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春の終わり
前編
しおりを挟むこんな事になったのは
春が終わりそうになったせいだ。
じゃなきゃ私は焦ったりしなかった。このままで良いって願っていたのに。
「おっ、りっちゃん。バイトお疲れ。」
「ありがとうございます・・・今日は閉店までだったから・・・こんな時間になっちゃって・・・お腹空いた・・・沙村さんご飯食べました??」
「さすがに食べたよ、今二十三時だしね(笑)でも、とりあえずりっちゃんの腹ごしらえしなきゃな(笑)」
近くのファミレスに入った二人。
「今度のライブのチケットどうぞー。この前も真弓と会ったんでしょ?真弓が渡せば良いのにね。」
「いつもありがとうございます!そうは言っても沙村さんはご近所さんですし、暇そうですし(笑)」
「酷いなー(苦笑)」
ときどき沙村の携帯が光るのが目に入った。
沙村との会話に良くも悪くもすっかり慣れてきたからだ。
ふいに目線がタバコを持つ手と口に行くのは
「春」のせいだ。
春に八つ当たり過ぎだね、私(苦笑)
時計の針はとっくに二十四時を過ぎて、もうすぐ午前一時に近づいていた。
「もうこんな時間だ、りっちゃん帰ろうか。」
「はーい。でも、少し散歩して帰りませんか??」
「遅いから少しだけね。出ようか。」
この時期には珍しく今日は肌寒かった。
「昨日まで暖かかったのに寒いですね~。あっ、冬とか。寒い時って人恋しくなりません?今日はずっとそんな気分だったんです・・・」
「人恋しいか。そんな風に思った時あったかな?」
「えっ!?絶対ありますって!無かったら感情死んでます!(笑)」
「じゃあ、あったって事にしといて(笑)おっ、あの人美人さんだねー(笑)」
話を変えるのが下手くそだし、女の人の話題だし。この人はなんなんだろう。今日はモヤッとするな。
私が好きじゃなかったらなんてことないんだけど。
「そこの公園寄って、タバコ吸ったら帰りますか」
「はーい・・・」
「今日は機嫌がイマイチだったね(笑)」
「人恋しい日だったんで・・・」
「知り合いは多いけど、紹介出来るような友達居たかな。」
「だ か ら、そういう事じゃないんです!私は沙村さんが・・・」
恥ずかしさで肌寒さが心地良いくらい顔が熱くなっていた。
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