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第五章
お邪魔な2人 2
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「ごめんなー、遅くなっちゃって」
僕は梓の隣に座って、ケーキを一口ぱくり。
「まあ、由紀のせいじゃないし」
さすが佐藤!
フォローしてくれるなあ。
「彼女たち、由紀の稽古見たことあるんだ」
梓がケーキを小分けにしながら、僕の顔は見ずに抑揚のない声で聞いてきた。
え!?
そこ?
「や、その時は7割がた出来上がっていて、しかも余裕があるときだったから! そうだよね、姉さん!」
ぜんっぜん疾しくないのに、梓の声音が僕を焦らせる。
「そうだったね。どっちにしても見学は、座長の父さんが了承しないとだめだからね」
笑いをかみ殺したような表情だ。
なして?
佐藤を見ると、苦笑いを浮かべていた。きっと僕の心情を理解してくれてるに違いない。
う~。
それにしても僕の休憩は後10分少々だ、時間が無さすぎるよ。
「そう言えばチラッと見えたんですけど、庭に綺麗なバラが咲いてましたね」
「ええ、見てみます?」
「是非!」
佐藤と姉さんが立ち上がった。つられて梓も立ち上がろうとするが、佐藤に制される。
「いいよ、牧野はここに居ろ。千代美さん、行きましょ」
僕ら2人を置いて、佐藤たちは居間を出て行った。
多分佐藤たちが居たら、言いたいことも言えないだろうと思って気を使ってくれたんだろうな。やっぱ、佐藤って気が利くんだよな。
「梓」
「…なんだよ」
「…何でもないけど、梓の笑顔が見たいな」
「…」
梓は黙ったきりで、顔も上げてくれない。
やーっぱ、怒ってんなこれ。
「僕これから稽古に戻らないといけないんだけど」
「…」
「知ってる? 梓。僕を充電させてくれるのって梓だけなんだよ?」
「…」
一瞬ピクッとしたけど、まだ無言のままだ。
結構手ごわいなー。
「それでもって、僕を一喜一憂させるのも…梓だけなんだけどね」
僕がそう言うと、梓はおずおずといった感じで僕の顔を見た。
「…あたし?」
「当たり前だろ。どんなに僕が梓の事好きなのか分かってんの?」
「だって…」
梓はせっかくこっちを見てくれたのに、また僕から視線をずらしてしまう。
「あの子たち、きっと由紀の事好きだよ?」
「ええ!? 違うよあれは、町田たちは芝居が好きで雪乃丞のファンってだけで、僕にそれ以上の気持ちは無いよ」
梓に勘違いされたくないのでこれはしっかりと言い切った。
言い切ったのに、何故だか梓はムッとした顔になる。
「梓!」
「何?」
急に名前を呼ばれて、梓はちょっとびっくりしたようだった。
「充電するからな!」
「え」
梓の返事は待たずに、僕は彼女を引き寄せキュッと抱きしめた。一瞬梓は体を強張らせたが、僕がさらに強く抱きしめたので、力を抜いて僕の背に腕を回してきた。
「…佐藤たち、戻って来るんじゃないのか?」
「大丈夫。佐藤はそんな野暮な奴じゃないよ」
その言葉に納得したのか、梓は僕の肩口に顔を押し付けてきた。スリスリしている。
…か、可愛すぎる…。
僕の読み通り、佐藤は僕の稽古の時間が終わって席を立つまで居間には戻ってこなかった。そして稽古場へと続く廊下ですれ違う。
そのすれ違いざまに佐藤が口角を上げて目を細めたので、僕は笑って佐藤に返礼した。
僕は梓の隣に座って、ケーキを一口ぱくり。
「まあ、由紀のせいじゃないし」
さすが佐藤!
フォローしてくれるなあ。
「彼女たち、由紀の稽古見たことあるんだ」
梓がケーキを小分けにしながら、僕の顔は見ずに抑揚のない声で聞いてきた。
え!?
そこ?
「や、その時は7割がた出来上がっていて、しかも余裕があるときだったから! そうだよね、姉さん!」
ぜんっぜん疾しくないのに、梓の声音が僕を焦らせる。
「そうだったね。どっちにしても見学は、座長の父さんが了承しないとだめだからね」
笑いをかみ殺したような表情だ。
なして?
佐藤を見ると、苦笑いを浮かべていた。きっと僕の心情を理解してくれてるに違いない。
う~。
それにしても僕の休憩は後10分少々だ、時間が無さすぎるよ。
「そう言えばチラッと見えたんですけど、庭に綺麗なバラが咲いてましたね」
「ええ、見てみます?」
「是非!」
佐藤と姉さんが立ち上がった。つられて梓も立ち上がろうとするが、佐藤に制される。
「いいよ、牧野はここに居ろ。千代美さん、行きましょ」
僕ら2人を置いて、佐藤たちは居間を出て行った。
多分佐藤たちが居たら、言いたいことも言えないだろうと思って気を使ってくれたんだろうな。やっぱ、佐藤って気が利くんだよな。
「梓」
「…なんだよ」
「…何でもないけど、梓の笑顔が見たいな」
「…」
梓は黙ったきりで、顔も上げてくれない。
やーっぱ、怒ってんなこれ。
「僕これから稽古に戻らないといけないんだけど」
「…」
「知ってる? 梓。僕を充電させてくれるのって梓だけなんだよ?」
「…」
一瞬ピクッとしたけど、まだ無言のままだ。
結構手ごわいなー。
「それでもって、僕を一喜一憂させるのも…梓だけなんだけどね」
僕がそう言うと、梓はおずおずといった感じで僕の顔を見た。
「…あたし?」
「当たり前だろ。どんなに僕が梓の事好きなのか分かってんの?」
「だって…」
梓はせっかくこっちを見てくれたのに、また僕から視線をずらしてしまう。
「あの子たち、きっと由紀の事好きだよ?」
「ええ!? 違うよあれは、町田たちは芝居が好きで雪乃丞のファンってだけで、僕にそれ以上の気持ちは無いよ」
梓に勘違いされたくないのでこれはしっかりと言い切った。
言い切ったのに、何故だか梓はムッとした顔になる。
「梓!」
「何?」
急に名前を呼ばれて、梓はちょっとびっくりしたようだった。
「充電するからな!」
「え」
梓の返事は待たずに、僕は彼女を引き寄せキュッと抱きしめた。一瞬梓は体を強張らせたが、僕がさらに強く抱きしめたので、力を抜いて僕の背に腕を回してきた。
「…佐藤たち、戻って来るんじゃないのか?」
「大丈夫。佐藤はそんな野暮な奴じゃないよ」
その言葉に納得したのか、梓は僕の肩口に顔を押し付けてきた。スリスリしている。
…か、可愛すぎる…。
僕の読み通り、佐藤は僕の稽古の時間が終わって席を立つまで居間には戻ってこなかった。そして稽古場へと続く廊下ですれ違う。
そのすれ違いざまに佐藤が口角を上げて目を細めたので、僕は笑って佐藤に返礼した。
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