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第四章

醜い気持ち

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 とうとう球技大会の日がやってきた。何度か練習にも参加したけれど、私といえばほとんどなにも変わらないままだった。
 有り体に言えば、私と美穂さんはどうせ補欠なんだから、期待するのはやめようと思われたままだということだ。

「まあ私ら一年だけどさ、このクラスには佳奈がいるから、優勝は無理でもいいところまでいくと思うんだよね」

 吉田さんが、なぜかドヤ顔で私に向かって言い放っている。
 うん、佳奈がバレーボール命で頑張ってるのは知ってるよ。

「佳奈、上手だもんね」
「それだけじゃないよ。今度のインターハイの予選に、佳奈の名前が挙がってるくらいなんだからね」
「えっ? 本当?」

 驚きのあまり、声が裏返った。振り返って佳奈を見ると、彼女は微妙な顔をしている。

「かもしれないっていうだけで、まだ決まったわけじゃないよ」
「でも一年でだよ! すごいんだからね!」
 吉田さんの誇らしげな大声に、近くにいた女子も反応した。

「もしかしたら、優勝確実?」
「すごい、すごい!」

「そんなことないよ! 私よりうまい人たちなんてたくさんいるからっ。それにチームプレーが一番大事なんだよ。たとえ優勝できたとしても、私一人の力じゃないんだからね」

「分かってるって。でも期待しちゃうのは、止められないよ~」

 はしゃぐみんなを見ているうちに、胸の中がざわざわし始めていることに気が付いて私は動揺した。――なんてわがままなんだ私は。

 同じものを好きだった。だけどそれを追うことを私は許されなかった。

 でもそれも誰のせいなんかじゃなくて、なにもかもが自分のせいで、しかも自分で決めたことなのに。
 佳奈と目が合った。後ろめたいことでもあるかのような弱々しい視線に、胃の辺りがぎゅっと竦んだ。
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