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第一章
気配りさんだよね
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そしていつものように三人で帰って、駅で雅乃と別れた。
雅乃は私がストーカーに遭っていると知り心配してくれたけど、秋永君が家まで送ると言ってくれたことを知ると心底安心したようだった。
別れ際には、何度も私を頼むと言って、帰って行った。
「長束さんって、本当にいい人だよなあ」
「うん。……私のことも、たぶん一番理解してくれてると思う」
「……いいなあ」
「ん? 何が?」
「ああ、いや。それより、今日からは安心していいよ。変な奴がついてきたら、俺が容赦しないから」
「うん。頼りにしてるね」
「お、おう」
見上げた秋永君の表情は、なぜだか照れたような感じだった。私が素直になったから?
変なの。
それから数分後、来た電車に乗り込み車内を見回す。端っこの席は空いていなかったけど、数席まとめて空いている場所があった。
だけど秋永君はその空いている中央にではなく、女性の隣に私を座らせて、自分はいつものように私との間に少し空間を開けた状態で腰かけた。
本当にいつもさりげなく、秋永君は私が男の人の近くに行かないようにと気を配ってくれている。もしも中央に座ってしまったら、次に男の人が乗り込んできた時、他意無く私の隣に座るかもしれないからだ。いつも秋永君がそんなことまで先回りして考えてくれているということに、私は最近気が付いた。
秋永君って、神経細やかだよね。もしかしたら、女の私よりも気配りさんかもしれない。
「未花ちゃん」
秋永君が、内緒ごとでも囁くように、私に小さな声で話しかけた。思わず私も小声になって聞き返す。
「なに?」
「例の、昨日のストーカーに似た背格好の人、いる?」
「昨日の……?」
秋永君に言われて何げなく電車内を見回してみたけれど、この車両にはいないようだった。
「いないかな……。顔見たわけじゃないから、はっきりしたことは言えないけど」
「背格好に特徴は?」
「特に無かったんだよね。中肉中背で、後から見た感じだからはっきりとは言えないけど、年齢は二十代から三十代って感じだったかな?」
「そうか……」
秋永君は車内をさりげなく見渡した後、苦笑いをして肩を竦めた。
S駅に着いて、二人で一緒に降りて改札を出た。
「ごめんね、秋永君。家に帰るの遅くなっちゃうよね」
「変なこと気にしないでいいよ。俺、未花ちゃん送って行く前は、もっと帰るの遅かったよ?」
「え? 本当?」
「うん。適当に学校に残ってたり、当麻たちと寄り道したりして」
「あ、……そう、なんだ。逆にごめんね? 私のせいで椎名君たちと遊べなくなっちゃってたんだね」
「えっ!? 違う、違う! そういう意味じゃないよ。……ええっと、すること無かったし暇だったから、ぶらぶらしてただけだし。だから未花ちゃんと一緒に帰るのは、却って楽しかったというか……」
焦ったように秋永君は、両手をぶんぶん振りながら大声で早口で話している。その慌てぶりがなんだか可笑しかった。
「そうなの? ……じゃあ、気にしないでいいって……、こと?」
「そう! そういう事!」
「そっか。ならよかった」
そう言って笑うと、秋永君も笑顔になった。
雅乃は私がストーカーに遭っていると知り心配してくれたけど、秋永君が家まで送ると言ってくれたことを知ると心底安心したようだった。
別れ際には、何度も私を頼むと言って、帰って行った。
「長束さんって、本当にいい人だよなあ」
「うん。……私のことも、たぶん一番理解してくれてると思う」
「……いいなあ」
「ん? 何が?」
「ああ、いや。それより、今日からは安心していいよ。変な奴がついてきたら、俺が容赦しないから」
「うん。頼りにしてるね」
「お、おう」
見上げた秋永君の表情は、なぜだか照れたような感じだった。私が素直になったから?
変なの。
それから数分後、来た電車に乗り込み車内を見回す。端っこの席は空いていなかったけど、数席まとめて空いている場所があった。
だけど秋永君はその空いている中央にではなく、女性の隣に私を座らせて、自分はいつものように私との間に少し空間を開けた状態で腰かけた。
本当にいつもさりげなく、秋永君は私が男の人の近くに行かないようにと気を配ってくれている。もしも中央に座ってしまったら、次に男の人が乗り込んできた時、他意無く私の隣に座るかもしれないからだ。いつも秋永君がそんなことまで先回りして考えてくれているということに、私は最近気が付いた。
秋永君って、神経細やかだよね。もしかしたら、女の私よりも気配りさんかもしれない。
「未花ちゃん」
秋永君が、内緒ごとでも囁くように、私に小さな声で話しかけた。思わず私も小声になって聞き返す。
「なに?」
「例の、昨日のストーカーに似た背格好の人、いる?」
「昨日の……?」
秋永君に言われて何げなく電車内を見回してみたけれど、この車両にはいないようだった。
「いないかな……。顔見たわけじゃないから、はっきりしたことは言えないけど」
「背格好に特徴は?」
「特に無かったんだよね。中肉中背で、後から見た感じだからはっきりとは言えないけど、年齢は二十代から三十代って感じだったかな?」
「そうか……」
秋永君は車内をさりげなく見渡した後、苦笑いをして肩を竦めた。
S駅に着いて、二人で一緒に降りて改札を出た。
「ごめんね、秋永君。家に帰るの遅くなっちゃうよね」
「変なこと気にしないでいいよ。俺、未花ちゃん送って行く前は、もっと帰るの遅かったよ?」
「え? 本当?」
「うん。適当に学校に残ってたり、当麻たちと寄り道したりして」
「あ、……そう、なんだ。逆にごめんね? 私のせいで椎名君たちと遊べなくなっちゃってたんだね」
「えっ!? 違う、違う! そういう意味じゃないよ。……ええっと、すること無かったし暇だったから、ぶらぶらしてただけだし。だから未花ちゃんと一緒に帰るのは、却って楽しかったというか……」
焦ったように秋永君は、両手をぶんぶん振りながら大声で早口で話している。その慌てぶりがなんだか可笑しかった。
「そうなの? ……じゃあ、気にしないでいいって……、こと?」
「そう! そういう事!」
「そっか。ならよかった」
そう言って笑うと、秋永君も笑顔になった。
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