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第二章
すでにバレてるのに
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「ねえ、神。本当に加代子のこと待つの?」
「え?」
「そうだよ。神は別に、加代子のことが好きなわけじゃないんだよね」
……そう来たか。そう言われると、加代子を優先しにくくなるんだよなあ。
「そうだな」
「だったらさ、授業始まるまでまだ時間あるんだし、ちょっと移動しようよ」
一人がそう言うと、みんなガタガタと席を立ち始めた。そして僕を見る。
しょうがないか。
「いいよ、行こうか」
「やったー、行こう行こう」
席を立った僕の背中を押して、みんな楽しそうに教室を出ていく。
「行っこう、行っこう、行っこう」
節をつけて、廊下に出ても彼女らは僕の背中を押し続ける。
「で、どこに行くんだ?」
「どこでも、適当に」
「適当?」
行きたい所がある訳でも無いくせにあの場を離れさせたいほど、そんなに加代子が嫌いなのか?
僕の疑問が顔に出ていたのか、みんなが一斉に不服そうな顔をした。
「だって、加代子って何だかんだ言っても神に一番近いじゃない。今日なんて、朝だって一緒に登校して来るし」
「そうだよ。何なの、あの特別扱い」
ああ、そうか。他人から見たらそう見えるか。
「加代子のお父さんと僕の父さんは、高校時代からの親友なんだよ。だから今はそれほどでもないけど、小学校の頃なんかは加代子たち家族が、よく僕の家に遊びに来たりしてたんだ」
「ええ~? って事は、家族ぐるみの付き合いって事? 加代子やっぱりずるい」
「なんだよ、それ」
「神~!」
「あ……」
加代子が大声で僕の名前を呼びながら、バタバタと凄い勢いでやって来る。その後ろからは、加代子を好きなクラスの男子までが彼女を追うようについて来ていた。
「神ってば! 私待っててってちゃんと言ったよね」
「ああ……そうだったな」
「そうだったなってねえ」
加代子は全速力でここまで走ってきたのだろう。うっすら汗を掻き、顔を赤くして僕に文句を言っている。ちょっぴり息を荒くしながら。
……可愛いな。
「ちょっと加代子、あんたってば図々しいのよ」
「そうよ、そうよ」
せっかく可愛い様子の加代子を見ていたのに、美紀達が加代子の前に立ちはだかった。そうやって邪魔されるのは僕の本意ではないので皆を落ち着かせようとした時、加代子の後をついて来ていた高橋が加代子の右隣りについた。
「加代子ちゃん、こんな女好き放っとこうよ」
「そうだよ、俺らは俺らで楽しんだ方がいいって」
「ちょ、ちょっと!」
今度は加代子の左についた田中が、やけにピッタリとくっついている。それにムッとした瞬間、田中の手が加代子のお尻を触っているのを見てしまった。
「おま……」
文句を言って引き離そうと思う前に、加代子の悲鳴が響き渡った。そしてあっと言う間もなく田中の手を掴んだ加代子が、素早い動作でその場に抑え込み、ついでにその隣にいた高橋も投げ飛ばしてしまった。見事過ぎる動きだ。
僕も美紀達も、呆気に取られて加代子を見つめる。
二人を仕留め、ハアッと大きく息を吐いた加代子はハッとしたように固まった。そしてしばらく固まった状態の後、おずおずと振り返る。そして僕と目が合うと、今までの颯爽とした加代子とはまるで別人のように途端にアタフタと狼狽し、挙動不審にオロオロし始めた。そしてしばらくそんな不自然な動きを繰り返した後、加代子は凄い勢いで走り去って行ってしまった。
……ああもう、なんて可愛い奴。
あいつどういうわけだか、自分が強いことを僕に知られたくないと思っているみたいなんだよな。僕がとうに知っていることも知らないで。
「ねえ、もうそろそろ私たちも教室に戻った方がいいんじゃない?」
「あっ、本当だ。神行こう」
「おう、先に行ってて。僕トイレに行ってから行くから」
「わかった、じゃあ遅れないようにね」
「うん」
みんなが教室に戻るのを手を振って見送っている時、高橋たちがやっと起き上がり、自分らの服に付いた埃を叩いていた。僕はそいつらをねめつける。
「おいお前ら、さっきのはやり過ぎじゃないのか? ……僕もまだ加代子のお尻なんて触ってないぞ!」
「は? 何言ってんだお前? 知るかよ、そんなこと。俺らはお前みたいな女好きの馬鹿なんかに、加代子ちゃんが惑わされないよう守るのが目標なんだ」
ハアッ?
「守る奴が痴漢になるのかよ!」
ふざけた言い分に血が上った僕は、その勢いで高橋を蹴飛ばし田中を殴った。
「イッテー! 何なんだよお前は! 行動が矛盾してるんだよ!」
「知るか!」
僕には僕の事情があるんだよ!
喚く田中らを無視して、僕は急いで教室へと向かった。
「え?」
「そうだよ。神は別に、加代子のことが好きなわけじゃないんだよね」
……そう来たか。そう言われると、加代子を優先しにくくなるんだよなあ。
「そうだな」
「だったらさ、授業始まるまでまだ時間あるんだし、ちょっと移動しようよ」
一人がそう言うと、みんなガタガタと席を立ち始めた。そして僕を見る。
しょうがないか。
「いいよ、行こうか」
「やったー、行こう行こう」
席を立った僕の背中を押して、みんな楽しそうに教室を出ていく。
「行っこう、行っこう、行っこう」
節をつけて、廊下に出ても彼女らは僕の背中を押し続ける。
「で、どこに行くんだ?」
「どこでも、適当に」
「適当?」
行きたい所がある訳でも無いくせにあの場を離れさせたいほど、そんなに加代子が嫌いなのか?
僕の疑問が顔に出ていたのか、みんなが一斉に不服そうな顔をした。
「だって、加代子って何だかんだ言っても神に一番近いじゃない。今日なんて、朝だって一緒に登校して来るし」
「そうだよ。何なの、あの特別扱い」
ああ、そうか。他人から見たらそう見えるか。
「加代子のお父さんと僕の父さんは、高校時代からの親友なんだよ。だから今はそれほどでもないけど、小学校の頃なんかは加代子たち家族が、よく僕の家に遊びに来たりしてたんだ」
「ええ~? って事は、家族ぐるみの付き合いって事? 加代子やっぱりずるい」
「なんだよ、それ」
「神~!」
「あ……」
加代子が大声で僕の名前を呼びながら、バタバタと凄い勢いでやって来る。その後ろからは、加代子を好きなクラスの男子までが彼女を追うようについて来ていた。
「神ってば! 私待っててってちゃんと言ったよね」
「ああ……そうだったな」
「そうだったなってねえ」
加代子は全速力でここまで走ってきたのだろう。うっすら汗を掻き、顔を赤くして僕に文句を言っている。ちょっぴり息を荒くしながら。
……可愛いな。
「ちょっと加代子、あんたってば図々しいのよ」
「そうよ、そうよ」
せっかく可愛い様子の加代子を見ていたのに、美紀達が加代子の前に立ちはだかった。そうやって邪魔されるのは僕の本意ではないので皆を落ち着かせようとした時、加代子の後をついて来ていた高橋が加代子の右隣りについた。
「加代子ちゃん、こんな女好き放っとこうよ」
「そうだよ、俺らは俺らで楽しんだ方がいいって」
「ちょ、ちょっと!」
今度は加代子の左についた田中が、やけにピッタリとくっついている。それにムッとした瞬間、田中の手が加代子のお尻を触っているのを見てしまった。
「おま……」
文句を言って引き離そうと思う前に、加代子の悲鳴が響き渡った。そしてあっと言う間もなく田中の手を掴んだ加代子が、素早い動作でその場に抑え込み、ついでにその隣にいた高橋も投げ飛ばしてしまった。見事過ぎる動きだ。
僕も美紀達も、呆気に取られて加代子を見つめる。
二人を仕留め、ハアッと大きく息を吐いた加代子はハッとしたように固まった。そしてしばらく固まった状態の後、おずおずと振り返る。そして僕と目が合うと、今までの颯爽とした加代子とはまるで別人のように途端にアタフタと狼狽し、挙動不審にオロオロし始めた。そしてしばらくそんな不自然な動きを繰り返した後、加代子は凄い勢いで走り去って行ってしまった。
……ああもう、なんて可愛い奴。
あいつどういうわけだか、自分が強いことを僕に知られたくないと思っているみたいなんだよな。僕がとうに知っていることも知らないで。
「ねえ、もうそろそろ私たちも教室に戻った方がいいんじゃない?」
「あっ、本当だ。神行こう」
「おう、先に行ってて。僕トイレに行ってから行くから」
「わかった、じゃあ遅れないようにね」
「うん」
みんなが教室に戻るのを手を振って見送っている時、高橋たちがやっと起き上がり、自分らの服に付いた埃を叩いていた。僕はそいつらをねめつける。
「おいお前ら、さっきのはやり過ぎじゃないのか? ……僕もまだ加代子のお尻なんて触ってないぞ!」
「は? 何言ってんだお前? 知るかよ、そんなこと。俺らはお前みたいな女好きの馬鹿なんかに、加代子ちゃんが惑わされないよう守るのが目標なんだ」
ハアッ?
「守る奴が痴漢になるのかよ!」
ふざけた言い分に血が上った僕は、その勢いで高橋を蹴飛ばし田中を殴った。
「イッテー! 何なんだよお前は! 行動が矛盾してるんだよ!」
「知るか!」
僕には僕の事情があるんだよ!
喚く田中らを無視して、僕は急いで教室へと向かった。
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