朝靄の歩道橋

ココロボ何某

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春の始まり

前編

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制服が可愛いという理由と学校が近いという理由で女子校を選んだせいで
今年卒業するまで異性と関わりを持てずにきてしまった。

彼女の名前は椎名 律。

楽器屋でバイトを始めたばかりの19歳。
就職しなかった理由も特になく
楽器屋を選んだのも高校の友達がバンドマンで身近に感じただけの理由である。
 

「はあ・・・カッコいい人は良く来るんだけど、良い噂なんて聞かない人ばっか・・・」 


「確かに遊び人は多いかな・・・ボーカルとギタリストは分かりやすいけど、ベーシストは上手いこと遊んでるんですよ、律は気をつけないと遊ばれて捨てられるね(笑)」 

友達の渡辺 真弓が答えた。


「じゃあ、ドラマーは??」

「・・・モテるモテないの前キャラが掴めない、私のバンドのドラムに限るけど(笑)」 

「ふ~~ん・・・」

「今度ご飯でも誘ってみれば?ドラムに命捧げてるから難しいと思うけど。てか、仕事してよー、いつまでギターの弦売ってくれないわけ??」

「あっ!ごめんごめん!!」 

単純に真弓は明るくて可愛いと思うし、ギターを弾きながら歌う姿が私は好きだ。
だけど、ライブ見に行く事に真弓より遠くの沙村さんがドラムを叩く姿に目を奪われていった。

「所詮、ライブの時なんて最大値に補正が掛かってて
外で会ったら減点する一方なのにね」
って口うるさく真弓が言ってたっけ。

でも、「ご飯に誘ってみれば?」って言ったって事は悪い人ではないんだろうな。



「お疲れ様です、お先に失礼します」



職場のバラカン楽器店を後にした律は真っ直ぐ家路についた。
帰り道の電車の中で沙村に連絡をしようか少し迷ったが、行動に移すまでの気持は持てなかった。

「恋っていう名前もつかないで終っちゃう気持ちなのかな。いつになるやら・・・私の恋は。もう!なんでも良いから夢中になれる物が欲しい!! 」

 
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