修行のため、女装して高校に通っています

らいち

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第六章

最強の影響力 2

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稽古が終わり、風呂から上がって麦茶でも飲もうと台所に行くと、姉さんも喉が渇いたのか麦茶をコップに注いでいる所だった。
僕は姉さんから注ぎ終わった麦茶を受け取る。

「ねえ、あの子…宇野さん大丈夫なの?」
「…大丈夫って?」

真剣な表情を作って聞いてくるので、僕は少し不安になる。梓に何かしたのだろうか?

「帰りにお見送りしたんだけどね、彼女、梓ちゃんに話があるとか言って呼び止めてたから」
「…え」
「大輔君がいるから変な事にはならないとは思うけど…」

「大輔君…」
僕が復唱すると、姉さんの顔がみるみる赤くなる。

「や、だって…っ」
「佐藤君がそう呼んでくれって?」
「うん」
「どうせなら呼び捨ててやればいいのに」
「そ、そう言われたけど…。いきなりは恥ずかしくて…」
「かーわいー」
「て、ちょっと! 今はそんな話じゃないでしょ?」

ああそうだった。姉さんに心配してもらってたんだよな。

「宇野もちょっとしつこい気はするけど、そんなに悪い奴ではないんだよな。だから大丈夫だとは思うんだけど」
「そう?」
「うん。でも学校に行ったらこういう話はしにくいから、ちょっと電話してみようかな」
「そうだね、その方がいいと思うよ」

僕はコップに麦茶を注いで、自分の部屋へと戻って行った。

「梓、今いい?」
「うん、大丈夫だよ。あ、今日はお疲れ様」
「こっちこそ。今日はありがとうな」
「…由紀の真剣な顔が見れて、凄く良かった」
「梓…」

何気ない些細な労いの言葉に、硬くなっていた心というか体ごと、ほぐれていくような気分になる。

「やっぱり梓だ…」
「え…何?」

よく意味が分からなかったのだろう。梓がほんの少し笑いを含んだ声で聞いてくる。

「僕への影響力。最強だよな、梓は」
「ええ?」
「ほんの些細な言葉でさ、心配だったり不安だったり、疲れていた気持ちごと癒してくれるんだよ梓って」
「由紀…」

僕はふうっと息を吐いて、梓に伝えなきゃいけない言葉を口にしようと携帯を握りなおす。

「宇野の事はさ、気にしないで良いから。あいつには僕にその気が無い事はちゃんと伝えているし、気持ちは揺るがないから」

「由紀…」
「分かってくれた?」
「…うん。分かった、ありがとな由紀」

梓の穏やかな声を聞いて僕はホッと胸をなでおろす。
それから僕らは他愛ない話をして「おやすみ」の挨拶を交わした。
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