朝靄の歩道橋

ココロボ何某

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春の終わり

後編

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「・・・りっちゃん?」

「・・・ちゃんと聞いてました?私は・・・沙村さんが好きなんです。」

「うん、ありがとう。」 

(ありがとうって・・・私はどうしたら良いの?困らせたのは分かってるけど。他の返事が欲しいよ・・・) 

息が荒くなるくらい振り絞った言葉なのに、沙村に躱された気がした律は惨めに感じていた。

「・・・へ、返事は後で良いです。今日は帰ります。」

「いや・・・今言うよ。うーん・・・ちょっと場所変えて良い?」

沙村は律の返事を聞く前に歩きだした。
今居る公園から続く階段を降りると歩道橋がある。あまり大きくない歩道橋だ。
この時間はさすがに車通りがまばらなせいか静かで暗く感じた。

「うんと・・・俺はあんまり器用な方じゃないし、今はバンドが一番で・・・」

「器用じゃないのは分からないですけど、バンドが一番なのは分かってます・・・。」

「・・・」

「ハッキリ言って大丈夫ですから・・・遠回しに、言・・・うっ、ぅっぅぅぅ・・・」

「り、りっちゃん?」

(泣くつもりじゃなかったんだ・・・。好きだって言うつもりもなかったし。なんて・・・惨めなんだ。)

沙村さんの優しさとズルい言葉が私にそう思わせたんだと思う。
それからは泣くのも言葉も止まらなかった。

「な、なんなんですか!グスッ。バンドが一番だと、か、彼女は作れないんですか!?うぅ、単純に私の事好きじゃないんですか?ご飯食べてても今日はやたら連絡来てるみたいだし、話題変えようと「美人だねー」とか。グスッ。こんなにいつもいつも会ってるのに・・・」

「・・・気づかなくてごめん。りっちゃんは大事な友達だから。そうゆう目で見た時なかったよ。」

「ぜ、全然そうゆう目で見てください、チューだって今したって良いし、グスッ。服だって脱いだって・・・」

「りっ、りっちゃん!!!落ち着こうか。」

もはや自分でも何を言ってるか分かってなかった。沙村さんが離れて行くのが怖くて、なんでもするから行かないでって宣言したようなものだ。
所詮、付き合っても無いのに・・・フラれるのが怖かったんだ。


泣いても、泣いても頬から伝って涙を拭く手はびしょ濡れで
どれくらい時間泣いているんだろう。

沙村さんは何も言わず、私の背中をさすってくれてる。

(ああ・・・少し落ち着いてきたかも。・・・もう明るくなってきてるじゃん。)

「グスッ。・・・ふぅ。すみません。もう大丈夫です・・・」
律はニコッと目を細めた。

少し安心したように沙村も笑った。

「本当、私何言ってんだか分かんなくなっちゃって・・・ごめんなさい・・・」

「ううん、大分落ち着いた?」

「はい・・・一つだけ確認して良いですか・・・?」

「なに?」

「私・・・フラれたって事ですよね?」

「うん、ごめん。」

「・・・ですよね(苦笑)」

「・・・」

「あ~~あ(笑)」

「泣いてるより笑ってる方が良いね。」

「泣き顔ブサイクって事ですか?」

「笑顔は可愛いけど、泣き顔はそうかもな(笑)」

「あ~あ、今日は散々!(笑)帰ります(笑)」

「気をつけてな。」

「はーい!」

律はまた笑って沙村を見た。
泣いていたせいなのか、夜が冷えていたせいなのか
別れ際の沙村の姿はもやがかかったようでハッキリ見えなかった。


(これで最後かもしれないのに・・・)




そしてこの日の夜から雨が降り出した。


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