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第六章
気まずい見学 2
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「由紀也君、休憩だそうですよ」
「え」
気が付くと前田さんに手を取られている。
「あ、あれ?」
周りを見回すと、みんなすでにテーブルでお茶を飲んでまったりとしている。
「由紀也君はお友達とご一緒ですよね?」
「あ…」
そうだった。すっかり忘れてた…。
恐る恐る振り返ると、そこには先ほどの面々が縁側に座ってこちらを見ている。そして5人分のお茶と茶菓子が置かれていた。
今日は佐藤が見学に来ているので、姉さんも一緒のようだ。
僕がみんなに近づいていくと、佐藤が「お疲れ」と声をかけてくれた。
「いらっしゃい」
僕は困惑する気持ちを悟られないように、にこやかに笑いかけた。
「すごい集中力だな、驚いたよ」
「あの分なら、きっとチャラになってるんじゃない?」
佐藤に褒められ姉さんに太鼓判を押され、僕もやっと安心する事が出来た。
「…チャラってなんですか?」
梓が不思議そうに姉さんに尋ねた。
「梓ちゃん見てなかった? 由紀也が何かに気を取られてぐらついたところ」
「見ましたけど…。単にバランスを崩しただけかと思ったんだけど、何かに気ぃ取られてたのか?」
前半は姉さんに、後半は僕の方に顔を向けて梓が尋ねた。
「あ、まあね。ギャラリーに変なとこ見せたくないなーって緊張したかな」
「あ、あたしたちのせい? ごめん、悪かった」
「違う、違う。そうじゃないよ。それにこんな少人数に緊張してたら本番が大変だろ? 却って予行演習になるから本当は助かってるよ」
そう言ってニッコリ笑ったら、梓はホッとした顔をした。
「そんなことがあったんだ? 俺、全然気が付かなかったな」
佐藤が不思議そうにつぶやいた。
「当たり前だろ。佐藤はずーっと千代美さんの事ばかり見てたじゃないか」
「えっ?」
姉さんの顔が分かりやすく真っ赤になる。
その顔を見た宇野が、え?という顔をした。
「…お2人、付き合ってるんですか?」
「ああ、付き合ってるよ」
チラッと流し目で姉さんを見た佐藤は、視線を宇野に移し、さも当然と言った風に肯定する。
姉さんの顔がますます赤くなった。流し目にやられたな…。
「そう…なんだ」
宇野がなぜかガッカリしたような表情でつぶやいた。
そして梓に視線を移す。
その宇野の冷ややかな視線に梓も気づき、しっかりと宇野と視線を合わせた。
お互い視線を外そうとしないせいか、そこだけ温度が5℃くらい下がったような冷やかさだ。
おい!
何やってんだよ宇野~。
変な汗を掻きながら、どうしようと思っていると、斜め横から佐藤の呆れた視線を感じる。
その顔にはしっかり「何やってんだお前」と書かれている。
僕も負けじと「疾しい事は無いんだよ!」と顔に書いて佐藤を見つめ返す。
その僕の心の声を読んでくれたのか、佐藤は方眉を上げて、「ふうっ」と一つため息を吐いたのだ。
「え」
気が付くと前田さんに手を取られている。
「あ、あれ?」
周りを見回すと、みんなすでにテーブルでお茶を飲んでまったりとしている。
「由紀也君はお友達とご一緒ですよね?」
「あ…」
そうだった。すっかり忘れてた…。
恐る恐る振り返ると、そこには先ほどの面々が縁側に座ってこちらを見ている。そして5人分のお茶と茶菓子が置かれていた。
今日は佐藤が見学に来ているので、姉さんも一緒のようだ。
僕がみんなに近づいていくと、佐藤が「お疲れ」と声をかけてくれた。
「いらっしゃい」
僕は困惑する気持ちを悟られないように、にこやかに笑いかけた。
「すごい集中力だな、驚いたよ」
「あの分なら、きっとチャラになってるんじゃない?」
佐藤に褒められ姉さんに太鼓判を押され、僕もやっと安心する事が出来た。
「…チャラってなんですか?」
梓が不思議そうに姉さんに尋ねた。
「梓ちゃん見てなかった? 由紀也が何かに気を取られてぐらついたところ」
「見ましたけど…。単にバランスを崩しただけかと思ったんだけど、何かに気ぃ取られてたのか?」
前半は姉さんに、後半は僕の方に顔を向けて梓が尋ねた。
「あ、まあね。ギャラリーに変なとこ見せたくないなーって緊張したかな」
「あ、あたしたちのせい? ごめん、悪かった」
「違う、違う。そうじゃないよ。それにこんな少人数に緊張してたら本番が大変だろ? 却って予行演習になるから本当は助かってるよ」
そう言ってニッコリ笑ったら、梓はホッとした顔をした。
「そんなことがあったんだ? 俺、全然気が付かなかったな」
佐藤が不思議そうにつぶやいた。
「当たり前だろ。佐藤はずーっと千代美さんの事ばかり見てたじゃないか」
「えっ?」
姉さんの顔が分かりやすく真っ赤になる。
その顔を見た宇野が、え?という顔をした。
「…お2人、付き合ってるんですか?」
「ああ、付き合ってるよ」
チラッと流し目で姉さんを見た佐藤は、視線を宇野に移し、さも当然と言った風に肯定する。
姉さんの顔がますます赤くなった。流し目にやられたな…。
「そう…なんだ」
宇野がなぜかガッカリしたような表情でつぶやいた。
そして梓に視線を移す。
その宇野の冷ややかな視線に梓も気づき、しっかりと宇野と視線を合わせた。
お互い視線を外そうとしないせいか、そこだけ温度が5℃くらい下がったような冷やかさだ。
おい!
何やってんだよ宇野~。
変な汗を掻きながら、どうしようと思っていると、斜め横から佐藤の呆れた視線を感じる。
その顔にはしっかり「何やってんだお前」と書かれている。
僕も負けじと「疾しい事は無いんだよ!」と顔に書いて佐藤を見つめ返す。
その僕の心の声を読んでくれたのか、佐藤は方眉を上げて、「ふうっ」と一つため息を吐いたのだ。
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