガッカリしてる。なんで?

「もしそれが本当だったら、花を持っていれば、誰でも危険な生き物のそばにいられるってことでしょう?」

「そうですけど…。ロマンがない…」

 なに。ロマンって…。

「それに、ブッカも落ち着いた環境の中では、おとなしいのよ」

 その環境を作るのが、大変なんだろうね。言葉では楽そうに言ってるけど、実際は大変だったんだろうな。
 ブレンダさんの旦那さんは、隣村(といっても街から馬車で2日かかるんだって)出身だそうだ。隣村は特別な産業がなかった。旦那さんは力が強かったので、冒険者になったという。ブッカを捕まえ、育てることを隣村にお願いした。ブッカを村の産業に役立てたというわけだ。
 村の人たちは、牛乳からチーズやバターを作り、売り出してるそうだ。ただ商品としては、日が浅いため、知っている人が少ない。

「ぜひとも、ウチの商品を使って、料理を作ってちょうだい。もっと売れるようにね」

 ブレンダさんに期待されても、そんな力はあまりないです。今までは運が良かっただけです。
 しかもブレンダさん、格安のお値段で売ってくれるというの。「宣伝のために」だって。
 がんばります。


 牛乳、バターまで手に入った。これで「アレ」が作れます。

 一枚のパンを4等分に切る。卵、蜂蜜と牛乳を混ぜた液を作り、食パンをひたす。
 フライパンにバターを入れる。バターが溶けたら、液にひたしたパンを入れ、きつね色になるまで焼く。

「フレンチトーストのできあがり」

 甘いのがいいのなら、もっと蜂蜜をかけてね。
 夕方、メイさんと来たジミーちゃんとトミーちゃん、ミリアちゃんに作ってあげた。もちろん、ドリーも食べにきたの。
 子供たちは甘いフレンチトーストに大喜びだった。

「「「お姉ちゃん、美味しい」」」

「アリサ、美味しいわ」

「子供たちだけ、ずるいわ」

 メイさんが口をとがらせて言う。

「大丈夫です。材料がまだありますから、作りますよ」

「アリサ、もちろんアタシの分もあるんだろうね?」

「俺の分も忘れるなよ」

 おばさん、おじさんも分かってます。ちゃんと作りますから。
 結局、皆が食べている時にやってきたコイルさんの分まで、作ったんですよ。はあー、疲れた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 予想がついた方もいらっしゃいました。さすがです。
 ブッカの乳=牛乳  無理があるかもしれませんが、長い目でみていただき、お読みください。 
 次はなににするか、悩んでいます。

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