接近禁止!なのにその壁を、溺愛男子に破られました

らいち

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エピローグというより番外編?

甘えるヒロくん

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「未花ちゃん、そろそろ……」
「え?」
「そろそろ俺の部屋に行こう」
「ええ~、まだいいじゃん」

 克樹君が駄々をこねるように両腕をテーブルの上に伸ばして体を揺すった。おばさんが、なだめるように彼の肩を叩く。

「ほら克樹、じゃましないの。気にしないでゆっくりしてってね」
「ちぇー。ケチ」

 克樹君の再度のゴネに、ヒロくんが意地悪く微笑んだ。

「じゃあ、今度克樹が彼女連れて来た時、俺も一緒に部屋に行こうかな」
「ええっ!? ダメに決まってんじゃん」
「だよな。行こうか、未花ちゃん」
「あ、うん。えっと、……じゃあ」

 立ち上がってぺこりと頭を下げると、おばさんは笑って手を振ってくれた。ホッとしてヒロくんの後をついて行く。階段を上がった奥の部屋を案内された。

「どうぞ」
「失礼しまーす」

 通された部屋は、それほど大きくはなかった。四畳半くらいだろうか。私の部屋と同じくらいの大きさのように見える。

「ほら、ここに座って」

 ベッド脇に置いてあるクッションを、ヒロくんがポンポンと叩いた。言われた通りに座って前を見たら、ドアが開けっ放しになっていた。

「ヒロくん、ドア、開いたまんまになってるよ」

「うん、いいんだ。これ家のルールだから。彼女と部屋で二人っきりになるのはオッケーだけど、その代わりドアは開けときなさいってさ。母さん曰く、男の子の親としての配慮らしい」

「へえ……」

 そうか。そんなお母さんの下で育ったから、ヒロくんはこんなに優しい男の子になったんだ。

「ところでさあ、未花ちゃん」
「うん?」
「ええっと、……ちょっぴり甘えたいんだけど、いい?」
「え?」

 びっくりした。だって初めてだよね。ヒロくんが、甘えたいだなんて言うの。いつも私の事守ってくれて甘やかしてくれるばっかりだったのに。

 ヒロくんの表情はどこか甘い。おねだりモードだからか、いつもよりほんの少し幼くも見えた。なんだかこっちまで、くすぐったい気持ちになってくる。

「いいよ。どうしたいの?」
「うん、……えっとさ、膝枕して欲しい」
「えっ?」
「あ、もちろん! ダメならいいんだ。無理はしなくていいんだけども」

 ヒロくんはそう言いながら、焦ったように胸の前で両手を忙しなく振った。

「……大丈夫。ヒロくんだもの。嫌じゃないし、大丈夫だと思う」
「ほ、本当に?」

 さっきまでの窺う表情を一変させて、ヒロくんの顔がみるみる明るくなる。私は正座させていた足を崩して両脚を伸ばした。
 正座だと多分、枕としては高いと思ったからだ。

「どうぞ」

 腿をポンポンと叩いて促すと、頬をほんのりと染めて頷き、その場で横になって私の太ももに頭を乗っけた。

 目と目が合う。
 そりゃ、下から見上げて上から見下ろせば目が合うのは当たり前のことだけど。なんだか恥ずかしい。

「照れるね」
「うん……、照れる」

 恥ずかしいなら相手を見なきゃいいのに、何故だか目を逸らすことも出来ない。私達は照れ笑いをしながら、お互い見つめ合っていた。
 ……バカップルだよね。
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