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第二章
ヒロはモテるよ
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休み時間、日直のヒロくんは担任に呼ばれて教室を出て行った。美代たちの勝手な話に未だモヤモヤしていた私は、チャンスとばかりに椎名君を廊下に呼んだ。
「何? 話って」
わざわざ私がヒロくんのいない時に呼び出したこともあって、椎名君は怪訝な顔を作る。
「うん。ちょっと聞きたいことがあって。あのさ、もしかしてヒロくんってモテる?」
「え? 糸魚川さん、気になるの?」
「そりゃ、まあ……」
言い淀む私に、クスリと笑って椎名くんは口を開いた。
「モテるんじゃない? 中学の時もモテてたけど、今もそうだろ?」
「……気さくで優しいから、女子からも人気はあるとは思ってたけど……」
「ああ、そっか。……俺はクラスの数人の女子は、ヒロのことを好きなんじゃないかなって思ってるけど」
「そう……、なんだ」
「ただあいつ、普通にみんなに同じように優しいだろ? だからみんな牽制し合ってて、ヒロに告った奴はいないんじゃないかなあ。だからたぶんヒロ自身は、自分がモテてるだなんて思ってもいないよ。きっと」
「牽制……、そうなんだ」
「でもあいつ、糸魚川さんのことだけは他の皆と違って、嫌がられてるって分かってても無理やり構っていただろ? だから糸川さんのことを好きなんだなって、俺はすぐにピンと来たよ」
「…………」
やだ。なんか改めて椎名君に言われると……。
カーッと頬が熱くなった。
「あはは真っ赤だ。かーわいいなあ、糸魚川さん」
「誰が可愛いって?」
「あ、ヒロ」
「ヒロくん」
突然の背後からの声に驚いて振り向くと、ちょっぴり怒ったような顔を作ったヒロくんが立っていた。
「未花ちゃんのこと口説いていいのは、俺だけだからな」
「はいはい、わかってますよ。……な? 糸魚川さん?」
わざわざ私の方を振り返って、ニコニコ笑いながら言う椎名くん。
だからそんな意味深な感じで、ヒロくんの前で言わないでよ。出来れば聞かれたくないって思ったから、わざわざヒロくんがいない時に聞いたのに。
「え? 何? どういうこと?」
「んー? ヒロは糸井川さんが大好きだって話」
「なに当たり前なこと言ってんだ?」
首をかしげて怪訝な顔をするヒロくんに、椎名君が笑う。
「ほらね、じゃあ邪魔者は消えまーす」
おどけて去っていく椎名君を横目に、ヒロくんが小首を傾げる。
「あいつと何話してたの?」
「……うん、ヒロくんがモテるのかなって、気になって」
そう言うと、ヒロくんは目を見開いた。
「え? 俺モテないよ? 告白されたこともないよ」
「……じゃあ」
「うん?」
「……付き合うのも私が初めて?」
「未花ちゃんも、そうでしょ?」
「もちろんよ!」
男嫌いだったんだから。
「へへっ」
「なに?」
「いや……。お互い初恋で……、幸せ者だなーって思って」
「……!!」
相変わらずなヒロくんの、あけすけな言葉に顔が熱くなった。きっと真っ赤だよね、私の顔。
やっぱり……、あの子達の方が嘘を吐いているよね。うん、きっとそうだ。
バカだなあ私。一瞬でもヒロくんのことを疑うなんて。 大体三輪さんと私とを二股にかけてるなんて絶対にありえないもん……。
三輪さんのことを考えた時、私の脳裏に綺麗な笑顔でヒロくんに笑いかける彼女の姿が浮かんだ。じーっとヒロくんの顔を見ていると、「ん?」と、彼は小首を傾げる。
……ヒロくんは三輪さんのこと、私が思ってるほどあんまり意識していなのかもしれないね。
本当に……、無頓着なのか鈍感なのか、それとも知っていて知らないふりをしているのか。……それはないか。
だけど本当に彼女の気持ちに気がついていないのだとしたら、あえてそれに触れるのは止めておいた方が良いと思った。だって、もしもそれでヒロくんが、三輪さんのことを意識してしまったら本末転倒だもの。
「何? 話って」
わざわざ私がヒロくんのいない時に呼び出したこともあって、椎名君は怪訝な顔を作る。
「うん。ちょっと聞きたいことがあって。あのさ、もしかしてヒロくんってモテる?」
「え? 糸魚川さん、気になるの?」
「そりゃ、まあ……」
言い淀む私に、クスリと笑って椎名くんは口を開いた。
「モテるんじゃない? 中学の時もモテてたけど、今もそうだろ?」
「……気さくで優しいから、女子からも人気はあるとは思ってたけど……」
「ああ、そっか。……俺はクラスの数人の女子は、ヒロのことを好きなんじゃないかなって思ってるけど」
「そう……、なんだ」
「ただあいつ、普通にみんなに同じように優しいだろ? だからみんな牽制し合ってて、ヒロに告った奴はいないんじゃないかなあ。だからたぶんヒロ自身は、自分がモテてるだなんて思ってもいないよ。きっと」
「牽制……、そうなんだ」
「でもあいつ、糸魚川さんのことだけは他の皆と違って、嫌がられてるって分かってても無理やり構っていただろ? だから糸川さんのことを好きなんだなって、俺はすぐにピンと来たよ」
「…………」
やだ。なんか改めて椎名君に言われると……。
カーッと頬が熱くなった。
「あはは真っ赤だ。かーわいいなあ、糸魚川さん」
「誰が可愛いって?」
「あ、ヒロ」
「ヒロくん」
突然の背後からの声に驚いて振り向くと、ちょっぴり怒ったような顔を作ったヒロくんが立っていた。
「未花ちゃんのこと口説いていいのは、俺だけだからな」
「はいはい、わかってますよ。……な? 糸魚川さん?」
わざわざ私の方を振り返って、ニコニコ笑いながら言う椎名くん。
だからそんな意味深な感じで、ヒロくんの前で言わないでよ。出来れば聞かれたくないって思ったから、わざわざヒロくんがいない時に聞いたのに。
「え? 何? どういうこと?」
「んー? ヒロは糸井川さんが大好きだって話」
「なに当たり前なこと言ってんだ?」
首をかしげて怪訝な顔をするヒロくんに、椎名君が笑う。
「ほらね、じゃあ邪魔者は消えまーす」
おどけて去っていく椎名君を横目に、ヒロくんが小首を傾げる。
「あいつと何話してたの?」
「……うん、ヒロくんがモテるのかなって、気になって」
そう言うと、ヒロくんは目を見開いた。
「え? 俺モテないよ? 告白されたこともないよ」
「……じゃあ」
「うん?」
「……付き合うのも私が初めて?」
「未花ちゃんも、そうでしょ?」
「もちろんよ!」
男嫌いだったんだから。
「へへっ」
「なに?」
「いや……。お互い初恋で……、幸せ者だなーって思って」
「……!!」
相変わらずなヒロくんの、あけすけな言葉に顔が熱くなった。きっと真っ赤だよね、私の顔。
やっぱり……、あの子達の方が嘘を吐いているよね。うん、きっとそうだ。
バカだなあ私。一瞬でもヒロくんのことを疑うなんて。 大体三輪さんと私とを二股にかけてるなんて絶対にありえないもん……。
三輪さんのことを考えた時、私の脳裏に綺麗な笑顔でヒロくんに笑いかける彼女の姿が浮かんだ。じーっとヒロくんの顔を見ていると、「ん?」と、彼は小首を傾げる。
……ヒロくんは三輪さんのこと、私が思ってるほどあんまり意識していなのかもしれないね。
本当に……、無頓着なのか鈍感なのか、それとも知っていて知らないふりをしているのか。……それはないか。
だけど本当に彼女の気持ちに気がついていないのだとしたら、あえてそれに触れるのは止めておいた方が良いと思った。だって、もしもそれでヒロくんが、三輪さんのことを意識してしまったら本末転倒だもの。
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