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第五章
ままならない余韻2
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「なーに2人の世界に入ってんのー?」
からかうような、それでいてどこか不満げなまどかの声が後ろから響いた。
「そりゃ浸るだろ。付き合ってるんだから」
佐藤がチラッとまどかを横目で見ながら、さも当然といったように言う。
まどかの隣にいる梓と僕は、微妙な笑いをもらすまいと口元をひくひくさせていた。
「あの…」
ん?
梓とまどかの後ろに小田がいた。
「明日、佐藤君にも付き合ってもらうけど…あの、ごめんね?」
小田は彼女の僕が遊びに行けないのに、佐藤を自分のために付き合わせることを申し訳ないと思っているようだ。
「ううん。大丈夫、気にしないで。…上手くいくと良いね」
「うん、ありがと…」
小田は、はにかみながら頷いた。
僕は今度は梓に目を向ける。パシッと視線が合って、梓は少し頬を赤らめた。可愛いなあ、もう。
「梓もまどかも楽しんできてね」
本当は昨日の今日だから梓と2人で話したいところだけど、まどかが今日は普通に梓や僕の所に居るので、梓と2人の時間が取れずにいる。
どうやら今日はこのままで終わってしまいそうだ。
「うん、楽しんでくるよ。由紀ちゃんも調子が良くなったら一緒に行こうね」
「…うん。そうだね」
僕の返事にニッコリ笑ったまどかはカバンを肩にかけなおした。
「まどかそろそろ帰るね。ダーリン待たせると悪いから」
「デート?」
「うん!」
「あ、まどか。私も帰るわ、そこまで一緒に行こう。由紀は?」
小田も急ぎの用事があるようだ。
「私はもうちょっとゆっくりしていく」
「そっか、じゃあ月曜日ね。バイバイ」
「バイバーイ」
僕と梓に手を振りかえして、まどかと小田は廊下に出ていった。そこへ入れ替わるように田本がやってくる。
「佐藤、そろそろ学食行くぞ」
「ああそうだな。牧野はどうする?」
「うん。行こうかな」
うーん、やっぱり梓とは2人の時間は取れないかあ…。
「梓」
「うん?」
僕は梓に近づいて、軽くふわっと抱き付いた。
「由…?」
僕の行為に驚いた梓は一瞬固まる。
「部活、頑張って来てね。応援してる」
軽―いハグを演出して、僕はそっと梓から離れニコッと笑った。
「由紀…」
梓も離れがたいと思ってくれているようで、体を離す際、僕の手をきゅっと握った。
「牧野、そろそろ行くぞ。…由紀も学食行くか?」
僕らのやり取りを黙って見ていた佐藤は、僕の心情を汲んで誘ってくれたのだろう。ホント良い奴。
「ううん、ありがと。私も急ぐから、ゆっくりしてられないんだ」
「そうか、じゃあまた月曜日な」
「うん、じゃあね」
僕は梓達に手を振って、教室を後にした。
からかうような、それでいてどこか不満げなまどかの声が後ろから響いた。
「そりゃ浸るだろ。付き合ってるんだから」
佐藤がチラッとまどかを横目で見ながら、さも当然といったように言う。
まどかの隣にいる梓と僕は、微妙な笑いをもらすまいと口元をひくひくさせていた。
「あの…」
ん?
梓とまどかの後ろに小田がいた。
「明日、佐藤君にも付き合ってもらうけど…あの、ごめんね?」
小田は彼女の僕が遊びに行けないのに、佐藤を自分のために付き合わせることを申し訳ないと思っているようだ。
「ううん。大丈夫、気にしないで。…上手くいくと良いね」
「うん、ありがと…」
小田は、はにかみながら頷いた。
僕は今度は梓に目を向ける。パシッと視線が合って、梓は少し頬を赤らめた。可愛いなあ、もう。
「梓もまどかも楽しんできてね」
本当は昨日の今日だから梓と2人で話したいところだけど、まどかが今日は普通に梓や僕の所に居るので、梓と2人の時間が取れずにいる。
どうやら今日はこのままで終わってしまいそうだ。
「うん、楽しんでくるよ。由紀ちゃんも調子が良くなったら一緒に行こうね」
「…うん。そうだね」
僕の返事にニッコリ笑ったまどかはカバンを肩にかけなおした。
「まどかそろそろ帰るね。ダーリン待たせると悪いから」
「デート?」
「うん!」
「あ、まどか。私も帰るわ、そこまで一緒に行こう。由紀は?」
小田も急ぎの用事があるようだ。
「私はもうちょっとゆっくりしていく」
「そっか、じゃあ月曜日ね。バイバイ」
「バイバーイ」
僕と梓に手を振りかえして、まどかと小田は廊下に出ていった。そこへ入れ替わるように田本がやってくる。
「佐藤、そろそろ学食行くぞ」
「ああそうだな。牧野はどうする?」
「うん。行こうかな」
うーん、やっぱり梓とは2人の時間は取れないかあ…。
「梓」
「うん?」
僕は梓に近づいて、軽くふわっと抱き付いた。
「由…?」
僕の行為に驚いた梓は一瞬固まる。
「部活、頑張って来てね。応援してる」
軽―いハグを演出して、僕はそっと梓から離れニコッと笑った。
「由紀…」
梓も離れがたいと思ってくれているようで、体を離す際、僕の手をきゅっと握った。
「牧野、そろそろ行くぞ。…由紀も学食行くか?」
僕らのやり取りを黙って見ていた佐藤は、僕の心情を汲んで誘ってくれたのだろう。ホント良い奴。
「ううん、ありがと。私も急ぐから、ゆっくりしてられないんだ」
「そうか、じゃあまた月曜日な」
「うん、じゃあね」
僕は梓達に手を振って、教室を後にした。
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