朝靄の歩道橋

ココロボ何某

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仲春

仲春

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恋って名前が付けれるのはいつからだろうか。
曖昧すぎて始まりは分からない。
沙村さんが同じ電車に乗ってたり、近所を歩く姿に気がつく様になったのは
もう始まっていたからかもしれない。


「あっ、沙村さん!」
律が声をかけた。

「りっちゃんはバイトの帰り?」
普段より服装がラフな沙村。

「そうです!沙村さんはどこ行くんですか?」

「晩メシ買いにコンビニ」

「なら、一緒にご飯食べ行きませんか?私もお腹空いちゃって・・・」

「良いね、何食べたい?」

「今日はガッツリ、ハンバーグを食べると心に決めていました!」 

「そかそか(笑)じゃあ、行こっか」

「はい!」


送ってもらって以来、こうやってご飯を一緒に食べに行くようになった。
りっちゃんと呼ばれる様になったのも最近だ。
てかそれまで名前呼ばれた事あったっけ?
 

「りっちゃんは最近どう?」

「なんですか、その質問(笑)」

「なんか今日は特に元気そうだから良いことあったのかと」

「う~ん、特に無いですけど最近楽しいんです。しいて言うなら前まで真っ直ぐ帰るだけだったのが、沙村さんとご飯食べながらお喋り出来る様になったからかな」

「そりゃ、光栄です(笑)」

「いえいえ、こちらこそ(笑)」

「沙村さんこそ最近どうですか?」

「うーん、特に無いかな。相変わらず。」


真弓からはバンドの話をたくさん聞くけれど、沙村さんからは殆ど聞くことがない。
真弓から聞いているだろうとか、詳しい話をされても分からないからつまらないだろうとか
気を遣ってくれてるのが少し寂しい。


「じゃあ、彼女さんとは上手くいってます?」

前に真弓に聞いた時は居なかったが、居る前提で聞いたのは
単純に今居た時の為に予防線を張って、チクリと胸を痛める程度で済ませる為だ。
もちろんこの話題はお互い初めて話すだろう。


「ずっと居ないよ。真弓がそんなホラ吹いたの?」

「いや、てっきり居るのかなって勝手に・・・」

「居たらりっちゃんとご飯食べに行くのも悩んでるよ(笑)」

「沙村さん真面目ですからね。」

「嫌がる子って居るじゃん。異性が友達として成り立つか問題もあるけど、俺の信用が無いんだろうね」

「そうですかね?自分に自身が無いから相手を束縛してるようにしか思わないです。私も自分に自信はないですけど・・・」

「まあ、お互い様って事で」

「そうですね(笑)」

「りっちゃんは彼氏は?もしくは好きな人とか。」

「居たら沙村さん捕まえてご飯行かないです」

「そうですね(笑)」

「真似しないでください(笑)」

「はいはい(笑)」


普通の会話で一喜一憂してしまう。
私がこれ以上を求めて壊れてしまうくらいなら、自分に噓を付いてでも友達で居たい。
お互いこのまま恋人を作らず、ずっと。

・・・都合が良すぎる、ただ自分が傷つきたくないだけだ。

でも・・・今はまだこのままで居たい


 
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