実はこっそりあいつに溺れてますが、何か?

らいち

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第一章

戦略、変えるもんね

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「さ、いただこうか」

 神の合図に、私達もパンと手を合わせる。

「いただきます」

 うわわ~、久しぶりの優作お兄さんのチーズケーキだよー。
  はやる気持ちを堪えて、ゆっくりとケーキにフォークを突き刺した。

 うん、柔らかで弾力があるのがよく分かる。口の中に放り込むと、濃厚なチーズの味わいとしっとりトロッとした食感が合わさって、何とも言えない幸福感が広がった。しかも程よい甘みと、レモンだろうか?  その爽やかさが相まってくどさが無く、もっともっと口の中に放り込みたくなる。
 ああ凄い。あの頃より確実に進化している!

「凄い……。こんなチーズケーキ初めて」

 有理奈さんの感嘆の声に、私の優作パティシエ愛にまた火が付いた。

「でしょう? 私が燥ぐのも分かるでしょう? お兄さんのチーズケーキを食べちゃうと、市販の物では物足りなくなっちゃうのよ!」

 お皿片手に胸を張って優作お兄さんのチーズケーキを褒めていると、有理奈さんの顔がまた小ばかにするようなものに変わっていく。

「やっぱり、加代子さんてガキよねえ」

 そんな風に私を笑いながら、有理奈さんはわざと神の腕を触る。

「ちょっと~」
「なあに?」

 挑発するような有理奈さんの意地悪な笑みにはかなりムッとするけれど、神も美人に触られるのが嬉しいようなので今の私は分が悪い。

 悔しいけど、戦略を変えるぞ。さっさと食べ終えて、有理奈さんから神を奪い返すんだ。もちろんしっかり味わうけどね。

 そう決意した私は、姿勢を正してケーキを食べることに集中した。
 うんっ、美味しいー! しっとりトロフワッ。独特の蜂蜜の甘みとチーズが最高!
 あー、幸せー。
 幸福感に包まれながら食べている最中、何の気なしに横を向くと、微妙な表情の神と目が合った。何だろうと思って小首を傾げると、サッと目を逸らされてしまう。

 ……何?
 まあ、いいか。食べ終わったら、神を奪還するもんね。

 最後の一口を食べて、紅茶を飲んだ。
 ……ああ、美味しい。チーズケーキが余りにも美味しいものだから、この紅茶ですら家で飲んでいるものとは違って、格段で美味しいような気がするなあ。

「ごちそうさま」
「あら、もう食べたの? 流石ねえ」
「なんとでも」

 すっと席を立って、神の隣に行った。

「神、もうちょっと寄って」
「は?」
「いいから。もう少し寄れるでしょ? 私のスペース空けて、ほらほら」

 驚く神の隣に強引に入り込む。きっつきつに座って顔を上げると、神の黒目がちで少しつり目の綺麗な瞳と目が合った。

 いや~ん、ドキドキするぅ。自分から近付いておいてなんだけど、間近で見る神は心臓に悪い。印象的な綺麗な目だけでなくて、少し薄くて色っぽい唇も、そしてシャープな顔立ちも何もかもがバランス良くて、神の綺麗な顔を際立てているんだ。やっぱり私は客観的に見て優作お兄さんの方がイケメンだと思ってはいても、私がドキドキするのは神の方だ。
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