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第一章
人気の理由
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駅に着いて電車を降りた時、そっと秋永君のシャツを離した。
だけどなんとなく、気持ちが落ち着かない。ちょっびりふわふわとした気分で、秋永君の隣を歩く。秋永君も私の微妙な気持ちの変化に気が付いているのか、なんだかいつもと様子が違っていた。二人して変に意識してしまって、口数が少ない。
そんな何とも言えない微妙な気分で歩いていく中、学校も近くなり、同じ制服の人たちがだんだんと増えてきた。そのほとんどが同じ高校だと分かるだけでクラスになったこともない、そしておそらく学年も違う人ばかりだろう。それなのに、嫌なことにみんな、一様にびっくりして私の顔を二度見して追い越して行く。
そりゃね、私の男嫌いは有名だろうけど……。顔も知らない人までもがこうやって驚いちゃうほど、私って有名人なの……? なんだか落ち込む。
「……ちゃん、未花ちゃん」
「あ、えっ?」
「気にしないでいいよ」
「……何、が?」
「驚くのは最初だけだから。そのうち皆、何とも思わなくなるよ」
「…………」
驚いた。あんな些細なことで私が嫌な気持ちになったこと、気づいてくれてたんだ。飄々と普通にしてたから、てっきり何も感じてないと思ってたのに。
「未花ちゃん?」
「……あ、えっと。どうして、そう思うの?」
「だって、これから毎日行きも帰りも一緒なんだよ。いやでも見飽きるだろ」
「は……?」
呆れた。何、それ。そんな理由?
もっと何か気の利いた慰めの言葉でもあるのかと思っていたのに、そんなあっけない言葉が出てきたので、思わずポカンとした。ポカンとして、笑いがこみ上げてくる。
「なに、それ。変なの」
「そう? 変かな?」
「変だよー」
そう言ってとうとう笑い出した私を見て、秋永君も笑いだす。おかげでさっきまで感じていたぎこちなさも、どこかに吹き飛んでしまっていた。
これは、秋永君の周りに人が集まるわけだよ。自然体だから居心地がいいし。気負う気持ちなんて、どっかにふっとんじゃう。
「よう、ヒロ」
タタタと背後から近づいてくる気配の後、誰かが秋永君の肩をポンと叩いた。もちろん私の反対側に来ているので、私の手足は反応なしだ。
ひょいと顔を覗いてみると、秋永君とよく一緒にいる椎名君だった。
「糸魚川さんもおはよう。こいつ、役に立った?」
「おい、なんだよ。その言い方ー」
秋永君は椎名君の軽口に、怒ったふりして腕を小突く。椎名君は痛そうなふりをして笑っていた。
「アハハ。うん、すっごく。……変な人からも、助けてもらったよ」
「え? マジで?」
私の返事に、椎名君が驚いた顔で私たちを交互に見た。まさかそんなにすぐに痴漢と遭遇するだなんて思ってもいなかったのだろう。
「まあな。隙を狙って手を伸ばしてきたって感じだったから、俺が代わりにそいつの手を掴んでやった」
「ふえ~。やるじゃん、ボディガード!」
「ふっふーん」
褒める椎名君の言葉に、調子に乗ったように秋永君が腰に手を当て胸を張った。そしてパチッと私と目が合った後真顔になり、姿勢を正す。
「未花ちゃん、これからもちゃんと守るからね」
きゅうん。
え!? 何今の。心臓が、変な感じで萎んじゃったよ?
びっくりして心臓のあたりに手を当ててみる。いつもより動きが速い気がするけれど……。
「未花ちゃん?」
「え? あ、うっ、うん! お、お願いします」
首を傾げていつまでも返事をしない私を心配したように、秋永君が私の名を呼ぶ。焦ってペコリと頭を下げて返事をしたら、ホッとした表情になった。
だけどなんとなく、気持ちが落ち着かない。ちょっびりふわふわとした気分で、秋永君の隣を歩く。秋永君も私の微妙な気持ちの変化に気が付いているのか、なんだかいつもと様子が違っていた。二人して変に意識してしまって、口数が少ない。
そんな何とも言えない微妙な気分で歩いていく中、学校も近くなり、同じ制服の人たちがだんだんと増えてきた。そのほとんどが同じ高校だと分かるだけでクラスになったこともない、そしておそらく学年も違う人ばかりだろう。それなのに、嫌なことにみんな、一様にびっくりして私の顔を二度見して追い越して行く。
そりゃね、私の男嫌いは有名だろうけど……。顔も知らない人までもがこうやって驚いちゃうほど、私って有名人なの……? なんだか落ち込む。
「……ちゃん、未花ちゃん」
「あ、えっ?」
「気にしないでいいよ」
「……何、が?」
「驚くのは最初だけだから。そのうち皆、何とも思わなくなるよ」
「…………」
驚いた。あんな些細なことで私が嫌な気持ちになったこと、気づいてくれてたんだ。飄々と普通にしてたから、てっきり何も感じてないと思ってたのに。
「未花ちゃん?」
「……あ、えっと。どうして、そう思うの?」
「だって、これから毎日行きも帰りも一緒なんだよ。いやでも見飽きるだろ」
「は……?」
呆れた。何、それ。そんな理由?
もっと何か気の利いた慰めの言葉でもあるのかと思っていたのに、そんなあっけない言葉が出てきたので、思わずポカンとした。ポカンとして、笑いがこみ上げてくる。
「なに、それ。変なの」
「そう? 変かな?」
「変だよー」
そう言ってとうとう笑い出した私を見て、秋永君も笑いだす。おかげでさっきまで感じていたぎこちなさも、どこかに吹き飛んでしまっていた。
これは、秋永君の周りに人が集まるわけだよ。自然体だから居心地がいいし。気負う気持ちなんて、どっかにふっとんじゃう。
「よう、ヒロ」
タタタと背後から近づいてくる気配の後、誰かが秋永君の肩をポンと叩いた。もちろん私の反対側に来ているので、私の手足は反応なしだ。
ひょいと顔を覗いてみると、秋永君とよく一緒にいる椎名君だった。
「糸魚川さんもおはよう。こいつ、役に立った?」
「おい、なんだよ。その言い方ー」
秋永君は椎名君の軽口に、怒ったふりして腕を小突く。椎名君は痛そうなふりをして笑っていた。
「アハハ。うん、すっごく。……変な人からも、助けてもらったよ」
「え? マジで?」
私の返事に、椎名君が驚いた顔で私たちを交互に見た。まさかそんなにすぐに痴漢と遭遇するだなんて思ってもいなかったのだろう。
「まあな。隙を狙って手を伸ばしてきたって感じだったから、俺が代わりにそいつの手を掴んでやった」
「ふえ~。やるじゃん、ボディガード!」
「ふっふーん」
褒める椎名君の言葉に、調子に乗ったように秋永君が腰に手を当て胸を張った。そしてパチッと私と目が合った後真顔になり、姿勢を正す。
「未花ちゃん、これからもちゃんと守るからね」
きゅうん。
え!? 何今の。心臓が、変な感じで萎んじゃったよ?
びっくりして心臓のあたりに手を当ててみる。いつもより動きが速い気がするけれど……。
「未花ちゃん?」
「え? あ、うっ、うん! お、お願いします」
首を傾げていつまでも返事をしない私を心配したように、秋永君が私の名を呼ぶ。焦ってペコリと頭を下げて返事をしたら、ホッとした表情になった。
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