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第二章

意外な反響

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 私と秋永君が付き合っているという噂は、何故かあっという間に広まった。そして不思議なことがもう一つ。秋永君と付き合っているという噂が広まってから、急に私の傍に来る男子が増えたのだ。

「未花ちゃ……、おっとっと……。あっぶねー!」
「もう! 何回言ったら分かるの? 近くに寄らないでって言ってるでしょ?」

 私の男嫌いは相変わらずだ。秋永君以外の男子が傍に来ると、瞬時に拳を繰り出し脚が飛ぶ。

「だってさー、秋永は大丈夫なんだろ? だったらもしかしたら、俺も大丈夫じゃないかなって思うじゃん、普通」
「はあ!?」

 何言ってんの、こいつ。

「ヒロは特別なんだよ。な、糸魚川さん」
「そうだよ。俺の未花ちゃんに、ちょっかい出すなよ」
「秋永君……」

 呆れたような怒ったような表情で、秋永君が椎名君と一緒にやってきた。
 ヤダ、照れちゃう。俺の、だって。

「それ、反対!」

 ドカッ!!

「うぎゃっ!」

 背後からの急な気配に、反射的に容赦なく私の拳がうなった。運の悪いことにそれはしっかりヒットして、杉本君が床に転がった。

「うわわ、杉本、大丈夫か!?」
「だ……、大丈夫」

「もうっ! 何度も言ってるけど! 私の男嫌いは治ってないんだから、避けられない人はむやみに近づかないで!」

「え~っ?」

 はいいっ?
 気が付くと、クラスのほとんどの男子がこちらを見ていて、同じように非難の声を上げている。

 なに、これ。どういう事?

 びっくりする私の傍に秋永君が寄ってきて、グイッと肩を引き寄せた。

「とにかく! 未花ちゃんにむやみに近付くのは禁止。俺が、彼氏なんだからな」
「くそー! なんだよ秋永の奴、俺ももっと積極的になってればよかったー!」

 ぶうぶう文句を言う男子に驚いた。唖然としていると、椎名君がプッと噴出す。

「糸魚川さんびっくりしてる。何? 気づいてなかったの? このクラスの男子のほとんどは、多分糸魚川さんに片思いしてると思うよ? あ、もちろん、俺は違うけど」

「未花は鈍感なとこあるもんね」

 苦笑交じりに雅乃までが同意していて、なんだか微妙な気分だ。

「それにしても、秋永は片思いの時から未花ちゃんに殴られてなかったよな? もしかして加減してた?」
「まさかそんなわけ……」
「おい、未花ちゃんって馴れ馴れしく呼ぶなよ」
「ああ? いいじゃんそのくらい。お前だって最初から馴れ馴れしく未花ちゃん呼びしてたくせに」
「う……」

 思わぬ反論に、秋永君が言葉に詰まった。それは確かにそうだったから。
 最初に秋永君にちゃん付で呼ばれたとき、馴れ馴れしいと文句を言った覚えがあるのだけど、秋永君は全くそれを意に介していなかったんだよね。

「これはヒロのが、一本取られたね」
「…………」

 とっても不本意といった表情で秋永君が椎名君を睨んだけれど、椎名君は笑って素知らぬ振りだった。雅乃も私も、ちょっぴりそれがおかしくて、クスッと笑いをこぼした。
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