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第二章

嫌がらせは、ヒロくんの事が好きだから?

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「未花ちゃん、学食行こう」
「あ、うん。待って」

 お昼休みは当然のように、ヒロくんと椎名君、そして雅乃との四人で食べるようになっていた。

 しばらく売店プラスお弁当という状態が続いていたので、今日は久しぶりに学食でということになった。まあ、その状態が続いてしまっていたのは、私がヒロくんにおかずのおすそ分けを続けていたせいでもあるのだけど。

「結構混んでるなー」
「ホント、空いてる席は……。あ、あそこ四人分空いてるよ」
「本当だ。じゃあ誰か……、未花ちゃん、向こうに座ってて、席とっといて」
「あ、うん。分かった」
 
 ヒロくんに指名されたので、私はその席に座って四人分を取っておくことにした。しばらくすると雅乃がランチを持ってやってきたので、代わりに席を立って自分の分を取りに行った。

「良かったね。ギリギリだった。ほら、諦めて売店に行く人たちもいるよ」
「本当だ」
 
 入り口付近で、席の無いのを確認して出ていく人たちが何人かいた。

「未花ちゃん、てんぷらうどんだけでお腹空かない?」
「ううん。これ大だから結構な量だよ? それに今日はなんとなくうどんの気分だったんだ」
「そうなんだ。……でもさ、このかぼちゃの煮物、美味しそうだと思わない?」
「ん? 思う」
「じゃあ一個、おすそ分け」
「え? でも、それちょっとしかないし。私あげられる物無いよ?」
「いいよー。俺があげたいだけだから」
 
 器ごと、ズィッと持ってこられて苦笑した。
 
 そっか。じゃあ、せっかくの好意だからもらっておこうかな。

「ありがと」
「どういたしまして」
 
 にっこり笑うヒロくんに、雅乃や椎名君がニヤニヤしながら私たちを見ていた。バカップルだとか思われてるのかなと恥ずかしく思いながら、かぼちゃをぱくりと口の中に放り込んだ。

「……?」
 
 何気に視線を感じて振り返ると、柑奈たちが冷ややかな表情で、向こうの席からこちらを見ている。
 
 本当に感じ悪いな、あの子たち。

「未花ちゃん? どう?」
「あっ、うん。美味しいよ! ありがとう」
「そっか、よかった」

 にっこり笑うヒロくんに、心がほっこりする。

 やっぱりどう考えても、あの子たちの話はデマなんじゃないかな。ヒロくんは優しいし、それに同じクラスになってからのヒロくんしか知らないけど、他の女の子との噂なんて聞いたことない。もちろん他の誰かに自分からちょっかいかけている所だって、見たことないもの。

 三輪さんとのことだって、彼女の方から声かけてたし。
 
 ……だけど、それでも彼女たちがデマを流すとしたら、やっぱり雅乃の言う通り、ヒロくんのことが好きだからなんだろうか? 

 ヒロくんは気さくで優しくて、女子とも気軽にお喋りするタイプだから、モテてたとしてもちっともおかしくないもの。
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